2 / 25
2.気になるあの子に男を勧められる
しおりを挟む
てっきり、彼女もこちらに少なからず気があるから誘ってくれたものと思っていた。しかし違ったらしい。
むしろなぜか男を勧められた――。柊一の笑顔が凍りつく。
おそらく柊一が一次会の席で最近振られたこと、今までもなかなか長続きしなかったこと、女性の好みなどをべらべらと喋ったせいだろう。彼女は柊一に同情してアドバイスのために連れ出しただけ――。
自分の直感は間違っていなかった。彼女は実に親切だ。しかし、柊一の恋人になる気はさらさら無い。
ショックすぎて言葉を失った柊一を気遣って彼女は謝ってくれる。
「ゴメンね! 本当に失礼だよね。こんなこと初対面で……でも、浅見くん素敵なのに勿体無いって本気で思ったの。なんだかちょっと自分に重ねちゃったっていうか――無いものねだりっていうの? 私背が高いじゃない。だけど、いいなって思う男性ほど小柄な子が好きだったりするんだよね~。自分が好きな人になかなか好かれないのって辛いよね」
(わかる……わかりすぎてもう俺泣きそうだよ)
「彼氏いない私が偉そうに言うのもなんなんだけどね、浅見くん。自分が好きになった人を無理やり振り向かせるよりも、向こうから勝手に自分のことを好きになってくれる人を見つけたほうが幸せになれるんだって!」
「へ、へぇ……」
それはそうだろうけど――と思いつつ柊一は反論する。
「でも今までも、結構女性側から言い寄られて付き合ってきたんだけど……」
「あー、そうだよね。浅見くんイケメンだし。でもね、付き合ったらイメージと違ったとか言われるんじゃない?」
「え! なんでわかるんだ!?」
(エスパーなのか? 初対面なのに!)
「やっぱりね。今日話してて思ったんだけど、見た目派手で遊んでそうなのに実はめちゃくちゃ真面目だよね」
「……それってダメなの?」
「だめってわけじゃないんだよ。真面目なのいいんだけど、ちょっと悪い感じっていうかダメな男っていうの? 女はそういうのに弱かったりするんだよねぇ」
(嘘だろ。真面目で誠実なのがいいんじゃないのか……? 女心難しすぎ……)
「俺、名取さんのことタイプだったから今地味にかなりショックだよ」
「やっぱりそう? なんとなく私に気があるのかなって思った~。ほんっとにごめん。気を持たせるようなことしたら逆に失礼だから言っちゃうけど私は全く好みじゃなくて……」
彼女は申し訳なさそうに両手を合わせた。
「やっぱりそうか……」
「ごめん! 本当にゴメンね。でも浅見くんは素敵だと思うよ。これはお世辞じゃなく本気で。それでね、変なこと言うようだけどめちゃくちゃオススメの相手がいるの」
「え?」
「背が高くて、顔も綺麗で、おおらか……というか大雑把? で、ちょっと強引だけどきっと浅見くんは自分で引っ張るより引っ張られるのが向いてると思うからぴったりだと思うんだよね」
「え……なにそれ最高じゃないか」
「でしょ!?」
たしかに、本当は自分でなんでも決めたりするのって得意じゃない。実は優柔不断なタイプだから、女の子が決めてグイグイ引っ張ってくれる方が楽なのにと柊一はずっと思っていた。一生懸命調べてお店を決めたりするんだけどそういうのを嫌々やってるのも見透かされるのか、無理してるように見えて嫌だとまで言われたこともある。
「じゃあ今度三人で飲もうよ!」
「そんな……いいの?」
(この子天使じゃない?)
「いいの! ただ、その相手っていうのが………私の兄なのよね!」
「え――?」
「つまり男なんだ~」
彼女がちょっと困ったような感じで微笑む。
「はい……!?」
(男の方が向いてるってそういうこと?)
「お兄ちゃんゲイなんだよね」
店内の物音が急に遠ざかったような気がした。
「浅見くん! 大丈夫? 聞こえてる?」
「あ……ご、ごめん。大丈夫。ちょっと一瞬気が遠くなって」
柊一は頭をブンブン振った。
(この子、もののたとえとかじゃなく本気で俺に男の人を勧めようとしてたのか……)
「ね! 会うだけ。一回皆で飲むだけ。どう?」
両手で拝まれても柊一は男性を相手に、なんて考えたこともなかった。
「いや、でもー……」
「だよね? わかる、いきなり男となんて無理だよね。だから別に付き合うとか付き合わないとかそういうんじゃなくていいんだ。こういう選択肢もあるよーって見てみたらどうかなって」
「うん……? うーん……」
「兄も別に男と見たらいきなり襲うような人じゃないから。ただ、友達になってアドバイスしてもらうだけでもいいし。私よりよっぽど恋愛経験豊富だからきっと浅見くんの悩みも解决してくれるかも」
柊一は押しに弱いタイプだった。しかも相手は好みの女の子で、強く言われると断りきれない。
「わかった……じゃあ、一回だけ……皆でなら……」
「ほんと? やったぁ! なんだかピンと来ちゃったんだ。お兄ちゃんは私と似てるし、私のことが好みならお兄ちゃんもきっと気に入ると思うよ!」
「あはは……」
気に入った相手に同性である兄を勧められても一ミリも嬉しくない。
(どんな人なんだろう……強引って言ってたけど、革ジャン着てタトゥーだらけの怖い人とかだったらどうしよう……)
そして柊一は当日まで震えて過ごすことになった。
むしろなぜか男を勧められた――。柊一の笑顔が凍りつく。
おそらく柊一が一次会の席で最近振られたこと、今までもなかなか長続きしなかったこと、女性の好みなどをべらべらと喋ったせいだろう。彼女は柊一に同情してアドバイスのために連れ出しただけ――。
自分の直感は間違っていなかった。彼女は実に親切だ。しかし、柊一の恋人になる気はさらさら無い。
ショックすぎて言葉を失った柊一を気遣って彼女は謝ってくれる。
「ゴメンね! 本当に失礼だよね。こんなこと初対面で……でも、浅見くん素敵なのに勿体無いって本気で思ったの。なんだかちょっと自分に重ねちゃったっていうか――無いものねだりっていうの? 私背が高いじゃない。だけど、いいなって思う男性ほど小柄な子が好きだったりするんだよね~。自分が好きな人になかなか好かれないのって辛いよね」
(わかる……わかりすぎてもう俺泣きそうだよ)
「彼氏いない私が偉そうに言うのもなんなんだけどね、浅見くん。自分が好きになった人を無理やり振り向かせるよりも、向こうから勝手に自分のことを好きになってくれる人を見つけたほうが幸せになれるんだって!」
「へ、へぇ……」
それはそうだろうけど――と思いつつ柊一は反論する。
「でも今までも、結構女性側から言い寄られて付き合ってきたんだけど……」
「あー、そうだよね。浅見くんイケメンだし。でもね、付き合ったらイメージと違ったとか言われるんじゃない?」
「え! なんでわかるんだ!?」
(エスパーなのか? 初対面なのに!)
「やっぱりね。今日話してて思ったんだけど、見た目派手で遊んでそうなのに実はめちゃくちゃ真面目だよね」
「……それってダメなの?」
「だめってわけじゃないんだよ。真面目なのいいんだけど、ちょっと悪い感じっていうかダメな男っていうの? 女はそういうのに弱かったりするんだよねぇ」
(嘘だろ。真面目で誠実なのがいいんじゃないのか……? 女心難しすぎ……)
「俺、名取さんのことタイプだったから今地味にかなりショックだよ」
「やっぱりそう? なんとなく私に気があるのかなって思った~。ほんっとにごめん。気を持たせるようなことしたら逆に失礼だから言っちゃうけど私は全く好みじゃなくて……」
彼女は申し訳なさそうに両手を合わせた。
「やっぱりそうか……」
「ごめん! 本当にゴメンね。でも浅見くんは素敵だと思うよ。これはお世辞じゃなく本気で。それでね、変なこと言うようだけどめちゃくちゃオススメの相手がいるの」
「え?」
「背が高くて、顔も綺麗で、おおらか……というか大雑把? で、ちょっと強引だけどきっと浅見くんは自分で引っ張るより引っ張られるのが向いてると思うからぴったりだと思うんだよね」
「え……なにそれ最高じゃないか」
「でしょ!?」
たしかに、本当は自分でなんでも決めたりするのって得意じゃない。実は優柔不断なタイプだから、女の子が決めてグイグイ引っ張ってくれる方が楽なのにと柊一はずっと思っていた。一生懸命調べてお店を決めたりするんだけどそういうのを嫌々やってるのも見透かされるのか、無理してるように見えて嫌だとまで言われたこともある。
「じゃあ今度三人で飲もうよ!」
「そんな……いいの?」
(この子天使じゃない?)
「いいの! ただ、その相手っていうのが………私の兄なのよね!」
「え――?」
「つまり男なんだ~」
彼女がちょっと困ったような感じで微笑む。
「はい……!?」
(男の方が向いてるってそういうこと?)
「お兄ちゃんゲイなんだよね」
店内の物音が急に遠ざかったような気がした。
「浅見くん! 大丈夫? 聞こえてる?」
「あ……ご、ごめん。大丈夫。ちょっと一瞬気が遠くなって」
柊一は頭をブンブン振った。
(この子、もののたとえとかじゃなく本気で俺に男の人を勧めようとしてたのか……)
「ね! 会うだけ。一回皆で飲むだけ。どう?」
両手で拝まれても柊一は男性を相手に、なんて考えたこともなかった。
「いや、でもー……」
「だよね? わかる、いきなり男となんて無理だよね。だから別に付き合うとか付き合わないとかそういうんじゃなくていいんだ。こういう選択肢もあるよーって見てみたらどうかなって」
「うん……? うーん……」
「兄も別に男と見たらいきなり襲うような人じゃないから。ただ、友達になってアドバイスしてもらうだけでもいいし。私よりよっぽど恋愛経験豊富だからきっと浅見くんの悩みも解决してくれるかも」
柊一は押しに弱いタイプだった。しかも相手は好みの女の子で、強く言われると断りきれない。
「わかった……じゃあ、一回だけ……皆でなら……」
「ほんと? やったぁ! なんだかピンと来ちゃったんだ。お兄ちゃんは私と似てるし、私のことが好みならお兄ちゃんもきっと気に入ると思うよ!」
「あはは……」
気に入った相手に同性である兄を勧められても一ミリも嬉しくない。
(どんな人なんだろう……強引って言ってたけど、革ジャン着てタトゥーだらけの怖い人とかだったらどうしよう……)
そして柊一は当日まで震えて過ごすことになった。
33
あなたにおすすめの小説
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
愛と猛毒(仮)
万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。
和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。
「……本当、バカだよな。お前も、俺も」
七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。
その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる