他人の寿命が見える私は、婚約者の命が残り3ヶ月だと知っている~婚約破棄されて辺境の実家に帰ることになった令嬢は隣国の王子から溺愛されます~

上下左右

文字の大きさ
16 / 39
第一章

第一章 ~『最強の騎士団長と魔女』~

しおりを挟む

 団長室に戻ったメアリーたち。そこに映し出された映像では、墜落したワイバーンに騎士たちが集まり、防衛の達成を喜び合っていた。

「さすが俺の娘だ。ワイバーン千体を一掃するとはな」
「光魔術と相性が良かっただけです」

 対人戦ならレオルにはまだ敵わないと謙遜するが、彼は頬を掻く。

「少なくとも俺がメアリーと同じ年齢の頃は、ワイバーン一体すら倒せなかった。才能は間違いなく俺より上だよ」
「お父様だけでなく、お母様の血も引いているおかげですね」
「あいつも才能だったからな」

 メアリーの母は、世界に名が知れ渡るほど高名な魔術師だった。しかしある日突然、行方知れずとなってしまった。

 魔物刈りを日課にしていた人だったため、逆に襲われて命を落としたのだろうと皆は結論付けたが、レオルだけは生存を諦めていなかった。現状も捜索を続けてはいたが発見できずにいた。

「これならいつでも英雄の座を明け渡せそうだな」
「そんな称号いりませんよ」
「だがワイバーン千体を瞬殺したんだ。魔術師として評判になるのは避けられないだろ」

 国の危機を救った英雄だ。望まなくても、評判はすぐに広がる。

「レオルさん、ワイバーンを倒したのは僕ということにしてもらえませんか?」
「なにか理由があるのか?」
「実は……」

 魔女のメアリーと畏怖されていた事情などを説明し、レオルはすぐに納得する。

「強すぎるが故に人が離れていくか……分からなくはないな」
「レオルさんにも同じような経験が?」
「少なからずある。俺は畏怖も勲章の一つくらいにしか思っていなかったが、貴族の令嬢としてはマイナスに働くこともあるか……」
「なので、ワイバーンは私が倒したということにします」
「助かる。おかげでメアリーの貰い手がいなくなるのを避けられそうだ」
「そうなったら僕が貰いますから、ご安心を」

 事情が共有され、カインを英雄にすると決断したレオルは、映像出力の魔道具を拡音設定に変更する。

「音声を向こうと繋げる。カイン、任せたぞ」
「僕も一応は王子ですから。人前に出るのは慣れています。乗り切ってみせますよ」

 音声が繋がり、歓声が団長室に広がる。

『領主様、ありがとうございます』
『さすが俺らのボスだ』
『いつも助けられています』

 賞賛が一斉に送られる。彼らは皆、レオルがワイバーンを倒したのだと信じていた。

「残念ながら、今回の件に俺は貢献していない」
『ご謙遜を。レオル辺境伯以外に誰がワイバーンを倒せると?』

 騎士たちを代表して、白ひげを蓄えた老騎士が訊ねる。皆も関心のある質問だったためか、静寂が訪れる。

「俺が遠距離魔術を苦手としていることは知っているだろ」
『では誰が……』
「カイン騎士団長だ」

 その名を呼ばれ、カインが胸を張る。彼がワイバーンを倒したのだと知らされ、若い騎士たちは歓声をあげる。だが老騎士の中には疑う者もいた。

『カイン殿下が本当にワイバーンを討伐したのですか?』
「僕を疑うのかい?」
『いえ、そういうわけでは……ただカイン殿下が魔術を使うところを見たことがありませんので』
「能ある鷹は爪を隠すものさ。特に僕は他国の王子だからね」

 ワイバーン千体を駆逐する力を隠していた理由としては説得力があった。いずれ国に帰った時、彼は大きな戦力となる。その戦力を秘匿していたのだと語ると、老騎士たちは大きく頷いた。

『その隠していた力を我らのために……』
「僕はこの騎士団の団長でもあるからね。そして君たちのことは家族だと想っている。だからこそ亡国の危機を見過ごせなかったんだ」
『カイン殿下……ありがとうございますっ』

 騎士たちは感動で喉を震わせていた。一方、カインの額には汗が浮かんでおり、苦々しい表情だ。部下を騙しているようで心苦しいのだろう。

(私のために重責を背負わせるのは申し訳ないですね……)

 このままでは魔術の達人として、カインに期待する者が現れるだろう。そういった者たちを牽制するための理由が必要だった。

 メアリーは目で合図を送る。覚悟の込められた視線の意味をカインはすぐに察した。

「ただ僕がワイバーンを倒したのは事実だが、独力で果たしたものでない。メアリーが魔術でサポートしてくれたから成し遂げられたんだ」
『お嬢様が……』
「僕だけではきっと勝てなかった。だからどうか彼女にも賞賛を送ってほしい」

 カインの言葉に騎士たちは拍手を送る。これでカインに魔術師としての力を求められたとしても、あの時はメアリーの助けがあったからと言い訳ができる。

『カイン殿下、万歳! お嬢様、万歳!』

 騎士たちは両手を上げて感謝を示す。その賞賛を二人は素直に受け入れるのだった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井ゆの花
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

処理中です...