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第十二章
80・恋と執着
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「噂?」
「ああ。思のことは朧に聞いただろ?」
「ええ。幼馴染で、あちらは朧様の事を婚約者だと思っていた、と」
「いまだに思っている、の間違いだな。悪いヤツじゃないんだが、思い込みが激しくてな」
やれやれ、と青白もため息をつく。
「朧がその気なら俺らだって手助け位したんだが、あいつは昔からずっとあんたに夢中だったからな。諦めろ、とはよく言ってたんだが」
「そんなに、ですか」
「そんなに、だよ。思がいなくたってあいつは薄氷の嫡男だ。そりゃ話なんかいくらでもあるが、なにがあってもあいつはずっとアンタ一筋でしかない。その為に軍人にまでなったんだからな」
「なんだか、申し訳ない気持ちになります」
「なに言ってんだ!アンタだって自分の名前を忘れるくらい、幼いころから苦労しっぱなしだ。そろそろ朧の奴と新しい生活をしたほうがいいな!ま、そういう事もあって、俺たち、朧の親友らはあんたを応援するんだよ」
ただなあ、と腕を組む。
「思はいい加減諦めないと、このままじゃ余計な事ばかりしでかすぞ。だから今日も、なにかあるんじゃないかと見張ってる」
「思さんはこの船に?」
「ああ。特等席の部屋にいる。で、この船でお嬢さん方のお披露目が舞台であるんだが」
「さっき聞きました。独身のお嬢様を舞台で、お見合いみたいにするって」
青白はまたため息をつく。
「悪趣味だよなあ。年頃のお嬢さんを見世物にするような真似、俺は嫌いだね」
なんとなくキイロも感じていたことを青白がはっきり言ってくれて、キイロはそっか、と気づいた。
(なんだか不気味な感じがしたのは、そういう感覚だったからかな)
「しかもそれが、どこかの悪趣味なおっさんならいいんだが、言い出しっぺが思ってあたり、余計に気になってな。変な事をやらかすんじゃないかと」
「でも、舞台に出ているだけで?」
「……あんたには言ってもいいか。警備に朧をご指名なんだよ」
「朧様を?」
「ああ。船内の警備くらいなら、と朧も了承したらしいが、それでも変なことに巻き込まれないか気になってな。幸い、この船の管理会社は知り合いなんで、強引にこうして店を出させて貰った、というわけさ」
「そういうわけだったんですね」
納得するキイロに、とうとう傍に立っていたりんが言った。
「ソーダ」
「あ、忘れてた。ごめんなさいりんちゃん、あの、ソーダをいただきたいのですが」
「わかった!すぐに作ってやるから待っておきな!」
青白が言うとりんは「うむ」と頷く。
「りんちゃんは本当にソーダが好きね」
「うむ。あれは良いものじゃ。われはあれがすきじゃ」
「好きなものはあるのは良いことねえ」
笑うキイロに「そうじゃろうかの」とりんは言った。
「好きが過ぎると執着に変わる。朧に思い入れているあの女とてそうじゃろう」
「随分と大人びたことを言うのね」
「われは中身はもう大人じゃ。子供のふりをしているだけじゃ」
「そうだったわね」
つい忘れてしまいそうになる。
「ほら、ソーダだ!」
ソーダを持って来た青白から受け取ると、りんの顔がぱあっと輝く。
「いただく!」
「おう、のめのめ!」
がはは、と笑う青白は、キイロと梅花にもソーダを渡した。
「ありがとうございます」
「いいって。折角船に乗ってるんだから楽しんでいってくれ」
「はい」
「おかわり」
りんが早速、ソーダのおかわりを要求して、皆はふっと笑った。
その頃朧は船外の警備の最中だった。
「そろそろ中へ移動されますか?」
舛花の問いに「そうだな」と頷く。
「中は随分と豪華ですよ。今日はお披露目ですからいろんな方が来ているようで」
「随分とにぎやかな様子だな」
「ええ。中はまるでお祭りのように賑やかだと」
「そうか」
「それと先ほど、橡の使いのものが」
「橡だと?」
「はい。なにやらお披露目会があり、そこに参加されるとのことで、朧様にも是非と」
「警備をやれ、とはその事だったのか」
「そのようですね。どうされます?」
「断る訳にもいかんだろう。警備はどうせ予定されていた事だし」
万一、なにかあるとしても、こっちは部下も居る。
「……気をつけながら、警備に当たろう」
「はっ」
舛花は頷き、朧に従ったが、なんとなく、妙な胸騒ぎがあった。
「ああ。思のことは朧に聞いただろ?」
「ええ。幼馴染で、あちらは朧様の事を婚約者だと思っていた、と」
「いまだに思っている、の間違いだな。悪いヤツじゃないんだが、思い込みが激しくてな」
やれやれ、と青白もため息をつく。
「朧がその気なら俺らだって手助け位したんだが、あいつは昔からずっとあんたに夢中だったからな。諦めろ、とはよく言ってたんだが」
「そんなに、ですか」
「そんなに、だよ。思がいなくたってあいつは薄氷の嫡男だ。そりゃ話なんかいくらでもあるが、なにがあってもあいつはずっとアンタ一筋でしかない。その為に軍人にまでなったんだからな」
「なんだか、申し訳ない気持ちになります」
「なに言ってんだ!アンタだって自分の名前を忘れるくらい、幼いころから苦労しっぱなしだ。そろそろ朧の奴と新しい生活をしたほうがいいな!ま、そういう事もあって、俺たち、朧の親友らはあんたを応援するんだよ」
ただなあ、と腕を組む。
「思はいい加減諦めないと、このままじゃ余計な事ばかりしでかすぞ。だから今日も、なにかあるんじゃないかと見張ってる」
「思さんはこの船に?」
「ああ。特等席の部屋にいる。で、この船でお嬢さん方のお披露目が舞台であるんだが」
「さっき聞きました。独身のお嬢様を舞台で、お見合いみたいにするって」
青白はまたため息をつく。
「悪趣味だよなあ。年頃のお嬢さんを見世物にするような真似、俺は嫌いだね」
なんとなくキイロも感じていたことを青白がはっきり言ってくれて、キイロはそっか、と気づいた。
(なんだか不気味な感じがしたのは、そういう感覚だったからかな)
「しかもそれが、どこかの悪趣味なおっさんならいいんだが、言い出しっぺが思ってあたり、余計に気になってな。変な事をやらかすんじゃないかと」
「でも、舞台に出ているだけで?」
「……あんたには言ってもいいか。警備に朧をご指名なんだよ」
「朧様を?」
「ああ。船内の警備くらいなら、と朧も了承したらしいが、それでも変なことに巻き込まれないか気になってな。幸い、この船の管理会社は知り合いなんで、強引にこうして店を出させて貰った、というわけさ」
「そういうわけだったんですね」
納得するキイロに、とうとう傍に立っていたりんが言った。
「ソーダ」
「あ、忘れてた。ごめんなさいりんちゃん、あの、ソーダをいただきたいのですが」
「わかった!すぐに作ってやるから待っておきな!」
青白が言うとりんは「うむ」と頷く。
「りんちゃんは本当にソーダが好きね」
「うむ。あれは良いものじゃ。われはあれがすきじゃ」
「好きなものはあるのは良いことねえ」
笑うキイロに「そうじゃろうかの」とりんは言った。
「好きが過ぎると執着に変わる。朧に思い入れているあの女とてそうじゃろう」
「随分と大人びたことを言うのね」
「われは中身はもう大人じゃ。子供のふりをしているだけじゃ」
「そうだったわね」
つい忘れてしまいそうになる。
「ほら、ソーダだ!」
ソーダを持って来た青白から受け取ると、りんの顔がぱあっと輝く。
「いただく!」
「おう、のめのめ!」
がはは、と笑う青白は、キイロと梅花にもソーダを渡した。
「ありがとうございます」
「いいって。折角船に乗ってるんだから楽しんでいってくれ」
「はい」
「おかわり」
りんが早速、ソーダのおかわりを要求して、皆はふっと笑った。
その頃朧は船外の警備の最中だった。
「そろそろ中へ移動されますか?」
舛花の問いに「そうだな」と頷く。
「中は随分と豪華ですよ。今日はお披露目ですからいろんな方が来ているようで」
「随分とにぎやかな様子だな」
「ええ。中はまるでお祭りのように賑やかだと」
「そうか」
「それと先ほど、橡の使いのものが」
「橡だと?」
「はい。なにやらお披露目会があり、そこに参加されるとのことで、朧様にも是非と」
「警備をやれ、とはその事だったのか」
「そのようですね。どうされます?」
「断る訳にもいかんだろう。警備はどうせ予定されていた事だし」
万一、なにかあるとしても、こっちは部下も居る。
「……気をつけながら、警備に当たろう」
「はっ」
舛花は頷き、朧に従ったが、なんとなく、妙な胸騒ぎがあった。
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