黒魔術と性奴隷と ~闇の治療魔術師奇譚~

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第3章 魔導要塞の攻防

第49話 ★進軍

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 港湾都市・エルチェリータから二隻の船が出航した。船はバルティス王国の水軍の軍用艇だ。水兵が操舵し、船にはバルティス王国の聖騎士団精鋭10名および弩兵6名と、フォルセル王国の魔術師団の10名がそれぞれ二手に分かれて乗船している。また、冒険者ギルドから派遣された傭兵・セラフィーナも同行している。いよいよアロン島の踏査が再開されるのだ。

 水兵を除けば戦力は17名。いわゆる冒険者のクエストのパーティに比べれば大所帯だが、一個の兵力としては非常に小規模だ。軍議では「軍事作戦並みの兵力を投入したほうが良いのではないか。」という意見も上がった。戦力の逐次投入は負け戦の始まりともいわれるので一理はある。

 しかし、まだ戦うべき敵がいるかどうかも確定していない段階であり、あくまで踏査が目的であることを踏まえ、少数精鋭の編成となった。もし、問題の要因が大規模な火山活動などのような天災に関わるものであった場合、投入した兵力がすべて巻き込まれ失われる可能性が高い。

 魔物の類がいる場合、対人戦を前提とした通常の軍勢では歯が立たない。魔物にも対応できる精鋭のみで一軍団を編成してしまうと、国の軍事力の半数以上をアロン島に集中させることとなる。国防の対象はアロン島だけではないので、現段階でそこまでの対応はやはりできない。そのような事情を判断した結果がこの編成であった。



 目の前のアロン島を眺めながらカーネル将軍は、隣に立ち同じく島の様子を伺うジャンヌに話しかけた。

「ジャンヌ殿。以前我々が被った急性の発熱のような状況に陥った際は、早速貴殿らのお力を借りることになる。その時はよろしく頼みますぞ。」
「ええ。魔術性のものであれば、魔力遮断の結界と解呪処置によって対処できると思います。」
「うむ、心強い。────では。」

 いかりが下ろされた。いよいよアロン島への上陸が始まる。騎士たちから順に下船し、アロン島への上陸が進められた。(以前は上陸して間もなく、途轍もない嵐に見舞われたが・・・)カーネルは以前の記憶を思い起こし、厳重に警戒する。今回同じことが起きれば、こちらの風魔術師に対抗する魔術を行使してもらうことになっている。

 しかし、今日の空は晴天のままだった。

 全員が上陸を済ませ、隊列も整え、いよいよ島の深部に侵入できる手筈が整った。

「無駄な迷走を避けるためにここからはセラフィーナ殿に先導してもらう。」
「承知した。以前侵入した際には、島の中心部付近の大地にかつての修道士・リアム=アシュリーの館があった。今回の事変に人の原因があるとするならば、まずこの地の現状確認が最重要になる。」

「よかろう。どのように進軍するのが良いか。」
「いわゆるダンジョンの探索と同様の手法を。私が斥候として先行し、安全を確認したところまで本体が隊列を維持しながら移動する。この繰り返しによる進軍が良いと考える。」
「ふむ────む?」

 一団が作戦の確認をしていた時、カーネルは周囲に注意を向けた。


ブーーーン────


 耳障りな羽音がした。周りを見回すと、羽虫が群れを成して飛んでいる。

「うわ!」
「うっとうしい!蚊柱が立ってやがった!」

 虫は蚊のような形をしており、幾人かが刺されてペチペチと肌の露出部分を叩いたり払ったりした。

「くっ!(ペチッ)」

 カーネルの首筋にも虫がとまり、素早い反応でこれを叩いた。手に付いた虫の死骸を見たカーネルの表情が変わった。

「!!?」
「ここにいては、蚊柱のいい的だ。まずは場所を移動しないか。」

 あまり虫に絡まれていないセラフィーナが、こんなところで無駄な時間を使うべきでないと考えカーネルに声をかける。

「いや、気をつけろ。お前たち、虫に惑わされるな。防御の陣形を取れ。円陣だ。魔術師たちを中心に取り囲むように円形の陣を取れ!」
「どういうことだ?カーネル将軍!?」

 セラフィーナが状況をよく理解できていない。早口でカーネルが説明を加えた。

「たたいた虫の死骸が消えた。まるで蒸発するようにだ。お主も円陣の一部となれ。この虫ども、魔法生物の可能性がある。」
「何?」

 他の騎士の数人もやはりたたいた虫が消えたことを確認した。血を吸われたものも何人かいた。たたいた拍子に虫の腹がつぶれ、手のひらに血が付いたが、死骸のみが気化し手のひらに血が残った。それはたかが虫けらの地味な異常だが、この島で起こる超常現象の恐ろしさを身をもって知る聖騎士たちには、警戒心を想起するに充分な出来事だった。

 素早く隊列を変形させ、円陣をしく。敵がどこから攻めてくるかわからないため、前衛後衛を決める方向がない。そのため、中心部に魔術師、円周側に聖騎士+セラフィーナを配置する形を取ったのだ。これでどちらからの責めに対しても、前衛・後衛の役割分担を果たせる。魔術師たちのいる真下の地面からピンポイントで攻撃された場合は、運が悪かったと割り切るしかない。


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」


 沈黙がしばらく続いた。(気にしすぎたか・・)と騎士の一人が一瞬緊張を解いたとの時、周囲のいたるところで、砂浜の表面が水面みなもの波紋のようにうごめき始めた。

「な、何が起こるのだ。」

 砂浜の波うちは次第に大きくなり、ついに変形して盛り上がりを見せ、それらは手の形を成した。彼らを取り囲む形で、数十個の手が砂浜から生えた。

「うっ!」
「・・・泥手マッドハンド!」

 ジャンヌが叫んだ。

「魔物だ!どういうことだ。この島で何が起きている!?」

 セラフィーナがつぶやく。だが、今は目の前の戦いに集中しなければならない。形を成した手は移動を開始し、次々に襲いかかってきた。


────
そういえば、ジャンルが恋愛になっていることを思い出したんですが、ファンタジーにしておいた方がよさそうですね。変えようかな。
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