黒魔術と性奴隷と ~闇の治療魔術師奇譚~

ベータ

文字の大きさ
102 / 123
第3章 魔導要塞の攻防

第36話 ★魔導師団

しおりを挟む
 バルティス王国の王都付近の港町に外国の船団が寄港した。バルティス王国のウラジミール王は、フォルセル王国の要求を受け入れ、魔導士師団の入国を許したのだった。

 師団の長は、王立魔導研究所の教授ジャンヌである。以前に名前だけ登場した炎と光の魔術を操る、フォルセル王国が誇る天才魔導士だ。

「陛下にあられましては、ご清祥のこととお慶び申し上げます。この度はご尊顔を拝させていただき、恐悦にございます。」

 10人の魔術師を従え、謁見の間に上がったジャンヌは、王の前にひざまずき、恭しく挨拶をした。黒い法衣を身にまとった彼らはフードを目深に被っており、素顔が見えなかったが、ジャンヌが跪くと同時にフードを取り、素顔をあらわにした。

 その全員が見目麗しい女性である。謁見の間に立ち会った高官の中には、フォルセルの黒魔導士たちに対し、苦々しい表情で睨みつけるものも少なからずいたが、突然露になったその美女集団を前に、驚きの表情を隠すことができなかった。

 ジャンヌの挨拶を受け、ウラジミール王はそんな自分の部下たちの様子を一瞥しつつ、静かに口を開いた。

「堅苦しい挨拶は無用。・・・といいたいところであるが、周知のように我が国は、そちら黒魔術の使い手を忌み嫌ってきた。此度のことも快く思わぬ者たちが我が国には少なからずおる。慇懃なるそちの振る舞い、配慮に感謝する。」
「もったいない言葉にございます。」

 バルティス王国は、フォルセル王国の建国当初から徹底的な弾圧を加えてきた歴史を持つ。フォルセル王国の人間としては、バルティスの王に対する憎悪の念は根深いものがあるに違いないのだ。その王に対し、敬意を表する行為がいかほどに耐えがたいものか、ウラジミール王はよく理解していた。

 同時に自国の民は王宮の高官に至るまで、黒魔術師への憎悪の念を持つものが多くいる。それは、国王数代にわたる政策の結果であり、個人の人格の問題というよりはこれまでの統治者の責任によるところが大きい。もしフォルセルの魔導士・ジャンヌが王に不遜な態度を取れば、彼らの反発は防げなかったであろう。

 しかし今は両国の連携が必要な時。ジャンヌは己の心を殺し、ウラジミール王に対し礼を尽くした。王もジャンヌの心遣いをいち早く汲んだ。両者の対応は賢明だったといえる。もし、この顔合わせでこじれるようなことがあれば、両国は連携どころか戦争に発展しかねないリスクをはらんでいた。

「さて、陛下。時間は多くはございませぬ。願わくば、早急に担当者級の協議の場を設けていただき、くだんの暗黒事変の原因究明に向けた作業に入りたく存じます。」
「よかろう。明日にも場を設ける。本日は、遠路からよくぞ参った。大義である。部屋を用意してあるゆえ、ゆっくりと休むがよい。」
「はは、ありがたく。」

 謁見は手短に手じまいとなった。敵対的な感情を持つ家臣が少なからずいる中、使者達を公の場から早く退場させた方が良いという配慮である。

 黒装束の一団は、王宮の従者の導きに従い、客間に下がっていった。魔術のたしなみのあるものがみれば、彼女らがいつでも戦闘を開始できる警戒態勢を維持していたことが察知できたであろう。表面上は簡素なやり取りであったが、その場は一触即発の空気であった。



「しかし、全員があのような美女の集団とは・・・驚きましたね。」

 フォルセルの使者達が下がり、控えの間に移動した王に側近であるジュリアス宰相が感想を漏らす。

「うむ。ユリア(娘)の奴も驚いていた。(←31話参照。フォルセル王国に国書を届けた。) どうも魔力というのは一般的に女の方が男より強い力を持つらしい。筋力とは逆の関係にあるようだ。故に魔導王国であるフォルセルでは、支配者階級のほとんどが女で占められているらしい。」
「なるほど、それで。。私ら男が居合わせたら、さぞかし居心地の悪い空間でしょうな。」

 「ハーレム」などとはとても言えない世界であろうことは容易に想像できる。男尊女卑ならぬ女尊男卑がまかり通る世界を想像し、二人はうすら寒い思いをするのだった。


─────────

「ご主人様、ご主人様!」

 王国本土では、緊迫した両国の歴史的な会見が行われていたが、アロン島は変わらずのどかだ。畑仕事を終えたリリカが元気な声でリアムの部屋に駆けてきた。手にはニンジンを持っている。

「ど、どうしたんだ?リリカ。」

 若干の冷や汗をにじませ、リアムが笑顔で答える。(いかんいかん。普通にしてればいいんだ。) 最近どうもいけない。料理の時間以外でリリカが棒状の野菜を手にしているとどうしてもいけないことを想像してしまう。リアムはそんな自分自身を心中で密かに叱った。

「これね。リリカの特別製の栽培で作ったんです。」
「特別製?」
「はい、前から水魔術で試してきた栄養を濃縮する栽培で、ようやくちゃんと育てられるようになってきました。ね!試食しましょう♪」

「大丈夫かな?」

 普段食べているニンジンと言えども特殊な栽培である。リアムはそれが可食か少し心配なようだ。

「食べてみないとわかりませんよー。ちょっとだけ。ね!」

 確かに最終的には食べてみないことには確認できない。

「よし、じゃサラダでも作るか?」
「はい!」

 そんなやり取りをして二人は台所に足を運ぶのだった。
しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...