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第3章 獣王国編

第76話 棘の城と棘姫@

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自称、善良な心の化身コラソンに案内されて城の中に入ると全て棘で作られていた。
床も壁も何もかもだ。
城と言っても二階建てで、二階の中心に棘で出来たベッドに横たわっているのが解るが寝ている部分にはトゲが無い。
コラソンが獣人の子供に変身して囚われた獣王の姫は、当初コラソンから説明されたのだが聞き入れてもらえず煩いから眠らせてあるらしい。
そして仮眠状態で直接脳に念話したのだと言う。

「お前が連れ去ったのは何故だ?」
エルヴィーノは素朴な疑問を聞いてみた。

「ハイ、棘王を倒せる勇者を見つけたかったからです」
「なんだと! じゃ何であんな棘の森が有る?」
「ハイ、あの程度の棘を越えられないような者には用が有りませんから」
「あの程度でかなりの者が死んだらしいぞ」
「それは仕方ありません」
「仕方ないで済むのか?」
「勿論です。棘王が覚醒すればこの大陸は棘だらけになるでしょうねぇ」
エルヴィーノは絶句した。

「棘王は寝てんのか?」
「ハイ、そうです”寝ています”」
「そっか・・・」

「貴方には棘姫を獣王に返して頂きますが、一週間後こちらに戻ってください」
「なんでだよ?」
「棘王と戦ってもらいます」
「はぁー?」
「だってその為にいろいろ用意したんですよ!」

森を抜けて姫も見つけて終わったと思ったのに・・・

「嫌だと言ったら?」
「覚醒した棘王がこの大陸を蹂躙するでしょう」

エルヴィーノは深いため息をついて聞いた。

「解った。だが10日は早い、せめて一ヶ月は欲しい」
「何でですか?」
「馬鹿、棘王だぜ。このままで勝てるのか?」
「・・・・」
「返事しろよ」
「解りました、一ヶ月の修行期間をあげます」

エルヴィーノはほっとした。
一ヶ月あれば説明して国ごと逃げるのも有りだと思ったからだ。

「チョット手を見せてください」
エルヴィーノは右手を差し出した。

「ここまで来た証しにコレを差し上げます」
右腕に金色に輝く棘の腕輪があった。



「何これ?」
「棘の腕輪ですよ」
「まぁ見れば何となく解るよ。それでどんな効果があるの?」
聞いたエルヴィーノは驚いた。

「その腕輪を付けている者には外敵から催眠効果や幻術効果など、全ての状態異常攻撃を無効にしてくれます」
「マジで! すっげー」

「更に2つの効果が付与されています」
「何何?」
「それは・・・魅力アップです」
「ん?」
「老若男女問わず貴方に好感を持ち、特定の異性に対しては絶大な力を発揮するでしょう」

エルヴィーノはコラソンを抱きしめて言った。
「ありがとう」と。

「で、もう1つは?」
「ハイ、棘王から逃れられません」
「ふざけんなー」

エルヴィーノは腕輪を取り外そうとしたが腕から少しもズレない。
「だって貴男が逃げたら意味ないし」
(クソッ読まれていたか・・・どうする・・・考えよう)

そして中央のベッドに寝ているのが銀髪の輝くガトー族の少女だ。
エルヴィーノは疑問に思った事をコラソンにぶつけた。


「何で裸なんだ?」
「子供は成長するでしょ? 服は邪魔なだけさ」


眠る美少女も8歳から10年も経てば18歳か・・・それにしても不憫だ。
エルヴィーノは起こす前に(本人の了承も取らず)勝手だが究極魔法スプレモ・デセオ・クアトロを使って脂肪を二か所に集めた。
(なんとか形にはなったが”あの2人”に比べると見劣りがすると思ったのは俺がおかしいのか?) 


エルヴィーノはパイ作り”職人”位になっていると自負がある。
何十年も霊峰を扱ってきたからだ。
元はC級も無かったが施術後はE級を越えそうな双丘になっている。
やはり霊峰となるにはF級でないと呼べないだろうと1人で納得していた。


コラソンがエルヴィーノを見ながら
「変わった事をしますねぇ・・・本人に聞かなくても良いのですか?」
「こう言うのは無いよりも有った方が喜ぶのさ」
「ふ~ん」
自信たっぷりのエルヴィーノに無関心のコラソン。

「で、どうやって起こすんだ?」
「それは・・・魔法で寝ている姫を起こすのはスケベな男のキスに決まっているでしょう!」
今度は自信たっぷりのコラソンだが、どうも引っかかる・・・が、エルヴィーノは躊躇なく唇を押し付けた。


「オイ」
「ハイ」
「起きないぞ」
「アレはキスですか?」
「えっ? 俺が間違っているの?」
「多分」


エルヴィーノは脳裏を過ぎった事だと思い再度唇を重ね舌を入れた。
銀髪少女の唇を押しのけ歯を強引に開き相手の舌を重ねて吸ってやった。
暫くすると、銀髪少女の両腕がエルヴィーノの首に掛かり両足で挟んできた。
グイグイと。
”アレだ”


(10年ぶりに起きたら絶頂か・・・この子も波瀾万丈だな)
と思いながら目を開けると綺麗な青い眼差しがエルヴィーノを見ていた。
どの位だろう10分程か? エルヴィーノは唇を離し、おはようと問いかける。


「ハァハァ、凄い! 貴男が私の運命の男性ですね?」


綺麗な声で聴いて来たが、エルヴィーノは答えずにコラソンを見た。
ニッコリと微笑むコラソン。
エルヴィーノは自分の上着を脱ぎ少女に着させて危険を回避する為に責任転換しようとする。

「それはお前が決めな」と言ったら棘の腕輪が光った。

「ハイ。宜しくお願いします。旦那様」
エルヴィーノはよろよろと後ろに”たじろいだ”。

するとコラソンが行事を進める。
「では儀式を始めたいと思います」
「まて、何の話だ、聞いて無いぞ! 」
「言ってないも~ん」

どこから現れたのか魔物のトレント達が準備している。
囲いを作りシーツを取り替えてエルヴィーノの着ている物を脱がし濡れた布で身体を拭きだした。
銀髪猫耳少女も同じくされて用意が出来た。

「それでは勇者様と姫様とで御世継の創生儀式を開始してください」
コラソンがそう言うと造りたての扉から出て行った。



「私は獣王ライオネル・モンドラゴンの娘でパウリナ・モンドラゴンと申します。勇者様のお名前をお聞かせください」
「え~っと初めましてエルヴィーノ・デ・モンドリアンです。宜しくお願いします。じゃ無くてさ、何これ? 罠? 君、解ってる? 今の状況!」
「ハイ、私は寝ていましたがコラソンとは思念で直接お話していましたから全て理解しています」
「なるほど、それでパウリナは助かったのに俺の女になるの?」
「違います。貴方の嫁です」

(恥らいながらそう言われてもなぁ・・・困ったぞ、マジカンベンだよ~。やっぱり事実を話して諦めて貰おう) 
エルヴィーノは決心して話したのは既に2人の嫁が居ると言う事だ。



「分かりました」
「はぁ~良かった」
「私は3番目ですね? それで構いません!」
「ハァァ! 違うだろう普通は嫌がるだろ? 怒って御和算にするとかさ?」
「私は貴方様に付いていきます」

エルヴィーノはどうしたモノか考えていたら、待ちきれないパウリナが攻撃キスをしてきた。
エルヴィーノは諦めた・・・相棒が戦闘状態に入ったからだ。



☆(11)



エルヴィーノとパウリナは簡易部屋を出るとコラソンとトレント達が拍手をして出迎えてくれた。
「何か変な感じ・・・魔物に喜ばれてるよ」
照れるパウリナ。

「それではモンドリアンさん、1か月後にお会いしましょう」
「待て、何で俺の名を知ってる? さては聞いていたな? 俺達の会話を!」
「そんな無粋な事はしませんよ、タマタマ聞こえて来ただけです」
「それを普通無粋って言うけどな」
「勉強になりました、ありがとうございます」
溜息をつくエルヴィーノは更に問いかけた。

「もう1つ。何故、姫と”こうなる様に”仕向けた?」
「それは姫の望みだったからです。僕の理由を説明したら変わりに勇者の子供を産みたいと。それが強さを求める獣人族の姫としての条件でした」

まぁ、もう”済んだ事”をとやかく言っても仕方ないが”あの淫獣2匹”をどうするか、問題はそれだ。

「じゃ!」
「あっ前日に腕輪が光りますからね。翌日に来てくださいよ」
「・・・もしかして、この腕輪、思念で会話出来るだろ!」
ギクッと聞こえそうなほど驚いたコラソン。

「そっ、そんな事は無いですよ、出来る訳ないですよ。ハハハハッ」
「もしも具合が悪くて遅れる場合は?」
「そんな時は腕輪に魔素を送り思うのです・・・ハッ!」
「じゃそうするからコラソンもそうしてくれ。無駄に光らせるなよ、悪目立ちすると面倒だから」
失言でションボリするコラソン。

「コラソン、今までありがとう」
「こちらこそ、姫様もお元気で」
別れの挨拶を済ませて2人が転移した場所は森の村だ。


パウリナには簡単に説明してあり、棘の森で仲間の2人が重傷になり宿で待っているはずだと。
既に日が暮れてお腹もペコペコだが2人の居る部屋に駆けあがる。

バンッと扉を開けると「ビックリするだろモンドリアン! 扉はノックしてから開けるべきですよ」
フォーレから御叱りを頂くとリカルドも頷く。

「お前ら大丈夫なのか?」
「えぇリカルドが先に起きてメディオ・クラール(クラールの強化版)を連発したおかげでね」
その時エルヴィーノは思い出した。

(俺ってロリから貰った、マキシモ・クラール(全回復)使えるのに忘れてた・・・まぁ使った事無かったし、あの時は夢中だったからな。黙っていよう)

「そうか良かった、本当に心配したぞ!」
「それはこっちのセリフだ。今まで何処に行ってたんだ」
エルヴィーノが安心したら親父さんが怒りだした。

「ゴメン。それより紹介したいヤツが居てさ、入れよ」

そう言って部屋に入って来たのは美しく輝く銀髪が腰まで伸びて可愛い猫耳と碧眼が神秘さを漂わせる存在。
だが連中は他の場所に釘づけだった。
エルヴィーノが嫁ならばこれを付けろと重力制御の魔法を施してある筒状の魔導具を耳に付けているので、寝て居る間に作られた特大の双丘が張り出していたからだ。


「初めましてエルヴィーノの3番目の嫁となるパウリナ・モンドラゴンです。宜しくお願いします」
「「「何んだとぉぉぉ!!!」」」
3人とも驚いた様子。

「チョット待て今何と言った?」
親父さんがいち早く聞いて来た。

「3番目の嫁となるパウリナ・モンドラゴンです」
「モ、モ、モ、モンドラゴン!」

何故かフォーレが激昂している。
「何ですか? 名前よりも3人目とはどう言う事ですか!」
「その通りですモンドリアン様、事と次第では全て報告致しますよ」
リカルドも忠告しだし、エルヴィーノがやれやれみたいにしていると親父さんがこちらを見て確認する。

「お前ぇもしかして?」
「あぁ姫さんだよ」
「「何ぃぃ!」」
フォーレとリカルドが驚いて、親父さんは”やっぱり”とエルヴィーノを見ていた。

「「「説明てくれ」」」
「えー面倒くさい」
「早く!!!」
「ハイハイ」
「転移して黒い棘を抜けて」「待て」「何さ」
「どうやって抜けたんだ?」「走った」
「違う」「まぁ良い、皆聞いてくれ」
「聞いてるからちゃんと説明しろ」
「この際棘の森はどうでもいい」「良く無い」
「分かったから聞け」
「問題なのは森を抜けた後に城があって姫は返してくれたが1か月後に棘王と戦う事になった」

「「「何だとぉぉぉ!」」」

「だから明日王都へ行って姫を返して魔法を貰う」
「話の流れは解ったから1つ1つ説明しろ」
「じゃ腹減ったから食堂で」








あとがき
パウリナの事を一族に何て言おう。
いや、それよりもあの2人だ・・・
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