115 / 123
第3章 魔導要塞の攻防
第49話 ★進軍
しおりを挟む
港湾都市・エルチェリータから二隻の船が出航した。船はバルティス王国の水軍の軍用艇だ。水兵が操舵し、船にはバルティス王国の聖騎士団精鋭10名および弩兵6名と、フォルセル王国の魔術師団の10名がそれぞれ二手に分かれて乗船している。また、冒険者ギルドから派遣された傭兵・セラフィーナも同行している。いよいよアロン島の踏査が再開されるのだ。
水兵を除けば戦力は17名。いわゆる冒険者のクエストのパーティに比べれば大所帯だが、一個の兵力としては非常に小規模だ。軍議では「軍事作戦並みの兵力を投入したほうが良いのではないか。」という意見も上がった。戦力の逐次投入は負け戦の始まりともいわれるので一理はある。
しかし、まだ戦うべき敵がいるかどうかも確定していない段階であり、あくまで踏査が目的であることを踏まえ、少数精鋭の編成となった。もし、問題の要因が大規模な火山活動などのような天災に関わるものであった場合、投入した兵力がすべて巻き込まれ失われる可能性が高い。
魔物の類がいる場合、対人戦を前提とした通常の軍勢では歯が立たない。魔物にも対応できる精鋭のみで一軍団を編成してしまうと、国の軍事力の半数以上をアロン島に集中させることとなる。国防の対象はアロン島だけではないので、現段階でそこまでの対応はやはりできない。そのような事情を判断した結果がこの編成であった。
目の前のアロン島を眺めながらカーネル将軍は、隣に立ち同じく島の様子を伺うジャンヌに話しかけた。
「ジャンヌ殿。以前我々が被った急性の発熱のような状況に陥った際は、早速貴殿らのお力を借りることになる。その時はよろしく頼みますぞ。」
「ええ。魔術性のものであれば、魔力遮断の結界と解呪処置によって対処できると思います。」
「うむ、心強い。────では。」
碇が下ろされた。いよいよアロン島への上陸が始まる。騎士たちから順に下船し、アロン島への上陸が進められた。(以前は上陸して間もなく、途轍もない嵐に見舞われたが・・・)カーネルは以前の記憶を思い起こし、厳重に警戒する。今回同じことが起きれば、こちらの風魔術師に対抗する魔術を行使してもらうことになっている。
しかし、今日の空は晴天のままだった。
全員が上陸を済ませ、隊列も整え、いよいよ島の深部に侵入できる手筈が整った。
「無駄な迷走を避けるためにここからはセラフィーナ殿に先導してもらう。」
「承知した。以前侵入した際には、島の中心部付近の大地にかつての修道士・リアム=アシュリーの館があった。今回の事変に人の原因があるとするならば、まずこの地の現状確認が最重要になる。」
「よかろう。どのように進軍するのが良いか。」
「いわゆるダンジョンの探索と同様の手法を。私が斥候として先行し、安全を確認したところまで本体が隊列を維持しながら移動する。この繰り返しによる進軍が良いと考える。」
「ふむ────む?」
一団が作戦の確認をしていた時、カーネルは周囲に注意を向けた。
ブーーーン────
耳障りな羽音がした。周りを見回すと、羽虫が群れを成して飛んでいる。
「うわ!」
「うっとうしい!蚊柱が立ってやがった!」
虫は蚊のような形をしており、幾人かが刺されてペチペチと肌の露出部分を叩いたり払ったりした。
「くっ!(ペチッ)」
カーネルの首筋にも虫がとまり、素早い反応でこれを叩いた。手に付いた虫の死骸を見たカーネルの表情が変わった。
「!!?」
「ここにいては、蚊柱のいい的だ。まずは場所を移動しないか。」
あまり虫に絡まれていないセラフィーナが、こんなところで無駄な時間を使うべきでないと考えカーネルに声をかける。
「いや、気をつけろ。お前たち、虫に惑わされるな。防御の陣形を取れ。円陣だ。魔術師たちを中心に取り囲むように円形の陣を取れ!」
「どういうことだ?カーネル将軍!?」
セラフィーナが状況をよく理解できていない。早口でカーネルが説明を加えた。
「たたいた虫の死骸が消えた。まるで蒸発するようにだ。お主も円陣の一部となれ。この虫ども、魔法生物の可能性がある。」
「何?」
他の騎士の数人もやはりたたいた虫が消えたことを確認した。血を吸われたものも何人かいた。たたいた拍子に虫の腹がつぶれ、手のひらに血が付いたが、死骸のみが気化し手のひらに血が残った。それはたかが虫けらの地味な異常だが、この島で起こる超常現象の恐ろしさを身をもって知る聖騎士たちには、警戒心を想起するに充分な出来事だった。
素早く隊列を変形させ、円陣をしく。敵がどこから攻めてくるかわからないため、前衛後衛を決める方向がない。そのため、中心部に魔術師、円周側に聖騎士+セラフィーナを配置する形を取ったのだ。これでどちらからの責めに対しても、前衛・後衛の役割分担を果たせる。魔術師たちのいる真下の地面からピンポイントで攻撃された場合は、運が悪かったと割り切るしかない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙がしばらく続いた。(気にしすぎたか・・)と騎士の一人が一瞬緊張を解いたとの時、周囲のいたるところで、砂浜の表面が水面の波紋のようにうごめき始めた。
「な、何が起こるのだ。」
砂浜の波うちは次第に大きくなり、ついに変形して盛り上がりを見せ、それらは手の形を成した。彼らを取り囲む形で、数十個の手が砂浜から生えた。
「うっ!」
「・・・泥手!」
ジャンヌが叫んだ。
「魔物だ!どういうことだ。この島で何が起きている!?」
セラフィーナがつぶやく。だが、今は目の前の戦いに集中しなければならない。形を成した手は移動を開始し、次々に襲いかかってきた。
────
そういえば、ジャンルが恋愛になっていることを思い出したんですが、ファンタジーにしておいた方がよさそうですね。変えようかな。
水兵を除けば戦力は17名。いわゆる冒険者のクエストのパーティに比べれば大所帯だが、一個の兵力としては非常に小規模だ。軍議では「軍事作戦並みの兵力を投入したほうが良いのではないか。」という意見も上がった。戦力の逐次投入は負け戦の始まりともいわれるので一理はある。
しかし、まだ戦うべき敵がいるかどうかも確定していない段階であり、あくまで踏査が目的であることを踏まえ、少数精鋭の編成となった。もし、問題の要因が大規模な火山活動などのような天災に関わるものであった場合、投入した兵力がすべて巻き込まれ失われる可能性が高い。
魔物の類がいる場合、対人戦を前提とした通常の軍勢では歯が立たない。魔物にも対応できる精鋭のみで一軍団を編成してしまうと、国の軍事力の半数以上をアロン島に集中させることとなる。国防の対象はアロン島だけではないので、現段階でそこまでの対応はやはりできない。そのような事情を判断した結果がこの編成であった。
目の前のアロン島を眺めながらカーネル将軍は、隣に立ち同じく島の様子を伺うジャンヌに話しかけた。
「ジャンヌ殿。以前我々が被った急性の発熱のような状況に陥った際は、早速貴殿らのお力を借りることになる。その時はよろしく頼みますぞ。」
「ええ。魔術性のものであれば、魔力遮断の結界と解呪処置によって対処できると思います。」
「うむ、心強い。────では。」
碇が下ろされた。いよいよアロン島への上陸が始まる。騎士たちから順に下船し、アロン島への上陸が進められた。(以前は上陸して間もなく、途轍もない嵐に見舞われたが・・・)カーネルは以前の記憶を思い起こし、厳重に警戒する。今回同じことが起きれば、こちらの風魔術師に対抗する魔術を行使してもらうことになっている。
しかし、今日の空は晴天のままだった。
全員が上陸を済ませ、隊列も整え、いよいよ島の深部に侵入できる手筈が整った。
「無駄な迷走を避けるためにここからはセラフィーナ殿に先導してもらう。」
「承知した。以前侵入した際には、島の中心部付近の大地にかつての修道士・リアム=アシュリーの館があった。今回の事変に人の原因があるとするならば、まずこの地の現状確認が最重要になる。」
「よかろう。どのように進軍するのが良いか。」
「いわゆるダンジョンの探索と同様の手法を。私が斥候として先行し、安全を確認したところまで本体が隊列を維持しながら移動する。この繰り返しによる進軍が良いと考える。」
「ふむ────む?」
一団が作戦の確認をしていた時、カーネルは周囲に注意を向けた。
ブーーーン────
耳障りな羽音がした。周りを見回すと、羽虫が群れを成して飛んでいる。
「うわ!」
「うっとうしい!蚊柱が立ってやがった!」
虫は蚊のような形をしており、幾人かが刺されてペチペチと肌の露出部分を叩いたり払ったりした。
「くっ!(ペチッ)」
カーネルの首筋にも虫がとまり、素早い反応でこれを叩いた。手に付いた虫の死骸を見たカーネルの表情が変わった。
「!!?」
「ここにいては、蚊柱のいい的だ。まずは場所を移動しないか。」
あまり虫に絡まれていないセラフィーナが、こんなところで無駄な時間を使うべきでないと考えカーネルに声をかける。
「いや、気をつけろ。お前たち、虫に惑わされるな。防御の陣形を取れ。円陣だ。魔術師たちを中心に取り囲むように円形の陣を取れ!」
「どういうことだ?カーネル将軍!?」
セラフィーナが状況をよく理解できていない。早口でカーネルが説明を加えた。
「たたいた虫の死骸が消えた。まるで蒸発するようにだ。お主も円陣の一部となれ。この虫ども、魔法生物の可能性がある。」
「何?」
他の騎士の数人もやはりたたいた虫が消えたことを確認した。血を吸われたものも何人かいた。たたいた拍子に虫の腹がつぶれ、手のひらに血が付いたが、死骸のみが気化し手のひらに血が残った。それはたかが虫けらの地味な異常だが、この島で起こる超常現象の恐ろしさを身をもって知る聖騎士たちには、警戒心を想起するに充分な出来事だった。
素早く隊列を変形させ、円陣をしく。敵がどこから攻めてくるかわからないため、前衛後衛を決める方向がない。そのため、中心部に魔術師、円周側に聖騎士+セラフィーナを配置する形を取ったのだ。これでどちらからの責めに対しても、前衛・後衛の役割分担を果たせる。魔術師たちのいる真下の地面からピンポイントで攻撃された場合は、運が悪かったと割り切るしかない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙がしばらく続いた。(気にしすぎたか・・)と騎士の一人が一瞬緊張を解いたとの時、周囲のいたるところで、砂浜の表面が水面の波紋のようにうごめき始めた。
「な、何が起こるのだ。」
砂浜の波うちは次第に大きくなり、ついに変形して盛り上がりを見せ、それらは手の形を成した。彼らを取り囲む形で、数十個の手が砂浜から生えた。
「うっ!」
「・・・泥手!」
ジャンヌが叫んだ。
「魔物だ!どういうことだ。この島で何が起きている!?」
セラフィーナがつぶやく。だが、今は目の前の戦いに集中しなければならない。形を成した手は移動を開始し、次々に襲いかかってきた。
────
そういえば、ジャンルが恋愛になっていることを思い出したんですが、ファンタジーにしておいた方がよさそうですね。変えようかな。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる