仮 弐

其の九 淫獄転生 其の弐 淫蕩遊戯 其の屍

　……処で、かって、此の妖魔界の春秋・戦国時代に、五芒星大陸（アトランティア）の覇権を争って、各妖魔族が激しい戦いを繰り返していた頃、神聖ヴラド公国の吸血貴族達の先端兵器開発機構では、妖魔界の魔物や妖怪達の魔力や妖力、そして種属特殊能力を詳細に分析して、新兵器の開発を行っていた時期が有ったのです。
　……其の当時に、開発された技術の一つに、獣人達（ライカンスロープ）の変身能力を分析して妖魔達に、新たに獣への変身能力を付加する獣人化実験（ベルセルク）が有り、神聖ヴラド公国の超高速進化研究開発機構（アクセラレーターズ）で、極秘裏に実験が繰り返されていたのでした。

　……元々、吸血種には蝙蝠や鼠への変身能力が有ったので、吸血貴族達は更に、他の動物や、最終的には妖獣や魔獣、そして幻獣への変身能力を、新たに付加する研究が行われていたのです。
　……最初は、小鬼族（ゴブリン）へハイエナへの変身能力を付加し、次に男屍食鬼（グール）や女屍食鬼達（グーラ）に狼への変身能力を付加し、やがて屍食鬼族に死神の霊魂を複製して憑依させ、蘇生鬼と云う新たな鬼族を誕生させたのでした。
　……蘇生鬼とは、名前の通り、動物の死体に、自分で錬成した人工霊魂を憑依させて強制的に蘇生させ、其の蘇生させた動物を、吸血鬼に血を吸われた人間族の様に、絶対服従する下僕（しもべ）に変える鬼族達だったのです。
　……そして、そんな蘇生鬼達に、更に淫魔の生き霊、つまり複製霊魂（ドッペルゲンガー）を憑依させて作ったのが、世にも悍（おぞまし）い屍姦鬼達（ネクログール）で、生き物の魂を抜き取って、屍にしてから性的に玩弄し、犯し続けたのでした。

　……処で、カミラ公国内の屍市国（ゾンビーランド）は、魂の無い人間族の子供を錬成して、其の肉体に人工霊魂を憑依させて作った人工屍人族（ゾンビ）と、僵尸（キョンシー）や骸骨人族（スケルトン）達の国だったのです。
　……屍姦鬼達は、時々、其の屍市国で人工屍人の少年少女達を買い、神聖ヴラド公国内の屍姦鬼達の国、霊園市国（ネクロポリス）に連れ帰って蘇生させ、常に全裸の稚児下僕達（しもべ）にして使役し、また、墓地で全裸の稚児下僕達を地面に押し倒して、淫らに陵辱していたのでした。
　……そして、そんな屍姦鬼達の男根（ペニス）で犯され、体内に射精された生物は、即死し、屍人（ゾンビ）として甦ったのです。
　……実は、屍姦鬼達の精液には、吸血鬼達の唾液の様に、相手を下僕（しもべ）として甦らせる効果が有り、吸血鬼達の体液は相手をゆっくりと死亡させ、屍姦鬼達の体液は相手を即死させたのでした。
　……而（しか）も、屍姦鬼達の精液は、人間族には強力な催淫剤で、また屍姦鬼達は自分の意思で好きな時に射精出来たので、十二分に陵辱してから射精して、下僕（しもべ）に変えたのです。

　……処で、錬金術には等級（グレード）が有って、主に人間族が扱う一番等級の低い、初級の錬金術では物質の操作、つまり錬成と分解のみが可能で、神仙族の扱う中級の錬金術では、物質の操作に加えて生命の操作、例えば魂魄（こんぱく）の魂（陽）と魄（陰）の相互変換を使って、新たな生物の錬成や、死者の蘇生が可能と為ったのでした。
　……そして、屍食鬼族に、死神（陰）と淫魔（陽）の複製霊魂を融合させた人造霊魂を、付加（エンチャント）して作られた屍姦鬼達は、其の中級錬金術を操れたのです。
　……また、そんな神聖ヴラド公国内の、屍姦鬼達の霊園市国（ネクロポリス）の東ユレヒト墓地大学の心霊工学研究所では、情報触媒師（アクセラレーター）と呼ばれる吸血貴族達や、殭屍族の（キョンシー）の科学者達が、心霊電子工学研究室の開発した心霊量子計算機（ゼーレ）を駆使して、死者蘇生工学の基礎実験が繰り返されていたのでした。

　……そして、そんな心霊工学研究所に、或る日、淫魔族の貴族から極秘の研究依頼が届いたのです。
　……実は、以前から女淫魔達（サキュバス）は、人間族の男性の元へ行き、好きでも無い男達を誘惑するのが面倒なので、自由に幽体離脱して色情霊化（エンティティー）して、強制的に精液を集める為の研究を続けていたのでした。
　……そして、心霊工学研究所の、死神族の霊魂刈り取り技術の研究から完成した、強制霊魂抜き取り技術の事を知り、其れを人工幽体離脱に利用出来無いかと考えたのです。

　……実は、既に淫魔族は、東ユレヒト墓地大学の、夢魔族（ナイトメア）の科学者達の夢工学研究所で、精神感応波（テレパシー）を利用した、相手の夢の中へ侵入する夢潜行技術（ドリーム・ダイブ）の開発に成功していたのでした。