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1.フラれてばかりな美形の苦悩
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「君にキスしてみても良いかな」
彫りの深い、上品な顔立ちの男がこちらの目を見て言った。
「試してみるんだ――男が嫌じゃないか」
ソファの背もたれに男が長い腕を掛けた。直接触れられたわけでもないのに、まるで自分の肩を抱かれたように感じて鼓動が速くなる。逡巡の後、かすれた声で答えた。
「お願いします……」
なぜ自分がこの男とキスなんてする流れになっているのか。
その発端は一週間前の合コンに遡る。もちろん相手は女の子だ。
◇
浅見柊一は悩んでいた。三十一歳独身。初対面で見た目を褒められることは多く、一言で言えばモテる。性格も真面目だと自分で思っているし、稼ぎも平均以上はある。
しかし、柊一は先日六ヶ月ほど付き合った彼女に振られた。自分的には結婚も考えていた相手だったからショックだった。
振られた理由は「思ってたのと違う」「お母さんみたい」「私のこと本当に好きとは思えない」「一緒にいるとしんどい」などなど。この女性に限らず、なぜか柊一はこれまで付き合った彼女には一〇〇パーセント振られてきた。
外見が良いので、付き合うまでは結構簡単にいく。なのに長く続かない。自分としては真面目に相手に向き合っているし、なるべく好みも合わせてデートの下調べなども頑張っているつもりだった。
なのにうまくいかない。
友達に聞いても「お前いいヤツなのになんでだろうな」と首を捻られて終わる。たぶん、嫌味だと思われているんだ。次の彼女がすぐできるから別に振られてもいいだろ、と。
でも柊一は彼女をとっかえひっかえしたいわけではない。長く付き合える相手とできれば結婚して幸せな家庭を築きたいのだ。
そんなことを飲みながらぶつぶつ言っていたら、不憫に思った友人の一人が柊一を元気づけるために合コンを開いてくれることになった。
この年になると周りに既婚者が増えて、合コンの開催自体減るからありがたいことだ。
幹事はその晩二十代後半から三十代前半の女の子を集めてくれていた。歳は同年代くらいまでが良いという柊一の希望通り。しかも、その中にひと目見て良いなと思える子がいた。
柊一はこの日もそこそこモテた。ダークブラウンの髪に細面。二重まぶたの目はアーモンド型で、「まつげ長いね」と女性に羨ましがられる。「美形」「爽やか」「王子っぽい」などが今夜柊一の受け取った見た目の評価だった。
しかし一番気になっている名取夏帆という女性は、どうやらこちらに興味がなさそうで柊一はもどかしい思いをしていた。
柊一は高身長な女性に惹かれることが多い。性格的には細かなことは気にせず自分を引っ張ってくれるくらいの人だとなお良い。彼女はまさにそのタイプで、話し方もハキハキしているし柊一と同じ三十一歳。ボブヘアの似合う美人だった。これ以上無いくらいの条件で、どうしても仲良くなりたいと思ったから一生懸命話かけた。
だけど彼女は好みのタイプとしてかなり大柄な男性――少なくとも相手には身長一八〇センチ以上を望むと話しているのを聞いてちょっと落ち込んだ。柊一の身長は一七五センチ。大抵の女性よりは背が高いし、手足も長い方だと思う。ただ彼女はヒールのある靴を履いたとき、男性より自分のほうが大きくなるのがコンプレックスなのだそうだ。柊一の背丈だと、高めのヒールを履かれたらちょっと厳しい。
(背は足りない。だけどこれくらいで諦めたくないぞ……)
そう思ってアピールしていたら、なんと二次会に行く直前に彼女が「この後二人で抜けないか」と誘ってくれたのだ。信じられない幸運だった。
柊一は二つ返事でオーケーし、皆と別れて彼女と抜け出した。幹事の友人には今まで使ったことの無い陽気なスタンプ付きで二次会不参加のメッセージを送った。
そして浮かれた柊一は、次に入ったバーで彼女から衝撃的なことを言われる。
「あの……失礼を承知で言うんだけどね。浅見くんってもしかして男性とお付き合いする方が向いてるんじゃないかなって思うの」
「え……?」
彫りの深い、上品な顔立ちの男がこちらの目を見て言った。
「試してみるんだ――男が嫌じゃないか」
ソファの背もたれに男が長い腕を掛けた。直接触れられたわけでもないのに、まるで自分の肩を抱かれたように感じて鼓動が速くなる。逡巡の後、かすれた声で答えた。
「お願いします……」
なぜ自分がこの男とキスなんてする流れになっているのか。
その発端は一週間前の合コンに遡る。もちろん相手は女の子だ。
◇
浅見柊一は悩んでいた。三十一歳独身。初対面で見た目を褒められることは多く、一言で言えばモテる。性格も真面目だと自分で思っているし、稼ぎも平均以上はある。
しかし、柊一は先日六ヶ月ほど付き合った彼女に振られた。自分的には結婚も考えていた相手だったからショックだった。
振られた理由は「思ってたのと違う」「お母さんみたい」「私のこと本当に好きとは思えない」「一緒にいるとしんどい」などなど。この女性に限らず、なぜか柊一はこれまで付き合った彼女には一〇〇パーセント振られてきた。
外見が良いので、付き合うまでは結構簡単にいく。なのに長く続かない。自分としては真面目に相手に向き合っているし、なるべく好みも合わせてデートの下調べなども頑張っているつもりだった。
なのにうまくいかない。
友達に聞いても「お前いいヤツなのになんでだろうな」と首を捻られて終わる。たぶん、嫌味だと思われているんだ。次の彼女がすぐできるから別に振られてもいいだろ、と。
でも柊一は彼女をとっかえひっかえしたいわけではない。長く付き合える相手とできれば結婚して幸せな家庭を築きたいのだ。
そんなことを飲みながらぶつぶつ言っていたら、不憫に思った友人の一人が柊一を元気づけるために合コンを開いてくれることになった。
この年になると周りに既婚者が増えて、合コンの開催自体減るからありがたいことだ。
幹事はその晩二十代後半から三十代前半の女の子を集めてくれていた。歳は同年代くらいまでが良いという柊一の希望通り。しかも、その中にひと目見て良いなと思える子がいた。
柊一はこの日もそこそこモテた。ダークブラウンの髪に細面。二重まぶたの目はアーモンド型で、「まつげ長いね」と女性に羨ましがられる。「美形」「爽やか」「王子っぽい」などが今夜柊一の受け取った見た目の評価だった。
しかし一番気になっている名取夏帆という女性は、どうやらこちらに興味がなさそうで柊一はもどかしい思いをしていた。
柊一は高身長な女性に惹かれることが多い。性格的には細かなことは気にせず自分を引っ張ってくれるくらいの人だとなお良い。彼女はまさにそのタイプで、話し方もハキハキしているし柊一と同じ三十一歳。ボブヘアの似合う美人だった。これ以上無いくらいの条件で、どうしても仲良くなりたいと思ったから一生懸命話かけた。
だけど彼女は好みのタイプとしてかなり大柄な男性――少なくとも相手には身長一八〇センチ以上を望むと話しているのを聞いてちょっと落ち込んだ。柊一の身長は一七五センチ。大抵の女性よりは背が高いし、手足も長い方だと思う。ただ彼女はヒールのある靴を履いたとき、男性より自分のほうが大きくなるのがコンプレックスなのだそうだ。柊一の背丈だと、高めのヒールを履かれたらちょっと厳しい。
(背は足りない。だけどこれくらいで諦めたくないぞ……)
そう思ってアピールしていたら、なんと二次会に行く直前に彼女が「この後二人で抜けないか」と誘ってくれたのだ。信じられない幸運だった。
柊一は二つ返事でオーケーし、皆と別れて彼女と抜け出した。幹事の友人には今まで使ったことの無い陽気なスタンプ付きで二次会不参加のメッセージを送った。
そして浮かれた柊一は、次に入ったバーで彼女から衝撃的なことを言われる。
「あの……失礼を承知で言うんだけどね。浅見くんってもしかして男性とお付き合いする方が向いてるんじゃないかなって思うの」
「え……?」
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