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第二章 教会生活
38 真実を告げる場所
しおりを挟む部屋は白塗り、真実を告げるにはちょうどいい。
天井に近いステンドグラスから、光が漏れていて、それが色とりどりの光を反射している。光に照らされて、埃が時々見える。
村人なのか、街人なのか、信者達が座るための椅子は使い古されている。一本道の先に、総司祭様。女神の像は、こぢんまりとしているけれど、艶やかな色をたたえていて、きっとこの教区の人達は信心深いんだと思う。
小さな教会の、この小さめの聖堂にも、精霊はいるんだろう。
それでも、総教会の大聖堂で平民移行の儀式をした時や、母親が精霊の加護を解いた時みたいに、精霊の光を見ることはできなかった。
残念。
――ちょっと、期待していたみたいだ。
自分が特別なんじゃないかって、そう思っていたから、そんな当たり前のことがちょっと胸にくる。
まあ、悲しんでいても仕方がない。
肩に入っていた力を抜いて、総司祭様に目を向ける。
所在なさげなその眼差しは、いつもと違って目が合わない。
え? 何? 私の格好がもしかして知らずにセクシー? それとも寝起きの目やに? そんな美少女に酷なリアルは要らない! ユーフェミア=妖精=悪役令嬢にそんなものは要らない!
「総司祭様?」
呼びかけると、ためらいがちに視線が向けられた。
いつもの慈愛に満ちた笑みがなくて、不安になる。金色の髪が少し解けている。
「お待たせいたしました」
ゆっくりと足を進める。
「ユーフェミアさん」
「……はい」
声は小さくて、穏やかで、――だから、この部屋には響かない。耳を済まして、目の前の人に目を向ける。
「一つ、質問があります」
空気が張り詰める。
嫌な予感がする。
「この場所で、ですか?」
周囲を見渡す。誰もいる気配はない、でも、扉の前にマーガレットおばさま含め、連れてきてくれた人がいる。
すぐそばに、聞き耳立ててる人が多いだろう場所で、一体どんな質問をされるのか。
潜めた眉に気がついたのか、総司祭様は軽く首を振った。
「――防音の魔法を起動しています」
「そうですか」
素早く目を周囲に向ける。私には何も感じられない。やっぱり魔力がないからだろうか。だた、確かに物音は聞こえない。
周囲に人は見えないから、唇を読むということもできないだろう。
映像化の魔法は、音声の魔法よりもずっと難しい。音声の魔法は、セカンド断罪の時あった大きい宝玉みたいな装置が代表的だ。魔法陣、詠唱も必要。で、魔法石はとても大きくないといけない。
各教会に設置され、通信装置として利用されてるそれは、確かに総司祭様の更に奥、女神の像の下にあるけど、発光していないから起動していないはずだ。記録の時に決まった言葉を言わないといけないし。大丈夫大丈夫。
「転移の魔術式が整う間に――清浄な地でしか、私の精霊は動くことができないのです」
「そうですか」
私は一体、何を答えればいいのか。
「ユーフェミアさま。
貴女は本当に罪を犯されたのですか」
――ここで、いいえと答えたら。
私はどこかに捨て置かれるのだろうか。
転移は開かないのだろうか。
思考がぐるぐるととぐろを巻く。醜い私の顔がその先に見えた。
唇を強く噛み締めた。皺が浮き立った皮膚は、少しの衝撃で血をにじませる。
「申し訳ありません。お手数ですが――総司祭様の口からお聞きしたいのです。
私の罪は何ですか?」
「……貴方の罪は、特定の生徒への嫌がらせと誹謗中傷、暴行未遂です」
罪は、アリアへ対するものだけか。
目を伏せる。
考えは顔に出ない。出さない。――大丈夫、王妃教育で顔色の押さえ方は習った。
少し間を置いて、キョトンとした顔をして。その後に、微笑んで。
「ええ」
私は総司祭様の言葉を肯定した。
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