追放されたΩの公子は大公に娶られ溺愛される

grotta

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3章.新たな人生のはじまり

30.結婚式の準備

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 ニコラを呼んでペネロープと対面してもらった。
「はじめまして! こちらでルネ様の侍従をさせていただいています、ニコラです!」
「はじめまして。リュカシオン公国で侍女をしておりましたペネロープですわ」
「ルネ様からお噂はかねがね伺っています」
「え! そうなのですか? あらあら……お恥ずかしいわ」
 僕にとって以前の暮らしで楽しい思い出といえばペネロープとのことしかなかった。だから、ニコラにはペネロープの話ばかりしていたのだ。
「ルネ様を今後二人で共に支えて行きましょうね! よろしくお願い致します」
「元気で礼儀正しい素敵な方ね、ニコラ。こちらこそどうぞよろしく」
 二人は早速デーア大公国とリュカシオン公国の服装事情に関して議論を始めた。もう少しで僕とグスタフの結婚式があるので、そのときの衣装もこの二人に任せることになる。
 年の離れた二人だけどどうやら波長が合いそうで、熱心に意見を交わしている様子は微笑ましかった。僕はそれをただ見守っていたのだけど、ペネロープがふと顔を上げて言った。
「ルネ様……そういえば以前より表情が柔らかくなられましたねぇ」
「え、そう?」
 ニコラが満面の笑みで僕を見て言う。
「あ、それは僕も思っていました! こちらに来られた時はお美しいけれどお人形さんみたいというか、ちょっと冷たそうに見えたくらいでした。でも最近はいつも微笑んでらして……やっぱり殿下の愛のお陰ですかね」
「えっ……」
「あらまぁ! ルネ様のことをそんなに愛してくれる方と出会えたんですねぇ。ペネロープは嬉しゅうございます。殿下にお会いするのがとっても楽しみですわ」
 ペネロープもにこにこしていた。


◇◇◇


 グスタフはペネロープとの対面を喜んでくれた。
「よく来てくれた。ルネは故郷のことというと君の話ばかりするものだから、初対面とは思えないよ」
「まぁ、それは光栄でございますわ。今後ともよろしくお願いいたします、殿下」
「ああ。慣れない土地でルネも心細い思いをしていた。君が来てくれたからきっとルネも今以上に元気になるだろう」
「ルネ様が楽しく過ごせるよう、私も努力いたします」
「結婚式の支度で忙しくなるだろうから、よろしく頼む」
「はい。それはもう、張り切って準備させていただきますわ!」
 愛想の良いペネロープはグスタフにも気に入られ、離宮の他の使用人たちともすぐに打ち解けたのだった。


◇◇◇


 結婚式の衣装については、ニコラとしてはデーア大公国伝統の形式に則って軍服を着用するのが望ましいという。しかし、ペネロープの意見は違った。「ルネ様はこの国の軍人ではないし、異国から嫁いで来るのだから祖国式の花嫁衣装を身につけるべき」と主張した。ただし、男性が花嫁として嫁ぐということは一族に前例が無かった。そのため、ペネロープはリュカシオン公国で祝いの席で着用される刺繍入りコートの着用を勧めた。
「ですが、これからルネ様はデーア大公国で暮らされるわけですし殿下と同じ軍服がよろしいのでは?」
「まぁ、軍服だなんて。ルネ様に軍服は似合いませんわ」
「形式の問題です。何も本当に戦地に行くわけではありませんが、男子の正装はですね……」
(うーん。僕が女だったらドレス一択でこんなに悩まなくて済むのになぁ)
「で、ルネ様はどのようにお考えですか!?」
「え……僕……?」
(正直なんでも良いんだけど……)
「えっと……グスタフとお揃いがいいんじゃないかなぁ……?」
「…………」
 ペネロープとニコラはポカンと口を開けた後、顔を見合わせて吹き出した。
「仲のよろしいことで。ほほほ!」
「では、ルネ様の軍服は形は殿下とお揃いにして、リュカシオン風に刺繍を施してはいかがです?」
「まぁ、ニコラったらいい考えね!」
 そんなわけで、結果として僕たちは軍服を着るということで落ち着いた。僕は軍務経験が無いし、階級章等も無い。なのでその代りに刺繍で華やかに見せようということになった。
 仮に勲章を授与するということはグスタフなら簡単にできるが、僕としてもそんなものを無理に貰う必要性を感じなかったのでそれで良いということにした。
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