転生者の僕は弟と王子の溺愛執着から逃げられない

grotta

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6.【最終話】王子と弟から執着されて

 結婚式の日、初夜を前にして僕はつるバラのトンネルの中でヴィンセントに口づけをされていた。

「やめて、ヴィンス……んっ」

 しかし弟は僕の唇を弄ぶのをやめない。このままでは体が反応してしまいそう――そう思いかけた時ようやく彼が僕を解放してくれた。

「兄さん。これからも会ってくれますね」
「ああ。でも、絶対誰にも秘密にしてくれよ。王子に知られたら僕もお前もおしまいだ」
「わかっています。あなたが王子に触れられるなんて耐え難いけれど……あなたのために我慢して待ちます」

 そしてその夜僕はマーカス王子に抱かれた。

「エリック、君とこうする日をどれだけ夢見たことか」

 その言葉は僕の胸に空虚に響いた。 ――原作では美しいレイアティーズに夢中で僕には見向きもしなかったくせに。 
僕の憂鬱な気持ちを察したのか、彼が言う。

「どうした? 最近また元気がないようだが」
「いいえ。少し、新しい生活が不安なだけです」
「そうか……」

 王子はなんとも言えず複雑な表情で僕にキスしてきた。

「エリック。私はどうやら……君の憂い顔を見ると興奮してしまうようだ」
「え?」

 王子は僕の首筋や胸元に唇を押し付ける。

「最初はレイアティーズの美しさに目が眩んで気づかなかった。しかし、目を伏せてため息をつく君の姿を見て……心を奪われたんだ」

――そんなことで? それで王子は僕にプロポーズしたのか?

「ああ、困惑げなその瞳もたまらなくゾクゾクするよ。素敵だ、エリック。僕の可愛い妻」

 そう言ってマーカス王子は僕の性器を口に含んだ。王族にそんなことをされたことに僕は驚き、身を捩った。

「殿下! おやめください。そのようなことをしてはいけませ――あっ、あ……」

 王子は黙って笑みを浮かべ、僕のものを舌で弄ぶ。押し退けようとしても、非力な僕では彼を動かせなかった。そのままねっとりと貪られ、僕は彼の口の中に吐精してしまう。

「んっ、あ……!」

 とんでもないことをしてしまった――王子の口の中に出すなんて。
 彼は僕の出したものを飲み込み、唇を舌で舐めた。

「君は私のものだ。憂鬱な顔も、今の混乱と羞恥の入り混じった表情も。さあ、今度はここで気持ち良くなることを覚えるんだよ」

 そう言って彼は瓶入りの粘液を手に取った。それを僕の窄まりに塗りつけ、指を中に滑り込ませる。僕のそこが容易に彼の指を受け入れたので王子は不審そうに眉を寄せた。

「エリック、本当にはじめてなのか?」
「はい……もちろんです」
「随分とここが柔らかいようだが?」

 僕はあらかじめヴィンセントに指示された通りの返事をする。

「殿下……恥ずかしながら、殿下のことを早く受け入れることができるように、一人で準備していました」
「ほう、そういうことか! なんといじらしいんだ。エリック、愛している」

 王子が嬉しそうに顔を綻ばせる。そういうことであれば、と簡単にほぐした後すぐに自分のものを僕の中に収めた。

「ああ、いい具合だ。さあ私の首に掴まって。そう、そうだ……いいぞ」

 彼が息を荒げながら僕の体を揺する。荒っぽい仕草も、汗ばんだ肌の匂いもヴィンセントとは違って奇妙な感じがした。ただ求められるままに王子にしがみつき、彼の欲望が弾けるのを待つ。
――ヴィンスなら、もっと焦らしてからじゃないと挿れてくれないんだけど……。

 早々に僕の中で果てた王子は僕の体に体重を預け、肩で息をしていた。こんなことを比較するのも無粋だけど、マーカス王子は弟より体格が良い割に持久力がなく、勝手に満足してくれるので僕としては楽だった。いつもヴィンセントにされるみたいなことを想像していたから、拍子抜けしてしまったくらいだ。

「これで晴れて君の夫になれた――嬉しいよ」
「僕もです、殿下」

 本当はまだ物足りず体の奥が熱くてじりじりしている。胸の先端や、足の指の間、首筋と、鼠径部……触って舐めてくすぐって欲しいところがたくさんあった。だけど今はこれでいい――。



 その後も王子に抱かれるたび熱はくすぶり続け、次第にヴィンセントに会いたくてたまらなくなっていった。そして弟は久しぶりに会う僕が物欲しそうな顔をしているのを見て微笑を浮かべた。

 情事の後、「兄さんは、前世でお姉さんの本を開いたことを後悔している?」とヴィンセントが僕に尋ねる。僕は自分の胸の上に頭を乗せたヴィンセントの髪の毛を弄びながら考えた。
『想い出のローズガーデン』を読まなければ僕はこの世界に来ることはなかっただろう。そして弟に関係を迫られることも――。弟を拒否すれば彼は断罪され、全てが台無しになる。この関係を誰かに知られれば二人とも終わりだ。だけどこれは建前で、本音では……。

「いや、後悔していないよ」
「本当に?」
「ああ」

 元々自分の恋愛対象が男なのか女なのかもわからず迷っていた。だけど今ははっきりとわかる。僕は今ヴィンセントに抱きしめられることを望んでいる。

「ヴィンスのことを愛してる。だから後悔してない」
「兄さん……嬉しい。僕も誰よりも兄さんを愛してる」

 ヴィンセントが体を起こして僕の顔を両手で包んだ。猛禽類のような彼の目に捉えられると何も考えられなくなる。目を閉じるとひんやりとした彼の唇が重なった。

 僕はこの物語の結末を変えなければと躍起になっていた。だけどもう、結末などどうなっても構わない。
 何もかもを放棄してヴィンセントとこうして永遠に抱き合っていたい――春咲きのバラが散り、秋咲きのバラが咲き、そして冬を越えてまた花が開き……ローズガーデンのバラが咲いては散るのをずっとずっと彼と一緒に眺めていたい。
 ただそれだけだ。



END
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