珊瑚の恋

hina

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「約束は出来ません。でも、まず、特殊な薬を売るお店に私も行ってみたいです。何か解決の糸口があるといいんですけど……。そう簡単にはいかないかな」
「ああ。望みは薄いかもしれないけれど……。わかった、一緒に行こう」


それからしばらく、私達は触れ合えなかった時間をうめるように抱き合っていた。







「ここでいいんですよね?」
「なんだか趣きのあるお店ですね」
「陸、はしゃぐなよ? 大事な用事だからな」
「兄様、僕そこまで子供じゃないですよ!」

陸様にも関係のあることだからと、青様が呪いのことを陸様に話したら、陸様も薬屋に付いてくることになった。

帝都の端にある住宅街にそのお店はあった。小さな庭のある一軒家で、店先には白い暖簾がかかっている。


「いらっしゃいませ。これはこれは。長い間、お待ちしておりました」
「え? 僕達を知っているんですか?」
「陸」
「海星家のご子息方に珊瑚族の女性だとお見受けしますが、違いましたでしょうか?」
「そうですが……」
「ご用件は不老不死の薬の副作用の除去ですね? 症状を詳しくお聞かせください」 

薬屋の主人はどこか得体の知れない、でも綺麗な若い女性だった。
青様が呪いのことを話し、店主が紙に筆で記入していく。

「薬はご用意出来ますが、入手困難な素材が数種類ございまして……お代もそれなりになりますが、よろしいでしょうか?」
「構いません。本当に治せるのでしょうか?」
「服用してみないことには……ですが、快復に向かうはずです」
「薬はいつ頃完成しますか? もう成人まで時間がないのですが……」
「そうですね……素材次第なのですが、出来るだけ早くご用意致します」
「お願いします」
「それから、長寿を治す薬ですから作用が激しく、数日は寝たきりになってしまうでしょう。まだ時間のある弟君には、作用を緩和した薬を長期服用で処方しようと思いますが、よろしいでしょうか」
「陸、それでいいか?」
「うん。学校は休みたくないし、きつい薬より、僕もその方がいいな」
「では、それで」

間に合うかな。間に合わないと困る。薬、ちゃんと効いてくれるといいな。
でも希望が持てて良かった。本当に。


私はどうしよう。しばらく海星家を離れていた方が良いのだろうか。
ご当主様に悟られずに離れられるかな。
もし薬が間に合ず、副作用が出てしまった場合、青様が自害せずにいられる時間はどれくらいだろう。
可能なら青様のそばで支えたい気持ちもあるのだけれど、青様は良しとしないだろう。

まだわからないことも多くて、不安は消せなかった。
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