ロリストーカー 【百合】

わまり

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90 ハツヒノデの怪

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「うわこれ重っ」
リュックを背負うと、ズシリと後ろへ重量がかかる。
これ椅子いらないわよね、シートでいいかしら?いらなそうなものをどけると、少し軽くなった。時計は3時45分、もう出版しないと。

眠気覚ましに目薬をして、家を出る。
「寒っ」
氷を肌に当てられたような寒さで、マフラーを目元まで上げる。外はまだ夜のように暗かったが、静けさとマンションのあかりの少なさからは朝を感じる。まだ人は寝てるのだろうか、それとも起きてるのだろうか。
基本ここの住民は近くの山の上で見るので、そこはとても混雑する。そのためキー子は遠い川を指定したのだが、この寒さだと混雑していた方がいい気もしてくる。

山だと明かりも付いてるし、ちゃんと見たいなら川の土手や畑の真ん中などの真っ暗な場所がいいはず。しかしほんとに寒い…、あの山だとお汁粉が出るって聞いたぞ?


公園には既に佐々木さんがいて、肩を震わせながらベンチで縮こまっていた。
「大丈夫?待たせたかしら」
そばへ行って声を掛けると、佐々木さんはこちらを向いて「だ、大丈夫です」と言った。

「ほんとに?」
そう言ってカイロを差し出す。
「これ使って」

「ありがとうございます…」
カイロを受け取って頬に当てた。

「これから結構歩くし温まると思うけど、具合悪くなったら言ってね」

「はい、ありがとうございます」
そう言って佐々木さんは立ち上がる。
「じゃあ行きます」


公園を出てから住宅街を抜けると、奥まで真っ暗な畑が広がる。どこを見ても一つとして街灯はない。
見渡すと、少し遠いが道路を見つけた。オレンジ色の街灯が数メートルおきにたっている。ここから行こうか。

後ろを見ると佐々木さんが少し遅れて歩いていた。私は立ち止まる。
「大丈夫?休憩しようか」

「はい、ごめんなさい…」
近くのベンチまで歩いて行き、腰掛ける。
佐々木さんは息を整えながら湯気のたつお茶を飲んだ。

「これから少し歩いたら横道に出るんだけど」「そこから全く街灯ないのよね」
この道路は土手を横断する形で立てられているので、途中曲がって土手の上を進まなくてはならない。
「ライトはある?」

「はい、ここに」
そう言って鞄から大きめの懐中電灯を取り出す。
「あ、もう大丈夫です」

「わかった、ここから長いからまた休憩したくなったら遠慮なくね」
私もライトを取り出してポケットに入れ、歩き始める。

少しすると横に道ができ、その先に明かりは見えなかった。東の空が少し明るいので、全く見えないことは無い。
奥にもう一つ橋があるが、それは土手に繋がっていない遠くの橋だ。
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