仮 弐

其の九 淫獄転生 其の弐 淫蕩遊戯 其の児獣吸（）

　……処で、そんな賢者の石こと、裏セフィロトの概念（ロゴス）には、表裏一体（メビウス・テーゼ）以外にも様々な概念が有り、例えば温故知新（トロペー・テーゼ）では、熱情報量（エントロピー）を自在に操作する事が出来たのです。
　……例えば、温故知新（トロペー・テーゼ）の実行式（スクリプト）では、全ての物質の温度を自由な速度で上下させる、熱情報量（エントロピー）の制御が可能だったのでした。
　……魔導錬金術の、炎氷系の呪文内の実行式（スクリプト）では、周囲の大気や、大気中の水蒸気を急速に加熱したり、冷却したりして、火炎系の魔法や、水氷系の魔法を物理現象化（コンパイル）したのです。

　……また、魔導錬金術の、治癒魔法や復元魔法では、裏セフィロトの光陰如矢（アキレウス・テーゼ）の概念の、超光速変換（タキオナイズ）を使って時間を巻き戻し、対象（ターゲット）の生体組織や、物体の熱情報量（エントロピー）を反転（リバース）させて、対象を治癒したり、復元するのでした。
　……例えば、治癒や復元の魔法では、先（ま）ず、呪文内の疑心暗鬼（ナルシス・テーゼ）の免疫防御の実行式（スクリプト）が自動的に発動したのです。
　……そして、対象から泥や砂、金属片や毒、そして細菌やウイルスを全て転移除去し、其の後に因果律を巻き戻して、対象の治癒や復元を開始したのでした。
　……そして、そんな治癒や復元系の魔法から、不壊属性付与魔法（デュランダル）と魔法付与技術（エンチャント）が誕生したのです。
　……更に、其れ等の魔法が進化して、無菌の作業用結界（コクーン）の中に、失われた肉体を瞬時に復元し、同時に其の肉体と、幽体や霊体との絆（リンク）を復元し、死体に幽体や霊体を付与する、復活魔法（リザレクション）が誕生したのでした。

　……其れは、遥か昔（Long time ago）、各魔族の国家間で戦争を繰り返し、各国家が独自に国内の迷宮を、国の魔導士や軍隊で探索していた、現在の冒険者協会設立以前の時代の事で、各迷宮の魔物や遺物の情報を、各国家が独占していたのです。
　……迷宮の各階層の、上昇専用と下降専用の、二つ並んだ転移装置（テレポータル）の周囲を、楕円形に囲む二重の巨大な壁は、下階層から強力な魔物達が、上がって来るのを防ぐのと、其の階層の魔物達が転移装置へ侵入するのを防ぐのが目的で、安全地帯（セーフポイント）と呼ばれていたのでした。
　……二重の、楕円形の壁の間には、国の軍隊が村を造って常駐して、二つの転移装置を監視し、やがて、其の二枚の壁自体が、後の城壁都市（カーテンタウン）へと発展して行ったのです。
　……そして、其の安全地帯の、巨大な蘇生装置（ハード）が、復活魔法（リザレクション）の誕生で不要と為ったのでした。