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◇
「うーん、数学ってなんでこんなに難しいんだ……」
「合ってるからそのまま解いてみて」
「問題見ただけですぐに理解しちゃう直弥さんが羨ましい……」
もうすぐ中間テストだ。放課後に学食で直弥さんに勉強を教えてもらっている。
糖分補給にキャラメルを一粒舐めて、またノートに向かった。
「テストが終わったらFTOのハロウィン限定クエスト、攻略しましょうね」
「あ、俺もうクリアしてる」
「ええ!? そんなあ……」
「大丈夫、付き合うから」
ふんわり僕の頭を撫でる直弥さんは、僕と違って何でも出来て。
僕は全然追いつけずにいる。
「えっと……ギルドのメンバーと攻略するので、やっぱりいいです」
「ダメ。颯との時間が減るのはイヤだ」
「えぇ……でも」
「ハロウィン仕様のフィールドを巡るのは楽しいし、颯とも分かち合いたい」
「直弥さん……」
この人には敵いそうにない。そう思ってしまうのも仕方ないことだ。
◇
FTO内で黒猫耳をつけたハロウィンも終わり、期末テストまで終わった今はもう十二月後半。
街はすっかりクリスマスモードで、でもクリスマス当日は発情期かもしれなくて、直弥さんも僕もソワソワしていた。
発情期用の部屋で年越しになるかもなあと思いつつも、直弥さんと一緒にいられるのは嬉しい。
「直弥さん……その……Hな意味じゃなくて、僕、直弥さんのこと、愛してもいいですか?」
「俺はもうとっくに愛してるよ。勿論。望むところだ」
「もう! 戦いじゃないですよ!」
「キスしていい? 駄目って言われてもするけど」
「そういう時はキスしようって言って下さい!」
クリスマス当日はまだだけど、イルミネーションが煌めく中、僕は目を閉じて触れる唇を待った。
少し早いけど昼には二人でケーキも食べてきたし、クリスマスプレゼントも交換した。
僕は濃い紫色のマフラーと手袋を、直弥さんからは白いネックガードを贈ってもらった。
今度の発情期はそのネックガードを着けて挑もうと思う。
プレゼントされたネックガードの鍵は直弥さんも持っているけど、発情期用の部屋には持ち込まないと言っている。
番になるのはまだ先かなあと言ったからかもしれない。
でも次の次の発情期の前、直弥さんの進路がはっきりしている頃には、一度双方の両親と会おうかと話している。
番になるお許しを得るのかもしれない。
「颯のことはいつでも愛してるよ」
「ぼ、僕も……」
「エロい意味で愛するのも待ち遠しい」
「本格的な発情期は初めて……だっけ!」
「一週間も抱けるなんて幸せだな」
「は……恥ずかし……!」
無事に乗り切れるだろうか……。
これからも続く幸せを予感しながら、目の前の直弥さんに抱きついて僕は火照る顔を隠した。
◇終わり◇
ありがとうございました!
「うーん、数学ってなんでこんなに難しいんだ……」
「合ってるからそのまま解いてみて」
「問題見ただけですぐに理解しちゃう直弥さんが羨ましい……」
もうすぐ中間テストだ。放課後に学食で直弥さんに勉強を教えてもらっている。
糖分補給にキャラメルを一粒舐めて、またノートに向かった。
「テストが終わったらFTOのハロウィン限定クエスト、攻略しましょうね」
「あ、俺もうクリアしてる」
「ええ!? そんなあ……」
「大丈夫、付き合うから」
ふんわり僕の頭を撫でる直弥さんは、僕と違って何でも出来て。
僕は全然追いつけずにいる。
「えっと……ギルドのメンバーと攻略するので、やっぱりいいです」
「ダメ。颯との時間が減るのはイヤだ」
「えぇ……でも」
「ハロウィン仕様のフィールドを巡るのは楽しいし、颯とも分かち合いたい」
「直弥さん……」
この人には敵いそうにない。そう思ってしまうのも仕方ないことだ。
◇
FTO内で黒猫耳をつけたハロウィンも終わり、期末テストまで終わった今はもう十二月後半。
街はすっかりクリスマスモードで、でもクリスマス当日は発情期かもしれなくて、直弥さんも僕もソワソワしていた。
発情期用の部屋で年越しになるかもなあと思いつつも、直弥さんと一緒にいられるのは嬉しい。
「直弥さん……その……Hな意味じゃなくて、僕、直弥さんのこと、愛してもいいですか?」
「俺はもうとっくに愛してるよ。勿論。望むところだ」
「もう! 戦いじゃないですよ!」
「キスしていい? 駄目って言われてもするけど」
「そういう時はキスしようって言って下さい!」
クリスマス当日はまだだけど、イルミネーションが煌めく中、僕は目を閉じて触れる唇を待った。
少し早いけど昼には二人でケーキも食べてきたし、クリスマスプレゼントも交換した。
僕は濃い紫色のマフラーと手袋を、直弥さんからは白いネックガードを贈ってもらった。
今度の発情期はそのネックガードを着けて挑もうと思う。
プレゼントされたネックガードの鍵は直弥さんも持っているけど、発情期用の部屋には持ち込まないと言っている。
番になるのはまだ先かなあと言ったからかもしれない。
でも次の次の発情期の前、直弥さんの進路がはっきりしている頃には、一度双方の両親と会おうかと話している。
番になるお許しを得るのかもしれない。
「颯のことはいつでも愛してるよ」
「ぼ、僕も……」
「エロい意味で愛するのも待ち遠しい」
「本格的な発情期は初めて……だっけ!」
「一週間も抱けるなんて幸せだな」
「は……恥ずかし……!」
無事に乗り切れるだろうか……。
これからも続く幸せを予感しながら、目の前の直弥さんに抱きついて僕は火照る顔を隠した。
◇終わり◇
ありがとうございました!
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完結、おめでとうございます!!
ああ~~~最後まで二人ほのぼのいちゃラブ!!ありがとうございます!!
大人回も最高で、互いの好きがこちらにも伝わってきました…!
これからも現実・ゲーム共に2人の思い出が増えていくと思うと未来が明るすぎます。眩しい…
本当に、素敵な作品をありがとうございます!!今後もhinaさんの作品を楽しみにしています!!
そらい様
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
途中、間が空いてしまったのにも関わらず、お付き合い下さって感謝感謝です……!
大人回、楽しんでいただけたようで良かった!
二人の好きが伝わったと言っていただけて嬉しいです。
二人はこれからもいちゃラブしていくと思います笑
幸せな思い出を沢山作っていくのは確定です♪
次の作品はまだ未定ですが、これからもよろしくお願い致します……!
嬉しいお言葉、ありがとうございました!
まさか、また2人の物語がまた読めるなんて!!
更新お疲れ様です。本当にありがとうございます!!嬉しくて何度も読み返しています。つ、続きが気になる~~!!
2人の空気感が変わらないとお墨付きをいただけて、もうそれだけで幸せです。
体調を崩しやすい季節ですが、どうかお体に気をつけてお過ごしください。また続きが読めるのをのんびりとお待ちしております。
そらい様
ご感想ありがとうございます!
喜んで頂けたようで、私も嬉しいです!
次回は大人回、かも……!?笑
これからもほのぼのな二人を目指して書いていこうと思っております。
遅筆で申し訳ないのですが、お付き合い頂ければ嬉しいです。
そらい様もどうぞご自愛くださいませ♪
VRMMOシリーズ、全部大好きです!!
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そらい様
コメント、ありがとうございます!
VRMMOシリーズは書いていてもとても楽しいので、大好きと仰っていただいて嬉しい限りです。
この後お話は動いていきますが、二人の空気感は変わらないので、楽しみいただければ幸いです。
もったいないお言葉もとても励みになります!
亀更新にはなってしまいますが、これからも頑張っていこうと思います♪