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対ボッチ用ディナー
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「クレハ様。丁度夕餉の時間となりましたので、食堂へご案内します」
「え、もうそんな時間」
窓の外を見れば、既に暗くなっていて真っ暗で何も見えない。思ったよりも本に集中していたらしい。椅子から立ち上がるついでに伸びをしていると、ソフィアさんから一言。
「私は野暮用があるので、メアリーがご案内します」
「あ、はい」
メアリーさんがお辞儀している間にソフィアさんが部屋を出ていく。
メアリーさんの案内に従って部屋を出て廊下を歩く事数分。こちらの廊下も巡回する人の姿がなく、一定距離で花が置かれているだけ。そういえば、昼間の花たちは動いていたよね?
近づいて暫く観察してみると、白い花が徐々に真っ赤に染まっていく。
「あ、仕事中にごめんなさい」
謝罪してから待ってくれていたメアリーさんへ視線を向けると、壁に凭れ掛かっていた。私の視線に気が付くと、慌てて姿勢を正して何事もなかったかのようにしている。
思わずジトッとした視線を送ると、メアリーさんが慌てたように背中に回って押してくる。メアリーさんって自由だなあ。
大きな扉を開けて食堂へ入ると、大きな部屋にポツンと二人が使える程度の大きさの机と椅子が置かれていて、結構な数の大きめの胸像が机の方を向くように置かれているのが目に入る。
「……。……あれ、なんですか?」
メアリーさんに質問した途端、胸像がすべて消える。幻影の魔法で見えなくしたようで、あったはずの場所に触れれば何かを触っている感覚がある。これ、結構面白い。
何を触っているのか分からない不思議な感覚を楽しんでいると、持ち上げられて椅子まで運ばれる。
メアリーさんが私の椅子の調整(足が着かない上に机が首下の高さ)をしつつ何かを必死に誤魔化そうとしているので、説明してくれそうなソフィアさんを待つことに。
せわしなく動き回って何かを移動させていくメアリーさんを見守りつつ待つこと暫し。燃え尽きたかのように真っ白な顔色でげっそりとしたグレイス様が入ってくる。
立ち上がろうとすると、グレイス様に止められる。
「グレイス様、お疲れ様です」
「ああ。ありがとう」
椅子に座って一息つくと、周囲を見て感慨深げに息をつく。
「今日は部屋が広いし、気が楽だな」
「あの沢山の胸像はいつもなんですか」
「ああ。エリスによると、寂しくないように置いているらしい」
こっちまで精神的にくるんで、遠い目をしながら眦に涙を溜めないでください。
「そうだ。もう聞いていると思うが、私が後見人兼保護者となった。まあ、硬く考えずに家族になったと考えてくれていい。口調も楽にしてくれて構わない」
「ありがとうございます。口調は追々でいいですか?」
「構わない。慣れない場所での暮らしは何かと大変かもしれないが、何かあれば遠慮せずに言ってくれ」
「はい」
「ゆくゆくはお父様とか言わせて楽しむんですね。変態ですか」
いつの間にかグレイス様の後ろに立っていた赤い髪のメイドさんから氷のような視線が送られ、グレイス様の肩が跳ねあがる。
「待て、なぜそうなる」
「クレハ様ですね。初めましてエリスと申します。この変態で一人ぼっちで根暗なグレイス様付きのメイドをやっております。何かあれば遠慮せずに申しつけ下さい」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか」
身を乗り出して抗議するグレイス様の顔を、片手で押し戻しながら笑顔を見せてくれるエリスさんに宜しくお願いしますと返す。
「では、食事を始めます」
結局最後まで抗議を無視し続けた。エリスさんもグレイス様をそのように扱うんだ。頑張れグレイス様。
ところで。こちらの食事はコース料理らしく、目の前にカトラリーが並べられていく。どうしよう。
「どうした。ああ、公の場でもないから気にすることなく食べたらいい。こういった食事はしたことがないのか?」
「生まれ育った国とは違う国では、同じか近い作法で食べます。また、私のいた国でもこういったコース料理はありました。ですが、貧乏人の私は縁がないです」
コンビニで済ませる日々だったし、普通の家庭だったからなんとなく聞いたことがあるし、なんとなくやったことがある程度では?。
「そうか。クレハの家では、どういう食事の仕方だったんだ?」
「私の場合は主食とおかず一品か二品、同時に食卓に出して自分の分を取り分ける感じでした」
「ふむ。町での食べ方と同じか」
「クレハ様、折角なので故郷の料理を教えていただけますか?」
音も気配もなく前菜を持ってきたエリスさんとソフィアさん。心臓に悪いです。
故郷の料理を伝えるのは良いとして、食材とか調味料の状態が分からないので、明日調理場と食糧庫を見に行くことに。
さて。コース料理というのは貧乏人の私からすると非常に面倒なことに、料理ごとに使うカトラリーが違う。更に悩ましいことに数が多い。
どうすればいいのか悩んでいると、使うカトラリーをメアリーさんが小さく矢印表示してくれる。メアリーさんの優しさが嬉しいけれど、時折躓いているように見える。大丈夫だろうか。
グレイス様が静かに食べていくから、暫くの間は無言で食べ進めていく。にしても、本当に音がしないですね。
次の皿が来るまでに間が空いた時、グレイス様が口元を拭いながら笑いかけてくる。
「クレハ、口に合うか?」
「すごく美味しいです」
本当にとろけるぐらい美味しい。食べるだけで幸せというのを実感する。
「そうか。料理人達も喜ぶだろう」
グレイス様の嬉しそうな笑顔。イケメン好きなら鼻血でも出して喜ぶかな。
「デザートです」
ソフィアさんの声を聴いて置かれたデザートのお更に目を向けると、目が合った。
「ひゃあ!」
「危ないですよ。落ち着いてください」
驚きのあまり椅子ごとひっくり返りそうになった瞬間、エリスさんに支えられて無事に済みました。
「あ、ありがとうございます」
お皿に置かれたデザートは、十センチ程度の大きさをしたデフォルメされた人型に、クリッとした大きな一つ目。頭頂部から足元へ液体が流れ続けているのはどういう作りになっているのやら。そして頭の上で輝く悪戯大成功の文字の両脇に手を添えている。
「食事中ぐらいはやめてくださいよ」
「すまないが、難しい相談だ」
グレイス様の顔が申し訳なさそうになっているけれど、少し楽しそうにも見える。
「クレハ様。溶けないうちにどうぞ」
「え、これ、もう溶けているように見えるけれど?」
「それが最良の状態です」
意を決してスプーンを持つと、デザートと向き合う。
心なしか目が潤んでいるような気がする。ものすごく心が痛いけれど、端の方をスプーンで掬うと眼を瞑って一口。
「あっ、冷たくて美味しい」
これ、アイスですね。味はベリー系かな。もう一口と思ったら、今度は横向きになっていて、目が合うと手招きされた。
「え、どうして? 生きてる?」
「それはメアリーの魔法だな。どういう理屈なのかは分からんが、恐らくはゴーレム関連の魔法だろう」
思わずメアリーさんを探せば、部屋の隅でソフィアさんに怒られているっぽい。何をしたんだろう。
あっちは気にしないことにして、デザートを食べよう。見た目さえ気にしなければ美味しいし。
「え、もうそんな時間」
窓の外を見れば、既に暗くなっていて真っ暗で何も見えない。思ったよりも本に集中していたらしい。椅子から立ち上がるついでに伸びをしていると、ソフィアさんから一言。
「私は野暮用があるので、メアリーがご案内します」
「あ、はい」
メアリーさんがお辞儀している間にソフィアさんが部屋を出ていく。
メアリーさんの案内に従って部屋を出て廊下を歩く事数分。こちらの廊下も巡回する人の姿がなく、一定距離で花が置かれているだけ。そういえば、昼間の花たちは動いていたよね?
近づいて暫く観察してみると、白い花が徐々に真っ赤に染まっていく。
「あ、仕事中にごめんなさい」
謝罪してから待ってくれていたメアリーさんへ視線を向けると、壁に凭れ掛かっていた。私の視線に気が付くと、慌てて姿勢を正して何事もなかったかのようにしている。
思わずジトッとした視線を送ると、メアリーさんが慌てたように背中に回って押してくる。メアリーさんって自由だなあ。
大きな扉を開けて食堂へ入ると、大きな部屋にポツンと二人が使える程度の大きさの机と椅子が置かれていて、結構な数の大きめの胸像が机の方を向くように置かれているのが目に入る。
「……。……あれ、なんですか?」
メアリーさんに質問した途端、胸像がすべて消える。幻影の魔法で見えなくしたようで、あったはずの場所に触れれば何かを触っている感覚がある。これ、結構面白い。
何を触っているのか分からない不思議な感覚を楽しんでいると、持ち上げられて椅子まで運ばれる。
メアリーさんが私の椅子の調整(足が着かない上に机が首下の高さ)をしつつ何かを必死に誤魔化そうとしているので、説明してくれそうなソフィアさんを待つことに。
せわしなく動き回って何かを移動させていくメアリーさんを見守りつつ待つこと暫し。燃え尽きたかのように真っ白な顔色でげっそりとしたグレイス様が入ってくる。
立ち上がろうとすると、グレイス様に止められる。
「グレイス様、お疲れ様です」
「ああ。ありがとう」
椅子に座って一息つくと、周囲を見て感慨深げに息をつく。
「今日は部屋が広いし、気が楽だな」
「あの沢山の胸像はいつもなんですか」
「ああ。エリスによると、寂しくないように置いているらしい」
こっちまで精神的にくるんで、遠い目をしながら眦に涙を溜めないでください。
「そうだ。もう聞いていると思うが、私が後見人兼保護者となった。まあ、硬く考えずに家族になったと考えてくれていい。口調も楽にしてくれて構わない」
「ありがとうございます。口調は追々でいいですか?」
「構わない。慣れない場所での暮らしは何かと大変かもしれないが、何かあれば遠慮せずに言ってくれ」
「はい」
「ゆくゆくはお父様とか言わせて楽しむんですね。変態ですか」
いつの間にかグレイス様の後ろに立っていた赤い髪のメイドさんから氷のような視線が送られ、グレイス様の肩が跳ねあがる。
「待て、なぜそうなる」
「クレハ様ですね。初めましてエリスと申します。この変態で一人ぼっちで根暗なグレイス様付きのメイドをやっております。何かあれば遠慮せずに申しつけ下さい」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか」
身を乗り出して抗議するグレイス様の顔を、片手で押し戻しながら笑顔を見せてくれるエリスさんに宜しくお願いしますと返す。
「では、食事を始めます」
結局最後まで抗議を無視し続けた。エリスさんもグレイス様をそのように扱うんだ。頑張れグレイス様。
ところで。こちらの食事はコース料理らしく、目の前にカトラリーが並べられていく。どうしよう。
「どうした。ああ、公の場でもないから気にすることなく食べたらいい。こういった食事はしたことがないのか?」
「生まれ育った国とは違う国では、同じか近い作法で食べます。また、私のいた国でもこういったコース料理はありました。ですが、貧乏人の私は縁がないです」
コンビニで済ませる日々だったし、普通の家庭だったからなんとなく聞いたことがあるし、なんとなくやったことがある程度では?。
「そうか。クレハの家では、どういう食事の仕方だったんだ?」
「私の場合は主食とおかず一品か二品、同時に食卓に出して自分の分を取り分ける感じでした」
「ふむ。町での食べ方と同じか」
「クレハ様、折角なので故郷の料理を教えていただけますか?」
音も気配もなく前菜を持ってきたエリスさんとソフィアさん。心臓に悪いです。
故郷の料理を伝えるのは良いとして、食材とか調味料の状態が分からないので、明日調理場と食糧庫を見に行くことに。
さて。コース料理というのは貧乏人の私からすると非常に面倒なことに、料理ごとに使うカトラリーが違う。更に悩ましいことに数が多い。
どうすればいいのか悩んでいると、使うカトラリーをメアリーさんが小さく矢印表示してくれる。メアリーさんの優しさが嬉しいけれど、時折躓いているように見える。大丈夫だろうか。
グレイス様が静かに食べていくから、暫くの間は無言で食べ進めていく。にしても、本当に音がしないですね。
次の皿が来るまでに間が空いた時、グレイス様が口元を拭いながら笑いかけてくる。
「クレハ、口に合うか?」
「すごく美味しいです」
本当にとろけるぐらい美味しい。食べるだけで幸せというのを実感する。
「そうか。料理人達も喜ぶだろう」
グレイス様の嬉しそうな笑顔。イケメン好きなら鼻血でも出して喜ぶかな。
「デザートです」
ソフィアさんの声を聴いて置かれたデザートのお更に目を向けると、目が合った。
「ひゃあ!」
「危ないですよ。落ち着いてください」
驚きのあまり椅子ごとひっくり返りそうになった瞬間、エリスさんに支えられて無事に済みました。
「あ、ありがとうございます」
お皿に置かれたデザートは、十センチ程度の大きさをしたデフォルメされた人型に、クリッとした大きな一つ目。頭頂部から足元へ液体が流れ続けているのはどういう作りになっているのやら。そして頭の上で輝く悪戯大成功の文字の両脇に手を添えている。
「食事中ぐらいはやめてくださいよ」
「すまないが、難しい相談だ」
グレイス様の顔が申し訳なさそうになっているけれど、少し楽しそうにも見える。
「クレハ様。溶けないうちにどうぞ」
「え、これ、もう溶けているように見えるけれど?」
「それが最良の状態です」
意を決してスプーンを持つと、デザートと向き合う。
心なしか目が潤んでいるような気がする。ものすごく心が痛いけれど、端の方をスプーンで掬うと眼を瞑って一口。
「あっ、冷たくて美味しい」
これ、アイスですね。味はベリー系かな。もう一口と思ったら、今度は横向きになっていて、目が合うと手招きされた。
「え、どうして? 生きてる?」
「それはメアリーの魔法だな。どういう理屈なのかは分からんが、恐らくはゴーレム関連の魔法だろう」
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