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「アラン。最近親密にしている子がいるらしいじゃない。私にも紹介して」
「すると思う? いや、ないな」
「私が何か言う前に結論出すのやめて」
「悪い悪い」
「思ってないくせに」
同じαの従姉妹に僕の運命を紹介するなんて有り得ない。
誰にも渡したくないし、奪われたくない。邪魔されたくないし、イツキは僕のものだ。
誰にも会わせずに閉じ込めてしまいたいと思ってる事は、僕の心の中で留めている想いだけど。
僕はアラン・デュリル。
恵まれたαとして裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育ってきた。
そんな僕は今まで運命の番を探していた。
でもどんなΩと会ってもピンと来ない。
運命の番と出会えたら、人生が変わるという。その人は唯一無二で、離れられない一時も離れたくないほど惹かれ合うのだと。
そんな人に出会ってみたかった。
僕の周りにはバースに関わらずいつも沢山の人がいて、沢山のΩにも出会ったけれど、いつになってもそんな人は現れなかった。
いい加減現実を見ようと決めた頃、FTOで知り合ったのがイツキだった。
まだ子供なのか、それともΩなのか、人種的なものか、あるいはその全てか。
静かにじっとこちらを見つめる体の小さな彼を放っておけず、関わっていくうちに惹かれていき、人として彼を好きになった。
でも自分のことを明かせないまま、時を過ごしていたら、イツキを不安にさせたのか、しばらく会えないと言われてしまった。
事情があるみたいだし、またとも言っていたけれど、ゲームの中だけの関係しか築いてなかった自分に愕然として、このままイツキ……ツーとの関係が途切れてしまうんじゃないかと不安に駆られた日々は何よりキツかった。
自分の事を話し、ツーの事も事細かいに聞いて、直接会いに行って、改めて関係を深めていこうと心に誓えば、もう運命の番のことなんてどうでも良くなっていた。
心で繋がる番でありたい。
いや、番じゃなくても、もしツーがΩじゃなかったとしても僕は彼を選ぶし、もしΩでもどうしようもなくフェロモンが生理的に合わないとかでなければ、イツキのパートナーは永劫、僕でありたい。
それが僕のイツキへの想いだ。
だから、イツキが、ツーがΩで、僕の想いを受け入れてくれた時は天にも昇ってしまいそうな気分だった。
まだ直接会っていないから、フェロモンの良し悪しはわからないけれど、きっとそんなに悪くないだろうと思っている。
年末年始になれば、リアルで会いに行けるし、次の発情期は一緒に過ごす約束をしている。
今から楽しみだ。
待っててね、イツキ。君を抱きしめに行くよ。
◇
「やば、めっちゃイケメン……」
顔小さ、手足長、全てが麗しい……。
髪の毛はアバターみたく長くないけど、でもアバターとほぼ一緒……。
となり歩いてて大丈夫? と思いつつ、空港に降り立ったアランは、流暢な日本語を話していた。
「時間があったから覚えたよ」
「いつの間に……」
発音まで完璧なんですけど、αさんってどうなってるんだ。
「俺も英語頑張って勉強してたんだけど……」
「英語でも構わないけど、せっかく覚えたし、日本にいるうちは日本語使いたいな」
「正直助かります。アラン、ありがとう」
「イツキ……お礼はキスで」
「お、俺の身長じゃ、アランの唇に届かないから!」
「じゃあ、僕からするよ」
突っぱねたつもりだったのに、アランが屈んで鮮やかに唇を奪われた。
「日本人は慎み深いんだよ!そんな四六時中キスしたりしません!」
「僕欧州人」
「……」
「イツキ、良い香り。フェロモンが大丈夫そうで安心した」
「アランからも花の香りがする。香水じゃ、ないよな?」
「ジャスミンの香りに近いって言われるかな。好きな香りなら良いけど」
「す、好きだよ」
顔を背けて言う。自分でも目を合わせて言えばいいのにって思うけど、今の俺にはこれが精一杯だ。
「嬉しい……イツキ! 僕もイツキが大好きだよ。愛してる」
「香りが好きって意味だからな!?」
「香りも好きって意味だって?」
耳悪いんじゃないデスカ!?
……もうやだ。疲れる。
「そう言えば、荷物が少ないな。小ぶりなショルダーバッグだけ?」
「先に送ってあるからね。 明日持っていく手土産もホテルに着いてるはずだよ。心配しないで」
「いや、してないけど……本当に挨拶に来るの?」
「もちろん。結婚はまだだけど、次の発情期で番にはなるんだから」
「本気?」
「もし、もしだけどね。もしイツキと番ったあとに運命の番と出会ったとしても、僕はイツキを手放せないと思う。運命の番がどんな人かはわからないけど、僕は媚びてくるようなΩが何より苦手だし、イツキの香りは凄く好ましく感じるから、出会った瞬間に発情! みたいなことにはならなかったけど、限りなく運命に近いんじゃないかなって思うんだ。そういう運命があってもいいんじゃないかなって。それに俗に言う「運命の番」じゃなくても、イツキは僕の決めた運命ってことには変わりないし。信じられなくなったら、何度でも言うから打ち明けて。僕の運命は君だよ、イツキ」
「すると思う? いや、ないな」
「私が何か言う前に結論出すのやめて」
「悪い悪い」
「思ってないくせに」
同じαの従姉妹に僕の運命を紹介するなんて有り得ない。
誰にも渡したくないし、奪われたくない。邪魔されたくないし、イツキは僕のものだ。
誰にも会わせずに閉じ込めてしまいたいと思ってる事は、僕の心の中で留めている想いだけど。
僕はアラン・デュリル。
恵まれたαとして裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育ってきた。
そんな僕は今まで運命の番を探していた。
でもどんなΩと会ってもピンと来ない。
運命の番と出会えたら、人生が変わるという。その人は唯一無二で、離れられない一時も離れたくないほど惹かれ合うのだと。
そんな人に出会ってみたかった。
僕の周りにはバースに関わらずいつも沢山の人がいて、沢山のΩにも出会ったけれど、いつになってもそんな人は現れなかった。
いい加減現実を見ようと決めた頃、FTOで知り合ったのがイツキだった。
まだ子供なのか、それともΩなのか、人種的なものか、あるいはその全てか。
静かにじっとこちらを見つめる体の小さな彼を放っておけず、関わっていくうちに惹かれていき、人として彼を好きになった。
でも自分のことを明かせないまま、時を過ごしていたら、イツキを不安にさせたのか、しばらく会えないと言われてしまった。
事情があるみたいだし、またとも言っていたけれど、ゲームの中だけの関係しか築いてなかった自分に愕然として、このままイツキ……ツーとの関係が途切れてしまうんじゃないかと不安に駆られた日々は何よりキツかった。
自分の事を話し、ツーの事も事細かいに聞いて、直接会いに行って、改めて関係を深めていこうと心に誓えば、もう運命の番のことなんてどうでも良くなっていた。
心で繋がる番でありたい。
いや、番じゃなくても、もしツーがΩじゃなかったとしても僕は彼を選ぶし、もしΩでもどうしようもなくフェロモンが生理的に合わないとかでなければ、イツキのパートナーは永劫、僕でありたい。
それが僕のイツキへの想いだ。
だから、イツキが、ツーがΩで、僕の想いを受け入れてくれた時は天にも昇ってしまいそうな気分だった。
まだ直接会っていないから、フェロモンの良し悪しはわからないけれど、きっとそんなに悪くないだろうと思っている。
年末年始になれば、リアルで会いに行けるし、次の発情期は一緒に過ごす約束をしている。
今から楽しみだ。
待っててね、イツキ。君を抱きしめに行くよ。
◇
「やば、めっちゃイケメン……」
顔小さ、手足長、全てが麗しい……。
髪の毛はアバターみたく長くないけど、でもアバターとほぼ一緒……。
となり歩いてて大丈夫? と思いつつ、空港に降り立ったアランは、流暢な日本語を話していた。
「時間があったから覚えたよ」
「いつの間に……」
発音まで完璧なんですけど、αさんってどうなってるんだ。
「俺も英語頑張って勉強してたんだけど……」
「英語でも構わないけど、せっかく覚えたし、日本にいるうちは日本語使いたいな」
「正直助かります。アラン、ありがとう」
「イツキ……お礼はキスで」
「お、俺の身長じゃ、アランの唇に届かないから!」
「じゃあ、僕からするよ」
突っぱねたつもりだったのに、アランが屈んで鮮やかに唇を奪われた。
「日本人は慎み深いんだよ!そんな四六時中キスしたりしません!」
「僕欧州人」
「……」
「イツキ、良い香り。フェロモンが大丈夫そうで安心した」
「アランからも花の香りがする。香水じゃ、ないよな?」
「ジャスミンの香りに近いって言われるかな。好きな香りなら良いけど」
「す、好きだよ」
顔を背けて言う。自分でも目を合わせて言えばいいのにって思うけど、今の俺にはこれが精一杯だ。
「嬉しい……イツキ! 僕もイツキが大好きだよ。愛してる」
「香りが好きって意味だからな!?」
「香りも好きって意味だって?」
耳悪いんじゃないデスカ!?
……もうやだ。疲れる。
「そう言えば、荷物が少ないな。小ぶりなショルダーバッグだけ?」
「先に送ってあるからね。 明日持っていく手土産もホテルに着いてるはずだよ。心配しないで」
「いや、してないけど……本当に挨拶に来るの?」
「もちろん。結婚はまだだけど、次の発情期で番にはなるんだから」
「本気?」
「もし、もしだけどね。もしイツキと番ったあとに運命の番と出会ったとしても、僕はイツキを手放せないと思う。運命の番がどんな人かはわからないけど、僕は媚びてくるようなΩが何より苦手だし、イツキの香りは凄く好ましく感じるから、出会った瞬間に発情! みたいなことにはならなかったけど、限りなく運命に近いんじゃないかなって思うんだ。そういう運命があってもいいんじゃないかなって。それに俗に言う「運命の番」じゃなくても、イツキは僕の決めた運命ってことには変わりないし。信じられなくなったら、何度でも言うから打ち明けて。僕の運命は君だよ、イツキ」
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