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第二章 教会生活

32 違和感と正体。

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「加護を失うのですよ!」
「加護を失っても、人は生きていけます」
特に私は、加護の強弱の波にさらされて、病気の抗体バッチリだから、少々ばっちい環境でも生きていけるよ!
それに加えて、弱小魔力で毎日スッキリ! 炊事洗濯はもちろん、日々の生活に困らない弱小魔力、ラッキー!
「なぜそこまで、加護にこだわるのですか。それでは戒めと同じ。
確かに不出来な娘です、罪人です。ですがこの加護は、私にはもう不要です」
「ユーフェミアさま」
ネガティブな言葉に、マーガレットおばさまが小さく首を振る。ごめんなさい、と小さく謝る。
「私たちが、貴女を戒めたのが気に入らないの? これは愛情ゆえです、私たちを疑うその浅ましさを、もう一度正さねばなりませんね」
「そういう意味ではありません。あなた達にとって、私は不要であるはずです、どうして手放そうとしないのですか」
私の言葉に、こちらの教会の人がたじろぐ。
状況を掴めず、きっと思い浮かべたストーリーとは違う状況なんだろう。
所在なさげに身じろぎをして、隣の同じ立場の人と顔を合わせる。
話だけ聞いてたら、私は悲劇のヒロイン気取ってるよう思うのだろうか。
だけど、実際は違う。
あの人達は、私を見限っていた。見捨てて、それすらも当たり前の生活を送っていた。ハイド様との婚約破棄は大きな要因の一つで、その根底には積み重ねてきた、無意識レベルにまで浸透している侮蔑がある。
「貴女の為を思っているのよっ」
だから、重ねる言葉に違和感がある。こう、一枚布を隔てたような違和感。
食べ物に砂が混じっていたときに似た、違和感。
蔑みの視線に、この言葉は重ならない。
私を見下していたその姿こそが真実のはずなのに、そして戻れば幽閉で~監禁の~婚約者は仮初からの破棄からの、灼熱の血でおじいちゃんと婚姻カモーンじゃん。ねえ。ねえねえ。
「私の為を思うなら、加護の対象から外してください」
のべんだらりと、私が言葉をかえすことが、彼女の苛立ちを加速させる。
「いいから家に戻りなさい!」
「戻りません」
「ふざけないで! 貴女は私のいうことを聞けばいいの!」
「お断りいたします」
熱気と冷気が互い違いで部屋を覆う。ぼ、ぼ、と音がして、切り替わる温度に皆が震える。母親の感情が発露するその能力を同時に畏怖する。同時に私を批難する眼差しが寄せられる。
だからって、私の口調が崩れることはない。
対面しなくていい。それに、マーガレットおばさまがいてくれる。
私の状況を理解してくれる人が、一人でもいてくれる。
「断れる立場にないと、言っているでしょう!!」
「奥様」
せっかくお付きの――年寄り執事の一人が制したのに、母親はその勢いのまま叫んだ。

「この加護を解けば、貴女の外見も大きく変わるのよ!
そんなこと、許せるわけないじゃないの!!
この私が産んだ娘が、ただの醜い小娘に変わるなんて、そんなこと許せない!」

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