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第8章 魔王国編

第220話 元将軍レボル・シオン

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シオンを連れて牢獄を出て監視室から扉を開けようと思ったらエルヴィーノに問いかけてきた。
「陛下、その扉はディオス・マヒアの魔法が使われておりますから我らでは鍵が無い限り開きませんぞ」

ニッコリと微笑んで鍵の部分に手を当てたエルヴィーノ。
すると”ガチャリ”と音がして扉を開いた。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


ジャンドール王と三兄弟に、番人である2人の屈強な戦士と強固な扉の前でエルヴィーノからの返事を待っていた一同だ。
それは声を掛ける事で鍵を開けると事前に話していたからである。

「ヤツを従者にするなどと抜かしたが、一体どんな見返りを与えるのか楽しみだ」
長兄のデセオは牢屋のぬしが説得などで心変わりしないと信じている。
捕獲前にデセオ自らが何度も交渉しても相手にもされなかったのは、例え敵対者でも己の信念を曲げるクエルノ族は居ないと自負していた。

「まぁ出て来るのを待つとしよう」
悠長に話すジャンドール王。
「我もどんな話をするのか興味が有る」
次兄のレスペトもエルヴィーノを意識している様だ。
長兄次兄は牢屋のぬしとは顔見知りで、犯罪者になる前から知っているし、
捕まえるのにも協力した経緯が有った。

「でもさぁ、本当にあの人が従者になったらどうする?」
末弟のブスカドールは牢屋のぬしと幼い時の記憶がり昔は憧れの将軍だった。
「愚か者。あの人では無い、只の犯罪者だ」
長兄に叱咤されたが、”従者になったらどうするか”については何も答えないデセオだ。
しばしの時が流れ「おっそいなぁ、まだかなぁ」と苛立ちブスカドールが文句を言っていると、鍵を掛けた扉がガチャリと音を立てて開きだした。

「そんな馬鹿な!! 確かに鍵は賭けたはず」
番人である屈強な戦士が声を上げると、扉から体格の良い大男が現れた。
「「「お前は!」」」
厳重にディオス・マヒアの鎖で何重にも留めつけられていたはずの、ノタルム国の元将軍レボル・シオンだった。
出て来た事にも驚いたが裸でタオル一枚の姿にも驚いた一同。
独房から出て数歩前に歩き横に寄って跪いたシオン。
その瞬間シオンの後ろに隠れていたエルヴィーノが姿を現した。

「何なんだその姿は」
「ああ、これ?」
デセオが問いかけたエルヴィーノに対する質問に答えようとしたら、スッと立ち上がったシオンが大声で叱咤する。
「無礼者め! このお方は我が主、エル・モンド陛下だ。本来はお前など相手にする事も烏滸がましいわ!」
睨み合う2人に声をかけるエルヴィーノ。
「シオン」
「はっ」
それだけで一歩後退し跪く巨体。
「ここでは何だから、場所を移そう。それとシオンの着る物も用意してくれるかな?」
「了解っ!」
直ぐに返事したのはブスカドールだった。

「モンドリアン?!」
不安げな表情のジャンドール王。
「大丈夫。シオンは俺の従者だから。後から話そう」
「では参るか」
深い溜息の後振り向いて歩き出すジャンドール王に食い下がるデセオ。
「国王、宜しいのですかっ!」
「シオンの態度を見たか?」
それは主と定めた者以外には決して屈服しない態度だった。
「た、確かに・・・」
「ヤツの言う通り従者にしたのならば我が約束を守らねば示しがつかん」
「くっ・・・」

一行は元居た応接室に戻り、別室ではブスカドールが用意した普段着に着替えたシオンだ。
「シオン将軍!」
「ん、お前は」
「ブスカドールだよ」
「おお、大きくなったなぁ。しかし、我は将軍では無いぞ」
「ごめん、つい」
ブスカドールの肩に手を置き逞しくなった姿を見て微笑んだシオンだった。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


腰かけるや否や、ジャンドール王の口からこぼれた。
「さっきシオンの言ったエル・モンド陛下とは何だ?」
「我が主の御名前だ」
理解出来ないジャンドール王が被せて来る。
「これは聖魔法王国アルモニアの王であり、獣王国バリエンテの王で二か国の王を兼任するエルヴィーノ・デ・モンドリアンと言う男だ」

自分の代わりに説明してもらったが妙に恥ずかしい。
「勿論、先程簡単に説明を賜ったが、我は夜の世界を支配するノチェ・デル・インペ夜の帝國リオの支配者、常闇の帝王エル・モンド陛下の僕として忠誠を誓ったばかりだ」

声には出さず驚いている長兄ダセオと次兄レスペトだ。
「ほお、初めて聞くのぉ、詳しく聞きたいものだが、どうなのだモンドリアンよ」
その眼は話すまで解放しない感じだったので予定通りに進めるエルヴィーノだ。

「ノチェ・デル・インペリオは常闇の帝國だから一般の者は知らない。だが、王家と組む事で莫大な利益を生み出す組織でも有る」
その言葉に全員が真剣な眼差しになった。
「現にメディテッラネウス、アルモニア、バリエンテの国庫は従来の倍以上に・・・」
全員の目が怖い。
「兎に角、集まった倍以上の資金を使い、国の更なる発展の為に貢献するとともに、飛躍的に国民が活性化しているのは、口で説明しても理解出来ないだろうな」
「・・・」
出会って1日足らずだがエルヴィーノの発する言葉が嘘偽りの無いモノだと分かっていても、自分の目で見るまでは信じられないクエルノ族だった。

「常闇の帝國は存在するが一般人は存在自体知らず、各国を常闇から支配しているのさ、後は俺の本来の目的も有るからジャンドール王の提案は受ける事は出来ない」

元主もとあるじから、何かしらの提案を現主げんあるじが断った理由が、世界の闇を支配する事と”本来の目的”だと初めて知ったシオンだった。
「陛下、宜しければジャンドール王の提案をお聞かせ願えますか?」
忠誠心が主の事を少しでも知りたいと言う欲求に駆られたシオンだ。
「あぁアレね」
面倒なので言いたくないエルヴィーノを見て、その事を言ったらシオンがどんな事を言いだすか知りたいジャンドール王が、余計な説明を始めた。

「シオンよ。お前は我に勝った事は無かったのぉ」
「ハイ、良い所まで行きましたが勝利するには至りませんでしたなぁ」
「ふふふっ、そうだったのぉ。お前は強かった。だがな、世の中には更に上が存在すると、つい昨日知ったわい」
「ほぉそれは又、激戦でしたでしょう」
「ふぁっはっはっ。我はのぉオスクロ・アルマドゥ暗黒魔闘鎧ラを顕現して戦ったぞ!」
「おおっあの鎧を身に付けたのであれは勝って当然ですな」
3兄弟が無言でやり取りを聞いていた。
「それがな、あっと言う間に負けてしまったわい」
「なんと! 王より強い者が居たとは驚きです」
何となく話の流れが見えてきたシオンだ。

「所でクエルノ族の者よ、我の前に力の証しである鎧を纏って見せよ」
そう言って、まずはジャンドール王がオスクロ・アルマドゥラを顕現した。
続いて長兄デセオと次兄レスペトだ。
末弟のブスカドールとシーラ嬢にアルコンは発動出来ない。
「では我も」
そう言ってシオンも顕現させたオスクロ・アルマドゥラはデセオ以上ジャンドール王未満の鎧だった。
「おおっ4人そろうと見事な物ですなぁ」
ちょっと存在感の薄くなっているアルコンの発言だった。

シーラ嬢は初めて見るシオンだったが、ブスカドールから説明を聞いた所だった。
その2人も手を叩いて喜んでいた。
「この4人であれば小さな国の1つや2つ簡単に落とせるでしょうなぁ」
シオンの独り言にうなづく3兄弟だったが、又もや余計な事を言うジャンドール王だ。
「なぁモンドリアンよ。頼めるか?」
絶対に言って来ると思っていたエルヴィーノは、どう断ろうか考えていたが、ジャンドール王が追撃して来る。

「シオンよ、モンドリアンにはこの状態の4人でも敵わんぞ」
謀反をしたと言え以前は力の頂点だった元将軍に、新しいあるじは更に強いと言っているのだ。
ジャンドール王が負けを認めた事も驚いたが” 陛下がそこまで”とは、にわかに信じられなかったシオンだ。
「陛下。是非我にそのお力の一端で構いませんので、どうかご慈悲を」
(いや、慈悲じゃ無いと思うけど)
溜息を付いて問いかける。
「では約束してください。これから見た物は決して誰にも言わないと」
全員を見渡すと頷く。
「約束をたがえた者には永遠の死を与えますが、良いですね」
全員を見回して確認した。
「では、オスクロ・アルマドゥラ」

クエルノ族とは違い、圧倒的にオスクロ・ネブロ暗黒霧の量が多く、見る見る内に全身に纏わりつき形成して全身鎧になった。
「おおおっ!」
「「ばっ馬鹿なっ!」」
「「凄ぉい」」
3つの組に分かれた模様。
「皆の者よ、これが完成形のオスクロ・アルマドゥラだ。力は我らの数倍は有るだろう」
何故かジャンドール王が説明するが長兄デセオと次兄レスペトが物凄い顔で凝視して来る。

「素晴らしい、流石は陛下。その全身鎧は我ら一族の目標でもあり憧れの存在。我の目に狂いは有りませんでした」
感慨深そうに跪き臣下の礼をとるシオン。
「じゃ」
一声かけて魔法を解除し再び座ると、四人も同様にした。
そこに出た何気ない質問がジャンドール王に降りかかった。

「所で王よ。また妻を娶ったのですかな?」
シーラを見て質問したシオンだ。
若い嫁と思ったのか、新しい嫁との子だと思ったのだ。
何故ならば三兄弟とは全く似て無いからである。







一応、新しい嫁との子だけど(ジャンドール王)
大魔王の話しがシオンの前で有耶無耶になって良かった。
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