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番外編

ハンベル・ブヨーゼフの断末魔(3)

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 遂にハンベルは、運命の日を迎えた。

 ハンベルは伯爵位を取り上げられることを理解した上で、既に、弟であるシルベスタをブヨーゼフ伯爵家から追放していた。

 ベイルマート王国には、家を継承可能な後継者が不在の上級貴族家は、後継者が継承可能になるまで、適格者が代理で当主を務めることが出来る制度がある。
 ハンベルは、一度爵位を奪われても、その制度を利用して伯爵位を取り戻せると思い込んでいた。
 実際には、ブヨーゼフ上級伯爵家自体が無くなるのだから、そんなこと出来るわけもないのだが、新たなことを認識したら以前の認識が無くなるハンベルは、シルベスタが爵位を持つという情報から、ブヨーゼフ上級伯爵家が無くなることを忘れてしまっていた。
 故に、ハンベルは、普段は劣等感を募らせているセルシェーダを出し抜けると思い込み、ニマニマしていたのだ。




「ハンベル・ブヨーゼフ、貴様の罪状を読み上げる。心して聞くがよい。」

 ハンベルは、顔を真っ青にしながら、罪状を読み上げる王城からの派遣者を見つめる。
 そう、派遣されてきた相手は、完全にハンベルの予想外の人物だったのだ。

 ハンベルは、王城から派遣されて来る者は、精々が上級貴族家出身の司法官辺りだろう、と予想していた。
 だが、実際に来たのは、ハンベルの従妹であり、第十騎士団の団長を務め、ハンベルより格上のネーヴァ公爵家の当主でもある、王妹ラスタリアだったのだ。

 ハンベルはいくつかの逃げ道を失ったことに気付く。
 話をのらりくらりと躱して、逃げだすという方法は使用出来ない、しかも、ラスタリアは英雄学園の卒業生だから、頭も良いのだ。

 この時点で、ハンベルは完全に詰んでいた。

 しかし、ハンベルは相手が従妹ならば、情に訴えることが可能だと考えてしまった。


 そして、それを実行してしまった。


 その行為が、相手の怒りをどれほど買うことになるのかを考えもせずに。




 ブヨーゼフ伯爵家に仕える家臣たちは、ハンベルが完全に詰んだことに気付き、こっそりと喜んでいた。

 ラスタリアにとって、母方の従兄弟とはレミリヤとシルベスタの二人であり、母とレミリヤを追放したハンベルの事を従兄と考えたことは無い。その事実は、ブヨーゼフ伯爵家に仕える家臣であれば、誰もが知っている常識だった。

 ブヨーゼフ上級伯爵家に仕える騎士や使用人たちは、自分たちが何かを言わなくても、ハンベルが勝手にボロを出しては、ラスタリアの怒りを買っていくさまを眺めていた。





_____________________



 ラスタリアの逆鱗に触れるような言動を繰り返してハンベルは、最終的に、シルベスタを追放したことまで喋った。



 そのことにより、反逆罪を問われたハンベルは、ベイルマート王国随一の牢獄へ囚われ、刑の執行日を待つだけの身へと成り果てた。
 シルベスタがベイルマート王国史上、最年少で、王立図書館司書に就任し、英雄伯の地位を賜ったという情報に怒り狂いながら・・・・・・

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