2 / 6
2.弟の断罪を回避するための方法
僕は『想い出のローズガーデン』の世界に転生したからには、なんとか物語の結末を変えたいと思った。せっかく生まれ変わったことを思い出したのだから、どうしても弟があんなことをしでかすのを阻止して救ってあげなければ――。
そして僕はどうしたらよいか考えに考え抜いた。その結果、なるべく弟に嫌われるように振る舞うことにした。
彼に嫌われさえすれば、僕が失恋しても彼は僕のためにあんな馬鹿げた真似はしないだろうから。
病気で前世を思い出した現時点で僕は十六歳。弟は十五歳だ。既にマーカス王子に対しては恋を自覚しつつある頃だけど、王子がレイアティーズと婚約を決めるまでまだ四年ほどある。前世を思い出したお陰で気持ちがいくらか冷静になり、王子への恋心は遠くにぼんやり感じる程度になっていた。これなら最終的に失恋してもさほど精神的にショックは受けないだろう。
「よし、今日からヴィンセントとさりげなく距離を置くことにするぞ!」
それ以来僕はヴィンセントから一緒に馬で散歩に行こうと言われても「気が乗らない」と断り、紅茶を淹れるのが得意な彼にアフタヌーンティーに誘われても「忙しいから」と言って断り、一緒に寝ようと言われても「もうそんな歳ではないだろう」と冷たくあしらった。
彼は毎年誕生日に心のこもった贈り物をしてくれる。しかし僕はそれを喜ぶのをやめた。十八歳の誕生日に貰った見事な毛皮のガウンも「こんな物が僕に相応しいとでも?」と冷たく言って突き返した。
逆に、彼の誕生日はわざと忘れたふりをしてレイアティーズとマーカス王子の三人で狩りに出掛けた。
かつては屈託なく笑っていたヴィンセントは何年にも渡り僕に冷たくされ、悲しそうな目をするようになっていった。それなのに、諦めずに何度も何度も僕の笑顔を見ようと話しかけてくる。
僕は彼の悲しげな顔を見ると胸をえぐられるような気がして何度もこんな作戦はやめてしまいたいと思った。
今まで通り、優しい兄としてヴィンセントのことを甘やかしてやりたい。だけど、それでは彼の破滅を防ぐことはできない――。
僕は何とか自分を叱咤して彼を突き放し、彼から嫌われるように努めた。
マーカス王子やレイアティーズと遊ぶのは楽しかった。けれど、和やかに三人で笑っているときにふとヴィンセントの事を思い出しては胸がチクチクと痛んだ。
――彼のためとはいえ、弟に酷いことをしてる。そんな僕にはこんな明るい場所で笑っている資格なんてないのに……。
◇
しかし、そうやってヴィンセント対策に明け暮れているうちに物語はなぜか変な方向に進み始めた。
原作では主人公レイアティーズに恋するはずのマーカス王子が、なぜかレイアティーズには見向きもしない。二人の仲が一向に進展していないのだ。
それでいてレイアティーズの見ていない所で王子と二人きりになると、彼は僕の頬を撫でながら「ため息ばかりついているね。心配ごとかい? 私に出来ることならなんでも相談してほしい」と優しく声を掛けてくれるようになった。ヴィンセントのことで思い悩んでいるのが彼に悟られていたようだ。妙に彼からのスキンシップが増えたのもこの頃からだった。
そして僕の二十歳の誕生日にマーカス王子はレイアティーズではなく、なんと僕に永遠の愛を誓ったのだ。
レイアティーズとヴィンセントも含め多くの諸侯たちが参列しているパーティーの場で王子に婚約をと迫られ、伯爵家の息子程度の僕に断ることはできなかった。
ここで断れば、マーカス王子に恥をかかせることになってしまう――。僕は内心冷や汗をかきながら目の前でひざまずく王子の手から婚約指輪を受け取る羽目になった。
そして僕はどうしたらよいか考えに考え抜いた。その結果、なるべく弟に嫌われるように振る舞うことにした。
彼に嫌われさえすれば、僕が失恋しても彼は僕のためにあんな馬鹿げた真似はしないだろうから。
病気で前世を思い出した現時点で僕は十六歳。弟は十五歳だ。既にマーカス王子に対しては恋を自覚しつつある頃だけど、王子がレイアティーズと婚約を決めるまでまだ四年ほどある。前世を思い出したお陰で気持ちがいくらか冷静になり、王子への恋心は遠くにぼんやり感じる程度になっていた。これなら最終的に失恋してもさほど精神的にショックは受けないだろう。
「よし、今日からヴィンセントとさりげなく距離を置くことにするぞ!」
それ以来僕はヴィンセントから一緒に馬で散歩に行こうと言われても「気が乗らない」と断り、紅茶を淹れるのが得意な彼にアフタヌーンティーに誘われても「忙しいから」と言って断り、一緒に寝ようと言われても「もうそんな歳ではないだろう」と冷たくあしらった。
彼は毎年誕生日に心のこもった贈り物をしてくれる。しかし僕はそれを喜ぶのをやめた。十八歳の誕生日に貰った見事な毛皮のガウンも「こんな物が僕に相応しいとでも?」と冷たく言って突き返した。
逆に、彼の誕生日はわざと忘れたふりをしてレイアティーズとマーカス王子の三人で狩りに出掛けた。
かつては屈託なく笑っていたヴィンセントは何年にも渡り僕に冷たくされ、悲しそうな目をするようになっていった。それなのに、諦めずに何度も何度も僕の笑顔を見ようと話しかけてくる。
僕は彼の悲しげな顔を見ると胸をえぐられるような気がして何度もこんな作戦はやめてしまいたいと思った。
今まで通り、優しい兄としてヴィンセントのことを甘やかしてやりたい。だけど、それでは彼の破滅を防ぐことはできない――。
僕は何とか自分を叱咤して彼を突き放し、彼から嫌われるように努めた。
マーカス王子やレイアティーズと遊ぶのは楽しかった。けれど、和やかに三人で笑っているときにふとヴィンセントの事を思い出しては胸がチクチクと痛んだ。
――彼のためとはいえ、弟に酷いことをしてる。そんな僕にはこんな明るい場所で笑っている資格なんてないのに……。
◇
しかし、そうやってヴィンセント対策に明け暮れているうちに物語はなぜか変な方向に進み始めた。
原作では主人公レイアティーズに恋するはずのマーカス王子が、なぜかレイアティーズには見向きもしない。二人の仲が一向に進展していないのだ。
それでいてレイアティーズの見ていない所で王子と二人きりになると、彼は僕の頬を撫でながら「ため息ばかりついているね。心配ごとかい? 私に出来ることならなんでも相談してほしい」と優しく声を掛けてくれるようになった。ヴィンセントのことで思い悩んでいるのが彼に悟られていたようだ。妙に彼からのスキンシップが増えたのもこの頃からだった。
そして僕の二十歳の誕生日にマーカス王子はレイアティーズではなく、なんと僕に永遠の愛を誓ったのだ。
レイアティーズとヴィンセントも含め多くの諸侯たちが参列しているパーティーの場で王子に婚約をと迫られ、伯爵家の息子程度の僕に断ることはできなかった。
ここで断れば、マーカス王子に恥をかかせることになってしまう――。僕は内心冷や汗をかきながら目の前でひざまずく王子の手から婚約指輪を受け取る羽目になった。
あなたにおすすめの小説
弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
「大好きです」と言ったらそのまま食べられそうです
あまさき
BL
『「これからも応援してます」と言おうと思ったら誘拐された』のその後のお話
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
リクエストにお答えしましてその後のお話🔞を書きました。
⚠︎
・行為に必要な色んな過程すっ飛ばしてます
・♡有り
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕
めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、
その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。
「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。
最初から、選ばされてなどいなかったことを。
αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、
彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。
「愛してるよ」
「君は、僕たちのもの」
※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)