家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう

文字の大きさ
12 / 60
第一章 断罪から脱出まで

11 平民になるには、教会での訓練が必要です

しおりを挟む

朝日に白みかけたこの空の下、私は毛布にくるまりながら朝ごはんを食べていた。だいぶ早めである。
昨日発見した、冒険者用の非常食キット(お嬢様の我儘で無理やり料理人が考案した駄作)である。
お腹がキューキュー悲鳴をあげている。これはきっと昨晩の干し肉の消化だな。久々のお肉だったから。
頑張って! 頑張って消化して! 私は横になりながら、自分の胃袋にエールを送った。無理にでも消化してもらわないと、体力が回復できない。
思い出すなあ、この非常食キット。お嬢様らしく、肉は油多め、パンは柔らかくないと嫌っ、デザートももちろんあるのでしょう? と好き放題言ったのに、ちゃんと作ってくれたんだ。
その代わり消費期限が一ヶ月。ええ、保存食にしては中途半端です。原価もお高くなっております。唯一の成功はフリーズドライもどきのきのこのスープ。しかし実はダンジョン付近に暮らす市民の非常食からヒントを得たパクリ商品である。ありがとう料理人さん。私はミッションをクリアしたと思って満足してクローゼットの奥、『私の考えた最強の冒険者キット』として閉まっていた。キットの鞄も冒険者ならありえない高級アイテムで亜空間収納機能の収納物の経過時間停止機能付きだったので、ちゃんと密閉されていましたよ。そう、この鞄なら、一ヶ月の消費期限であっても半年から一年は保つ。ありがとう甘やかしてくれた従者さん。あとなんとか成果だそうと頑張ってた私。そう、昔の私がいて、今助かっている私がある。
こんなにちゃんとした非常食がありながら、母と父の戒めを真面目に受けて、今まで一切手をつけていなかった。しかし今は無理だ。前世思い出して家族への愛着が無くなった今は、もう空腹に耐えられない。
暖房のかかっていない、この部屋はとても寒い。
くるまる毛布があたたかい。
そう、魔法がなくっても、この世界には大勢の人が生きている。
あと私については毛布の中の空気を温めている。魔法は意識しないといけないから、ほぼ起きたままだったけど、背に腹は変えられない。
教会に連絡が行った以上、私を迎えに来てくれるはずだ。
だから、ここで少々眠らなくても大丈夫。

平民が貴族になるには、訓練が必要である。
かわいいかわいいアリアさんも、貴族中心の学校に入る際には訓練を受けたはずだ。
選ぶ物が違う、マナーが違う、常識が違う。人との距離、言葉遣い、書類の作成方法、ダンスの断り方――すべてを自然に身につけるには、あまりにも時間が短い。平民から貴族社会に入るものの多くが魔力に関わる特異体質なのだから、重要な力を失っては社会の損失。下手に反旗を翻されては、現在の体制の危機。

たいがい後見人となる貴族がおこなうことになるのだけれど、全員が全員そんな恵まれた状態でないのも確かだ。
そして貴族が平民になるにも、訓練が必要である。
選ぶもの、食べるもの、日々の習慣、ものの値切り方、近づいてはいけない場所、頼るべき相手。すべては簡単に身につくものではない。
庶子であったが貴族となり、やはり俗世を選ぶ人、魔力がなく見捨てられ、職人となる人、まれに愛した相手が庶民で添い遂げるために身を落とす者。
少なくはあるが、毎年一定数いるこの例外を、見捨ては治安がままならない。
反乱が起きれば以下同文、現在の体制の危機である。
王族でも貴族でも、平民でもない、中立の立場で行われるべきその役割は、教会が担っている。
この国が信仰している神さまは懐が深く、慈愛に満ち溢れていて美しい。その分気位が高くて他の神様と喧嘩してこの世界に来た、らしいんだけれども。まあいいじゃん、どういう神様か、じゃなくて私に何をしてくれるかが問題です現世利益ですみません。
お父様が教会への公式通知、申請、宣誓等の形式を揃えてくださったお陰で、私は平民になることが決定した。

あのセカンド断罪の結果から、その訓練は教会が担うことになる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...