黒魔術と性奴隷と ~闇の治療魔術師奇譚~

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第3章 魔導要塞の攻防

第40話 ★土人形(中編)

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 事が終わり(笑)、落ち着きを取り戻した二人は、今更ながら簡単にお風呂で身を清めた後、庭に足を運んだ。(風呂については一緒に入る入らないの攻防があったが、重要ではないので省略(リアム談))

 ちなみにリリカがアロン島に連れ去られた際に使われたガーゴイルは今はもう残骸になっている。第1部の終盤にアロン島に侵入した傭兵たちを撃退する際、ガーゴイルを足止めに用いた後、大規模攻撃魔法・メテオストームによって、傭兵とともに被弾し大破してしまったのだ。


「ま、じゃあ始めるか。」
「よろしくお願いします。」

 庭の開けた場所に立ち、リアムの魔術指南が始まる。魔導書では「石獣入魂の書」となっていたが、リアムはこの術をボーガススピリットと名付けていた。

「このボーガススピリットという術は対象の材質を選ばない。無生物なら何でも対象とすることができる。ただ、ガーゴイルを作って思ったのは、石像のような巨大な石を対象に選ぶのは少々いただけなかった。」
「どうしてですか?」

「この魔術は、無生物に魂というか脳に相当する運動制御機能を付加する術なんだが、物体の変形を自在にできるような魔術ではないんだ。」
「・・・あれ?でもあの時のガーゴイルは石なのに生き物のように動いていたような・・・。」
「あれは、別の魔術を併用していた。俺たち人間は運動能力のある筋肉があるから、体中どこでも動かせるだろ?だけどガーゴイルの場合は、一つの巨大な石だからそのままじゃ全く動かない。あの時は、リリカが水魔術で水の粘度をコントロールしたみたいに、石の可塑性(変形性)をコントロールして、動かしてたんだ。」

「確かに、、硬い石がぐにゃぐにゃ動くようになるなんて簡単じゃないですもんね。」
「そうだよ。『石獣入魂』のタイトルに騙されてうっかり石像を対象にやってみたんだが、はっきり言って巨石を選んだのは失敗だった。とはいえ、生き物のように身体を動かそうと思わないんだったら別に石でも構わないがな。」

「動かないんじゃ意味ないんじゃ・・?」
「全体を念力の作用で動かすことはできるだろ?」
「あれ?じゃ、念力とボーガススピリットは何が違うんですか?」

「念力は、動かしたい時に術者が物体に作用させて動かすわけだろ?ボーガススピリットは、予め物体を動かす時の制御ルールを仕込んでおけば、後は術者の状況に関わりなく、ルールに従って自動で動くところが違う。だから、例えば『半径10メートル以内に侵入者が入ってきたら体当たりをかます』みたいな仕掛けをボーガススピリットで仕込めば、術師は寝ていてもその物体は決められたとおりに仕事をしてくれる。」

「うまくルールを設定したら便利かもですね。」
「ああ。この術は術自体の力よりも使い方の工夫で性能に雲泥の差が現れる。」

 リリカはマイ魔導書を開き、熱心にメモを取っている。

「ちょっと気になったんですけど、念力を使う時は魔力を使いますよね?ボーガススピリットで物体が動く時の魔力はどうなるんですか?」
「大事なところに気付いたね?この術自体は仕掛けた瞬間よりも対象の物体が動く時の方が消費魔力が大きい。しかもその消費のタイミングは設定したルールによるから、いつその魔力を消費するかは決まってない。だから必要なタイミングで術師が魔力を供給してやることはあまり現実的ではない。」

「そう、そこです!リリカもそれが気になりました。術師がつきっきりでそばにいないといけないんだったら、自動で動く意味がほとんどないですもんね。」
「だから動力源はあらかじめ埋め込むんだ。魔導書では精霊石を使っていたが、俺は魔石を使った。」
「あ、なるほど。」

 ちなみに精霊石はフォルセル王国製の魔力を封じ込めたクリスタルで、王立魔導研究所のブランドで高額で取引されるものである。魔石はアロン島でリアムとリリカがイグニスヒールによって自らの魔力を封じ込めた石ころで、性能的には同等以上のものであるが、クリスタルのような美しい輝きはない。

「ま、そんなわけで物体を変形させないんだったら、石みたいな硬いものでも別に問題ない。でも基本的には全部念力的な作用で何とかするものなんで、動物のようにある程度身体に動きを持たせたいなら、土の塊を使うとか、ある程度変形が可能な素材を選んだほうが良いな。」
「そういうことなんですね。あの、作用させるのは念力しかできないんですか?魔術を使わせるなんてことは・・?」

「なかなか難易度の高いことを考えるね。できなくはないけど、かなり難しくなるよ。ところでリリカはどうしてこの術を使えるようになりたいんだっけ?」
「えっとですね、農魔術栽培のお世話をさせたいと思ったんです。」

 例の特殊栽培ニンジンは術としては相当大変なことをしていた。ニンジンの周りの土の水分の濃度だけでなく、ニンジンの中を流れる水分の栄養濃度までをすべて制御し、根っこの部分に蓄積する栄養が濃縮されるようにするのだが、術を解くと当然ながら土もニンジンも普通の状態に戻ろうとする。

 そのため、リリカは収穫の一週間ほど前の段階から毎日一日の大半をかけてニンジンに対し自ら術をかけ続けていた。でもその他の家事とかもあるので、畑にかじりつくわけにもいかず、魔力の消耗をいとわず遠隔で魔力を送り込んだりかなりハードなことをした。

 それでも寝ている間は術が途切れるし、起きててもご褒美の時間とかは全然魔術の方に意識が向かなくなるのでやっぱり術が途切れた。途切れている間は、過剰濃縮した栄養はやはり流出してしまう。つまり先日つくった特殊ニンジンは確かに高栄養価ではあるが、リリカからするとまだまだ序の口で、つきつめればもっとすごいものが作れるはずなのだ。

 リリカは自分の代わりに昼夜を問わず作物に農魔術を行使し続ける何かを用意できればと思案し、リアムのガーゴイルの術に思い至ったのだった。


(あのニンジンで、序の口か・・・。改めてリリカの考えた農魔術のポテンシャルを感じるな。もしかしたら作物の種類を厳選してリリカのう言うような昼夜を徹した世話ができるようになったら、伝説の秘薬と言われるエリクサーの素材すら制作ができるようになるかもしれん。)

 リリカの説明を聞いて、リアムは改めて彼女の農魔術のすごさに気付かされた。

「なるほどな。リリカ、それなら材料集めに苦労しない土を材料にして土人形を作ることにしよう。必要に応じて身体を変形させることもできるしな。」
「はい!」

 そういうとリアムは、早速スコップを持ってきて穴を掘り、掘り出した土の塊を用意した。
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