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第6章 エリィ始動

マリエーヌのことが大好き(前編)

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 昨日、何とかエリィを魅了することに成功し、マリエーヌを救出することができた。
今日の午前中もエリィのご機嫌を伺いつつ、再び1発だけ射精を許し、俺の精子を提供した。
昼下がりの現在、俺はマリエーヌとミルフィーヌと一緒にサンビュルーリカに戻って来ている。
もちろん、エリィは城に残ったままだ。
彼女は俺が城から出て行くことに不満そうだったが、説得することができた。
まだまだプロトンの精液の効果は働いていたぜ。
ちなみに、ブルーも城の中である。
 一方、城の外で見守っていたアリスさん達は、一足先にサンビュルーリカに帰って来ていた。
現在、ミルフィーヌの家の中に集まっているところである。
1階にある、食事をする時によく使っている部屋だ。
赤い着物に身を包んだミルフィーヌが口を開く。

「……さて、私はプロトンの精液の濃縮液をすぐに作る。効果が切れるまで、あまり時間がないからな。時間はないが、もっと改良を加えて持続時間を延ばしたいところだ……」

 彼女は自分の予定を話し始めた。
その様子から、彼女の焦りが伝わってくる。
濃縮液の効果によりエリィが魅了状態になっている時間は限られているからだ。

「はい、そうですね。お願いします」

 俺の返事を聞き、ミルフィーヌが頷いた。

「……それと、お前たちは休んでおけ」

 マリエーヌと俺の方を見て、休息の指示を出した。
彼女は続けて喋り始める。

「空いている部屋はいくつかある。各自、自由に使ってくれ。ザッシはマリエーヌたちに食事を作ってあげてくれ。アリスとプロトンは私と一緒に行くぞ。濃縮液の作成を手伝って欲しい。泊まり込みで終わらせるぞ」

「はい、喜んで……!」

 アリスさんが笑顔で返事をした。
ミルフィーヌの役に立てるのが嬉しいのだろう。
プロトンは精液を提供するんだな。
何発ぐらいヌキ取られるのだろうか……?
めちゃめちゃ忙しくなりそうだ。
ん? アリスさんは何を手伝うんだ……?
まさかプロトンの精液を彼女がヌキ取って……い、いや! 想像するのはやめておこう! そこはミルフィーヌがやるはずだ! もしくはプロトンが一人でやるのだろう!
 焦り気味のミルフィーヌは、アリスさんとプロトンを連れてすぐに出かけて行った。
向かった先が研究所なのか魔女学校なのか分からないが、濃縮液を作れる場所に行くのだろう。
泊まり込みで終わらせるなんてブラック過ぎるが、ありがとうございます……!!

「食事ができるまで、2階の部屋で休んでいてくれ!」

 ミルフィーヌたちを見送った後、ザッシが俺とマリエーヌに元気良く告げた。
命令どおり、すぐに食事を作ってくれるようだ……! ありがとう、ザッシ……。
というわけで、俺とマリエーヌはしばらく休憩だ。
俺はマリエーヌと一緒に、2階の部屋に向かった。
 よし、ちゃんと話をしておこう。
俺を助けに来てくれたお礼を未だに言っていないからな。
 現在、彼女と一緒に階段を上っている。
俺の後ろを歩くマリエーヌの方を振り向き、彼女の姿を確認した。
おお、昨日よりかは健康体になっているように見える。

「マリエーヌ様……! お元気そうで何よりです」

 ガリガリではなくなった気がする。
エリィの城にあった食材をどれだけ食べたのだろうか……?

「あんたも無事でよかったわ」

 お、なんか素直で良い感じの反応だな。
俺とマリエーヌは階段を上がり終えた。
俺が歩くのをやめると、マリエーヌも立ち止まった。

「マリエーヌ様……地球でエリィと戦ってくれたんですよね? ありがとうございました! あと、城の中で身代わりになってくれて、ありがとうございました……!」

 彼女に向かって感謝の気持ちを述べた。
よし、ちゃんと目を見て伝えたぞ。

「なんか……自分の力不足を痛感したわ」

 マリエーヌが目を逸らしながらそう呟いた。
力不足を痛感した……か。
まぁ、エリィの強さは反則だからな。
魔人たちの強さも相当なものだったはずだ。
 ……それにしても、マリエーヌは俺の感謝の言葉に反応してくれないな。
反応してくれないのは、おそらく……照れ隠しだろう。
そう信じたい。
この子は素直じゃないからな……。

「……とは言え、なんとかなってよかったわ。ところで……エリィを魅了する件はどう? どんな感じ?」

「う~ん、しばらくは城に通うことになりそうですね。ミルフィーヌさんがブルーで行なった実験を参考にすると、明後日の夜ぐらいに効果が切れる予定です。なので、また明日か明後日にエリィの城に行きたいところです。それまでにミルフィーヌさんが濃縮液を作れるかどうかにかかっていますけどね」

「まぁ、ミルフィーヌならどうにかするでしょ。で、アンタ……エリィに精液を搾り取られているのよね? 大丈夫?」

 マリエーヌが心配そうな顔をしながらこちらを見ている。

「はい……以前はむさぼり尽くされてクタクタになって参っていましたけどね。例の濃縮液のおかげで1回あたり1発だけで切り上げることができています。本当にエリィを上手くコントロールできているんですよ」

「へぇ……ホントにすごいのね。アヒラメ族の精液の効果は……」

 と言いながら、なんか複雑そうな表情をしてうつむいているぞ。
なんだなんだ?
以前、自分がアヒラメ族の精液をぶっかけられて発情状態になったことを思い出しているのか?
……う~ん、まさかとは思うが、エリィに射精させられている俺の状況にジェラシーを感じてくれている可能性もなくはないな。
そうだったら嬉しいぞ。

「私に使わないでよね……?」

 あ、下を向いていたマリエーヌがこっちを見た。
なんかちょっとニラんでいて可愛いぞ。

「使いませんよ! そんなことをしなくったって……」

 あ、余計なことを言ってしまいそうだ。
そんなことをしなくったって、マリエーヌはけっこう俺のことを思っている……と言いそうになってしまったが、そんなことをわざわざ言うのはやめておこう。

「なによ?」

「い、いや……なんでもないです……!」

「……」

 マリエーヌが沈黙して、ちょっとムッとしている。
あそこまで言ってしまったら、推測されちゃっているよね。
……や、やべぇ。
怒っちゃうか?

「……ホント、あんたがこれからもエリィのところに行かなきゃいけないっていうのは、納得できないというか……」

 あ、怒らなかった。
しかし、ちょっと元気がない感じになってしまったぞ。
そうだよね……事態を好転することはできたけど、エリィとの問題を完全に解決したとは言えない。
これからの状況次第だよね。

「このままエリィを上手くコントロールできれば、城に行く頻度は減っていくと思いますよ。ミルフィーヌさんなら、さっき言っていたように研究を重ねて濃縮液の効果が持続する期間も延ばしてくれるはずです」

「うん。それは良いことなんだけど、そういうことじゃなくって……。う~ん……」

 ん? マリエーヌが珍しく煮え切らない。
まさか……本当に嫉妬してくれているのか?
俺が搾精されているから!

「な、なんですか!? マリエーヌ様……ま、まさか、嫉妬……」

「うっさいわね。とにかく……エリィをどうにかできそうなのね?」 

 あ、あれ……? 違うのか?
それとも、素直じゃないだけ……?
なんか態度がコロコロと変化している気がする。

「ええ、なんとかなりそうですよ。しばらくは忙しいと思いますが……」

「……けど、下手したらアンタがまた監禁されちゃうわよね? 例えば、濃縮液の効果が切れているときに城に行っちゃう、とか」

「はい、効果切れには気を付けなくてはいけませんね。しばらくは頻繁に城に行く必要があります。あ、将来的には濃縮液の効果が切れても何とかなるかもしれませんよ」

「え……どういうこと?」

「魅了はきっかけに過ぎない……というのがミルフィーヌさんの持論です。ミルフィーヌさんいわく、ザッシさんとプロトンさんへの魅了効果はもう切れているらしいです。元々あの2人はミルフィーヌさんに気があったか、テンプテーションをかけられているうちに本当に好きになったか……。いずれにせよ、魅了はきっかけに過ぎないという考えだそうです。まぁ、テンプテーションの魅了と、アヒラメ族の精液の発情効果を同じものとして考えていいのかどうかは分かりませんが……」

「へぇ、それは初耳だわ。そうなのね……」

 その理論だと、以前にマリエーヌはアヒラメ族の精液で興奮状態になり、俺と性的な関係を持ったけど、もともと俺に気があった、もしくは性的な関係の過程で俺を好きになっていった……ってことだ。
……これは言わないでおこう。

「え……ということは、エリィがアンタに惚れるかも……ってこと?」

 マリエーヌがまたもや不機嫌そうだ。
これはもう、完全に嫉妬してるでしょ……!
エリィが俺に惚れるかもしれない……か。
エリィが俺に惚れてしまえば、俺の心は痛いがコントロールは楽になる。
う~ん……けど、エリィと俺の関係は精液ありきでの関係だから、惚れられるところまではいかないだろうなぁ……。
ザッシとプロトンがミルフィーヌに惚れた話と同じようにはならないだろう。
けど、濃縮液なしでも仲を深めるところまではできそうな気がしてきたぞ。

「……正直なところ、エリィが僕に『惚れる』ところまではいかないと思います。彼女は、僕自身にはあまり興味がなく、精液に非常に興味アリ……という感じがします。彼女を僕に惚れさせるのは難しいでしょうけど、エリィを無害な方向に促して『仲良くなる』ことぐらいは、何とかできそうな気がします。エリィは無情・無慈悲って感じがするかもしれませんが、ブルーとか、サキュバスの部下のことはちゃんと思っているところもあって、完全に冷徹な魔王というわけではないんです」

 俺の中では、もはやエリィは『本質的にMな女性』として認定されているからな。
あのM女である本性の部分を突いていけば、濃縮液の効果が切れてもどうにかなりそうな気はしてきた。

「……そう。けど、その状態になるまでは不安だわ。魅了効果が切れているときに魔王の機嫌がたまたま悪かったり、濃縮液をかけ損ねたりして、また監禁されたら……」

 う~ん、まぁ、言い出したらキリがないよな……。
俺にかかっているんだよね。

「そ、その可能性はありますが……。僕に任せて下さい! もし失敗したら、その時は……また助けに来て下さい!」

 俺は笑顔でそう告げた。
我ながら情けない……。
が、ここら辺は頼らざるを得ないんだよなぁ。

「そうね。私ももっと強くならないと。……そもそも、アンタが精液を搾取され続けるのは嫌だもの」

 マ、マリエーヌ……!?
思わず本音がポロリ!?
嫉妬してくれた! 
ついに、ちゃんと嫉妬してくれたぞ……!
こ、これは今日……イケそうな気がするっ!
俺はマリエーヌを……また抱けるかもしれない!


---


 そんなこんなで、夜はザッシが手厚い料理を振る舞ってくれた。
俺は風呂場も使わせてもらい、綺麗に体を洗った。
その後は2階の部屋で、寝巻き用の布の服に身を包んでベッドの上で寝ている。
 さて……そろそろマリエーヌがいる部屋に行こうかな。
彼女はザッシが引くぐらい食事をし、風呂に入って今ごろ別の部屋で寝ているはずだ。
……ちゃんと俺からマリエーヌのところに行かなきゃな。
さっきはけっこう良い雰囲気だったはずだ。
俺の中で気持ちが盛り上がっちゃっているけど、マリエーヌは疲れてるかなぁ……。
地下で拘束状態のまま監禁されていたから、やっぱり疲れてるよね……。
ここで、アプローチを仕掛けたら、『私は疲れてんのに。空気読みなさいよ……』とか、ネチネチ言われてしまいそうだ。

「……ねぇ、いる?」

 あ! 部屋の外からマリエーヌの声が聞こえた!

「います!」

 俺がすぐに返事をすると、マリエーヌが部屋に入って来た!
まさかの!? 向こうから!?

「あ、すみません! いま行こうと思っていたんですよ!」

 そう返事をしながら、俺はすぐにマリエーヌに駆け寄った。

「え……そうなの? 別に謝ることじゃないんだけどさ」

 ……お、優しいぞ。
ちょっと笑顔である。

「それではマリエーヌ様。こちらにどうぞ……」

 俺は彼女をベッドに案内した。

「……あら、親切ね」

 優しいマリエーヌは大歓迎である。
優しくなくても歓迎するけどね。
本当は彼女の手を繋ぎたかったが、あまり調子に乗るのはやめておこう。

「よいしょ」

 マリエーヌがベッドの上に座った。
俺も彼女と横並びでベッドの上に座ろう。
おぉ……マリエーヌも風呂に入ったようだぞ。
白のバスローブを着用しているし、メイクが取れている。
肌がキメ細かくて綺麗だ……。
フローラルな香りも漂っているしな。
あ、髪がちょっと湿っているな……。
髪が完全に乾いていない状態は色っぽいよ!
ああ、もう好き好き! マリエーヌ……!

「マリエーヌさま! ……大好きです!」

 俺はマリエーヌに抱きついた。
マリエーヌに小細工は必要ない。
俺の部屋でマリエーヌを抱いたとき、気持ちをストレートに伝えた。
それが効果的だったのかもしれない。
彼女には直球がよく効くはず……!

「ちょっ! なによ!? 許可なく勝手に抱きついて……!」

「マリエーヌ様のことが、大好きです!」

 俺はそう言いながら、マリエーヌのぷるっとした唇に顔を近づける。
あぁ、良い香り。

「なっ!? またそうやって……」

 俺がフローラルな香りに浸っていると、マリエーヌの両腕が素早く動いた。
そのまま俺が着ている布の服を掴み、俺をベッドに押し倒してきた。

「……えっ!? マリエーヌさまっ!?」

 し、しまった……!!
怒らせてしまったか!?
俺は込み上がる感情を抑えきれずに、まるで10代のような、恋愛初心者のアプローチをしてしまったのかもしれない。
ベッドに上がって即エッチするほど、俺とマリエーヌの距離は縮まっていなかった!
先ほど、彼女にしっかりとお礼を言ったけど、もう一度『今回の件は、本当にありがとうございました……』と言ってから始めるべきだった……!

「ニホンに行ったときの夜と同じようにいくと思ったら大間違いよ……! あのときは、よくもやってくれたわね!」

「……マ、マリエーヌさまっ!?」

 俺が思っていたのと違った……!
ベッドに上がって即エッチを仕掛けたことをとがめられているわけではないようだ! 
そもそも彼女は、俺に主導権を握られるのが嫌なようだ。
マリエーヌが日本に来たとき、俺の部屋で俺にされるがままになっていたことが気に入らなかったってことだな!
あのときは満更まんざらでもない感じだったのに……。

「アンタとの関係について、私だって真剣に考えているんだけどさ……。けど……けどね、調子に乗り過ぎ!」

 お……なんか嬉しいことを言ってくれている!
けど、やはり主導権は握られたくないんだな。

「す、すみません……!!」

 謝ったが、あまり効果はないようだ。
マリエーヌが俺の頭の方に移動して来たぞ。
仰向けにされた俺の目の前にマリエーヌのお尻が見える。
まさか……顔騎でもする気か!?
あ、違う……フトモモを俺の顔に挟んできた。
彼女のお尻は俺の首から胸の辺りにあるぞ。
ちょっと苦しい……。
あぁ、椅子にされてしまった。

「本当は、こういうのがいいんでしょ? わかっているわ」

 え!? マリエーヌが足に力を込めたぞ!
フトモモから顔が抜けない!
これじゃあマリエーヌのことを抱けないんですけど……。

「わっ! な、なんで!? なんで昔の強気な責めに戻ってるんですか!? この前はそんなことなかったのに……」

 過去、色々とマニアックな責めをされたのを思い出すぞ。

「こ、この前のは特別よ! これだって少しは愛情を感じるでしょ!?」

「えぇっ? どうでしょう……!?」

 やはり魔女……俺の部屋で抱かれたときのように、男にされるがままのエッチは受け入れられないのかもしれない。
あの時はそこまで嫌がっている感じはしなかったんだけどな……。
思い出してみたら、『やばい、されるがままになってしまっていた……。私は誇り高き魔女なのに……』とか思ってしまったのだろうか。
まぁ、エッチしているときは良かったけど、思い出してみると『やらかしちゃった』って思うことはあるよね。
マリエーヌは素直じゃないだけ……って感じもするんだけどなぁ。
本当は抱かれたいけど、プライドが許さないのかもしれない。
こ、この考え方……ポジティブ過ぎるかな?

「ほらほら! いいでしょ?」

 彼女はフトモモに力を込めて、俺の顔を左右にユサユサと揺らしている。
めっちゃ久々の、ほらほらマリエーヌだ!

「……アンタは魔力の交換が少ないからさ。子づくりするのは現実的じゃないでしょ。だから、将来的にはやっぱり私の奴隷よ。それならずっと一緒にいられるし」

 う……マリエーヌッ! 将来の話を振ってきたな……。
そうだ……マリエーヌの主張は『俺を奴隷にし、ずっと魔女の里で一緒に暮らす』……だったな。
向こうの世界でエッチした日に言っていたぞ。
子づくりして子孫を授かった場合、俺はマリエーヌのもとから去っていかなくてはならないんだった……。
奴隷でいる場合は、子づくりを試みることはできないけど、ずっとマリエーヌと一緒にいられるのだ。
魔女の里の法律でそう決まっていることを、過去に連れて行かれたときに魔女学校の講義で学んだ。
 それにしても、『子づくりは現実的ではない』……か。
その通りだけど、面と向かって言われると悲しいな。
俺の魔力が低過ぎるということだ。
エリィには俺の精液を重宝されていたから、余計に悲しく感じるぞ。
一回のセックスで0.05%交換できたって言っていたからな、50%以上交換して赤ちゃんを授かるためには1000回ぐらいのセックスを必要とする計算だな。
う~ん、そんなにたくさんマリエーヌとエッチできるのか……。
って……そうじゃないな。
マリエーヌは、自分の里を作るために子沢山の状態になることを目指しているわけだな。
俺にそれだけ時間をかけることは現実的ではない……と言いたいのだろう。
回数でなんとかなるのはありがたい……という考え方もできるけどね。
地球では不妊治療している人もいるわけだから……。
好きな人との子供を授かったら、それだけでとても幸せなことじゃないか……と思うぞ。
 そもそも、子供を授かることができたら、俺とマリエーヌは一緒にいられないわけだ。
俺はマリエーヌと一緒にいたいから、そんな選択はしたくない。
子供を授かったのに両親は離れ離れになるって、意味が分からない法律なんだよな……。
まぁ、地球人の考え方を押し付けても良くないか。
これまでサンビュルーリカを見てきて、魔女の価値観が俺の価値観とは全く違うことは分かっている。
魔女たちが魔女たちだけで里を発展させていくためには、里の外から優秀な他種族の男が入って来ることは弊害にしかならないってことなんだろうな。
 マリエーヌ的には、魔女の里の発展というよりは、『自分の里を作る』ために、俺より魔力の高い多くの男とセックスして子沢山の状態になりたい……という考えのようだ。
『自分の里を作る』という目標は、学生時代も、日本に来たときも言っていたので、かなり強い意志があるのだろう。

「……その方がいいと思うの。アンタとは、ずっと一緒にいられるのが一番よ」

 やはりマリエーヌの意見は一貫している。
嬉しいことを言ってくれるぜ……。

「ケンジは……どう思ってんのよ?」

 うっ!
フトモモに顔を挟まれながらも、目の前にはマリエーヌの顔が見える。
俺のことを見下ろしているぞ。
あぁ……彼女の表情を見てみると、けっこう真剣に言っていることが分かる。
冗談ではなく、本気で俺を正式な奴隷にして一生一緒にいる……という考えのようだ。

「マ、マリエーヌさま……。僕もマリエーヌ様と、ずっと一緒にいたいです……」

 この気持ちは俺も一緒だぜ!
けど……

「そう……ケンジのその気持ちは嬉しいんだけどさ、アンタはチキュウでの生活をどうするのか決めないとダメじゃない。一度奴隷としてサンビュルーリカに入ったら、出入りできないわよ? 今はまだ、あなたも、ザッシもプロトンも、奴隷じゃなくて客人だから出入りできるけど」

 そ、そうなんだよ……。
一生、この里にいる覚悟が必要なんだ。
簡単に『一緒にいたい』と言ってはダメだ……。

「は、はい……」

「……将来的に私が新しい里を作ることができたら、住む場所はサンビュルーリカじゃなくなるけどね。けど、その場合も、ケンジとは子づくりして離れ離れになるか、子づくりしないで私の奴隷になるかの二択よ。後者の場合、チキュウには戻れないわよ。このルールは『全体魔女法』だから、サンビュルーリカじゃなくても適用されるの」

 ……そうだ、『全体魔女法』だ。
サンビュルーリカだけではなく、全ての魔女の里に適用される法律だな。
う~ん……どの里で暮らすことになろうとも、俺が奴隷になろうとマリエーヌと子づくりしようとも、結局マリエーヌは何人もの男と子づくりをすることになるんだよな……。
い、嫌だなぁ……。

「……」

「……」

 俺の最善の道は、マリエーヌと一緒にいる道だ。
魔法使いの村の召喚士が死んで俺だけが地球に転移したとき、マリエーヌと二度と会えないことに気づいた。
そのとき、彼女のことが本気で好きなことが分かったんだ……!
彼女が他の男達と子づくりしているのを我慢しつつ、俺はマリエーヌの正式な奴隷としてサンビュルーリカか彼女が新しく作った里で暮らす……という道がやはり最善なのだろうか……?
地球で暮らせなくなるどころか、帰ることすらできなくなるという驚異のオマケ付きなんだ……。
俺は、この道に進む覚悟を決めなくてはならないわけだ。

「……」

「……」

 俺が沈黙しているので、マリエーヌも沈黙している!
こ、答えを出せない……! 
答えを出せないぞ、これは!

「……まぁ、そんな焦って答えを出さなくてもいいわよ」

 マリエーヌが口を開いた。

「あ、はい……」

「自分が育った世界を捨てるってことだから、簡単に決断できるものではないわ」

「……そ、そうですね。軽率でした……」

 簡単に『一緒にいたい』と言ってしまった……。
後悔している。
マリエーヌ、意志がしっかりしているな……。
俺はなんかモヤモヤするというか、決断できなくて情けない……という気持ちだ。

「ちょっと……そんなに辛気くさい顔をしないでよ。私の希望は、この里にしろ、自分で作る里にしろ、アンタを奴隷にすることだから。また魔女法の話になっちゃうんだけどさ、私は最終的に魔女の里に住まなきゃいけないの。分かっていると思うけど、私がチキュウに住むことは難しいからね」

「は、はい……」

 マリエーヌたちが日本に来たとき、このことも一緒に話したな。
ミルフィーヌがこの里のトップに立って魔女法を変えない限り、マリエーヌは魔女法から逃がれられない……。
サンビュルーリカのトップになるって……どれだけ大変なのだろうか?
魔女学校の先生の能力は、マリエーヌ達の遥か上のようだった。
商店街でマリエーヌとミルフィーヌがケンカしていたときに、簡単に止めていたからな。
彼女たちの先生だったから……というのもあるが、実力もあるに違いない。
里を守る魔女隊は、さらに上なのかもなぁ……。
魔女王はそのさらに上だよなぁ……。
トップに立つには、戦闘能力だけではなく政治的な力も必要だろう。
めちゃめちゃ困難な道のりじゃないか……。
いくらミルフィーヌとは言え、トップには立てるとは限らない。
……あ、そうだ。
もし魔女法の改正に成功したとしても、そもそも地球の先進国は管理社会だから、異世界人であるマリエーヌが他の国民と同じように生きていくことは難しいんだ。
この話も、向こうでしたな……。

「時間はまだ充分あるわ。そもそも、エリィの問題をきちんと解決しないと、アンタは私の奴隷になれないわよ? 奴隷になると魔女の里からは出られなくなるんだから」

 あ……そうか。
ぜんぜん気づかなかった。
俺がマリエーヌの正式な奴隷になったら、エリィの城に行けなくなるってことだな。
エリィをコントロールできなくなるぞ……。

「まぁ……今後のエリィの様子を見ながら考えましょう。案外、しばらくしたらアンタの精液の味に飽きちゃったりしてね。あと、他に美味しい精液を出す男が見つかるかもしれないし」

 そ、そんなことになれば俺は嬉しいが……。
うん……そうなることを願うぞ。

「まずはさ、もともと約束していた件に取り掛かりましょうよ。私の生まれの里を滅ぼした魔王を探す……って話ね。この件とエリィの件が片づく間にアンタはよく考えて、ちゃんと答えを出して欲しいわ」

「はい……。答えを出します……」

 とは言ったものの、やばい……気持ちが上がらない。
『エリィの問題をきちんと解決するまで』とか、『マリエーヌの生まれの里を滅ぼした魔王を探すまで』とか、決断の期限が延びて安心している自分がいる。
そんな自分とは違って、マリエーヌは『アンタを奴隷にして、ずっと一緒にいる』……と、ちゃんと決断して伝えている。
俺は地球の生活を捨てる決断ができない……!
なんか情けない……。
世の男性はプロポーズするときに、こんなプレッシャーのかかる決断を迫られているのか……。
いや、待て待て……そもそも、魔女法が厄介過ぎるんだよな。
魔女たち自身で里を発展させていく合理的なシステムなんだろうけど、日本生まれ・日本育ちの俺にとっては、そんなムチャ言うなよ……って感じの法律である。

「ちょっと、元気出しなさいよ」

 マリエーヌがフトモモで俺の顔を挟んだまま、励ましてくれた。

「は、はい……。ちょ、ちょっと待って下さい……」

 なんか自己嫌悪に陥ってきた……。
気持ちの回復に時間がかかりそうだ。
決断できない男……にはなりたくないと思っていたのだが。

「もう……すぐに決めなくていいって言ってるのに。ウジウジしていると、いじめちゃうわよ?」

 と言いながら、マリエーヌがバスローブを脱ぎ始めた。
あ……黒いブラジャーが見えたぞ。
お、大人っぽくてエロいな……。
って、この真剣な話し合いの後に何をする気!?
もしかして……エッチなこと? そ、そうだよね!?
この流れで……!?
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