あやかし古書店の名探偵

上下左右

文字の大きさ
32 / 38

第三章 ~『プロファイリングによる調査』~

しおりを挟む

 美冬たちは夏彦の立ち寄りそうな場所を虱潰しに探していた。しかしどこにも彼の姿はない。
「このコンビニもいなかったわね」
「どこに行ったんだろうね」

 美冬は肩を下ろしてコンビニを後にする。点いては消える街灯が彼女の悔しげな背中を照らしていた。

「このまま闇雲に探しても見つからない。別のアプローチをしてみよう」
「何かいい方法があるの?」
「あるにはあるよ……でも不気味だと怖がらないでね?」
「怖がる?」
「僕にはストーカーみたいな特技があってね。それを使えば居場所を探るヒントを得ることができるんだ……」
「そんな特技が……」
「実は僕、性格から行動を推理するプロファイリングが得意なんだ」

 西住は重々しい口で告げるが、それを聞いた美冬はキョトンとした表情を浮かべている。

「やっぱり気持ち悪かったかな?」
「ううん。もっと変態的なのを想像していたら拍子抜けしちゃったの」
「どんなものを想像していたのか気になるけど……聞くのが怖いから止めておくよ」

 西住は特技のプロファイリングを使うべく、知りたい情報を整理する。

「まずは夏彦くんの趣味を聞いてもいいかな?」
「趣味で性格が分かるの?」
「おおよそは掴めるよ。簡単なモノだと読書とサッカーで、それぞれの趣味ごとに人物のイメージ像が浮かぶでしょ」
「読書は眼鏡をかけた温厚な人で、サッカーは短髪の爽やかな人かしら」
「プロファイリングの基本は、趣味や嗜好から人物の大枠を掴む部分から始めるんだ。そこから細かな情報でイメージ像を修正していくのさ」
「それなら弟の趣味は料理を含む家事全般だから、イメージを想像しやすいかしら。顔の造形もオリーブオイルをよく使う芸能人に似ているわね」
「性格は?」
「私とは似ても似つかないしっかり者ね。なんでも卒なくこなす天才肌よ」
「それって昔からかい?」
「ううん。子供の頃は私にベッタリの可愛らしい性格だったわ。とっても甘えん坊さんだったの」
「ありがとう……夏彦君の性格は掴めたよ」
「もしかして居場所が分かったの?」
「おおよその見当はついたよ」
「ふふふ、奇遇ね。実は私も分かっちゃったの」
「東坂さんも?」
「うん。夏彦はホームセンターにいるわ!」

 美冬は西住のプロファイリングを手伝っている中で、夏彦の居場所を自分なりに推理し、そう結論付けた。

「家出をすると、スマホで時間を潰すにも限界があるわ。きっと手持ち無沙汰で暇になると思うの。そこで私は考えたの。夏彦の趣味は家事でしょ。だから道具が売られているホームセンターできっと時間を潰しているはずだわ」
「悪くない推理だね」
「でしょ」
「でも夏彦くんに限れば、ホームセンターにはいないと思うよ」
「え、そうなの!?」
「しっかり者の夏彦くんだ。短絡的な行動はしないはずだ。きっと長丁場になる可能性も考えている」
「ホームセンターは営業時間の限界のせいで、いつまでも滞在することができないものね」
「長丁場の家出をするのなら、きっとどこかに住居を確保しているはずだ」
「ならビジネスホテルやネットカフェが怪しいわね!」
「いいや、それも疑わしいかな……人ってね、幼少の頃の性格を引きずるものさ。困難に直面すると甘えん坊の気質が顔を出す……経験上、この手のタイプは長い孤独を嫌う。きっと心の許せる誰かと一緒にいる可能性が高いはずだ」
「心の許せる人ね……やっぱり友人と一緒にいるのかしら……」
「僕はそう睨んでいる」
「でも私たちは夏彦の交友関係を知らないから何もできないわ……みんなの頑張りに期待するしかないわね……」

 美冬は協力してもらっている皆を思い出すように、スマホをジッと眺める。するとスマホがクルクルと手の平の上で回転し始める。

「な、なにこれ、心霊現象?」
「あやかしのメッセージだ……きっと夏彦くんの居場所を教えてくれているんだよ……」
「善狐さんは私たちに何を伝えたいのかな?」
「スマホのヒントと、夏彦くんが誰かに匿われている可能性が高いこと……この二つからある疑惑が浮かんでくる」
「まさか……」
「さっき通話した人たちの誰かが夏彦くんを匿っている」
「で、でも、そんなこと……」
「あやかしは君の味方だ。騙すようなことはしない。もし君を騙す者がいるとしたら、それは人間だけだよ」
「……だけど私、誰かが嘘を吐いていたなんて信じられないわ」
「本当に? 不審な点はなかったの?」
「それは……あれ?」

 美冬は三人との会話を思い出し、とある疑問に直面する。

「霧崎さん、なぜ夏彦が一年生だと知っていたのかしら?」

 美冬は弟だと伝えたが、それだけだと二年生である可能性も十分にありうる。だが霧崎は夏彦が一年生だと確信を持っていた。

「謎を解くためにも霧崎さんに会いに行ってみようか」
「そうね」

 友人を疑うようで心苦しさを感じながらも、美冬は弟を探すために、霧崎の元へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...