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第5章 結界と侵入者
第49話 ★備え
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船を手配し、二日後にはアロン島に侵入する。ギルドからの密書に目を通し、アーネスト神父はほくそ笑んだ。ようし、これであの憎らしいリアムを私の前に引きずり出せる。アーネスト神父は、リアムが大嫌いだ。
顔が嫌いだ。イケメンの甘いマスクで女によくモテる。立ち居ぶるまいが嫌いだ。優雅なしぐさがキザったらしい。傲慢なところは大嫌いだ。リアムは私の肩書きに対し、敬意を表さなかった。私は修道士長だ。なのに私が、回復魔術が得意でないという事を知ると、汚いものを見る目で私を見るようになった。
そう、もっとも気に入らないのは、この国の修道士の本分である治療魔術が優れすぎていることだ。少し自分が優れているからと言って、この私を丁重に扱わないのだ。私は修道士長だぞ!大体、奴のせいで怪我だけ治せば感謝された修道院が、他の病気まで治療しないといけなくなったのだ。治せるのは奴だけだったのに、勝手に姿をくらましやがって。おかげでそれからの修道院の評判は散々だ。そして、叱責の矛先は長である私に向かってくるのだ。何だって、先代の修道士長はあんな男を院に引き入れたのか。
愚にもつかない憎しみだ。イケメンで女にモテるのを羨ましく思うのは分からないでもない。しかし、自分を尊敬しないことに怒り、回復魔術が優れていることに怒り、彼が怪我だけでなく病の治療をも手がけたことに怒るのは、アーネストの身勝手な事情でしかない。
それにアーネストは、蔑みの目で見られたことに憤慨しているが、徴税人時代に汚職がらみで身を退いた、明らかに信仰心も感じられない男で、本来修道士が習得しているべき回復魔術もろくに使えないのに、なぜか修道士長にのし上がった男をリアムが敬愛するはずもない。・・・のだが、不思議なことに本人はそうは思わないのだ。
だが、この憤懣ももうじき晴らす時がくるだろう。冒険者ギルドの腕利きを差し向けるのだ。戦闘力のないヒーラーが抗うすべなどないだろう。奴をひっとらえたら、身体の自由を奪ったうえで拷問し、奴の持っている回復魔術の技術をすべて吐かせてやる。(ただし、アーネストは聞いたところで理解できないので、術を覚えるのは部下の仕事。)
そのあとは、そうだな・・・、ガキの性奴隷を買っているって言ったっけ、よく調教できていたら俺のものにしよう。修道士が奴隷を買うなど社会的に不可能だが、咎人の所持品を水面下でピンハネするのは、やりようがある。まあ、もう生きていないかもしれんがな。グヘ、グヘヘ、あー楽しみだ。
リアムは、昨日解説できなかった新しい魔道具の説明をリリカにしている。
「いろいろ方法を考えたんだがな、やはり島全体で敵に侵入を許さない防壁を張るのはあきらめたんだ。」
「魔石を使っても持たないんですよね。」
「一つじゃ全然足りないし、いろんなところに設置したとしても、すぐに魔力切れになるから、しょっちゅう取り換えに行かないといけない。不便すぎてちょっと無理だなと思ったんだ。で、考えたのがこれだ。」
それは、リリカのペンダントの魔石のように、魔石に特殊な刻印が彫り込まれている。
「これも呪印ですか?」
「ああ、魔石を中心に一定の範囲に侵入したものの情報を術師に知らせる魔道具にした。とはいっても鳥や獣やいろんなものが出たり入ったりするだろうから、特に人型のものの出入りだけ、信号を送るように調整した。」
「・・・だれがその信号をキャッチできるんですか?」
「うん、いい質問だね。これを持っていればいい。」
リアムが別の魔道具を取り出した。小さな魔石がブローチのようなアクセサリーになっている。
「こいつを持っていれば、そうだな、こっちのは”発信機”とでも呼ぶか。発信機の信号を受け取り、誰かが島に入ったかどうか、分かる仕組みだ。1個でかなり広い範囲を網羅できる。アロン島なら、沿岸部に6ヶ所ほどセットすれば、どこから人が入ってきても把握できるようになる。」
リリカは、少し考えてから口を開いた。
「・・・つまり、島には誰でも入れてしまうんですね。」
「そういうことだ。防備を固めるよりは、こちらが先に敵の位置を察知(索敵)できる体制を敷く方法にした。」
「・・・ということは、その人たちと戦わないといけないんですね。」
「いろいろ考えたがな、明確に俺たちを狙って島に入ってくる連中を、完全に排除することは、今の俺の技術ではできない。むしろ、位置を確認してさっさと攻撃魔術で片を付ける方が現実的と考えたんだ。」
「ご主人様、イグニスヒールで戦うんですか?」
「まあ、あれでも一応戦えるが、無駄に魔力を与えるからな。俺はほかにも攻撃魔術をいくつか習得している。」
「リリカもファイアーボールで頑張ります。」
「無理するなよ。お前はなるべくマジックシールドを使いながら、俺のそばを離れないことだ。」
一通り説明を終えると、リアムはリリカを連れて、島の沿岸部を回り、「発信機」をセットして回った。小さな島とはいえ、島の外周を一周するのはかなり時間がかかった。家に着いたのは、夜8時を回った頃。すっかり遅くなってしまった。
時間があれば、リリカのファイアーボールの練習をと思っていたが、もう全然そんな感じにはならなかった。
「ふぅ。すっかり夜になっちまったな。」
「大変でしたね。リリカ、もうくたくたです。」
「とりあえず、何か食べよう。だが、夕食づくりがしんどいな。」
「ご主人様がよければ、あり合わせで何とかしますよ。お昼のスープが残っているので、それと燻製肉とパンとかでどうですか?」
「ああ、リリカも疲れてるだろう?そうしよう。」
自然に自分のことを気遣ってくれる言葉をかけてもらえ、リリカはそれだけでも嬉しくなる。温めるだけにしようかなと思っていたが・・・、
「あ、じゃちょっとスープの具を足して味を調えますね。」
「温めるだけでいいぞ?ま、やってくれるんなら、その間に俺が肉とパンの準備するよ。」
簡単な夕食を済ませ、洗い物を終えるともう10時になりそうな時間。二人が決めている就寝時刻は11時。
「ま、今日は遅いし、お風呂に入って寝ような。今日の魔導書のお勉強はお休みにしよう。」
なんかリリカが仏頂面だ。
「時間ないですもんね。ご褒美貰えないの残念です。ねぇ、ご主人様、今日は魔道具の設置頑張ったんで、そのご褒美欲しいです。」
「・・・何でもご褒美がないと動かないってのは、感心しないけどな。」
「だって・・・。あの、リリカ何でも一生懸命しますんで、ご褒美とかにしないで、交尾の時間も一日の中に作りませんかぁ?」
リリカは、どうしてもリアムとエッチしたいらしく、とうとう身もふたもないルール変更を提案しだすのだった。
------------
そろそろ完結を意識し始めてます。
顔が嫌いだ。イケメンの甘いマスクで女によくモテる。立ち居ぶるまいが嫌いだ。優雅なしぐさがキザったらしい。傲慢なところは大嫌いだ。リアムは私の肩書きに対し、敬意を表さなかった。私は修道士長だ。なのに私が、回復魔術が得意でないという事を知ると、汚いものを見る目で私を見るようになった。
そう、もっとも気に入らないのは、この国の修道士の本分である治療魔術が優れすぎていることだ。少し自分が優れているからと言って、この私を丁重に扱わないのだ。私は修道士長だぞ!大体、奴のせいで怪我だけ治せば感謝された修道院が、他の病気まで治療しないといけなくなったのだ。治せるのは奴だけだったのに、勝手に姿をくらましやがって。おかげでそれからの修道院の評判は散々だ。そして、叱責の矛先は長である私に向かってくるのだ。何だって、先代の修道士長はあんな男を院に引き入れたのか。
愚にもつかない憎しみだ。イケメンで女にモテるのを羨ましく思うのは分からないでもない。しかし、自分を尊敬しないことに怒り、回復魔術が優れていることに怒り、彼が怪我だけでなく病の治療をも手がけたことに怒るのは、アーネストの身勝手な事情でしかない。
それにアーネストは、蔑みの目で見られたことに憤慨しているが、徴税人時代に汚職がらみで身を退いた、明らかに信仰心も感じられない男で、本来修道士が習得しているべき回復魔術もろくに使えないのに、なぜか修道士長にのし上がった男をリアムが敬愛するはずもない。・・・のだが、不思議なことに本人はそうは思わないのだ。
だが、この憤懣ももうじき晴らす時がくるだろう。冒険者ギルドの腕利きを差し向けるのだ。戦闘力のないヒーラーが抗うすべなどないだろう。奴をひっとらえたら、身体の自由を奪ったうえで拷問し、奴の持っている回復魔術の技術をすべて吐かせてやる。(ただし、アーネストは聞いたところで理解できないので、術を覚えるのは部下の仕事。)
そのあとは、そうだな・・・、ガキの性奴隷を買っているって言ったっけ、よく調教できていたら俺のものにしよう。修道士が奴隷を買うなど社会的に不可能だが、咎人の所持品を水面下でピンハネするのは、やりようがある。まあ、もう生きていないかもしれんがな。グヘ、グヘヘ、あー楽しみだ。
リアムは、昨日解説できなかった新しい魔道具の説明をリリカにしている。
「いろいろ方法を考えたんだがな、やはり島全体で敵に侵入を許さない防壁を張るのはあきらめたんだ。」
「魔石を使っても持たないんですよね。」
「一つじゃ全然足りないし、いろんなところに設置したとしても、すぐに魔力切れになるから、しょっちゅう取り換えに行かないといけない。不便すぎてちょっと無理だなと思ったんだ。で、考えたのがこれだ。」
それは、リリカのペンダントの魔石のように、魔石に特殊な刻印が彫り込まれている。
「これも呪印ですか?」
「ああ、魔石を中心に一定の範囲に侵入したものの情報を術師に知らせる魔道具にした。とはいっても鳥や獣やいろんなものが出たり入ったりするだろうから、特に人型のものの出入りだけ、信号を送るように調整した。」
「・・・だれがその信号をキャッチできるんですか?」
「うん、いい質問だね。これを持っていればいい。」
リアムが別の魔道具を取り出した。小さな魔石がブローチのようなアクセサリーになっている。
「こいつを持っていれば、そうだな、こっちのは”発信機”とでも呼ぶか。発信機の信号を受け取り、誰かが島に入ったかどうか、分かる仕組みだ。1個でかなり広い範囲を網羅できる。アロン島なら、沿岸部に6ヶ所ほどセットすれば、どこから人が入ってきても把握できるようになる。」
リリカは、少し考えてから口を開いた。
「・・・つまり、島には誰でも入れてしまうんですね。」
「そういうことだ。防備を固めるよりは、こちらが先に敵の位置を察知(索敵)できる体制を敷く方法にした。」
「・・・ということは、その人たちと戦わないといけないんですね。」
「いろいろ考えたがな、明確に俺たちを狙って島に入ってくる連中を、完全に排除することは、今の俺の技術ではできない。むしろ、位置を確認してさっさと攻撃魔術で片を付ける方が現実的と考えたんだ。」
「ご主人様、イグニスヒールで戦うんですか?」
「まあ、あれでも一応戦えるが、無駄に魔力を与えるからな。俺はほかにも攻撃魔術をいくつか習得している。」
「リリカもファイアーボールで頑張ります。」
「無理するなよ。お前はなるべくマジックシールドを使いながら、俺のそばを離れないことだ。」
一通り説明を終えると、リアムはリリカを連れて、島の沿岸部を回り、「発信機」をセットして回った。小さな島とはいえ、島の外周を一周するのはかなり時間がかかった。家に着いたのは、夜8時を回った頃。すっかり遅くなってしまった。
時間があれば、リリカのファイアーボールの練習をと思っていたが、もう全然そんな感じにはならなかった。
「ふぅ。すっかり夜になっちまったな。」
「大変でしたね。リリカ、もうくたくたです。」
「とりあえず、何か食べよう。だが、夕食づくりがしんどいな。」
「ご主人様がよければ、あり合わせで何とかしますよ。お昼のスープが残っているので、それと燻製肉とパンとかでどうですか?」
「ああ、リリカも疲れてるだろう?そうしよう。」
自然に自分のことを気遣ってくれる言葉をかけてもらえ、リリカはそれだけでも嬉しくなる。温めるだけにしようかなと思っていたが・・・、
「あ、じゃちょっとスープの具を足して味を調えますね。」
「温めるだけでいいぞ?ま、やってくれるんなら、その間に俺が肉とパンの準備するよ。」
簡単な夕食を済ませ、洗い物を終えるともう10時になりそうな時間。二人が決めている就寝時刻は11時。
「ま、今日は遅いし、お風呂に入って寝ような。今日の魔導書のお勉強はお休みにしよう。」
なんかリリカが仏頂面だ。
「時間ないですもんね。ご褒美貰えないの残念です。ねぇ、ご主人様、今日は魔道具の設置頑張ったんで、そのご褒美欲しいです。」
「・・・何でもご褒美がないと動かないってのは、感心しないけどな。」
「だって・・・。あの、リリカ何でも一生懸命しますんで、ご褒美とかにしないで、交尾の時間も一日の中に作りませんかぁ?」
リリカは、どうしてもリアムとエッチしたいらしく、とうとう身もふたもないルール変更を提案しだすのだった。
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そろそろ完結を意識し始めてます。
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