仮 弐

其の九 淫獄転生 其の弐 淫蕩遊戯 其の餐獣

　……そして、全魔族会議で冒険者協会が設立されると、協会から派遣された有力冒険者団体が、各城壁都市を、一つの冒険者団体（ギルド）で丸ごと管理する様に為ったのです。

　……また、そんな迷宮の、二つの転移装置を囲む二重壁は、例えば、最下層が三十九億千二百六十五万七千八百四十階層の地下迷宮αＧ000001遺跡の様に、大部分の階層の二重壁は無人で、周囲の状況を人工知能が常に監視しており、攻撃を予測すると各階層に警報を発し、自動的に壁に防御結界を展開し、実際に攻撃されると自動反撃する仕組み（システム）に為っていたのでした。
　……二重壁の中には、百階層毎に数人の警備員が常駐する監視小屋が有り、一万階層毎に壁の中に村が有り、一億階層毎には城壁都市が存在していたのです。

　……処で、そんな双転移装置は、迷宮の全階層の中央（センター）に位置していたので、やがて無人の階層の二重壁や、監視小屋の階層の二重壁の外側に、第三の壁が作られ、第二の壁と第三の壁の間に果樹が植えられ、畑が作られ、家畜が飼われる様に為り、迷宮の外の村や町に、迷宮産の農作物として販売され始めたのでした。
　……地下迷宮の、安定した環境下では、高品質の農作物が収穫出来、また、周囲の野生の魔物達は良い肥料に為ったので、やがて遠く周辺の都市や首都へも販売される様に為り、村の階層の二重壁や城壁都市の二重壁の外にも、第三の壁や第四の壁が建設され、地下農村や地下荘園へと発展して行ったのです。
　……更に、無人階層の農園を地上の農民に貸し出したり、天然温泉の湧く無人階層に温泉郷（ソープピア）が造られて、迷宮地下経済（アンダーグラウンド・マネー）は発展を続けたのでした。
　……やがて、村の有る階層や、城壁都市の階層では、全ての階層で、双転移装置を中心に四重の壁を造り、第二の壁と第三の壁の間に、新たに村や城壁都市を建設し、第一の壁と第二の壁との間の古い村や城壁都市は、治安の悪い旧市街（スラム）と呼ばれたのです。
　……そして、そんな広大な敷地の第四の壁の建設が、元々其の地に棲んでいた野生の魔物達を追い出し、第四の壁の外側では、凶暴化した野生の魔物達と、激しい戦闘が繰り広げられたのでした。

　……そして、やがて地上の農民達や市民達が、続々と地下迷宮内へ移住し始めたので、税収の減少した地上と迷宮との間で諍（いさか）いが生じて、迷宮戦争と呼ばれ始めたのです。
　……やがて、或る地下迷宮と地上国家との争いは激化し、他の迷宮や国にまで飛び火して、妖魔界は戦乱の時代を迎えたのでした。
　……然（しか）し、そんな現状を憂い、秘密裏に或る計画を進めていたのが、当時の魔導師協会を中心とした秘密結社、黄金の黎明（ゴールデンドーン）だったのです。
　……黄金の黎明は、密かに、妖魔大陸全土に点在する、施設の建物の地下に、或る装置を造り、黎明（ありあけ）の暁（あかつき）、つまり天空に第二の月が昇る刻を待ち続けていたのでした。