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第3章 魔導要塞の攻防
第56話 幕引き
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「ジョージ!カルロス!左翼に新手が来ている!早く当たれ!!」
「コネリー!ミランダが傷を負った。下がらせろ!魔術師に敵を近づけてはならん!」
自らも攻防の渦中に身を置きながら、カーネルは必死に周囲の状況に気を配り、部下に指示を飛ばす。ともかく魔術師団にサンドゴーレムどもを近づけぬように騎士たちが盾にならなければならない。サンドゴーレムはその見た目の巨体通り、攻撃は重いが動きは鈍い。近接戦闘の訓練を充分に積んでいる騎士たちなら攻防で後れを取ることはない。
だが、魔術師たちは別だ。彼女たちは魔術による遠隔攻撃は強力だが、物理攻撃に対する耐久力も対処方法もいずれもない。サンドゴーレムに近づかれれば、やられてしまう恐れが十分にある。今も地術使いのミランダが負傷してしまった。敵があらゆる方向から出現するため、戦いながら前衛と後衛のポジションを維持するのが難しいのだ。もうこれは、臨機応変にリーダーが指示を出すほかない。
しかし、それも1時間以上同じ状況が続くと、疲労が限界に近くなってきた。とにかく倒すのが大変なのだ。切っても叩いても再生するサンドゴーレム。核を破壊すれば完全に倒せることが分かっても、再生されないうちにそれに成功するのは簡単ではない。新手もどんどん来る。それも時間が経つにつれ、砂よりも砂利、礫の比率が多い、ストーンゴーレムに近いものも現れ始めている。
(そろそろ体力的にも限界だ。連携にミスが生じれば一気に崩される恐れが出てきた。)槍を突き、振り回しつつ、カーネルは決断を下さねばならない時期に来ていることを悟り始めた。と、その時セラフィーナがいないことに気付く。(そういえばいない!?いつからだ。)心中の動揺を抑え込みながら周囲を伺ったその時、島の中央の岡に続く道からセラフィーナが駆け下りてくるのを見つけた。大事にならなくてよかった。
「お主、どこに言っておった?」
「すまん、間隙をぬって奥地を目指したんだが・・・。」
セラフィーナは合流しながら呼びかけに答えたが、そこで一瞬言葉に詰まった。
「ゴーレムどもに阻まれて、結局引き返した。」
「無茶をしよる!単独行動は命を落とすぞ。慎んでもらわねば困る!!」
「す、すまない。」
セラフィーナは単独行動を謝罪しなければならなかった。リーダーとしてカーネルの反応は致し方ないだろう。一方で、セラフィーナは館のことを話すことをやめたのだった。リアムが居ることが知れれば、国は明確な目的を持って彼を連行するための施策をとることになるだろう。セラフィーナはもうこれ以上ここをつつく気になれなかった。
リアムが自らの行為で暗黒大事変を引き起こしたと知った今、もう二度とあの時のようなことは起きはしないだろう。このような魔物がいる事態が分かったため、調査隊はこれからも何回か派遣されるかもしれない。しかし、多分このゴーレム集団を攻略することは容易ではない。加えて首謀者が不明なまま、今後も何事も起きないならば、わざわざ危険を冒してこの島を攻略しようという動きはいずれ弱まるだろう。恐らくは立ち入り禁止の危険区域として封印、遠巻きに様子を観察し警戒を続ける、という対応に落ち着くと考えられる。
もうそれでいいじゃないか─────
それが今のセラフィーナの心持ちだ。これ以上の戦いに意味がないと確信したセラフィーナはカーネルに呼び掛ける。
「だが、カーネル将軍!これ以上この戦いを続けるのは危険だ。敵の戦力に終わりが見えないが、こちらの体力の限界はもう間近に迫っている。」
「クッ、何を弱気な・・・とはいえんな。わが精鋭がまたしても撤退せねばならぬか。・・・ジャンヌ殿!」
「ち、力になれず申し訳ないが、セラフィーナ殿の提案が妥当と思います。」
天才魔術師と謳われたジャンヌも、無尽蔵に襲いかかるサンドゴーレムの集団を前に、悔しさをにじませながら撤退案を支持した。
「皆の者!これ以上この戦いを続けることは不可能じゃ。撤退!!撤退じゃ!!!隊列を崩さず徐々に戦線を下げよ!」
戦場における「退却」は容易なことではない。だが、カーネルの指揮であれば、何とかなるだろう。今ならまだ体力も続くはずだ。時間をかけながら彼らはもと来た道を徐々に引き返し始めた。
しんがりをつとめながら、セラフィーナは館のことを考える。結局心配していた少女リリカは、心配する必要もない暮らしぶりだった。前にここに来た時と全く同じ結果になってしまった。セラフィーナが心配したとおり、一つ屋根の下でリアムと暮らすリリカは、やはり清い関係ではなく、男の肉欲の餌食になっていた。・・・ようなのだが、全然そういう感じではなく、リリカの方がそれを楽しんでいる風であった。
まさか、そういうふうになっているとは想像しなかった。「ご主人様はリリカほど交尾が好きじゃないから(ry」などと、一体どういうことだ?突っ込みどころがありすぎる。交尾?なんていう言葉遣いだ!教えたのは多分あの男だろう。しかもあんな年端も行かない少女を犯してそんな言葉を教え込んで・・・、鬼畜以外の何物でもない!!・・・のにそのリアムにもっと交尾をしてもらおうと、私に・・・私に「大人の女の人はどういうふうにしているのか」なんて聞くとか、ほんとありえない!
か、身体の相性が良かったのか?たぶんいっぱい優しくされているんだろう。あんなイケメンと今までもこれからも二人きりでキャッキャウフフを・・・、うらやまけしからん!私はここ数年、彼氏もいないってのに!!ギルドの男どもなんか、むさくるしい汗臭い、女を穴と膨らみのある生き物というふうにしか見ていない獣ばかりで・・・。なのにあの娘は、性奴隷とか言って、なのに、何かむしろうらやましい生活をして・・・、あかん、とうとううらやましいと思ってしまった。もう、考えれば考えるほど、こっちがみじめになる。
剣を振るい、矢を放ち、しながらセラフィーナはこの鬱屈した気持ちを振り払うかのように奮闘した。
「爆発してしまえ!!」
「ど、どうした!?セラフィーナ殿!」
思わず口をついて出てしまった自分の叫び声に、あわてて口を紡ぐセラフィーナ。カーネルが困惑する中、ジャンヌが「爆発」を指示と捉えてファイアーエクスプロージョンを放った。追いすがろうとする海浜のマッドハンドを炎が蹴散らしたが、(そういう意味じゃなくて)とセラフィーナは心中で思った。
「コネリー!ミランダが傷を負った。下がらせろ!魔術師に敵を近づけてはならん!」
自らも攻防の渦中に身を置きながら、カーネルは必死に周囲の状況に気を配り、部下に指示を飛ばす。ともかく魔術師団にサンドゴーレムどもを近づけぬように騎士たちが盾にならなければならない。サンドゴーレムはその見た目の巨体通り、攻撃は重いが動きは鈍い。近接戦闘の訓練を充分に積んでいる騎士たちなら攻防で後れを取ることはない。
だが、魔術師たちは別だ。彼女たちは魔術による遠隔攻撃は強力だが、物理攻撃に対する耐久力も対処方法もいずれもない。サンドゴーレムに近づかれれば、やられてしまう恐れが十分にある。今も地術使いのミランダが負傷してしまった。敵があらゆる方向から出現するため、戦いながら前衛と後衛のポジションを維持するのが難しいのだ。もうこれは、臨機応変にリーダーが指示を出すほかない。
しかし、それも1時間以上同じ状況が続くと、疲労が限界に近くなってきた。とにかく倒すのが大変なのだ。切っても叩いても再生するサンドゴーレム。核を破壊すれば完全に倒せることが分かっても、再生されないうちにそれに成功するのは簡単ではない。新手もどんどん来る。それも時間が経つにつれ、砂よりも砂利、礫の比率が多い、ストーンゴーレムに近いものも現れ始めている。
(そろそろ体力的にも限界だ。連携にミスが生じれば一気に崩される恐れが出てきた。)槍を突き、振り回しつつ、カーネルは決断を下さねばならない時期に来ていることを悟り始めた。と、その時セラフィーナがいないことに気付く。(そういえばいない!?いつからだ。)心中の動揺を抑え込みながら周囲を伺ったその時、島の中央の岡に続く道からセラフィーナが駆け下りてくるのを見つけた。大事にならなくてよかった。
「お主、どこに言っておった?」
「すまん、間隙をぬって奥地を目指したんだが・・・。」
セラフィーナは合流しながら呼びかけに答えたが、そこで一瞬言葉に詰まった。
「ゴーレムどもに阻まれて、結局引き返した。」
「無茶をしよる!単独行動は命を落とすぞ。慎んでもらわねば困る!!」
「す、すまない。」
セラフィーナは単独行動を謝罪しなければならなかった。リーダーとしてカーネルの反応は致し方ないだろう。一方で、セラフィーナは館のことを話すことをやめたのだった。リアムが居ることが知れれば、国は明確な目的を持って彼を連行するための施策をとることになるだろう。セラフィーナはもうこれ以上ここをつつく気になれなかった。
リアムが自らの行為で暗黒大事変を引き起こしたと知った今、もう二度とあの時のようなことは起きはしないだろう。このような魔物がいる事態が分かったため、調査隊はこれからも何回か派遣されるかもしれない。しかし、多分このゴーレム集団を攻略することは容易ではない。加えて首謀者が不明なまま、今後も何事も起きないならば、わざわざ危険を冒してこの島を攻略しようという動きはいずれ弱まるだろう。恐らくは立ち入り禁止の危険区域として封印、遠巻きに様子を観察し警戒を続ける、という対応に落ち着くと考えられる。
もうそれでいいじゃないか─────
それが今のセラフィーナの心持ちだ。これ以上の戦いに意味がないと確信したセラフィーナはカーネルに呼び掛ける。
「だが、カーネル将軍!これ以上この戦いを続けるのは危険だ。敵の戦力に終わりが見えないが、こちらの体力の限界はもう間近に迫っている。」
「クッ、何を弱気な・・・とはいえんな。わが精鋭がまたしても撤退せねばならぬか。・・・ジャンヌ殿!」
「ち、力になれず申し訳ないが、セラフィーナ殿の提案が妥当と思います。」
天才魔術師と謳われたジャンヌも、無尽蔵に襲いかかるサンドゴーレムの集団を前に、悔しさをにじませながら撤退案を支持した。
「皆の者!これ以上この戦いを続けることは不可能じゃ。撤退!!撤退じゃ!!!隊列を崩さず徐々に戦線を下げよ!」
戦場における「退却」は容易なことではない。だが、カーネルの指揮であれば、何とかなるだろう。今ならまだ体力も続くはずだ。時間をかけながら彼らはもと来た道を徐々に引き返し始めた。
しんがりをつとめながら、セラフィーナは館のことを考える。結局心配していた少女リリカは、心配する必要もない暮らしぶりだった。前にここに来た時と全く同じ結果になってしまった。セラフィーナが心配したとおり、一つ屋根の下でリアムと暮らすリリカは、やはり清い関係ではなく、男の肉欲の餌食になっていた。・・・ようなのだが、全然そういう感じではなく、リリカの方がそれを楽しんでいる風であった。
まさか、そういうふうになっているとは想像しなかった。「ご主人様はリリカほど交尾が好きじゃないから(ry」などと、一体どういうことだ?突っ込みどころがありすぎる。交尾?なんていう言葉遣いだ!教えたのは多分あの男だろう。しかもあんな年端も行かない少女を犯してそんな言葉を教え込んで・・・、鬼畜以外の何物でもない!!・・・のにそのリアムにもっと交尾をしてもらおうと、私に・・・私に「大人の女の人はどういうふうにしているのか」なんて聞くとか、ほんとありえない!
か、身体の相性が良かったのか?たぶんいっぱい優しくされているんだろう。あんなイケメンと今までもこれからも二人きりでキャッキャウフフを・・・、うらやまけしからん!私はここ数年、彼氏もいないってのに!!ギルドの男どもなんか、むさくるしい汗臭い、女を穴と膨らみのある生き物というふうにしか見ていない獣ばかりで・・・。なのにあの娘は、性奴隷とか言って、なのに、何かむしろうらやましい生活をして・・・、あかん、とうとううらやましいと思ってしまった。もう、考えれば考えるほど、こっちがみじめになる。
剣を振るい、矢を放ち、しながらセラフィーナはこの鬱屈した気持ちを振り払うかのように奮闘した。
「爆発してしまえ!!」
「ど、どうした!?セラフィーナ殿!」
思わず口をついて出てしまった自分の叫び声に、あわてて口を紡ぐセラフィーナ。カーネルが困惑する中、ジャンヌが「爆発」を指示と捉えてファイアーエクスプロージョンを放った。追いすがろうとする海浜のマッドハンドを炎が蹴散らしたが、(そういう意味じゃなくて)とセラフィーナは心中で思った。
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