他人の寿命が見える私は、婚約者の命が残り3ヶ月だと知っている~婚約破棄されて辺境の実家に帰ることになった令嬢は隣国の王子から溺愛されます~

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第一章

第一章 ~『視察と魔女』~

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 数日後、メアリーはカインと共に村の視察へと訪れていた。この村で暮らすのは、領主であるレオルから直接雇用された農夫たちである。

「私達が雨を降らしたおかげもあって、活気が戻っていますね」
「ほとんどメアリーの成果さ……でも目に見えて結果が出ると嬉しいね」

 村には茅葺きの住居が並び、鍬を手にした農夫たちが家の周りで笑顔を振りまいていた。不作の状態ではこうはいかない。悲惨さを感じさせない彼らの様子から、恵みの雨は効果があったのだと実感できた。

「お嬢様!」

 一際大きな建物から白髪の老人が駆け寄ってくる。村長を任されている男で、人格者としても知られていた。

「ようこそいらっしゃいました。それにカイン殿下も」
「僕はただのオマケさ」
「いえいえ、あなたが降らせてくれた雨のおかげで我らは救われたのです。この恩は一生忘れませんから」
「ははは……」

 苦笑を浮かべるカイン。これは雨を降らせたのが、彼の功績だと広めたからだ。評判はさらに高まり、魔術の実力を疑う者をさらに減らした。

「僕も雨を降らせた。ただメアリーの貢献も大きいんだ」
「お嬢様も凄腕の魔術師だと聞きますからね」
「メアリーの助けがなければ成し遂げられなかった。だから彼女にも感謝を向けてほしい」
「ははは、噂通り、カイン殿下は人格者ですね……お嬢様、村人一同を代表して、あなたに感謝いたします」

 村長が頭を下げる。カインの謙遜として受け取りながらも、彼女にもしっかりと恩を伝える。

「それでお嬢様、本日はどのようなご用件で?」
「困っていることはないかの視察です。とはいっても、あまりなさそうですね」
「おかげさまで、農夫たちも仕事に打ち込めていますから。治安も仕事があるおかげで悪くはありません」
「貧困は治安悪化の最大の要因ですからね」

 犯罪に奔るのは、食い扶持に困るケースが最も多い。だからこそ真面目に仕事のできる環境を整えてくれたメアリーたちに、村長は大きく感謝していたのだ。

「些細なことでも構いません。なにか異常などはありませんか?」
「強いてあげるなら、石橋でしょうか……村の若い者が川の勢いが増した日に、大きく揺れていたと証言しておりましたので……」
「それは危険ですね」

 もし橋が崩れれば交通の便が悪くなるだけでなく、橋から落下して大惨事に繋がるかもしれない。

「私の方で点検させていただきますね」
「それは助かります。場所は分かりますか?」
「はい。なので案内はいりません。私とカイン様で対処しますね」

 二人は村長に見送られながら石橋へと向かう。目的地はそう遠くない場所に存在した。

「美しい川だね」

 川岸に緑豊かな木々が茂り、透明な水が流れていた。川の流れは穏やかで、時折、小さな波が立つが、荒れてはいなかった。

「これくらいの水量なら石橋が崩れる心配はなさそうですね」

 川を渡るための石橋は、風雨や時の流れによって多くの亀裂が残されている。一見、古臭さを感じるものの、長い歴史を耐え抜いてきた証は、それほど橋が強固であることの証明でもあった。

「ですが川が荒れると揺れるなら、どこかが傷んでいる証拠でもありますね」
「二人で手分けして点検しようか?」
「いいえ、その必要はありませんよ。私には光魔術がありますから」

 人の余命を見抜く魔眼は、物の寿命も把握できる。橋全体を見渡し、生命力の歪を探すと、橋脚に刻まれた大きなヒビ割れを発見する。

「この傷が原因ですね」
「治せるのかい?」
「もちろんですとも」

 手を大地に置き、メアリーが魔力を流し込むと、地面から土が呼び起こされる。生き物のように空中に浮かんだ土は、橋脚の傷ついた部分に優しく溶け込み、岩石や鉱物を組み込みながら硬化していった。

「これで修復は完了です。川が荒れても、石橋が崩れることはないはずです」
「さすがメアリーだ。見事だよ」
「カイン様なら、これくらいすぐにできるようになりますよ」

 彼は毎日、鍛錬を欠かさない。誰よりも朝早くに起きて、魔術の練習をしている。そんな彼の努力を知っているからこその本音を伝えるのだった、
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