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2.計画実行と兄妹登場
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しおりを挟むサーシャさんの懐妊の報が広まってから、少し時間が経った今、中庭にいた面々は、すでにみんな室内に入っている。
渦中のはずのサーシャさんを置き去りにして、お父さんとお母さんとサーシャさんのお姉さんの三人が、サーシャさんの懐妊を祝うお祭りの話を始めている。
当のサーシャさんは、セルシェーダさんが呼んだ、城内にある医療センターのスタッフによって担架に乗せられて医療センターまで運ばれて行った。
ーーーー名称が、治療院でも医務室でもなく医療センターであることに、少し引っ掛かりを覚えたが、そういうものなんだろう、と思って無理矢理納得する。
どうやら、医療センターという名称は、かなり昔から使用されているらしく、違和感を感じるという話をしていたときのリーナさんの視線が怖かった。
まさか、リーナさんは医療センターの名称を決める会議とかの参加者だった、とかじゃない、よね?ーーーー
そんなサーシャさんの様子を、ナギが異常なほどに心配しながら見送っていた。
まるで、サーシャさんが不知の病でも患っていて、死にかけていることが判明したかのような心配の仕方には、つい、苦笑いしてしまいそうになった。
エルフ族は、人族としては子供が産まれにくい種族に分類されている。エルフという種族は、基本的には、一人っ子や、片親の違う数百歳くらいの年齢差があるきょうだいが一般的で、両親が同じで年齢の差が殆どないきょうだいなど、双子くらいしかいないような種族らしい。
つまり、ナギは妊娠や出産などとは縁遠い種族であるために、サーシャさんの状況を本能的に理解しきることができなくて心配しているのだろう。
余談ではあるけど、リーナさんはナギのことを異常なほどに可愛がっているらしく、その理由は、ナギのお母さんとリーナさんが、かなり希少な両親ともに同じで4歳差の姉妹だったから、らしい。
ジークさん曰く、両親ともにエルフ族で尚且つ、両親ともに同じ人物で年齢差が10歳未満きょうだいは、有名どころでも二、三組くらいしか聞いたことがない、ということでかなり驚かされた。
サーシャさん付きの使用人さんの内の何人かが、ベイルマート王国中に報を出すために、伝達室に行ったらしい。これで、明日にはベイルマート王国の端までサーシャさん懐妊の報が広まるのだろう。
ーーーー伝達室には、僕が産まれたばかりの時に見た、サーシャさんが使っていたあの箱の魔道具、トゥラミシュボイトの対がたくさん置いてあって、国の主要機関と大公家と公爵家を結ぶものは必ず置いてあるらしい。
ちなみに、その他の貴族家とかだと、個人でトゥラミシュボイトを一対で購入して、伝達室に置いてもらうための許可申請を行い、許可が出て、初めて片方を伝達室に置けるらしい。ーーーー
そんなこんなで、サーシャさんが懐妊したという報は、一瞬で王都中を駆け回っていった。
そして、王都の各地では、昨日のパレードのような盛り上がりを見せている。
つまり、ベイルマート王国の王都、セルシュバードは今日も賑やか、ってことだ。
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