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第二章
第二章 ~『引き取られた日の思い出 ★華凌視点』~
しおりを挟む~『華凌視点』~
今から二年ほど前、華凌が十四歳、雪華が十五歳の頃、彼は次期領主となるために雪華の家に養子として引き取られた。
初めて屋敷の門をくぐった時の彼は、重厚な門扉の奥に広がる立派な庭と、格式ある建物を目にしながらも、心が弾むことはなかった。これは最初から何も期待していなかったからだ。
華凌は養子として数々の家をたらい回しにされてきた。頭が良く、武術にも秀でているからこそ、彼に立場を奪われるのではと恐れた家族たちが追い出そうと尽力し、結果、同じ家に留まることはなかったのだ。
ここも過去に巡ってきた家と同じだろう。半ば諦めながら、迎え入れられた控えの間で、彼は雪華と出会った。
「初めまして、あなたが華凌ですね。これから姉になる雪華です。どうぞよろしく」
雪華の声には親しみがこもっていた。優しいのは彼女だけではない。両親もまた華凌を本当の息子のように大切にしてくれた。
毎日のように語りかけてくれ、華凌が学問や武術に打ち込めるように時間や機会を与えてくれた。彼は次第に生活に馴染み、いつまでもこの家で過ごしたいと望むようになった。
だが、そんな幸せの日々の中で、華凌の心の奥に密かに欲が生まれ始めた。
両親は華凌の優秀さを認め、多くの期待を寄せるようになったが、その期待が雪華に向けられるものよりも大きく、ある種の優越感を生んでいたからだ。
もしかすると、両親は本当の子どもである雪華よりも、自分を重要視しているのではないかとさえ考え始めるようになった。その結果、両親の愛情をすべて独占したいとの欲を膨らませ、自分がこの家族の中心でありたいと願うようになったのだ。
だがそれが愚かな願いだったと、華凌は気づく。ある日、廊下を歩いていた彼は、ふと雪華と両親が話している声を聞いたのだ。
「私よりもどうか華凌と一緒にいてあげてください。あの子は私より年が下ですし、親の愛情を求めているでしょうから……私なら心配しないでください。一人でも大丈夫ですから」
その言葉に華凌は息を呑んだ。雪華は両親からの愛情を、わざわざ譲ってくれていたのだ。
影で配慮してくれていたのだと知り、華凌は自分の浅はかな考えを恥じた。笑顔で迎え入れてくれた姉に恩を仇で返そうとしていたことを思い知ったのだ。
その日から、華凌は陰ながら雪華を支え、家族の幸せのために貢献してきた。皆がいつも笑っていられるようにと、努力を惜しまなかった。
それから一年間、屋敷でも頭角を現し、皆から次期領主として相応しいと認められた頃、事件が起きた。事故に巻き込まれ、気がついたときには記憶を失っていたのだ。
自分が誰なのかも分からないまま、戦場で戦いに明け暮れる日々。
そんな彼が記憶を取り戻したのは、太妃である妲己が身元引受人として現れたからだ。彼女から渡された皇室に伝わる妙薬のおかげで、次第に記憶が戻り、家族との思い出がはっきりと蘇ってきたのだ。
両親は亡くなってしまったが、まだ雪華がいる。恩を返すために、これからの人生を生きると、心の中で強く誓うのだった。
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