転生者の僕は弟と王子の溺愛執着から逃げられない

grotta

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2.弟の断罪を回避するための方法

 僕は『想い出のローズガーデン』の世界に転生したからには、なんとか物語の結末を変えたいと思った。せっかく生まれ変わったことを思い出したのだから、どうしても弟があんなことをしでかすのを阻止して救ってあげなければ――。
 そして僕はどうしたらよいか考えに考え抜いた。その結果、なるべく弟に嫌われるように振る舞うことにした。
 彼に嫌われさえすれば、僕が失恋しても彼は僕のためにあんな馬鹿げた真似はしないだろうから。

 病気で前世を思い出した現時点で僕は十六歳。弟は十五歳だ。既にマーカス王子に対しては恋を自覚しつつある頃だけど、王子がレイアティーズと婚約を決めるまでまだ四年ほどある。前世を思い出したお陰で気持ちがいくらか冷静になり、王子への恋心は遠くにぼんやり感じる程度になっていた。これなら最終的に失恋してもさほど精神的にショックは受けないだろう。

「よし、今日からヴィンセントとさりげなく距離を置くことにするぞ!」

 それ以来僕はヴィンセントから一緒に馬で散歩に行こうと言われても「気が乗らない」と断り、紅茶を淹れるのが得意な彼にアフタヌーンティーに誘われても「忙しいから」と言って断り、一緒に寝ようと言われても「もうそんな歳ではないだろう」と冷たくあしらった。  

 彼は毎年誕生日に心のこもった贈り物をしてくれる。しかし僕はそれを喜ぶのをやめた。十八歳の誕生日に貰った見事な毛皮のガウンも「こんな物が僕に相応しいとでも?」と冷たく言って突き返した。
 逆に、彼の誕生日はわざと忘れたふりをしてレイアティーズとマーカス王子の三人で狩りに出掛けた。

 かつては屈託なく笑っていたヴィンセントは何年にも渡り僕に冷たくされ、悲しそうな目をするようになっていった。それなのに、諦めずに何度も何度も僕の笑顔を見ようと話しかけてくる。 
 僕は彼の悲しげな顔を見ると胸をえぐられるような気がして何度もこんな作戦はやめてしまいたいと思った。
 今まで通り、優しい兄としてヴィンセントのことを甘やかしてやりたい。だけど、それでは彼の破滅を防ぐことはできない――。
 僕は何とか自分を叱咤して彼を突き放し、彼から嫌われるように努めた。
 マーカス王子やレイアティーズと遊ぶのは楽しかった。けれど、和やかに三人で笑っているときにふとヴィンセントの事を思い出しては胸がチクチクと痛んだ。
――彼のためとはいえ、弟に酷いことをしてる。そんな僕にはこんな明るい場所で笑っている資格なんてないのに……。



 しかし、そうやってヴィンセント対策に明け暮れているうちに物語はなぜか変な方向に進み始めた。
 原作では主人公レイアティーズに恋するはずのマーカス王子が、なぜかレイアティーズには見向きもしない。二人の仲が一向に進展していないのだ。
 それでいてレイアティーズの見ていない所で王子と二人きりになると、彼は僕の頬を撫でながら「ため息ばかりついているね。心配ごとかい? 私に出来ることならなんでも相談してほしい」と優しく声を掛けてくれるようになった。ヴィンセントのことで思い悩んでいるのが彼に悟られていたようだ。妙に彼からのスキンシップが増えたのもこの頃からだった。

 そして僕の二十歳の誕生日にマーカス王子はレイアティーズではなく、なんと僕に永遠の愛を誓ったのだ。
 レイアティーズとヴィンセントも含め多くの諸侯たちが参列しているパーティーの場で王子に婚約をと迫られ、伯爵家の息子程度の僕に断ることはできなかった。
 ここで断れば、マーカス王子に恥をかかせることになってしまう――。僕は内心冷や汗をかきながら目の前でひざまずく王子の手から婚約指輪を受け取る羽目になった。
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