75 / 123
第2部 第1章 アロン島の物語再び
第9話 ★広がる波紋
しおりを挟む
魔術演習でリアムが魔力を暴走させてから数日が過ぎた。アロン島のリアムとリリカはもう普通に生活している。しかし、リアムは少し今後を危惧している。
(アロン島にまた侵入者が現れるかもしれない・・・。)
リアムが召喚した魔界の黒炎は天空に広がり、昼の空を数時間の間、漆黒の闇に塗り替えた。島から空を見上げる以外に状況を知りえないリアムには、その範囲がどの程度の広さだったかは把握できなかったが、間違いなく港町エルチェリータには影響があったであろう。
アロン島の上空から闇が広がっていく様子を誰も目撃しない、ということは考えにくい。となれば、その原因を探るべく、この島に冒険者や調査隊を差し向けられることは充分考えられる。
以前アロン島にはアーネスト神父によって、冒険者を送り込まれている。あの男が今回の事件を口実に再び何かを企てることも充分考えられる。リアムはどうやって身を守ろうか、場合によってはついに島を出ないといけない事態になることも考え始めていた。
しかし、ことはその程度ではすんでいなかった。少なくともエルチェリータには影響があったろう、というリアムの想像は、実はかなり甘く、リアムの放った暗黒の炎は、実は全世界をくまなく闇に陥れていたのだった。
世界は各地で大混乱に見舞われた。電灯のない世界なので、日の光が遮られれば、たちどころに真っ暗闇に包まれることになる。灯りをともそうとしても、夜の闇ではないため、月明かりほどの手がかりすらもない。そんな状況が世界のいたるところで起きた。
灯りをともそうとして失敗し、火事になった事例、物損事故・人身事故は数知れず。窃盗や暴動まで各地で起き、日暮れにようやく闇が晴れた頃には、国の権力基盤が傾きかけていたほどだった。
それは、バルティス王国だけでなく、黒魔術の総本山であるフォルセル王国でも同様であった。ただし、こちらは発光系の魔術によって、バルティス王国よりは混乱の連鎖を抑えることができたようだ。
「陛下──。アーネスト神父が参りました。」
「通せ。」
何とか秩序を取り戻しつつあるものの、バルティス王国の王宮は今も紛糾している。そんな折、修道士長のアーネストが暗黒化の事件の原因について心当たりがあると、王に謁見を求めたのだった。
「本来ならばお目通りもかなわぬ身分の身。陛下の寛容なお心に感謝いたします。」
「御託はいい。先日の暗黒事変(バルティス王国ではこう呼ばれるようになっていた。)の原因を知っているといったな。申してみろ。」
「は。実はわが修道院の中で、かつて黒魔術に手を染め、破門したものが以前アロン島に落ち延びたという情報がございます。」
実際には破門になる前にリアムが自ら逐電したのだが、大体は合っている。アーネストは続けた。
「その者を捕らえようと一度冒険者を3名送り込んだのですが失敗に終わり、その後対処に窮しておりました。」
「そのアロン島に逃れた者と言うのは何者だ?」
「リアム・アシュリー・・・」
「!あの治療魔術で名を馳せたリアムか?」
「・・・左様にございます。」
「むう。。だが、本当にリアムがあの暗黒事変を起こしたといえるのか?そもそもアロン島にいるというのは確かなのだな。冒険者3名は何故リアムの捕獲に失敗したのだ?」
「奴があの島にいるのは間違いありません!」
実は3人の冒険者は帰還後、失敗したクエストについて一言も語ろうとしなかった。ただ、黙って失敗の賠償を支払い、クエスト未了のまま去っていったのだ。
事実は間違っていないが、アーネストの言葉は嘘である。彼はリアムを捕まえ懲らしめたい一心であった。
「しかし、治療魔術師が、それも伝説的な技術を持ったあの男が、このような禍々しい術を使うものなのだろうか・・・。よい、何にしても他に有力な情報もない。そちの進言を汲んでやる。」
「ははっ。何卒あやつめの成敗をお願いいたします。」
「だが、そのような咎人を輩出したのは修道院。修道士長のそちであることも忘れてはおるまいな?」
「え?」
「この進言が正しければ、幾分か恩赦を考えぬでもないが、相応の責任は取ってもらうぞ。」
ッッ──
アーネストの頬を冷や汗が伝った。王は決して愚かではなかった。汚い方法で修道士長にのし上がったアーネストである。彼はその後ろ暗い部分をうまく隠しおおせているつもりであったが、それなりの目で情報をあたれば、悪事の痕跡は残るものである。
リアム憎しで、盲進していたアーネストは墓穴を掘る形となった。
しかし、それはそれ。とうとうアロン島のリアムに新たな危機が訪れようとしている。
「カーネル!」
「ここに!」
「聖騎士隊を一部隊預ける。アロン島の調査をまかせる。妖しい人物がいればひっ捕らえよ!」
「御意!」
─────────
これで第1章を終わりにします。
主人公が出なかった。。
(アロン島にまた侵入者が現れるかもしれない・・・。)
リアムが召喚した魔界の黒炎は天空に広がり、昼の空を数時間の間、漆黒の闇に塗り替えた。島から空を見上げる以外に状況を知りえないリアムには、その範囲がどの程度の広さだったかは把握できなかったが、間違いなく港町エルチェリータには影響があったであろう。
アロン島の上空から闇が広がっていく様子を誰も目撃しない、ということは考えにくい。となれば、その原因を探るべく、この島に冒険者や調査隊を差し向けられることは充分考えられる。
以前アロン島にはアーネスト神父によって、冒険者を送り込まれている。あの男が今回の事件を口実に再び何かを企てることも充分考えられる。リアムはどうやって身を守ろうか、場合によってはついに島を出ないといけない事態になることも考え始めていた。
しかし、ことはその程度ではすんでいなかった。少なくともエルチェリータには影響があったろう、というリアムの想像は、実はかなり甘く、リアムの放った暗黒の炎は、実は全世界をくまなく闇に陥れていたのだった。
世界は各地で大混乱に見舞われた。電灯のない世界なので、日の光が遮られれば、たちどころに真っ暗闇に包まれることになる。灯りをともそうとしても、夜の闇ではないため、月明かりほどの手がかりすらもない。そんな状況が世界のいたるところで起きた。
灯りをともそうとして失敗し、火事になった事例、物損事故・人身事故は数知れず。窃盗や暴動まで各地で起き、日暮れにようやく闇が晴れた頃には、国の権力基盤が傾きかけていたほどだった。
それは、バルティス王国だけでなく、黒魔術の総本山であるフォルセル王国でも同様であった。ただし、こちらは発光系の魔術によって、バルティス王国よりは混乱の連鎖を抑えることができたようだ。
「陛下──。アーネスト神父が参りました。」
「通せ。」
何とか秩序を取り戻しつつあるものの、バルティス王国の王宮は今も紛糾している。そんな折、修道士長のアーネストが暗黒化の事件の原因について心当たりがあると、王に謁見を求めたのだった。
「本来ならばお目通りもかなわぬ身分の身。陛下の寛容なお心に感謝いたします。」
「御託はいい。先日の暗黒事変(バルティス王国ではこう呼ばれるようになっていた。)の原因を知っているといったな。申してみろ。」
「は。実はわが修道院の中で、かつて黒魔術に手を染め、破門したものが以前アロン島に落ち延びたという情報がございます。」
実際には破門になる前にリアムが自ら逐電したのだが、大体は合っている。アーネストは続けた。
「その者を捕らえようと一度冒険者を3名送り込んだのですが失敗に終わり、その後対処に窮しておりました。」
「そのアロン島に逃れた者と言うのは何者だ?」
「リアム・アシュリー・・・」
「!あの治療魔術で名を馳せたリアムか?」
「・・・左様にございます。」
「むう。。だが、本当にリアムがあの暗黒事変を起こしたといえるのか?そもそもアロン島にいるというのは確かなのだな。冒険者3名は何故リアムの捕獲に失敗したのだ?」
「奴があの島にいるのは間違いありません!」
実は3人の冒険者は帰還後、失敗したクエストについて一言も語ろうとしなかった。ただ、黙って失敗の賠償を支払い、クエスト未了のまま去っていったのだ。
事実は間違っていないが、アーネストの言葉は嘘である。彼はリアムを捕まえ懲らしめたい一心であった。
「しかし、治療魔術師が、それも伝説的な技術を持ったあの男が、このような禍々しい術を使うものなのだろうか・・・。よい、何にしても他に有力な情報もない。そちの進言を汲んでやる。」
「ははっ。何卒あやつめの成敗をお願いいたします。」
「だが、そのような咎人を輩出したのは修道院。修道士長のそちであることも忘れてはおるまいな?」
「え?」
「この進言が正しければ、幾分か恩赦を考えぬでもないが、相応の責任は取ってもらうぞ。」
ッッ──
アーネストの頬を冷や汗が伝った。王は決して愚かではなかった。汚い方法で修道士長にのし上がったアーネストである。彼はその後ろ暗い部分をうまく隠しおおせているつもりであったが、それなりの目で情報をあたれば、悪事の痕跡は残るものである。
リアム憎しで、盲進していたアーネストは墓穴を掘る形となった。
しかし、それはそれ。とうとうアロン島のリアムに新たな危機が訪れようとしている。
「カーネル!」
「ここに!」
「聖騎士隊を一部隊預ける。アロン島の調査をまかせる。妖しい人物がいればひっ捕らえよ!」
「御意!」
─────────
これで第1章を終わりにします。
主人公が出なかった。。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる