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第一章 断罪から脱出まで
11 平民になるには、教会での訓練が必要です
しおりを挟む朝日に白みかけたこの空の下、私は毛布にくるまりながら朝ごはんを食べていた。だいぶ早めである。
昨日発見した、冒険者用の非常食キット(お嬢様の我儘で無理やり料理人が考案した駄作)である。
お腹がキューキュー悲鳴をあげている。これはきっと昨晩の干し肉の消化だな。久々のお肉だったから。
頑張って! 頑張って消化して! 私は横になりながら、自分の胃袋にエールを送った。無理にでも消化してもらわないと、体力が回復できない。
思い出すなあ、この非常食キット。お嬢様らしく、肉は油多め、パンは柔らかくないと嫌っ、デザートももちろんあるのでしょう? と好き放題言ったのに、ちゃんと作ってくれたんだ。
その代わり消費期限が一ヶ月。ええ、保存食にしては中途半端です。原価もお高くなっております。唯一の成功はフリーズドライもどきのきのこのスープ。しかし実はダンジョン付近に暮らす市民の非常食からヒントを得たパクリ商品である。ありがとう料理人さん。私はミッションをクリアしたと思って満足してクローゼットの奥、『私の考えた最強の冒険者キット』として閉まっていた。キットの鞄も冒険者ならありえない高級アイテムで亜空間収納機能の収納物の経過時間停止機能付きだったので、ちゃんと密閉されていましたよ。そう、この鞄なら、一ヶ月の消費期限であっても半年から一年は保つ。ありがとう甘やかしてくれた従者さん。あとなんとか成果だそうと頑張ってた私。そう、昔の私がいて、今助かっている私がある。
こんなにちゃんとした非常食がありながら、母と父の戒めを真面目に受けて、今まで一切手をつけていなかった。しかし今は無理だ。前世思い出して家族への愛着が無くなった今は、もう空腹に耐えられない。
暖房のかかっていない、この部屋はとても寒い。
くるまる毛布があたたかい。
そう、魔法がなくっても、この世界には大勢の人が生きている。
あと私については毛布の中の空気を温めている。魔法は意識しないといけないから、ほぼ起きたままだったけど、背に腹は変えられない。
教会に連絡が行った以上、私を迎えに来てくれるはずだ。
だから、ここで少々眠らなくても大丈夫。
平民が貴族になるには、訓練が必要である。
かわいいかわいいアリアさんも、貴族中心の学校に入る際には訓練を受けたはずだ。
選ぶ物が違う、マナーが違う、常識が違う。人との距離、言葉遣い、書類の作成方法、ダンスの断り方――すべてを自然に身につけるには、あまりにも時間が短い。平民から貴族社会に入るものの多くが魔力に関わる特異体質なのだから、重要な力を失っては社会の損失。下手に反旗を翻されては、現在の体制の危機。
たいがい後見人となる貴族がおこなうことになるのだけれど、全員が全員そんな恵まれた状態でないのも確かだ。
そして貴族が平民になるにも、訓練が必要である。
選ぶもの、食べるもの、日々の習慣、ものの値切り方、近づいてはいけない場所、頼るべき相手。すべては簡単に身につくものではない。
庶子であったが貴族となり、やはり俗世を選ぶ人、魔力がなく見捨てられ、職人となる人、まれに愛した相手が庶民で添い遂げるために身を落とす者。
少なくはあるが、毎年一定数いるこの例外を、見捨ては治安がままならない。
反乱が起きれば以下同文、現在の体制の危機である。
王族でも貴族でも、平民でもない、中立の立場で行われるべきその役割は、教会が担っている。
この国が信仰している神さまは懐が深く、慈愛に満ち溢れていて美しい。その分気位が高くて他の神様と喧嘩してこの世界に来た、らしいんだけれども。まあいいじゃん、どういう神様か、じゃなくて私に何をしてくれるかが問題です現世利益ですみません。
お父様が教会への公式通知、申請、宣誓等の形式を揃えてくださったお陰で、私は平民になることが決定した。
あのセカンド断罪の結果から、その訓練は教会が担うことになる。
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