世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃

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小アジア戦略

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トルコ全体を俯瞰し、隣国の一部に至っても期待された地図。その地図には無数の書き込みと、メモ書きが付けられている。

「さぁ、問題が山積しているこの小アジア。君なら何から手をつける?」

これは非常に難しい質問だ。トルコのヨーロッパ側では共産化したギリシャと関係は非常に宜しくない。戦争する余裕のないトルコと、バルカン、ドイツ、イタリアと相手にはできないギリシャの睨み合いが続いている。

コーカサス近隣ではギリシャの爆発を待つソ連が待機している。先の戦争でソ連赤軍のボスポラス海峡の自由通行が認められ、多少圧は弱まったものの、依然として不凍港を含めた南下政策は堅持されている。

中東地域は覇者がおらず、軍事的混迷と宗教的対立、民族問題が重なり合い、混沌としている。さながら外交ゲームの中心地だ。

イタリアが失陥したトリポリ。アフリカ大陸への足がかりは既になく、かろうじでジブラルタル海峡を制圧し、モロッコをスペイン軍が攻略中である。しかしどうもその進捗は芳しくはなさそうだ。

地中海はイギリスの軍港である、マルタおよびキプロスがあり地中海の覇者は未だ現れない。ジブラルタルがなくなり万全な状況とはいかないイギリスであったが、スエズは十分に機能している。

トルコと国境を接するフランス領では戦闘は未だ行なわれていない。これはドイツとトルコは同盟関係でありながらの、参戦していないためだ。トルコの持つ地中海にもつ諸島群に加えて、長い海岸線を守り切る十分な戦力を割けない、割きたくないドイツと、仮想敵国であるソ連と連合両者共を相手にできないトルコの思惑が一致しているためだ。

ただ、地中海に覇を唱えたいイタリアとしては面白くない話しだ。積極的な武器供与と投資を行ないつつ、過去の偉大なオスマンというプロパガンダをトルコ国内で流布している。

この問題が山積した状況で、我々の使命はエネルギー資源の確保。主に石油だ。その目的はこの小アジアでは果たせそうにない。そうなると、我々が執るべき手段は自ずと見えてくる。

「ペルシアとイラクとの交渉ですね。便宜上・・・そうですね・・・。仮にEラインと呼びましょう。それをトルコ国内に整備します。使用するのはトルコ国内の石炭や褐炭です。褐炭はタブ付いているため安いでしょう。それを用いた蒸気機関車をトルコを横断させ、ヨーロッパまで石油を運搬します。帰りには輸出品でも詰めば良いでしょう」

「石油の陸上輸送を汽車を使って行なうということか?」

「ええ。海上輸送は不可能です。そして、この方法であれば早速ですが、トルコ国内で敷設を始められます。交渉には時間がかかるでしょうし、調度よいのではないでしょうか?」

「2000km近くある距離だ。おいそれとできるものじゃない。しかし、悩んでもいても仕方ない。石油の確保問題はその方向であげるしかないか・・・」

納得いった雰囲気ではないロンメルであるが、こう言った話しは本来自分たちがする必要がないだ。だからこそ必要なんだとは思うものの、もう少し専門的な知識を持った人物が欲しいものだと思う。

その後しばらくはトルコ各地を回り視察を続けた。その途中で本国から一通の指令書が届く。ロンメルが開き、内容を待つ。

「少し毛色は変わったが、貴殿のEライン構想が採用されたようだぞ」

ロンメルから手紙を受け取り、付属している資料に目を通す。鉄道ではなくパイプラインを引くとのこと。北欧諸国やドイツ、イタリアで同規格のパイプラインを作成し、現地でつなぎ合わせていくというもの。本国の試算では日間5km程度の遠心が可能とされており、イスタンブールからイラク及びペルシア国境まで1年で敷設を終えられるとしている。

「交渉は本国が行なうらしい。我々はトルコ政府との調整や人員の確保が主務となる」

「はは、来年からは将軍ではなく現場監督員ですね」

「全くだ」
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