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6.◆ 後悔する京介
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柊一が帰った後、京介は自分の軽率な行動を悔やんでいた。
(――馬鹿か俺は。まだ彼は男に恋愛感情を持てるかどうか微妙なところだっていうのに、いきなりキスするなんて)
こんなに飲むつもりではなかったのだ。初対面なのに、なぜか柊一と一緒にいるとリラックスできた。それが間違いの元だった。
京介は正直なところ、妹の夏帆に今回の話を受けたときかなり迷惑だと感じた。遊ぶ相手には困っていないし、ノンケをわざわざ口説く理由がない。
しかし昔から妹にだけは弱くて、頼みを断る事ができなかった。
そして渋々会うことを了承したのだが、柊一のことをひと目見た瞬間夏帆が掘り出し物を見つけたことを認めざるをえなかった。実際柊一に会うまでは少し話をしたら一軒目で解散するつもりだった。それなのに、彼はその見た目だけじゃなく話し相手としても京介を退屈させなかった。下手をすると軽薄に見られかねない派手な容姿に反し、選ぶ話題は政治や経済が中心で真面目な性格をしている。
京介は遊び相手に知性まで求めることはなかった。なので普段なら気に入った相手と仕事の話はしないことにしている。だが、彼とは勤め先の業界が同じということもあり、思いの外話がはずんだ。
夏帆が「話してみたら驚くと思うよ」と言った意味もわかった。見た目があまりに華やかで、どれだけ残念な頭をしてるのかと思ったらその逆だ。はじめは警戒している様子だった彼も、話すうちに段々心を開いてくれたように思う。
(生真面目で優柔不断、競争心があまり無い長男気質。そして妹の夏帆に惹かれている――)
相手がもしゲイであったとしても、京介はこういう真面目なタイプと恋愛はしない。後腐れのない、さっぱりした関係が気楽だからだ。しかしそれでも京介は久々に心が躍るのを抑えられなかった。
(お堅そうな彼の、あの綺麗な顔が男を求めて蕩けるのを一度見てみたいね)
だからこそ、一軒目の店から出たときはじっくり時間を掛けて彼を落とそうと思っていたのだ。
なのに自宅に連れてきて飲み始めたらつい杯を重ね過ぎて全て台無しにしてしまった。自分でペースをコントロールしてるつもりだったのに――彼の話が面白くて適量を見誤った。
黙っていればつんと澄ました王子様みたいな顔をしている。そんな彼が夏になると赤しその葉でジュースを作るんだと話し始めた。祖母直伝のレシピがあると得意げに語る彼の顔は輝いていて、京介は抱きしめたくなるのを我慢するのに苦労した。しかもこの話をした彼女には一〇〇パーセント振られたというから、京介はこらえきれずに吹き出してしまった。
彼はどうして女に振られるのかわからないと首を捻っていた。これを可愛いと思わずにいろという方が無理な話で、一緒に居る間中頬が緩みっぱなしだった。あまりに愉快で、彼が突然帰ると言った瞬間どうしてもそのまま帰らせたくなくなってしまったのだ。
ノンケの彼を怖がらせないように、少しずつ距離を詰めようと車中では考えていた。なのに、気付いたら京介は柊一にキスを迫っていた。何もしないと誓ったくせに――。
自分でも呆れてしまう。しかしもっとまずいことに、柊一がそのキスに感じて腑抜けになってしまったのだ。あのまま一緒にいたら、間違いなく押し倒していた。
(男と恋愛したことがないなんて本当なのか?)
唇を離した時の「もっと」とでも言いたげな彼の潤んだ瞳に、京介はハッとしてようやく正気を取り戻した。柊一は逃げるように身支度をし、「また来てくれるか」というこちらの問いかけに振り向いてもくれなかった。
(これで終わりか……)
ノンケ相手に初対面でいきなりキスするなんて、本当に自分は大馬鹿だ。
(――馬鹿か俺は。まだ彼は男に恋愛感情を持てるかどうか微妙なところだっていうのに、いきなりキスするなんて)
こんなに飲むつもりではなかったのだ。初対面なのに、なぜか柊一と一緒にいるとリラックスできた。それが間違いの元だった。
京介は正直なところ、妹の夏帆に今回の話を受けたときかなり迷惑だと感じた。遊ぶ相手には困っていないし、ノンケをわざわざ口説く理由がない。
しかし昔から妹にだけは弱くて、頼みを断る事ができなかった。
そして渋々会うことを了承したのだが、柊一のことをひと目見た瞬間夏帆が掘り出し物を見つけたことを認めざるをえなかった。実際柊一に会うまでは少し話をしたら一軒目で解散するつもりだった。それなのに、彼はその見た目だけじゃなく話し相手としても京介を退屈させなかった。下手をすると軽薄に見られかねない派手な容姿に反し、選ぶ話題は政治や経済が中心で真面目な性格をしている。
京介は遊び相手に知性まで求めることはなかった。なので普段なら気に入った相手と仕事の話はしないことにしている。だが、彼とは勤め先の業界が同じということもあり、思いの外話がはずんだ。
夏帆が「話してみたら驚くと思うよ」と言った意味もわかった。見た目があまりに華やかで、どれだけ残念な頭をしてるのかと思ったらその逆だ。はじめは警戒している様子だった彼も、話すうちに段々心を開いてくれたように思う。
(生真面目で優柔不断、競争心があまり無い長男気質。そして妹の夏帆に惹かれている――)
相手がもしゲイであったとしても、京介はこういう真面目なタイプと恋愛はしない。後腐れのない、さっぱりした関係が気楽だからだ。しかしそれでも京介は久々に心が躍るのを抑えられなかった。
(お堅そうな彼の、あの綺麗な顔が男を求めて蕩けるのを一度見てみたいね)
だからこそ、一軒目の店から出たときはじっくり時間を掛けて彼を落とそうと思っていたのだ。
なのに自宅に連れてきて飲み始めたらつい杯を重ね過ぎて全て台無しにしてしまった。自分でペースをコントロールしてるつもりだったのに――彼の話が面白くて適量を見誤った。
黙っていればつんと澄ました王子様みたいな顔をしている。そんな彼が夏になると赤しその葉でジュースを作るんだと話し始めた。祖母直伝のレシピがあると得意げに語る彼の顔は輝いていて、京介は抱きしめたくなるのを我慢するのに苦労した。しかもこの話をした彼女には一〇〇パーセント振られたというから、京介はこらえきれずに吹き出してしまった。
彼はどうして女に振られるのかわからないと首を捻っていた。これを可愛いと思わずにいろという方が無理な話で、一緒に居る間中頬が緩みっぱなしだった。あまりに愉快で、彼が突然帰ると言った瞬間どうしてもそのまま帰らせたくなくなってしまったのだ。
ノンケの彼を怖がらせないように、少しずつ距離を詰めようと車中では考えていた。なのに、気付いたら京介は柊一にキスを迫っていた。何もしないと誓ったくせに――。
自分でも呆れてしまう。しかしもっとまずいことに、柊一がそのキスに感じて腑抜けになってしまったのだ。あのまま一緒にいたら、間違いなく押し倒していた。
(男と恋愛したことがないなんて本当なのか?)
唇を離した時の「もっと」とでも言いたげな彼の潤んだ瞳に、京介はハッとしてようやく正気を取り戻した。柊一は逃げるように身支度をし、「また来てくれるか」というこちらの問いかけに振り向いてもくれなかった。
(これで終わりか……)
ノンケ相手に初対面でいきなりキスするなんて、本当に自分は大馬鹿だ。
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