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美女魔王の顔面〇〇
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う……また魔王城に戻って来たのか。
今回は……ベッドの上に仰向けの状態になっている。
天井が見えるぞ。
両手両足を鎖で縛られている。
……大の字の状態だ。
今回はふかふかのベッドの上でよかった。
前回は床の上だったからな……。
「勇者さん……目覚めたわね? 今回もけっこう時間が経過しているわ。最近はもうお疲れなのね」
俺の頭側から魔王の声がする……。
あ……足側には強気な目つきでこちらをニラむサリーヌもいるぞ。
「……スカーレンに手を出したわね?」
また水晶で全てを見ていたんだな。
「手を……出したよ」
俺がそう答えると、魔王がニッコリと笑った。
「ふふっ。あれはね……デヴィルンヌの影響よ。彼女の香りがあなた達を性的に興奮させたのよ」
なぁっ!?
デヴィルンヌの影響だって!?
香りで……発情させられたってことか?
そうか……そうだったのか……。
「俺も、スカーレンも強制的に発情させられていたってことか……」
「そうよ。サキュバスが死んだ後は男も女も関係なし。【サキュバスの残り香】なんて言われているわね。上位サキュバスの残り香は強烈よ。私が彼女と戦いたくなかった理由の一つでもあるわ。きっと死後も、敵を発情させて仲間のサキュバスを守るための仕組みなんだと思う。安心して、勇者さんはもう大丈夫よ。数時間で効果が切れるから」
それは知らなかった……。
スカーレン……エロ過ぎる上に可愛くて夢中になってしまっていたけど、態度が不自然だったのは間違いない。
「……最後に射精したのは正解ね。あの駆け出しの魔法使いに言い振らされたら、勇者さんにとって地上で生きていくことは困難になっていたわ」
「う……」
……その通りだ。
「デヴィルンヌの影響とは言え、少しはスカーレンに気があるんでしょ? 地上は嫌な社会よね。好きな人とエッチなことをしただけで裁かれてしまうなんて」
「……」
「勇者として答えにくい質問かしら? じゃあ、質問を変えるわね。……デヴィルンヌを殺したとき、あなたの表情が曇っていたわ。あれは何で? せっかく勝ったのに」
「表情が……曇ってた?」
「ほら、あの水晶玉を見てよ」
魔王がそう言うと、もう1人、女の子が登場した。
サリーヌではない。
尻尾が生えているので魔族だな。
水晶玉を持っている。
この子が最後の四天王だろうな……見覚えがある。
水晶玉……これで俺を監視しているのか。
「これだよー。私の水晶玉、過去に映したものを見ることもできるんだよー」
す、すごい機能だな……。
映し出された俺の表情は確かに曇っていた。
このシーンは、デヴィルンヌを倒した直後だな。
「俺は……できれば、むやみに殺したくはないんだ。このときも……そう思っていたはずだ」
「あら、甘いのね。そんなことを言っていたら、デヴィルンヌの思うツボだったじゃない。殺さなかったら、あなたの人生、どうなっていたか分からないわよ? いくら勇者とは言え、上位のサキュバスに目をつけられた人間の男が簡単に逃げられると思ってるの?」
うっ……!
「そんなことをスカーレンにも注意されたよ」
「ふふっ。そうよね。まぁ、そんな甘いところが地上であなたが評価されない理由の1つかもね」
「痛いところを突いてくるな……」
「デヴィルンヌを葬ってくれたのは、私的にはむしろありがとうよ」
「ありがとう……だって?」
「そうよ、感謝しているわ。スワン王国に攻め込んだのは……彼女の独断っていう話はしたわね? しかも搾精するだけの本能的な侵攻だったわね。あんな無計画な侵攻は良くないわ。私だってバカじゃないの。どこの国をどのタイミングで攻撃するかは考えて決めているのよ。人間の国王たちと駆け引きをしながら地上を攻めているわ。発展目覚ましい国や、新進気鋭の勇者が誕生した国に強いモンスターや魔族を送り込ませたり……とかね。『人間達の思い通りにさせないわよ』、『地上を私たちにも分けてちょうだい』……というメッセージになるわ。デヴィルンヌの侵攻の仕方は、もうやりたい放題よ。あのままだと本能のままに国をいくつも滅ぼしていたわ。なるべく被害は最小限の規模にしたいの。人間は必ず報復してくるからね。例えば、女勇者をたくさん育てて集めたりね。勇者がたくさん出てきて、しかも協力されたら魔族にとっても大変よ。……だから、止めてくれてありがとう」
な、なるほど……。
なんか……複雑な気持ちだ。
デヴィルンヌを殺したことで魔王に感謝されるなんて。
確かに勇者達が結束して……という考えは地上にはまだない。
おそらく……各々の国が勇者を選んで旅をさせ、魔界の情報や戦利品をその国に持ち帰らせるためだな。
各々の王国の利益のためだ。
1つの国から勇者がたくさん出ればそれでいいけど。
【勇者の聖剣】を始めとして、勇者の力を最大限に引き出させる武器は希少だ。
ボルハルトみたいに武器なしで戦える魔法使いタイプの勇者は滅多にいないしな。
「魔王……何でそんなに地上が欲しいんだ?」
「……え? ようやく私の考えにも興味が出てきたのかしら? いいわ、教えてあげる。だって地上は明るいんだもの。地上には綺麗な植物も資源もあるから、素敵だわ。……勇者さんなら知ってるでしょ? 魔界は暗いの。風も吹かない。土にも栄養がない。海も生物がまともに生きていける環境ではないの。魔界は魔族たちの魔力でモンスターとか動力源とかを産み出していくしかないわ。いくらなんでも不公平じゃない? 交渉しても人間は応じないんだから、徐々に力でねじ伏せて地上を分けてもらうしかないわ。勇者たちの力が強大だから、まだ上手くいっていないけどね」
そ……そんな!
不公平……そんな風に思っていたのか。
そうだったのか……。
「勇者を味方に引き込むことは必須事項だわ。もう聞いてるかもしれないけど、元勇者であるボルハルトは魔王軍で雇っていたの。私が聖属性の魔法を我慢する訓練の相手をしてくれたのも、ボルハルトよ。その代わりに魔界の鉱物とかを渡していたのよね。地上でお金になるらしいから」
そうだったのか!
え!? ボルバルトさんが……お金で……!?
「ボルハルトは最初、抵抗していたわよ? 『魔王軍に負けて地上に帰っても私に未来はない。いっそ殺してくれ!』って言っていたの。自害しそうな勢いだったわ。けど、彼の力は私にとって有益だったの。そんなことはさせたくなかった。だから地上で換金できるものを渡していたの。……で、私達に協力してくれたわ」
……よく分からないな。
「その話……本当か? ボルハルトさんは、お金で動く感じの人には見えなかったけどな」
「そうね。魔界の鉱物を渡していた話は本当だけど、彼がお金で動いていたっていうのは嘘だったと思うの。結局はデヴィルンヌにどっぷりと魅了されていたのね。今回の件で分かったわ。もともと、ボルハルトが魔王城に乗り込んで来たとき、彼を倒したのはデヴィルンヌだったの。じつは誘惑されていて、彼女の下僕になっていたってことね。勇者として自害してケリをつけたい一面と、デヴィルンヌの役に立ちたい一面を備えていたんだわ。きっとデヴィルンヌに『私に惚れていることは隠して、金と引き換えに魔王に協力することにしろ』って言われていたんだわ」
「な、なるほど……」
「……裏でスワン王国の侵略を考えているとは知らなかったわ。それに、ボルハルトが魔法陣を使えることも……私は知らなかったわ。これらのこともデヴィルンヌが口止めしていたと思うの。結局は私よりもサキュバスに夢中だったのね……。お金なんかより愛情よ」
愛情というより性欲な気がするが……。
そこら辺は俺にはよく分からないな。
……童貞だし。
「以前はデヴィルンヌを魔法四天王にして良かったって思っていたわ。簡単に人間の男を操るんだもん。けど、こんなことになるなんて。私には仲間を見抜く力がないわね。男を魅了する力もないし。そうよね……私なんて、あなたを魅了するのにこんなに苦労しているんだもんね……」
「へっ……!?」
魔王が上から俺の顔を覗き込んでニッコリと笑う。
な、なんだなんだ?
何を言っているんだ……?
あまり触れないでおこう。
「な、なんか……組織のトップも大変なんだな」
俺も勇者パーティでリーダーだった。
5人編成で数は少なかったけど、大変だった。
魔王軍はもっと巨大な組織だ。
大き過ぎて大変さを想像できないな。
「……そうよ。だから、あなたがデヴィルンヌを殺してくれて助かったわ。私の組織が安定するわ。発展を求めて仲間にしたのに、不安定過ぎて危うく崩壊しそうだったわ」
「……」
「そういうわけで今回、時は戻し過ぎないわ。デヴィルンヌは地上で死んだからね。このままスタート時まで戻すと復活しちゃうもの」
地上にいた生物は時を戻され、魔界にいる生物は時を戻されないんだったな。
って、毎回スタート地点に戻すんじゃないんだ!?
時をどれぐらい戻すのかは魔王に決定権があるんだな……。
お、俺の時間が……地上の時間が魔王次第だなんて!
本当に恐ろしい呪いだな。
「……それにしても、勇者さんはデヴィルンヌに夢中だったし、スカーレンにも夢中だったわね。サキュバスの残り香があったとはいえ、スカーレンのこと、まんざらでもないんでしょ? あなたは私には全く興味がなくて嫌になっちゃうわ。勇者さんを私の味方にするには、彼女たち以上の魅了をしないとね」
えっ!?
魔王がヒールを脱ぎ、ベッドに上がって来た。
そして黒いロングドレスを捲り上げ、俺の顔の上に座ろうとしている。
俺は仰向けの状態だ。
魔王の白いパンツが近づいてくる……!!
あ……顔に負荷がかかるぞ!
「うっぷ……!?」
鼻と口が彼女のお尻で塞がれた。
あ……魔王の背中が見えるぞ。
ロングドレスは背中にも装飾があり綺麗だ……。
「どう?」
が、顔面騎乗というやつか……!
グリグリとお尻を動かしているぞ!?
あ、ああ……魔王の白いパンツが……お尻が……俺の顔の上に……。
『どう?』……と言われても……!
「ぶはぁっ……ブフッ!」
「あら、喋れないかしら。ふふっ。苦しそうね……?」
「うっ!? うぅっ~!」
「あら? けど、勃ってきたわね? こういうのも好きなのね」
「んんんっ!? んんっー!!」
「そうよね。この前、私に顔を足で踏まれて興奮してたもんね。こういうのが好きなのよね」
そ、そんな……!
俺は……興奮しているのか?
何をやっているんだ……。
けど、魔王のお尻……柔らかい。
彼女の重みで顔が少し痛いけど……。
「ふふっ。私の椅子みたいになっているわね。家具扱いされて嬉しいでしょ?」
なっ!?
そんな……屈辱的なことをされているのか……!
けど、勃起してしまっている……。
な、なんなんだ俺は……。
「じゃあこのまま、足でしちゃおうかな?」
えっ!?
また足で……!?
そういえば、未だに魔王は腕に包帯をしていたな。
「……うううっ!?」
この感触は……あ、足コキだ!
俺の顔面に座ったまま脚を伸ばし、そのまま足コキをしている!
気持ち良くなってきた……。
抵抗できずに、ただただ蹂躙されていく感じに、俺は興奮してしまっている……!
「魔王様……この男、かなり興奮していますね」
俺の足側の方にいるサリーヌから侮蔑の視線を感じるぞ……!
また余計なことを言って!
「き、きも~い」
もう1人の魔族は俺にひどいことを言っている!
ほ、ほぼ初対面なのに……!
「あら、そう? 良かったわ。そろそろ私にも夢中になって欲しいんだけど」
「うっ!? う……ううぅっ……!!」
く、苦しい……重くて顔が痛い!
けど……気持ち良いっ!!
な、なんだこれぇ……!?
「うぁっ! わああぁっ!!」
「ほら、シコシコシコシコ……どんどん速くなってるわよ。チンチンがすごい硬くなってるし。ビクンビクンして腰を自分で動かしちゃって……もう……本当に変態勇者ね。ちょっと……! 先っぽから何か出てきてるわよ? この変態。変態勇者」
「うぅっ!? うううぅっ~!!」
へ、変態勇者……!?
な、なじってくる! 俺をイジメてくる……!
こ、こんな状態で興奮して……俺は……俺は!
ああ、イく! で、出ちゃう……!
もう出ちゃうよ……!!
「魔王様……もう射精しそうですよ」
「あら、ホント? 早いわね。私もノってきちゃったかしら。……でも、ダメ」
あ……! あぁっ……!?
魔王が足コキをやめた!!
また……また射精できないのか……!!
「さて……じゃあ魔力の注入を行なおうかしら。注入する量を調節しないとダメね。デヴィルンヌを倒した直後まで戻すわ」
「魔力の注入量を……調節?」
魔王が立ち上がり、俺の足側……サリーヌがいる方に向かう。
移動後、こちらを振り返り俺を見下ろしているぞ。
どのぐらい時間を戻すのかは、魔力の注入量で決まる……のか?
「具体的に……どの時点まで戻るんだ……?」
スカーレンとの行為をケーミーに見られているかいないかで、だいぶ状況が違ってくるぞ。
「ああ。あの見習いの女の子に見られた後なのか、見られる前なのかが不安なのかしら? これは……あなたへの罰よ……。あなたが魔族やモンスターを葬ってきた罰ね……。あなたが嫌がる方にしようかしら?」
罰……!?
まさか……ケーミーに見られた後に戻すつもりか!?
罰……罰って言うのはヒドいぞ。
つ、つらい……。
あ……魔王が右足を上げて、俺のチンコを踏みつけた。
魔力を注入するんだな。
ちょっと待ってくれ……。
「魔王……。確かに俺は魔族やモンスターを葬ってきた。今回のサキュバス達だってそうだ。でも、魔王も人間達を殺してきただろ? 地上にモンスターを放ち、魔族を侵攻させてさ。俺に一方的に罰を与える……って、それは違うんじゃないか?」
「あら。私のことを否定するのね。……サリーヌ、ミアリ。ちょっと外してくれる?」
「魔王様? 鎖は? この部屋から出たら、鎖は維持できません」
「大丈夫ですかー?」
2人が心配そうな声で確認する。
「大丈夫。もう魔力を注入するだけだから。ここに聖剣はないし。男の弱点を踏みつけているし」
「しかし」
「お願い……サリーヌ、ミアリ。何かあったらすぐに呼ぶから」
「は、はい」
サリーヌたちが部屋から出て行った。
鎖の力が緩む。
なんだなんだ?
魔王が真剣な表情になっているぞ。
「確かに……そうね。あなたは優しいから、私が『罰』って言うとショックを受けるのね? 分かったわ、この言葉は取り消すわ。私も人間に攻撃しているから、お互い様よね。罰と言ったことは謝るわ。……ごめんなさい」
あ、謝った!?
なんだ……?
魔王は策略家だから、本当なのか嘘なのか分からないな……。
「……私はね、あなたに仲間になって欲しいだけなの。あなた、戦闘も魔法も駆け引きもセンスがないもの。私が魔王になったここ100年、何十人も勇者が私を殺しに来ているわ。……だから分かるの。例えばボルハルトはさ、センスがあった。けど、あなたはセンスがない。才能がないの。戦いだけじゃないわ。かつての仲間とも良い関係じゃなかったのよね? あなたが不器用ながら努力だけでここまで来たっていうのは痛いほど分かるのよ。私も同じなのかもしれない。……だから、あなたは私にとって特別なの」
……え?
俺……煽られてる!?
いや、『私も同じ』……だって!?
な、なんだ?
今までの魔王と違う雰囲気だぞ。
しんみりしている感じがする。
「呪い系の魔法だけに絞って頑張って頑張って強くなってここまで上り詰めて、魔王軍をマネージメントして、発展しようとして、それでも言うことを聞かない子が多くってさ。上手くいってなくて……。なんか才能のなさを感じちゃってね。あなたは……私と通じ合えるのかなって思ったのよ。私の頑張りを認めてくれるのかな……って」
「ま、魔王……!? 何を言って……」
「……そういうことだから。早くギブアップして私の仲間になってね」
な、何をいきなり……!?
いや……これまで魔王の『私、がんばってます』アピールはけっこう多かった!
……確かにそうだ!
魔王は計算高くて策略家で、わりと嘘か本当か分からないんだけど……これは本音を言っているのかもしれない……。
ちょっと悲しげな表情だしね。
これが……魔王の本音?
「……話を戻すわね。あなたが戻る時点は、あなたとスカーレンがデヴィルンヌを倒した直後ね。前回、あなたも見ていたと思うけど、スカーレンはあなたが射精して呪いが発動する前に魔界に帰って来たわ。これからあなたが時間を遡っても、スカーレンは遡らない。……分かるかしら?」
俺は頷く。
そのルールは今までと同様である。
「……で、あの駆け出しの魔法使いは勇者さんのもとに向かっているところね。スカーレンは魔界にいるから、エッチを見られるトラブルは起こり得ない。……分かったわね? もちろん、いま魔界にいるスカーレンの記憶は保持されているわ。私としてはあなたが地上で人間達から迫害されていた方が好都合だけど……デヴィルンヌを葬ってくれた分、サービスするわ」
魔王……俺の敵なのか?
味方なのか……?
「じゃあまたね、勇者さん。いってらっしゃい」
魔王のちょっと悲しげな表情を見ながら、俺の意識は遠くなっていった……。
今回は……ベッドの上に仰向けの状態になっている。
天井が見えるぞ。
両手両足を鎖で縛られている。
……大の字の状態だ。
今回はふかふかのベッドの上でよかった。
前回は床の上だったからな……。
「勇者さん……目覚めたわね? 今回もけっこう時間が経過しているわ。最近はもうお疲れなのね」
俺の頭側から魔王の声がする……。
あ……足側には強気な目つきでこちらをニラむサリーヌもいるぞ。
「……スカーレンに手を出したわね?」
また水晶で全てを見ていたんだな。
「手を……出したよ」
俺がそう答えると、魔王がニッコリと笑った。
「ふふっ。あれはね……デヴィルンヌの影響よ。彼女の香りがあなた達を性的に興奮させたのよ」
なぁっ!?
デヴィルンヌの影響だって!?
香りで……発情させられたってことか?
そうか……そうだったのか……。
「俺も、スカーレンも強制的に発情させられていたってことか……」
「そうよ。サキュバスが死んだ後は男も女も関係なし。【サキュバスの残り香】なんて言われているわね。上位サキュバスの残り香は強烈よ。私が彼女と戦いたくなかった理由の一つでもあるわ。きっと死後も、敵を発情させて仲間のサキュバスを守るための仕組みなんだと思う。安心して、勇者さんはもう大丈夫よ。数時間で効果が切れるから」
それは知らなかった……。
スカーレン……エロ過ぎる上に可愛くて夢中になってしまっていたけど、態度が不自然だったのは間違いない。
「……最後に射精したのは正解ね。あの駆け出しの魔法使いに言い振らされたら、勇者さんにとって地上で生きていくことは困難になっていたわ」
「う……」
……その通りだ。
「デヴィルンヌの影響とは言え、少しはスカーレンに気があるんでしょ? 地上は嫌な社会よね。好きな人とエッチなことをしただけで裁かれてしまうなんて」
「……」
「勇者として答えにくい質問かしら? じゃあ、質問を変えるわね。……デヴィルンヌを殺したとき、あなたの表情が曇っていたわ。あれは何で? せっかく勝ったのに」
「表情が……曇ってた?」
「ほら、あの水晶玉を見てよ」
魔王がそう言うと、もう1人、女の子が登場した。
サリーヌではない。
尻尾が生えているので魔族だな。
水晶玉を持っている。
この子が最後の四天王だろうな……見覚えがある。
水晶玉……これで俺を監視しているのか。
「これだよー。私の水晶玉、過去に映したものを見ることもできるんだよー」
す、すごい機能だな……。
映し出された俺の表情は確かに曇っていた。
このシーンは、デヴィルンヌを倒した直後だな。
「俺は……できれば、むやみに殺したくはないんだ。このときも……そう思っていたはずだ」
「あら、甘いのね。そんなことを言っていたら、デヴィルンヌの思うツボだったじゃない。殺さなかったら、あなたの人生、どうなっていたか分からないわよ? いくら勇者とは言え、上位のサキュバスに目をつけられた人間の男が簡単に逃げられると思ってるの?」
うっ……!
「そんなことをスカーレンにも注意されたよ」
「ふふっ。そうよね。まぁ、そんな甘いところが地上であなたが評価されない理由の1つかもね」
「痛いところを突いてくるな……」
「デヴィルンヌを葬ってくれたのは、私的にはむしろありがとうよ」
「ありがとう……だって?」
「そうよ、感謝しているわ。スワン王国に攻め込んだのは……彼女の独断っていう話はしたわね? しかも搾精するだけの本能的な侵攻だったわね。あんな無計画な侵攻は良くないわ。私だってバカじゃないの。どこの国をどのタイミングで攻撃するかは考えて決めているのよ。人間の国王たちと駆け引きをしながら地上を攻めているわ。発展目覚ましい国や、新進気鋭の勇者が誕生した国に強いモンスターや魔族を送り込ませたり……とかね。『人間達の思い通りにさせないわよ』、『地上を私たちにも分けてちょうだい』……というメッセージになるわ。デヴィルンヌの侵攻の仕方は、もうやりたい放題よ。あのままだと本能のままに国をいくつも滅ぼしていたわ。なるべく被害は最小限の規模にしたいの。人間は必ず報復してくるからね。例えば、女勇者をたくさん育てて集めたりね。勇者がたくさん出てきて、しかも協力されたら魔族にとっても大変よ。……だから、止めてくれてありがとう」
な、なるほど……。
なんか……複雑な気持ちだ。
デヴィルンヌを殺したことで魔王に感謝されるなんて。
確かに勇者達が結束して……という考えは地上にはまだない。
おそらく……各々の国が勇者を選んで旅をさせ、魔界の情報や戦利品をその国に持ち帰らせるためだな。
各々の王国の利益のためだ。
1つの国から勇者がたくさん出ればそれでいいけど。
【勇者の聖剣】を始めとして、勇者の力を最大限に引き出させる武器は希少だ。
ボルハルトみたいに武器なしで戦える魔法使いタイプの勇者は滅多にいないしな。
「魔王……何でそんなに地上が欲しいんだ?」
「……え? ようやく私の考えにも興味が出てきたのかしら? いいわ、教えてあげる。だって地上は明るいんだもの。地上には綺麗な植物も資源もあるから、素敵だわ。……勇者さんなら知ってるでしょ? 魔界は暗いの。風も吹かない。土にも栄養がない。海も生物がまともに生きていける環境ではないの。魔界は魔族たちの魔力でモンスターとか動力源とかを産み出していくしかないわ。いくらなんでも不公平じゃない? 交渉しても人間は応じないんだから、徐々に力でねじ伏せて地上を分けてもらうしかないわ。勇者たちの力が強大だから、まだ上手くいっていないけどね」
そ……そんな!
不公平……そんな風に思っていたのか。
そうだったのか……。
「勇者を味方に引き込むことは必須事項だわ。もう聞いてるかもしれないけど、元勇者であるボルハルトは魔王軍で雇っていたの。私が聖属性の魔法を我慢する訓練の相手をしてくれたのも、ボルハルトよ。その代わりに魔界の鉱物とかを渡していたのよね。地上でお金になるらしいから」
そうだったのか!
え!? ボルバルトさんが……お金で……!?
「ボルハルトは最初、抵抗していたわよ? 『魔王軍に負けて地上に帰っても私に未来はない。いっそ殺してくれ!』って言っていたの。自害しそうな勢いだったわ。けど、彼の力は私にとって有益だったの。そんなことはさせたくなかった。だから地上で換金できるものを渡していたの。……で、私達に協力してくれたわ」
……よく分からないな。
「その話……本当か? ボルハルトさんは、お金で動く感じの人には見えなかったけどな」
「そうね。魔界の鉱物を渡していた話は本当だけど、彼がお金で動いていたっていうのは嘘だったと思うの。結局はデヴィルンヌにどっぷりと魅了されていたのね。今回の件で分かったわ。もともと、ボルハルトが魔王城に乗り込んで来たとき、彼を倒したのはデヴィルンヌだったの。じつは誘惑されていて、彼女の下僕になっていたってことね。勇者として自害してケリをつけたい一面と、デヴィルンヌの役に立ちたい一面を備えていたんだわ。きっとデヴィルンヌに『私に惚れていることは隠して、金と引き換えに魔王に協力することにしろ』って言われていたんだわ」
「な、なるほど……」
「……裏でスワン王国の侵略を考えているとは知らなかったわ。それに、ボルハルトが魔法陣を使えることも……私は知らなかったわ。これらのこともデヴィルンヌが口止めしていたと思うの。結局は私よりもサキュバスに夢中だったのね……。お金なんかより愛情よ」
愛情というより性欲な気がするが……。
そこら辺は俺にはよく分からないな。
……童貞だし。
「以前はデヴィルンヌを魔法四天王にして良かったって思っていたわ。簡単に人間の男を操るんだもん。けど、こんなことになるなんて。私には仲間を見抜く力がないわね。男を魅了する力もないし。そうよね……私なんて、あなたを魅了するのにこんなに苦労しているんだもんね……」
「へっ……!?」
魔王が上から俺の顔を覗き込んでニッコリと笑う。
な、なんだなんだ?
何を言っているんだ……?
あまり触れないでおこう。
「な、なんか……組織のトップも大変なんだな」
俺も勇者パーティでリーダーだった。
5人編成で数は少なかったけど、大変だった。
魔王軍はもっと巨大な組織だ。
大き過ぎて大変さを想像できないな。
「……そうよ。だから、あなたがデヴィルンヌを殺してくれて助かったわ。私の組織が安定するわ。発展を求めて仲間にしたのに、不安定過ぎて危うく崩壊しそうだったわ」
「……」
「そういうわけで今回、時は戻し過ぎないわ。デヴィルンヌは地上で死んだからね。このままスタート時まで戻すと復活しちゃうもの」
地上にいた生物は時を戻され、魔界にいる生物は時を戻されないんだったな。
って、毎回スタート地点に戻すんじゃないんだ!?
時をどれぐらい戻すのかは魔王に決定権があるんだな……。
お、俺の時間が……地上の時間が魔王次第だなんて!
本当に恐ろしい呪いだな。
「……それにしても、勇者さんはデヴィルンヌに夢中だったし、スカーレンにも夢中だったわね。サキュバスの残り香があったとはいえ、スカーレンのこと、まんざらでもないんでしょ? あなたは私には全く興味がなくて嫌になっちゃうわ。勇者さんを私の味方にするには、彼女たち以上の魅了をしないとね」
えっ!?
魔王がヒールを脱ぎ、ベッドに上がって来た。
そして黒いロングドレスを捲り上げ、俺の顔の上に座ろうとしている。
俺は仰向けの状態だ。
魔王の白いパンツが近づいてくる……!!
あ……顔に負荷がかかるぞ!
「うっぷ……!?」
鼻と口が彼女のお尻で塞がれた。
あ……魔王の背中が見えるぞ。
ロングドレスは背中にも装飾があり綺麗だ……。
「どう?」
が、顔面騎乗というやつか……!
グリグリとお尻を動かしているぞ!?
あ、ああ……魔王の白いパンツが……お尻が……俺の顔の上に……。
『どう?』……と言われても……!
「ぶはぁっ……ブフッ!」
「あら、喋れないかしら。ふふっ。苦しそうね……?」
「うっ!? うぅっ~!」
「あら? けど、勃ってきたわね? こういうのも好きなのね」
「んんんっ!? んんっー!!」
「そうよね。この前、私に顔を足で踏まれて興奮してたもんね。こういうのが好きなのよね」
そ、そんな……!
俺は……興奮しているのか?
何をやっているんだ……。
けど、魔王のお尻……柔らかい。
彼女の重みで顔が少し痛いけど……。
「ふふっ。私の椅子みたいになっているわね。家具扱いされて嬉しいでしょ?」
なっ!?
そんな……屈辱的なことをされているのか……!
けど、勃起してしまっている……。
な、なんなんだ俺は……。
「じゃあこのまま、足でしちゃおうかな?」
えっ!?
また足で……!?
そういえば、未だに魔王は腕に包帯をしていたな。
「……うううっ!?」
この感触は……あ、足コキだ!
俺の顔面に座ったまま脚を伸ばし、そのまま足コキをしている!
気持ち良くなってきた……。
抵抗できずに、ただただ蹂躙されていく感じに、俺は興奮してしまっている……!
「魔王様……この男、かなり興奮していますね」
俺の足側の方にいるサリーヌから侮蔑の視線を感じるぞ……!
また余計なことを言って!
「き、きも~い」
もう1人の魔族は俺にひどいことを言っている!
ほ、ほぼ初対面なのに……!
「あら、そう? 良かったわ。そろそろ私にも夢中になって欲しいんだけど」
「うっ!? う……ううぅっ……!!」
く、苦しい……重くて顔が痛い!
けど……気持ち良いっ!!
な、なんだこれぇ……!?
「うぁっ! わああぁっ!!」
「ほら、シコシコシコシコ……どんどん速くなってるわよ。チンチンがすごい硬くなってるし。ビクンビクンして腰を自分で動かしちゃって……もう……本当に変態勇者ね。ちょっと……! 先っぽから何か出てきてるわよ? この変態。変態勇者」
「うぅっ!? うううぅっ~!!」
へ、変態勇者……!?
な、なじってくる! 俺をイジメてくる……!
こ、こんな状態で興奮して……俺は……俺は!
ああ、イく! で、出ちゃう……!
もう出ちゃうよ……!!
「魔王様……もう射精しそうですよ」
「あら、ホント? 早いわね。私もノってきちゃったかしら。……でも、ダメ」
あ……! あぁっ……!?
魔王が足コキをやめた!!
また……また射精できないのか……!!
「さて……じゃあ魔力の注入を行なおうかしら。注入する量を調節しないとダメね。デヴィルンヌを倒した直後まで戻すわ」
「魔力の注入量を……調節?」
魔王が立ち上がり、俺の足側……サリーヌがいる方に向かう。
移動後、こちらを振り返り俺を見下ろしているぞ。
どのぐらい時間を戻すのかは、魔力の注入量で決まる……のか?
「具体的に……どの時点まで戻るんだ……?」
スカーレンとの行為をケーミーに見られているかいないかで、だいぶ状況が違ってくるぞ。
「ああ。あの見習いの女の子に見られた後なのか、見られる前なのかが不安なのかしら? これは……あなたへの罰よ……。あなたが魔族やモンスターを葬ってきた罰ね……。あなたが嫌がる方にしようかしら?」
罰……!?
まさか……ケーミーに見られた後に戻すつもりか!?
罰……罰って言うのはヒドいぞ。
つ、つらい……。
あ……魔王が右足を上げて、俺のチンコを踏みつけた。
魔力を注入するんだな。
ちょっと待ってくれ……。
「魔王……。確かに俺は魔族やモンスターを葬ってきた。今回のサキュバス達だってそうだ。でも、魔王も人間達を殺してきただろ? 地上にモンスターを放ち、魔族を侵攻させてさ。俺に一方的に罰を与える……って、それは違うんじゃないか?」
「あら。私のことを否定するのね。……サリーヌ、ミアリ。ちょっと外してくれる?」
「魔王様? 鎖は? この部屋から出たら、鎖は維持できません」
「大丈夫ですかー?」
2人が心配そうな声で確認する。
「大丈夫。もう魔力を注入するだけだから。ここに聖剣はないし。男の弱点を踏みつけているし」
「しかし」
「お願い……サリーヌ、ミアリ。何かあったらすぐに呼ぶから」
「は、はい」
サリーヌたちが部屋から出て行った。
鎖の力が緩む。
なんだなんだ?
魔王が真剣な表情になっているぞ。
「確かに……そうね。あなたは優しいから、私が『罰』って言うとショックを受けるのね? 分かったわ、この言葉は取り消すわ。私も人間に攻撃しているから、お互い様よね。罰と言ったことは謝るわ。……ごめんなさい」
あ、謝った!?
なんだ……?
魔王は策略家だから、本当なのか嘘なのか分からないな……。
「……私はね、あなたに仲間になって欲しいだけなの。あなた、戦闘も魔法も駆け引きもセンスがないもの。私が魔王になったここ100年、何十人も勇者が私を殺しに来ているわ。……だから分かるの。例えばボルハルトはさ、センスがあった。けど、あなたはセンスがない。才能がないの。戦いだけじゃないわ。かつての仲間とも良い関係じゃなかったのよね? あなたが不器用ながら努力だけでここまで来たっていうのは痛いほど分かるのよ。私も同じなのかもしれない。……だから、あなたは私にとって特別なの」
……え?
俺……煽られてる!?
いや、『私も同じ』……だって!?
な、なんだ?
今までの魔王と違う雰囲気だぞ。
しんみりしている感じがする。
「呪い系の魔法だけに絞って頑張って頑張って強くなってここまで上り詰めて、魔王軍をマネージメントして、発展しようとして、それでも言うことを聞かない子が多くってさ。上手くいってなくて……。なんか才能のなさを感じちゃってね。あなたは……私と通じ合えるのかなって思ったのよ。私の頑張りを認めてくれるのかな……って」
「ま、魔王……!? 何を言って……」
「……そういうことだから。早くギブアップして私の仲間になってね」
な、何をいきなり……!?
いや……これまで魔王の『私、がんばってます』アピールはけっこう多かった!
……確かにそうだ!
魔王は計算高くて策略家で、わりと嘘か本当か分からないんだけど……これは本音を言っているのかもしれない……。
ちょっと悲しげな表情だしね。
これが……魔王の本音?
「……話を戻すわね。あなたが戻る時点は、あなたとスカーレンがデヴィルンヌを倒した直後ね。前回、あなたも見ていたと思うけど、スカーレンはあなたが射精して呪いが発動する前に魔界に帰って来たわ。これからあなたが時間を遡っても、スカーレンは遡らない。……分かるかしら?」
俺は頷く。
そのルールは今までと同様である。
「……で、あの駆け出しの魔法使いは勇者さんのもとに向かっているところね。スカーレンは魔界にいるから、エッチを見られるトラブルは起こり得ない。……分かったわね? もちろん、いま魔界にいるスカーレンの記憶は保持されているわ。私としてはあなたが地上で人間達から迫害されていた方が好都合だけど……デヴィルンヌを葬ってくれた分、サービスするわ」
魔王……俺の敵なのか?
味方なのか……?
「じゃあまたね、勇者さん。いってらっしゃい」
魔王のちょっと悲しげな表情を見ながら、俺の意識は遠くなっていった……。
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