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番外編

ハンベル・ブヨーゼフの断末魔(2)

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「おい、これはいったい、何の騒ぎだ!」


 ブヨーゼフ伯爵領の領民による歓喜の騒ぎは、領都にあるブヨーゼフ伯爵邸にまで聞こえてきくるほど大きなものとなっていた。
 そのため、領民たちの騒ぎは、ハンベルにも気づかれてしまったのだ。


「何!?私から奪う爵位と領地をシルベスタに譲渡、だと!?王だからといって、そんな横暴な行為が、許されるわけがないだろう!こうなれば、コネを使って司法部に訴えて・・・・・・・・・」


 そんなことを言うハンベルに、心底呆れたような目を向ける使用人と騎士たちの心中は、みな同じだった。


   “その通告書は、司法部からの通達なんだから、司法部に訴えたところで取り合ってもらえる訳がないだろう!”
  “最高司法官と国王の連名で発行された書類の内容を覆せるようなコネなんて、この国に存在なんかしないだろう!”


 あまりにも愚か過ぎる己の主の様子を見ながら、早々に辞めさせられた先代の寵臣を羨ましく思う現在の家臣たち。
 通常であれば、代替わりであったとしても、家臣を辞めさせられるなど、貴族の家に仕える家臣としては不名誉極まりないのだが、ハンベルの悪名が高すぎて、現在のブヨーゼフ上級伯爵家に仕える家臣である、という肩書きがある方が、かえって家臣たちの不名誉となってしまっていた。
 そのこともあってか、ハンベルに仕える家臣たちですら、シルベスタが新たな伯爵になることを期待していた。

 その他にも、ハンベルの目下で悪事に手を染めていた商人や横領を行っていた家臣たちですら、ハンベルが不利だと悟れば、直ぐに逃げ出せるように、と準備をしていたほどだ。
 ハンベルを支持する者は、居るように見えても実際のところは、全くのゼロだった。


 未だに、そんな事実に気が付いていないハンベルでも、流石に今の状況が良くないことだけは理解していました。

 何としてもこの状況を打破したいハンベルは、考え続けた結果、名案を思いついたと言わんばかりの反応を見せる。

 家臣たちは、ハンベルのその反応に、強い不安を感じた。
 ハンベルの表情が、去りし日の愚行を思い付いた時と重なって見えたのだ。


「フフフフフ、ハァッ、ハッハッハァ。そうだ、簡単なことではないか。シルベスタをこの家から追放すれば良いのだ。あぁ、そうだそうだ。あやつが、このブヨーゼフ上級伯爵家の者でなくなれば良いのだ。」


 ブヨーゼフ上級伯爵家の家臣たちは、ハンベルのあまりの愚かさに辟易としていました。

 おそらく、国の上層部は、ハンベルがシルベスタを追放する可能性を考慮して、ブヨーゼフ上級伯爵家の取り潰しを行った上で、シルベスタに新たな爵位を用意しているのだろう。
 つまり、ハンベルのしようとしていることは全くの無意味どころか、王命の無視と公務執行妨害、貴族優越権行使法違反に該当し、どれを取っても反逆罪を問われる犯罪行為だった。

 ブヨーゼフ上級伯爵家に仕える家臣、使用人、騎士たちは、ハンベルのその行為を黙認することに決めた。
 そうすれば、上級貴族であるが故に、逃げ道が存在してしまっているその他多くの罪とは違い、反逆罪が問われれば、ハンベルの死刑が確定になるからだ。

 ハンベルは周りに味方など居ないどころか、死刑になることを望まれているとは露知らず、家臣たちに非道で愚鈍な命令を下していく。
 その先に待ち受けている運命が良いものになるのだと、勝手な想像をしながら。

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