転生者の僕は弟と王子の溺愛執着から逃げられない

grotta

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1.僕は姉の蔵書の世界に転生したらしい

 熱病を患い死にそうな目にあった僕、エリック・フォスターは夢うつつの中で前世の記憶を思い出した。
 僕はエリックとして生まれる前に、日本という国で男子高校生だった。そして土砂崩れに巻き込まれて不慮の死を遂げてしまったのだ。

 エリックというのは僕が姉の書棚から密かに持ち出し、すっかりハマってしまったBL小説『想い出のローズガーデン』に出てくる脇役の伯爵令息だ。
 最初はなんの本かもわからずに手に取り、読み進めるうちにそれが男性同士の恋愛を扱った作品だと知った。
 僕は高校生になる頃から自分が異性より同性の方が好きなんじゃないかと思い始めて悩んでいた。そんなときに初めて男同士の恋愛物語を目の当たりにして、一瞬で心を奪われた。僕は姉の部屋から勝手にその本を持ち出し、寝る間も惜しんで読み耽った。

 エリックはフォスター伯爵家の長男。そして物語の主人公である侯爵令息レイアティーズ・ガードナーの親友として登場する人物だ。二人は同じ二十歳で、揃ってこの国の第一王子マーカス・アーヴィングに恋していた。
 エリックの容姿は整ってはいるが、あまり特徴の無い平凡な顔。亜麻色の癖のない髪の毛と、色白でほんの少しそばかすの浮いた肌、華奢な体型の青年だ。
 対して主人公レイアティーズは金髪碧眼で、誰が見てもつい顔をほころばせてしまうような華のある美青年だった。

 マーカス王子は作中、レイアティーズの美しさに一目惚れをして熱を上げていた。そして物語の中でエリックはレイアティーズの引き立て役のようなポジション。性格が穏やかで争いごとを嫌うエリックは、レイアティーズと元々仲が良かった。そんな彼はレイアティーズと王子の恋を応援することにして自分の気持ちは押し隠し、身を引くことにしたのだった。 

――これで終われば良かったんだけれど……。

 エリックには昔から可愛がっている弟が一人いた。ヴィンセントという名前で、幼い頃は「兄さま、兄さま」といつもエリックの後をついて回るくらい懐いていた。それが物語の終盤十九歳になった頃にはエリックよりも背が高くなり、漆黒の髪の毛が白皙の美貌を際立たせる貴公子に育っていた。

 物語中の彼は兄思いの弟という設定で、兄が失恋して悲しんでいる姿を見てある決意をしてしまう。
 なんと――兄のライバルであるレイアティーズに毒薬を盛るというとんでもない方法で恋敵を排除しようとしたのだ。
 ヴィンセントは作品を通して美しく聡明な青年として描かれているけれど、本を読んでいる限り僕的にはちょっとサイコパスっぽい印象を受けた。だって、自分の思い通りにいかないことがあるからといって王子の恋人に毒を盛るなんて普通じゃないよね?

 結果的にレイアティーズは口に含んだ紅茶の味の異変に気付いてすぐに吐き出した。このため一週間ほど高熱を出しただけで命に別状はなく、その後無事に回復。しかし、もしそのまま紅茶を飲み干していれば命を落としても不思議はなかった。

 婚約者の暗殺未遂事件を重く見たマーカス王子は国の総力をあげて犯人を捜索させた。その結果、紅茶に毒を盛ったのがエリックの弟ヴィンセントだと判明。
 友人であるエリックを憐れに思ったレイアティーズは情状酌量を訴えるも、マーカス王子はそれを退け、弟に断罪を言い渡したのだった。
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