55 / 61
本編
53
しおりを挟む
まずは精霊達が作ってくれた僅かばかりの水路の先まで移動して、脚に気を集中させます。
次に蹴り抜くと同時に気を放つと、轟音と共に地面が裂けます。幅は足りないですが、深さは何とかいけそうですね。一度に掘れるのは数メートル分。いけるでしょうか?
「フェエエ!」
「ええええ!」
「お姉ちゃん、すごい!」
ルーナさんとノノさんの叫び声が聞こえてきましたが、気にすることなく突き進みます。
繰り返すこと数十回。なんとか川に到着しました。水は確実に流れていますが、幅がないために勢いが足りません。何とかしたいところですが、もう足に力が入りません。
「桜華さん、池の方から何か来ます!」
ディンさんが身構えながら警告すると、夜番の方々がマコちゃん達の前で守るように構えてくれます。私も、いつでも動けるように身構えます。
薄闇の中きこえてくるのは足音ではなく、何かが勢い良く削れる音と何かがぶつかったような重低音。
あれ、音に交じって一際大きな物が聞こえてきました。この声は……。
「皆さん下がって下さい。多分、シエロです」
「へ、あ、はい」
ディンさんが構えを解いて水路から距離を取ると、他の皆さんも距離を取って見守る体勢に入りました。
少しして見ることができた姿は、やはりシエロでした。水面から顔を出すと、口の前に魔力を集めていきます。ある程度集まると、魔力を水に変換して周囲にいる精霊達と力を合わせ、すごい勢いで前方に吹き付けています。私がやっていたよりも幅が広く、深く、数メートル分長く削っていきます。
「ノノさん、あれって竜魔法ですか?」
「ふぇ、あ、はい。そうです」
ルーナさんと一緒に固まっていたノノさんでしたが、質問してみればすぐに返事をしてくれました。
魔力の扱いとか教えていませんが、本能というやつでしょうか。
「そうじゃなくて、シエロちゃんってあの大きさでしたっけ!」
ノノさんが叫び、ルーナさんがシエロを指さします。ただ、少し声が大きかったのかディンさん達が周囲を睨みながら声を小さくするように注意を促します。
さて、肝心のシエロですが。水中にいるのではっきりとは分からないものの、頭と尻尾の位置関係から見て、昼に見た時より大きくなっているようです。具体的には、今朝の段階で一メートルぐらい。今は……四メートルぐらいでしょうか。
「立派になっていますね」
「桜華さんが、子供の成長を見守る母親になってますぅ!」
ノノさんとルーナさんの叫び声を聞きながら全員で見守る中、シエロと精霊達が川に到着しました。顔を水面から出して自慢げにしていたので頭を撫でながら現状の確認をします。
シエロが移動しながら竜魔法を使っていた結果、不格好ながらもしっかりした水路が出来上がっていて確かな水の流れができています。
「池の方も見てみましょうか」
池の方も水が溢れないぐらいの水位で落ち着いたようです。
「大丈夫そうですね。さ、早く帰って晩御飯に――」
「いやいや。桜華さん、あの水柱はどうするんですか」
家に帰ろうとしたらディンさんに呼び止められました。ルーナさんと一緒にいまだ勢いの衰えない水柱を指さしています。
しょうがないので、心なしか上目遣いになっているシエロを呼び寄せて聞いてみます。
「……えっと、潜って遊んでいたら細い道を見つけて、無理やり通ったらこうなったと」
精霊達の動きと合わせて考えると、池を作る際に地下にある水脈とそれなりの穴で繋ぐことによって水を引いていましたが、その穴をシエロが広げてしまい、水が溢れてしまったようです。
経緯をディンさんに伝えて対処するか確認してみると、手の打ちようがないのでこのままにすることに。
「シエロ。今度からは気を付けるように。ね」
「く~」
「そういえば、アクアはどうしたの?」
質問してみれば、シエロの後ろから浮かび上がってきました。アクアは大きくなっていないようですね。
安心してこの場から離れようとしたら、水柱から七歳以前後の愛らしい女の子が出てきました。ただ、体が水で出来ているようです。
水の上をすべるように近寄ってきてシエロの横に止まると、綺麗なお辞儀を披露してくれました。
「こんばんは、桜華さん」
「こんばんは。えっと……」
「私は水の精霊です。水の子達から面白そうな話を聞いて遊びに来ました」
精霊にも階級というか区分というか、そういう感じの物があって、普段私が見ている精霊より数段上の存在らしいです。
「これはご丁寧にありがとうございます。どうぞ、好きなだけ遊んでいってください」
「ありがとうございます」
暫くはこの池に留まってシエロたちと遊んでいくそうです。なお、結構な勢いで水が出ているので枯れないか質問すると、水が枯れることはないと断言してくれました。
「分かりました。では、晩御飯に……シエロのご飯どうしましょう」
ここまで大きくなると、家に入るのが難しいです。ここまで持ってくるか、ここで料理するか。どうしましょうか。
「それなら大丈夫ですよ。この水場を目指して魔物やら動物やらが来るので、食べ放題です」
水の精霊さんの両手を大きく広げて浮かべる無邪気な笑顔が、とっても可愛いです。
「そうですか。シエロ、食べ過ぎはだめですよ。それから、狩るのは食べる分だけ。良いですか」
「きゅ」
頷いたシエロの頭を撫でると、嬉しそうにします。体はすっかり大きくなりましたが、他は全く変わってないですね。
「さて、今度こそ家に帰ってご飯にしましょうか」
少し顔色を悪くして遠くを眺めているルーナさんと、俯きながらお腹のあたりに手を当てているディンさんに声をかけて帰宅します。
次に蹴り抜くと同時に気を放つと、轟音と共に地面が裂けます。幅は足りないですが、深さは何とかいけそうですね。一度に掘れるのは数メートル分。いけるでしょうか?
「フェエエ!」
「ええええ!」
「お姉ちゃん、すごい!」
ルーナさんとノノさんの叫び声が聞こえてきましたが、気にすることなく突き進みます。
繰り返すこと数十回。なんとか川に到着しました。水は確実に流れていますが、幅がないために勢いが足りません。何とかしたいところですが、もう足に力が入りません。
「桜華さん、池の方から何か来ます!」
ディンさんが身構えながら警告すると、夜番の方々がマコちゃん達の前で守るように構えてくれます。私も、いつでも動けるように身構えます。
薄闇の中きこえてくるのは足音ではなく、何かが勢い良く削れる音と何かがぶつかったような重低音。
あれ、音に交じって一際大きな物が聞こえてきました。この声は……。
「皆さん下がって下さい。多分、シエロです」
「へ、あ、はい」
ディンさんが構えを解いて水路から距離を取ると、他の皆さんも距離を取って見守る体勢に入りました。
少しして見ることができた姿は、やはりシエロでした。水面から顔を出すと、口の前に魔力を集めていきます。ある程度集まると、魔力を水に変換して周囲にいる精霊達と力を合わせ、すごい勢いで前方に吹き付けています。私がやっていたよりも幅が広く、深く、数メートル分長く削っていきます。
「ノノさん、あれって竜魔法ですか?」
「ふぇ、あ、はい。そうです」
ルーナさんと一緒に固まっていたノノさんでしたが、質問してみればすぐに返事をしてくれました。
魔力の扱いとか教えていませんが、本能というやつでしょうか。
「そうじゃなくて、シエロちゃんってあの大きさでしたっけ!」
ノノさんが叫び、ルーナさんがシエロを指さします。ただ、少し声が大きかったのかディンさん達が周囲を睨みながら声を小さくするように注意を促します。
さて、肝心のシエロですが。水中にいるのではっきりとは分からないものの、頭と尻尾の位置関係から見て、昼に見た時より大きくなっているようです。具体的には、今朝の段階で一メートルぐらい。今は……四メートルぐらいでしょうか。
「立派になっていますね」
「桜華さんが、子供の成長を見守る母親になってますぅ!」
ノノさんとルーナさんの叫び声を聞きながら全員で見守る中、シエロと精霊達が川に到着しました。顔を水面から出して自慢げにしていたので頭を撫でながら現状の確認をします。
シエロが移動しながら竜魔法を使っていた結果、不格好ながらもしっかりした水路が出来上がっていて確かな水の流れができています。
「池の方も見てみましょうか」
池の方も水が溢れないぐらいの水位で落ち着いたようです。
「大丈夫そうですね。さ、早く帰って晩御飯に――」
「いやいや。桜華さん、あの水柱はどうするんですか」
家に帰ろうとしたらディンさんに呼び止められました。ルーナさんと一緒にいまだ勢いの衰えない水柱を指さしています。
しょうがないので、心なしか上目遣いになっているシエロを呼び寄せて聞いてみます。
「……えっと、潜って遊んでいたら細い道を見つけて、無理やり通ったらこうなったと」
精霊達の動きと合わせて考えると、池を作る際に地下にある水脈とそれなりの穴で繋ぐことによって水を引いていましたが、その穴をシエロが広げてしまい、水が溢れてしまったようです。
経緯をディンさんに伝えて対処するか確認してみると、手の打ちようがないのでこのままにすることに。
「シエロ。今度からは気を付けるように。ね」
「く~」
「そういえば、アクアはどうしたの?」
質問してみれば、シエロの後ろから浮かび上がってきました。アクアは大きくなっていないようですね。
安心してこの場から離れようとしたら、水柱から七歳以前後の愛らしい女の子が出てきました。ただ、体が水で出来ているようです。
水の上をすべるように近寄ってきてシエロの横に止まると、綺麗なお辞儀を披露してくれました。
「こんばんは、桜華さん」
「こんばんは。えっと……」
「私は水の精霊です。水の子達から面白そうな話を聞いて遊びに来ました」
精霊にも階級というか区分というか、そういう感じの物があって、普段私が見ている精霊より数段上の存在らしいです。
「これはご丁寧にありがとうございます。どうぞ、好きなだけ遊んでいってください」
「ありがとうございます」
暫くはこの池に留まってシエロたちと遊んでいくそうです。なお、結構な勢いで水が出ているので枯れないか質問すると、水が枯れることはないと断言してくれました。
「分かりました。では、晩御飯に……シエロのご飯どうしましょう」
ここまで大きくなると、家に入るのが難しいです。ここまで持ってくるか、ここで料理するか。どうしましょうか。
「それなら大丈夫ですよ。この水場を目指して魔物やら動物やらが来るので、食べ放題です」
水の精霊さんの両手を大きく広げて浮かべる無邪気な笑顔が、とっても可愛いです。
「そうですか。シエロ、食べ過ぎはだめですよ。それから、狩るのは食べる分だけ。良いですか」
「きゅ」
頷いたシエロの頭を撫でると、嬉しそうにします。体はすっかり大きくなりましたが、他は全く変わってないですね。
「さて、今度こそ家に帰ってご飯にしましょうか」
少し顔色を悪くして遠くを眺めているルーナさんと、俯きながらお腹のあたりに手を当てているディンさんに声をかけて帰宅します。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる