188 / 196
3.祝日のお祭り
3-025
しおりを挟むテーブルセットのところで、優雅にお茶をしているリーナさんとお母さん。
テーブルセットのすぐ横のベンチで頭を抱えているセルシェーダさん。
お母さんの近くには、二人の護衛が立っている。
片方は、よく見かける人物で、第五騎士団団長のクレア・クォームウェル=マキュラル・テルミドール。お母さんの専属護衛官の一人で、あのクォームウェル家の現当主らしい。
もう片方の人物は、アルスさんだった。
何故、第四騎士団の団長がお母さんの護衛を?と思わなくもない。
そして、中庭には倒れている人の山が、あちこちに点在している。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ・・・・・23?
なんで、人の山が23個も出来る程の人数が中庭に集まっていたんだ。
ここで何が起きたのだろうか。
そんなくだらない疑問について考えながら、異常とも言える光景に見入っていると、倒れてる人達の山のうちの一つがもぞもぞと動いていることに気がついた。
動いている山にそっと近付いてもらうと、下の方から山の中からガタイの良い人物が、這いつくばって匍匐前進で出てきた。
「ふぅー、重かった。まさか、団長に呼ばれてノコノコとウェストまでやって来たら、突然、人山の下敷きになるとは。」
どうやら、この如何にも「騎士です!!」と言わんばかりの見た目をしたお兄さんは、早朝に呼び出しを食らって、中庭に来たら、不幸にもこの惨状に巻き込まれただけのようだ。
「あぁ。なんだ、マックス。来てたのか。来てたなら、きちんと来たと言え。」
どうやら、このマックスさんを呼び出した団長はアルスさんだったらしい。
それにしても、アルスさんの意見は、とんでもなく理不尽だという気がするのは、僕だけなのだろうか?
どうせ、気付いてたんだよね?ここにいることは。
「第四騎士団副団長、マックス・メゼフィアノン=メスィドール、現着致しました。現着の御挨拶が遅くなり、誠に申し訳御座いません。」
そして、律義に挨拶をするマックスさん。
そうか、これが封建制度の世界の縦社会なのか。
「ところで団長、私をお呼びとの事でしたが、ご用件を伺っても宜しいでしょうか?」
「用事?・・・特に無い。なんとなく、呼んだだけ。」
えっ!?
用事が無いのにこんな朝から呼んだの?
第四騎士団の本部は、第一塔。
つまり、城内の北東部に位置してる。
城内の西側に位置するこの中庭までは、徒歩だとかなりの時間が掛かるはずなのに。
流石にこれは、前世の現代日本ではパワハラと訴えられても仕方のない事案だ。
「・・・左様でございますか。では、私は本部に帰還した方がよろしいでしょうか?」
あ、あれ?
さっきまで爽やか系青年だったマックスさんが、突然、捨てられた仔犬のような落ち込み方をしている。
ま、まあ、ここまで来て、しかも、苦労もしたのに、何も用事はありません、じゃあ確かにガッカリもするよね。
「うん、そうだね。・・・・・あっ、そうだ。私、今週一週間は、こっちにいるから。それだけみんなに伝えといて。」
「はいっ!承知致しました。この第四騎士団副団長、マックス・メゼフィアノン=メスィドール。団長からの伝聞を必ずや、全ての団員に伝えてみせます!!」
うわぁっ!?
今度は突然元気になった。
しかも勢いよく駆け出して行ってしまった。
えっ、用事ってそれだけのことでも充分なの?
マックスさんにとって、あの伝言にはその苦労や理不尽に勝るだけの価値があるの?
僕にはよく分からない。
「伝聞じゃなくて伝言ね。」
それは、僕も思ったけど、たぶんもう、マックスさんには聞こえていないと思う。
「彼は相変わらずのようですね。」
おぉ、何気にクレアさんが挨拶以外で喋っている声を聞くのは初めてな気がする。
「うん。清々しい程におバカな脳筋だよ。」
お、おぅ。
なんだか酷いなぁ。
確かに、薄っすらと、そうなんじゃないのかな?とか思ったけどさ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
167
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる