黒魔術と性奴隷と ~闇の治療魔術師奇譚~

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第3章 魔導要塞の攻防

第38話 作戦会議

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 フォルセル王国から派遣された魔術師団は王宮で国賓級の待遇でもてなされた。魔術師団入国の報せが触れられた当初、王宮の多くの官僚や侍従、近衛兵は、禁忌の術を国策で研究するかの国の者たちを嫌悪してはばからなかったが、訪れた10人の魔術師の目も眩むほどの美貌を見せつけられると、そのほとんどが口をつぐんだ。なんとも現金なものである。ただし、幾人かの堅物はそれでも、「やはりあの国は我らをたぶらかしにかかっているのだ。」と吼えていた。が、しかし最早そうした発言の影響力は全く力を失っていた。

 魔術師団が王への謁見をした翌日の昼から、早速両国の要人による軍議がはじめられた。フォルセル王国側はジャンヌが立ち、バルティス王国側はカーネル将軍が応じた。

「まずは情報の共有から始めたいですがいかがかしら。あの事変の日、現場で起きたことについてこれまで明らかになっていることをご教示願えますか?」

 金髪のロングストレートを後ろで束ね、鋭い碧眼で見据えながら、ジャンヌがカーネルに問う。紫紺と白の布地からなるローブは派手さはないが、包まれる生身があまりに豪奢であるため、その姿は圧倒される気品をたたえている。そう、高貴な種族と伝説で謳われるエルフさながらの佇まいだ。

「む、・・うむ。残念ながら真相の解明には至っていないのが現状にござる。」

 謹厳実直で知られるカーネルと言えども、ジャンヌのその美貌を前に若干声が上ずっているようだ。

「それはいかなる事情によって?あれほどの事変に対し、貴国が今まで何の調査もないままとは考えにくいですが。」
「確かに調査は試み申した。しかしながら、怪異なる現象が起き、あの闇の発祥とされる島、アロン島にはまともに上陸することもできておらん。」

 カーネルは、アロン島へ上陸した直後におきた、猛烈な嵐とその後襲い掛かった疫病、やむなく撤退をしたことについてジャンヌに説明した。

「────事の次第は以上だ。天変地異と疫病、これらが果たして偶然我らを襲った災厄であったか否か。未だ究明の手がかりは見いだせておらぬ。しかし、偶然にしてはあまりにも出来すぎていると拙者は思っておる。だが一方で、今話したような現象を魔術で具現化することは果たして可能なのか、拙者には人のなせる技とは考えにくいように感じている。」

 カーネルの説明を聞き、ジャンヌはしばし考えを巡らせた。

「・・・それは、何らかの魔術を行使されたと考えるべきでしょうね。ただの自然現象と捉えるには、あまりにも出来すぎています。それにお聞きするような急激な病変は魔術的な効果エフェクトなしにはなしえないと思います。」
「では、やはり何者かの仕業であると・・」
「ただし────」

 ジャンヌがカーネルの言葉を遮るように言葉をつないだ。

「そのような魔術を使えるものも技術自体も、我が国においても存在しないことを申し上げておかなければなりません。」
「・・・・・・」

 場はしばしの沈黙に包まれた。

「・・・では、何者が。」
「その島には人は住んで?」
「しばらくの間は無人島であったと聞く。だが、数年前より我が国の魔術師が島に落ち延びたらしいという噂がある。」
「貴国の魔術師ということは、白魔術師ということですね。」
「我が国きっての治療魔術師として名を馳せた男だ。だが政争に敗れ、今は姿をくらましている。その男がかの島に身を隠したという噂がある。」

「その男は貴国に恨みを?」
「・・・持っていたであろう。かつてはカリスマ的な人気を誇った術師であったが、経緯は不明なところもあるが、少なくとも今はその全てを失っているのだ。」

「・・・・・・」

 ジャンヌはまたしても沈黙した。後ろには9人の魔術師が控えているが、彼女らから小さなどよめきの声が聞こえる。

 ジャンヌは天才的な魔術のセンスと明晰な頭脳でフォルセル王国では飛ぶ鳥を落とす勢いの魔導士だ。その彼女が、これほどに沈黙し、長考するシーンは自国においてもほとんど見られなかった。

「カーネル将軍・・・。」
「うむ?」
「まず、申し上げておきたいのは、貴殿と騎士団が生還できたことは非常な幸運であったということ。」
「・・・幸運にござるか?何もなしえず、逃げ帰った我らが。」

「ええ。いただいた情報で申し上げられることとしては、あなた方が被った被害は天災ではなく魔術によるものであること。先ほども申し上げたことではありますが、これがまず一つ目。」
「・・・」
「そして、その魔術は人間によるものではないということを申し上げねばなりません。」
「・・・何?」

 そもそも世界を闇に陥れたあの事変は、日食などの自然現象でないならば人外の何かでなければなしえないものなのだ。そしてその後の調査時に見舞われた天変地異も同様のことがいえる。

 聞きたくない言葉であった。皆、実は薄々そのことを感じながらも、常識的に考えられない、そんな危機的状況を受け入れたくない、という思いが働いていたのだ。ジャンヌは静かに、淡々と言葉をつづけた。

「ここからは、私の仮説ですが・・・、貴国の体制に恨みを持っていたその治療師が、災厄の現場となった島で何らかの方法にて、人ならぬ何かを召喚した可能性が考えられます。」
「・・・・」

 今は、カーネルが黙る番となっている。

「もし、そうだとした場合、その者が活きている可能性は低いでしょう。そして呼び出された何かは今も島を拠点として息づいている。」
「・・・・・・」

 カーネルに従って場に控えていた騎士たちの表情が青ざめたものになっていく。

「そしてその者は、規格外の魔力と人知を超える術式を以って、あの日世界を闇に陥れた。」
「・・・・くっ。」
「恐らくは己の力を確認する目的であったかと推察します。そして力試しをした者としては、あの暗黒術の試術は、こう確信をさせたことでしょう。」
「・・・確信とは・・・?」

「・・・このようなことを軽々に申し上げるべきではありませんが・・・『己には世界を滅ぼすに足る力がある』と。」
「そ・・・、それはつまり。」
「私達、人の世が風前の灯火にあるやもしれぬということです。」

 「あくまで仮説にすぎないが」と、ジャンヌはもう一度付け加えた。内容は確かに軽々に結論付けられるようなことではない。しかし、カーネルをはじめ、島での出来事を肌身で経験した者たちには、ジャンヌの言葉は妙に説得力を持っていた。


 これは────魔王の再来?


 神話に記された戦いの物語がある。この世を闇に陥れんとする魔王を相手に、戦い抗った人族の祖先の物語。魔王と刃を交えた勇者は、神から授かった聖剣を以って、激闘に次ぐ激闘の末、強大な敵を討ち果たし、今の人の世の礎を築いたという話。

 この世界の人間なら子供でも知っている物語で、男の子には特に人気がある血沸き肉躍る英雄譚だ。だが、そんなのは物語の中だけのことにしてほしかった。沈黙するカーネルの額には、いくつもの汗の粒が浮いていた。


 あの島に────伝説の魔王が降誕したというのか・・・?





 ギシギシ─────

 王国で深刻な議論が繰り広げられていたそのころ、その「魔王が降誕した」とされるアロン島では、まさに悪魔の歯ぎしりのような異様な軋み音が鳴り響いていた。

「あっあっ、ご主人様ぁ―!!」
「ああぁ、で、出る!」

 どぴゅっ、ビュビュッ!


 正常位で両腕と両足でリリカにしがみつかれながら、リアムはありったけの精を放出していた。異様な軋み音────?いつものことである。

「はぁっはぁっ。き、気持ち良かったぁ」

 額に汗の粒を浮かせながら、リリカがため息交じりの満足げな声で感想を述べる。

「ああ、何かあのニンジンのせいか、精力がみなぎる感じで、俺もついいつも以上に燃えちまった。」
「えへへ。リリカもです。これはもう、リリカの農魔術でどんどん作物を作らないとですね!」


 試食の残りニンジンもも完食した二人は元気いっぱい。アロン島は今日も平和そのものだが、もしかしたらこのあと新たな危機が訪れるかもしれない。
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