魔族の国で第二の人生始めます。 

腹減り雀

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輝く勇者の英雄譚(笑)

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 始まりは姫様が目の前で攫われた兵士の一人が、国王から姫様の奪還の命を受けて旅立つところから始まる。

 だが、姫様が攫われたことによる混乱と、それを好機と見た闇ギルドの存在によって情報は錯綜し、魔物達は以前よりも強さを増していたことにより、移動もままならなくなる。

 一向に進まない捜索に、周りにいた人々から無能、無駄飯ぐらい、駄犬等々様々な罵倒や嘲笑を向けられ、王家からは早くしろと圧力を掛けられる兵士。

 それでも頑張っていると、偽の情報に踊らされて間抜けな失態を犯し、道中で出会った強盗に身包みをはがされたり、一緒に捜索をしていた仲間や支えてくれていた家族に捜索のための資金を使い込まれたりもする。

 それが露見して更に侮蔑、罵倒、嘲笑を呼び込み、王家からの圧力が増す。

 挙句の果てには、向こう側から申し込んできて成立していた婚約者が、兵士より身分が上で裕福、見目も良い相手に乗り換えてさっさと結婚。二度と関わらないでと拒絶された上に、婚約していた事実すらもみ消された。

 ありとあらゆる方面から攻められた主人公は、追い詰められて暴飲暴食――をしようにもお金もなく。血涙をながしながらも耐え忍んでいくも、一向に改善しない状況に頭髪の生命力が尽きてしまった。

 頭髪を失った主人公は開き直った。もう何もかもどうでもいいと開き直ってしまった。

 そこから王族、貴族、友人、家族、元婚約者、詐欺師に強盗共。主人公を追い詰めたやつらへの復讐が始まる。

 特に王族、貴族への場面は壮絶としか言いようがない。守ろうと動く兵士達も纏めて薙ぎ払う。同僚だった者達が、同じ鍋のスープを飲んだ者達が、親しかった友人達が止めるように、思い直すように説得するも一切話を聞かずに沈めていく。

 貴族、王族は女子供関係なく、手入れのされていない錆びついた刃物で滅多刺し。

 城内や貴族の屋敷だけでなく街の中まで紅に染め上げると、最後には盗賊達や逃げ出した街の人で街道をも紅に染め上げていく。

 それらを終えた兵士は姫様の探索に戻り、偽の情報を与えた者、詐欺や強盗を犯そうとした者、嘲り馬鹿にした者を切り殺しながら突き進んでいく。

 捜索の果てに漸く姫様を見つけることに成功する兵士。立ちはだかる姫様をさらった敵国の兵士達を薙ぎ払い、単身で一国を落とすという偉業を成し遂げた果てに姫様と再会する。

 しかし、姫様は言ってはいけない一言を告げてしまう。

「遅すぎるわ。もっと早く助けに来なさいよ!」

 気が付いた時には手に持っていた剣を突き刺していた。痛みで泣き叫び命乞いする姫様を見ながら、何度も突き刺す。自分の中で何かが壊れていくと分かっていながらも、何度も何度も。

 全てが紅に染まる中、狂気に包まれた主人公の笑い声がどこまでも響いていく。
 
 パタンと夢中で読んだ本の裏表紙を閉じて、眉間を揉みほぐす。

「如何でしたか」
「……これ、どこが輝かしいのか分からないです」
「輝いていたと思いますけど? 頭部が」
「そこですか!」

 いや、確かに頭部が輝いていたけど! 輝いてからおかしいぐらいに強くなっていたけど! そこですか!

「この作者は非常に高い人気を有していまして、他にもお姫様珍道中、聖女の堕落日記、魔王の孤独な日々といった小説を出しています。どれも非常に面白く、演劇になっているものもございます」
「勇者サイドに恨みがあることがよく分かるラインナップですね。あと、なぜそこに魔王様が加わっているのやら」

 書いている作者はこっちの城内で働いている人ですか?

「そういえば、この世界的に勇者とか魔王はどういう存在でしょうか」
「魔王は人間至上主義を掲げる宗教を崇める人々にとっては、悪の首領で何をしても倒すべき存在。それ以外の人々でも悪の権化といった感じですね。ごく一部の人は同じ人種として考えているようです」

 一方で、魔王とは種族的な集団の長という意味以外はないそうで。魔族と魔物の関係は近いけれど遠い関係らしい。要は一部の例外を除いて猿と人間みたいな関係らしい。

「次に勇者ですが、先程の人間至上主義を掲げる宗教が作り出した偶像ですね。神のお告げを受けるとされている聖女も同様です。実際にはただ強い人間と妄言を撒き散らす人間です」

 ソフィアさん、飾り気のない言葉でバッサリと行きました。

「実際に神々は街へ降りてきては食べ歩きや観光をしていますから、用があるならその時に話をします。態々お告げなんて使いません」

「神様達が観光に食べ歩き……」
「この世界ではそういうものです。ただ、神々は差別などが少ない場所にしか来ないので、普人種の町にはほぼ降りることがないために、信じていない者の方が多いです」

 どうせ観光するなら気持ち良く過ごせるほうを選ぶのは仕方のない話だと、何度も頷くソフィアさん。その辺は同意するけど、どうしてその辺のことを知っているんだろう。

 まあ、ソフィアさんなら神々とお友達になっていてもおかしくない気がするけど。
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