腐った竜に古豪の虎が牙をむくとき(第一話 似て非なるもの)

Kazu Nagasawa

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腐った竜に古豪の虎が牙をむくとき(第五章 四人で生きる)

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◆第五章 四人で生きる
一.試練にたえて
 佳乃丸が描いた盗賊団の首領の駒吉と弟の又三の似顔絵は浮世絵の彫師ほりし摺師すりしの手によってみごとな出来栄えを見せた。その絵が江戸市中に配られてた翌朝のこと、両断斎が食事の支度をしているとオカヨが起きてきて手伝おうとした。
「起きたのか?」と両断斎。
「はい! 昨日は寝れんでした」
「分かった。無理をするな」
「はい! 佳乃丸とカンタは?」
「道場に稽古に行っておる。おまえを守ると言ってな」
「もう! わたしみてえな者がいるばっかりに迷惑さかけて申しわけねえ」と詫びるオカヨに両断斎が改まり、
「オカヨ!」
「はい!」
「ちゃんと言っておく。お前がいるからこうしていられる。いなくなったときに心配で仕方がなかった。おれはお前も、あの子たちもいないと困る!」
 このあととオカヨは涙をこらえ朝食の準備にかかった。

 そのとき釜には麦飯が残っていて、その横に梅干しとシソの葉が出ていたので佳乃丸とカンタが握り飯を作って食べたと分かった。するとオカヨは小さな鍋に水と煮干しを入れてダシを取り、その合間にイワシの丸干しを七輪に掛け糠漬かすづけを取り出して切りはじめた。さらに、煮干しのだしを釜戸にかけてお湯を沸かしサツマイモと青菜を切って入れ、具の火の通りを見るオカヨの手際に両断斎が見入っていた。
 その一つ一つが釜戸のまわりに自然な動きに見えると両断斎は集中力の高まりを覚え、太刀掛けの大小と煙管入れの位置をたしかめた。駒吉一味から守るべき家族への思いと交錯するように無意識に一味の出方を考えてしまう。両断斎は一味とどのように応じるか迷っていた。

 オカヨが朝食の支度を終えたとき拳法の稽古から佳乃丸とカンタが戻ってきた。二人は両断斎が食事の席に着くと、いきなり釜のなかの残り飯とイワシの丸干しで飯を食べはじめた。その二人を見ながらオカヨは両断斎と顔を見合わせて思わず笑いをこらえた。子ども二人の食欲は日に日に増して多めに作った飯はすぐに底をつく。オカヨがあきれて笑いだすと両断斎も笑いながら二人の子どもの食べ終わりを待った。
「ねえ父上! オカヨちゃんを母上って言っちゃいけないの?」と佳乃丸。
「おいらも姉ちゃんより母上がいい!」とカンタがつづく。
「だめだ。カンタはおじちゃんを父上って言えたら母上だからな!」
「じゃあ、おじちゃんは父上って言われたいの?」
「ああ! カンタも父上と呼んでくれ」と言って両断斎が笑顔となる。
「そっか、姉ちゃんはおじちゃんを……? あっ間違えた。父上を何と呼ぶの?」
「それはオカヨと考えておく。二人で相談してな」と両断斎がカンタに応じた。すると佳乃丸が、
「カンタ! 決まっていることをいちいち聞くな」と、いつもの口ぐせにオカヨが恥ずかしそうに食事をはじめた。

 昼が近づきオカヨが山積みになった洗濯物を干しはじめた。両断斎は自分の大きな着物を物干し竿にとおし、オカヨが二人の子どもの着物を空いた場所に掛けるのを待っている。オカヨは竿を持って踏み台に上がり物干し場の竿掛けの一番上に掛けた。そんないつもと変わらない光景のなかに、いきなり悲鳴が聞こえた。
「オカヨ! はやく中に入れ。様子を見て来る」と言って両断斎が刀を手に取る。
「分かった! 二人に言うから気をつけて」とオカヨが佳乃丸とカンタに戸締りをさせ、そしてオケイからもらった火打石で無事を祈願して両断斎を送り出した。

 一瞬の間をとり、家の周りをうかがってから悲鳴の方に走り出す両断斎が途中で足を止めた。その視線の先に井戸の釣瓶つるべの縄に首を吊った男がみえる。次々に長屋のなかから休みの同心たちが集まった。そのなかに人相書きと似顔絵を持った者がいて首を吊った男と見比べている。

「ケガを負った者はいないか?」と両断斎。
「はい! いま長屋じゅうを調べております」と非番の佐伯兵衛が応じた。すぐに首に巻きついた縄をゆるめ男の見分をはじめると、
「うむ! これは顔を殴られた跡か?」
「確かに、この腫れは殴られておりますな。しかし、釣瓶の縄と首のあとは違っているように見えます」
「どれ……? 確かにそうだな」
「いま奉行所に知らせを出しました」と聞いて、両断斎はその後の調べを居合わせた同心たちにまかせ一旦家に戻った。
 すると・・・
「オカヨ、戻ったぞ!」
「……」応答がない。
「オカヨ、開けてくれ!」
 異常を感じて玄関の戸を蹴やぶった両断斎がなかを見た。
「これは、なんと!」
 そこに、うつ伏せ姿に猿轡さるぐつわをされ後ろ手に縛られた佳乃丸がいた。猿轡さるぐつわを外すと佳乃丸は早く追いかけろと言って指をさす。急いで開いている裏口から外に出て川沿いの裏木戸を開けた。その両断斎が大川(隅田川)の方に目をやると護岸の端に竹の梯子が出ていることに気付く。両断斎は咄嗟に梯子に向かって走り出した。
「オカヨ! カンタ!!」と叫んだ先に船にむかって梯子を下りる二人が見える。二人は梯子の上下にいる男から脅されて上にいる男から足蹴にされた。さらに近づくと目の前で梯子が外され船が岸から離れていった。さらに近づくとオカヨは頭から大きな袋を被されて袋ごと縄で縛られ船底に寝かされていると分る。
 このとき両断斎に気づいたカンタが「父上! 父上!!」と、あばれだした。
「おとなしくしろ。殺すぞ、このガキ!」とカンタが脅され腹を殴られた。それを見て両断斎が動きを止めた。船の上の男の数は三人。その一人が竿を使って岸から船を遠ざけ、もう一人が大川にむかって櫓をこぎはじめた。

 この船の動きを捉えた両断斎が大川との間の水門に走った。そして水門の上から下を見て刀を抜いた。両断斎が巻き上げ用の綱を切りにかかると弦のようにしなる。しかし二度目の袈裟切りにより綱は半分ほどしか切れずに刃が根元から欠け落ちた。オカヨとカンタを乗せた船は大川からの流れに逆らいながら徐々に近づいて来る。このまま船が大川に出ると川幅が広く流れが速いので容易に後を追うことは出来ない。両断斎は水門の上から川に飛び込むつもりで服を脱ぎ脇差を口にくわえた。すると、
「父上、これを!」と言って佳乃丸が換えの刀を差し出した。両断斎はこれを受け取ると息を整え、その一刀を綱の切れ目にあわせ袈裟の位置から振り下ろした。

 刀はふたたび根元から折れた。綱はわずかに残り水門はそのまま開いている。そこに同心の佐伯が走り寄った。その佐伯に、
「刀を貸せ!」と両断斎が刀を求めると突如として水門が落ちはじめた。思わず船の無事を確かめる両断斎。オカヨとカンタを乗せた船は水門に斜めからぶつかり傾いていた。その船が沈みだすと次々に船から男が川に飛び込んでいった。

「父上、早く助けてくれ!」とカンタが叫ぶ。カンタは竹の梯子につかまりながらオカヨに被せられた袋をつかんでいた。
「わかった。いまいく!」と言って両断斎は水門の上から飛び込んだ。そして、オカヨが縛られた綱を脇差しで切って袋を外し竹の梯子につかまらせた。
「オカヨ! 大丈夫か」
「うちはいいから、カンタを!」
 このあと両断斎は水門の近くにある縄梯子まで竹の梯子とともに二人を曳航した。その縄梯子の途中には佳乃丸が下りてきて先に上ったカンタの手を取って引きあげようとしている。オカヨはその様子を見ながら両断斎の背中に抱き着いて首に手をまわした。
「オカヨ! しっかりつかまっていろ」
「もう、死んでも離さねえ!」
「分かった。上るぞ!」
「ぜったい離さねえから!」
 こうして無事に縄梯子を上がり四人は長屋に戻った。そしてすぐに着替えて同心たちとともに一味の取り押さえや井戸の掃除に加わった。
 この一件を契機として同心とその家族は長屋の表木戸と裏木戸に見張りを立てることとなる。こうして駒吉一味の捕縛に同心たちは家族総出の体制となり、長屋の近くにある八丁堀の表木戸にも町会総出による見張りが立てられた。

 一方、船から飛び込んだ男はいずれも同心に取り押さえられ、その場で裸にされ縄を打たれて市中を引き回された。この一件によって八丁堀の同心長屋をおそった駒吉一味の噂は江戸中に知れわたり一味の取り調べはさらに厳しさを増した。
 そのやり方は一味の仲間の面前で石を抱かされ、われた竹の棒でたたかれて悲鳴があがる。その声が奉行所の外にまで聞こえるほどの尋問が繰り返された。それでも駒吉と又三の行方を言おうとするものは一人もいない。井戸に吊るされた者の一件とは関係がないと言う者ばかりであった。
 江戸の庶民からは、これが悪事をはたらく者に対する徹底した町方の姿勢であり御政道をけん引する奉行所方の意地であると言われた。


二.多嘉良流拳法
 こうして佳乃丸が元絵を描いた駒吉と又三の似顔絵を配って十日が過ぎたが、これっといって足取りの話はない。そのため同心長屋では戸締りと巡回を行うこととなり、長屋への出入りのほかに八丁堀にあるすべての表木戸と裏木戸の出入りに際し声がかかるようになった。
 そんなことを住人たちがやり始めた翌日、オカヨとカンタが家にいないことに気づいた両断斎が、
「佳乃丸! オカヨとカンタはどこに行った?」と言った。
「さっき道場にいたよ」
「そうか!」
「父上! 前から聞こうと思っていたことがある」
「どうした。言ってみろ!」
「父上はなんでそんなに強いの。どうすれば強くなれるの?」
「うむ! 強そうに見えるが、体が大きくて力があるだけだ」
「おいらに、ちゃんと教えて!」と言った佳乃丸の言葉が現状を物がたっていた。
「そうよなー、オカヨと相談してからでよかろう」と両断斎が返事を渋った。佳乃丸は駒吉一味の一件があってから絵と踊りの習い事を休むことがあった。そこには似顔絵を描くために駒吉と弟の又三を直接見た恐怖から佳乃丸が自分で身を守りたいと思っているように見えた。
「ねえ、父上はだれに拳法を教わったの?」
「うむ! それは、長崎の出島と言うところにいた時のことだ」
「おいら聞いたことがある。異人の島でしょう」
「そうだ、良く知っているな! だれに聞いた!」
「知らない人! 死んだ母ちゃんのお客」と言った佳乃丸の一言に両断斎が言葉を詰まらせた。
「……そうか! じつは異人に教わったのじゃ。それは厳しい修行でなぁー」と言うと佳乃丸が紙入れから拳法の形を描いた絵を取り出した。その絵は荒木流などの日本の拳法と明らかに違いが分かるものであった。


 両断斎の家系の多嘉良一族は古くから長崎奉行につかえ清国(中国)との通訳をしていた。そして両断斎の父の代になると江戸住みが言い渡され幼少期に江戸に引っ越したのである。
多嘉良一族は代々清国(中国)の武術に精通していて両断斎もその影響を強く受けて成長した。この多嘉良の拳法は人の急所、経絡に対して施術を行う治療の延長上にある秘拳である。
 その両断斎が佳乃丸の絵を見ながら、
「ほう、これは見事じゃ。だれに教わって描いた?」と言うと、佳乃丸が不満げに、
「もう、父上です。いつも外で稽古をしているでしょう!」と言った。
「うむ! たしかに」と返す両断斎には佳乃丸に剣術や拳法をあえて教えなかった理由がある。両断斎は佳乃丸の父親の浅見助好が火付けと殺人を犯したことから常々人の命をうばう武術と異なる道を佳乃丸に歩んでほしいと思っていた。しかし、駒吉一味と関わったことにより自衛のために佳乃丸をはじめオカヨとカンタも拳法に興味を持ちはじめたことを知る。この
三人の気持ちに両断斎はどのように応えるべきか迷っていたのである。

 こうして佳乃丸から拳法の絵を見せてもらった翌日のこと、オカヨとカンタが道場から戻り佳乃丸と三人で夕飯の支度に取りかかった。そのとき両断斎は佳乃丸が描いた絵をみながら拳法の形の名前を書き加えていた。
「父上! お食事が出来ました」と佳乃丸。
「おお、いま終わる」と両断斎が筆をとめた。すると佳乃丸が自分の描いた絵を見て、
「おいらの絵に何か書いたの? あれ!?」
「技の名前を書いていた。全部で五十六だ」
「では残りは五十も?」
「そうだな」と両断斎が筆を片付け佳乃丸といっしょに部屋の中央に飯台を出した。
「さあ、二人ともご飯よ! カンタも早く座りな」とオカヨに促され四人が食卓を囲んだ。これが武家のならいとは異なり家族全員で飯台を囲む食べ方である。ここにも町人と同じように育てたいという両断斎の思いが込められていた。

 食事が終わると佳乃丸が拳法の技のことを両断斎にきいていた。佳乃丸が技を描いた絵は全部で三十枚となるが、一枚に二つから三つの描写をコマ送りのように描いてある。そのなかで最も数が多いのが『掌底両牙(しょうていりょうが)』という突き技であった。
「ねえ、父上! 一番多く名前がある技はなんて読むの?」と佳乃丸。
「うむ! これは、しょうていりょうがと読む」
「おいら、読めても意味が解らないよ」
「そうだな。わしはまだ力の加減が分からない」
「そっか! だから何度も同じ形をやっていたんだ」と佳乃丸が言うと両断斎はオカヨが吉原に連れて行かれそうになった時のことを例え、浪人の動きを止めるために掌底両牙を使ったが加減を誤ったと言った。そのため相手の首が曲がったというとオカヨが食事の片付けの手を止めた。
「だんな様! 力を入れすぎると首が折れて死んでしまうのか?」とオカヨ。
「うむ、そうだな! お前を守ろうとしたが、相手を憎いと思っていた」
「じゃあ、駒吉と又三は?」とカンタが聞いた。
「……」
 すると・・・
「母上! おいらは父上に殺してほしい。かーちゃんのかたきを討ってよ!」とカンタが言ってもオカヨはだまっている。
「いま殺して、と言ったな、カンタ!」と言うとカンタが不思議そうに両断斎をみていた。「言ったらダメ?」と言ってカンタが泣きそうになる。
「いや! おまえたちの気持ちはわかる。だが殺すということをめったに言ってはならん。分かるな!」
「……分かりました!」と理解を示すカンタ。
 このとき止まっていたオカヨの片付けの手がふたたび動きはじめた。そのあと両断斎は強くなるために憎しみをもって人を手に掛けてはならないと言った。そして、しばらくすると佳乃丸とカンタが畳の上で寝たので両断斎とオカヨが抱きかかえ布団に寝かせた。

 突然「だんな様!」と両手をつくオカヨ。
「うむ! どうした。そろそろあかりを消すぞ」
「この子たちは血が繋がっていねぇけど、まるで兄弟みてぇに仲がいい」
「そうだな! どうした急に?」
「いつまでもここに置いてくだされ。一生懸命なんでもするから……」
「オカヨ! 佳乃丸がいまの話を聞いたら、あたり前のことを聞くなと言うであろう。だが、どうしてお前がそう言うかもわかる。わしも、この四人でずっといたい!」
「はい!」と言ってオカヨが行燈(あんどん)の火を消すと二人の子どもの寝息とオカヨの鳴き声がする。このころから佳乃丸とカンタをはさんでオカヨと両断斎が寝るようになった。


三.不穏な影ふたたび
 翌朝、両断斎はおもてで拳法の稽古をする三人の声で目が覚めた。絵を見ながら形を真似るだけではあるが三人の気持ちが痛いほどわかる。両断斎は、すぐに布団をしまい稽古の輪にくわわると佳乃丸が目の前で掌底両牙の形をはじめた。
「……? 覚えたようだな!」と両断斎。
「はい! ご指導を」と佳乃丸が基本の姿勢となる。佳乃丸のゆっくりとした形の動きは踊りのように見える。両断斎は自分の動きとは似て非なるもではあるが打突の位置に迷いがないと感じて横に並んだ。このとき呼吸を合わせて両断斎を真似る佳乃丸の才能におどろいた。
「父上! これでよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだ! よく覚えたな」
 この二人を見ながらカンタとオカヨは懸命に動きを真似ていた。両断斎を中心に、ゆっくりとした動きはまるで踊りの稽古のようではあるが、互いの思いがこれほどまで近いと一切のわだかまりを感じさせない空間に見えた。

 こうして駒吉一味への不安が消えかけ朝の稽古が日課となったころに、日本橋の金座から銀座を経由して江戸城の御金蔵に向かっていた船が途中で襲われたという知らせが入った。そのとき両断斎には火付盗賊改方が調べに入ったと伝えられたが第二報で船に乗っていた者は溺死か行方不明との知らせがあった。その船が無人のまま大川(隅田川)まで流れて築地の魚河岸に着いたところで事件が発覚したという。
 この件で両断斎に奉行所から急ぎの呼び出しがあった。
「ただいま到着いたしました!」
「ご苦労! なかに入ってくれ」と奉行の馬場尚繁(ばばなおしげ)に言われ両断斎が部屋に入った。
 両断斎が着座すると与力の西口亜門(にしぐちあもん)と火付盗賊改方の徳山秀栄(とくやまひでいえ)が待っていて、その場の雰囲気から問題の大きさが感じとれる。襲撃の状況が説明される前に奉行の馬場が口火を切った。
「多嘉良! 全員溺死した。それも斬られた形跡がない」
 その馬場の話を受けて徳山が現時点の状況を話しはじめた。
 徳山は、襲われた船に乗っていた十人の火付盗賊改方は全員が見付かったが、いずれも溺死して刀傷がないと言った。この状況から船が目的地の銀座ではなく大川(隅田川)に出てから盗賊に襲われ護衛が溺れたとわかる。途中の水路では川幅も狭く流れがおそいため十人全員が溺れることはあり得ないのである。そして刀傷がないということは不意を突かれ相手と戦わずに川に落とされたと徳山が言った。
「して、積み荷は?」と両断斎。
「日本橋(金座)で一万両の小判を積み、銀座で丁銀を積んで御金蔵にもどる途中だったと聞く。積み荷の行方はまだじゃ!」と奉行の馬場が失態を悔やんだ。
「して、船の船頭は?」
「問題はそこだ! 船頭が船を大川(隅田川)にむけたとき、だれも気付かなかったという失態だ」
 その失態の原因が船や水路についての知識不足と泳ぎが出来ない護衛の人選であったと馬場が言った。その話につづき徳山秀栄が、
「多嘉良! いま御奉行が申されたとおりだ。(火付盗賊)改方に来てはくれぬか?」と両断斎に求めた。このとき両断斎は駒吉一味の一件が終わるまで火付盗賊改方への推挙を待ってもらっていたのである。

 この再度の求めによって火付盗賊改方への役目替えを引き受けた両断斎はオカヨと二人の子どもの身の安全を願い出た。これを奉行の馬場が了解し、
「しばらく奉行所にて三人をあずかることでどうか?!」と言った。
「恐れ入ります」と両断斎が了解し、これによって両断斎の勤めのときは奉行所でオカヨと子ども二人を預かることとなる。
 こうして駒吉一味の事件が解決されないまま御金蔵にむかっていた船の襲撃によって江戸の治安を守る火付盗賊改方と奉行所は混乱をきたしていた。


 オカヨと二人の子どもを奉行所であずかることとなった翌日、両断斎が荷物一式を背負いオカヨと二人の子どもといっしょに奉行所にむかっていた。すると二人の侍が息を切らして走り寄った。
「多嘉良様とお見受けいたしますが?」
「いかにも!」
奉行所まで、わずかな距離ではあるが急を要する姿に四人は足を止めた。
「我ら火付盗賊改方の者にて、ふたたび御金蔵の船が襲われましたことを知らせに!」
「なんと! どこで?」
「場所は芝浦の先! 護衛のものが助けを求めていたと」
「して、船は?」
「その船は近くにいた薩摩の船によって運ばれ、いまは蔵屋敷におります」
 その話を聞いてオカヨが佳乃丸とカンタを抱き寄せた。
「オカヨ! 奉行所に行って待っていてくれ。薩摩の屋敷に行ってくる」と両断斎。
「待っているから、気を付けて!」とオカヨがゲン担ぎの火打ちをした。そのあと両断斎は背負った荷物を二人の侍に奉行所にはこぶように頼んでから薩摩の蔵屋敷に向かおうとした。ところが一つ目の角を曲がるときに腰の煙管入れの収まりが何故か気になる。両断斎は『もしや』と思い、すぐに来た道を引き返した。

 すると奉行所にはこぶはずの荷物が道のはしに残してあるのが見えた。両断斎があわてて近づき周りを見ると、せまい小路に駕籠かごが二つあり、
「さあ! 早く乗ってくれ。我らも忙しい」とオカヨと二人の子どもを急がせて両断斎の後を追うと言っている。オカヨと佳乃丸はその言葉を信じて駕籠かごに乗ったが、カンタがこれを拒んで小路の奥を見ていた。
「おじちゃんたち、仲間だろう! あそこに隠れているやつの」とカンタ。
「だれのことだか分らん。さっさと乗れ!」とカンタがきつく言われ、しぶしぶ佳乃丸といっしょの駕籠かごに乗ってしまった。駕籠かごはオカヨを乗せたものと子ども二人を乗せたものの二つ。その前後に火付盗賊改を名のった男と隠れていた男がついて歩いていく。両断斎はそのあとを気づかれないようにつけていった。

 すると駕籠かごは奉行所の手前を折り返してから左に曲がり上野の山に向かった。この時点でオカヨと二人の子どもが拉致らちされたとわかり両断斎が駕籠かごを呼び止めようとした。そのとき、
「だんな! どちらへ?」と声がかかる。馴染みの団子屋の主人であった。
「すまぬ! 駒吉一味をつけている。奉行所に知らせてくれ」と両断斎。
「もしや、あの駕籠かごに?!」
「ああ、うちの三人がいる! よろしく頼んだぞ」
「へい! まかしといておくんなせい」と言って主人が奉行所にむかった。こうして両断斎は駕籠かごのあとを付けながら途中で駒吉一味を追っていることを伝えるように頼んでいた。そのあとオカヨと二人の子どもを乗せた駕籠かごは二つとも神田川の手前の坂を下りて舟宿の横に止められた。

 あとを付けていた両断斎はものかげに隠れて坂の途中から様子をうかがった。すると、舟宿の近くにいた見張り役の男が駕籠かごを開けオカヨの腕をつかんで駕籠かごから出るように言った。オカヨはその男を見るなり怯えはじめ動きがぎこちなく見える。つづいて駕籠かごといっしょに来た男の指示で火付盗賊改を名乗った侍が佳乃丸とカンタを駕籠かごから引きずり出して襟元をつかんだ。指示を出した男は、
「命がおしかったら動くんじゃねえ!」と言って二人の子どもを縛り上げた。カンタがその男をにらみつけると男はカンタにむかって唾(つば)を吐き匕首あいくちを抜いた。怯えるカンタを見透かすように男はカンタの前からオカヨに近づき、
「おとなしくしねえと、こいつを殺すぞ!」と言ってオカヨの首を匕首あいくちでた。オカヨは目を閉じて顔をそむけ震えている。そのオカヨをカンタに見せ付けるように見張り役の男が後ろ手に縛りあげ猿轡(さるぐつわ)をした。そしてオカヨを連れて舟宿に入っていく。このとき両断斎は焦る気持ちをこらえ奉行所の応援を待つことにした。


四.一味捕縛
 しばらくするとオカヨを舟宿に連れて行った見張り役とは別の男がものかげから出てきた。その男は周りをうかがいながら二人の侍といっしょにいる男と話をしていた。両断斎はこのとき別の男が出てきたことで駒吉一味の徹底した警戒ぶりをあらためて感じていた。
 すると、ものかげから出てきた男は駕籠屋かごやに金をはらい駕籠かごがいなくなるのをみて佳乃丸とカンタを小突きながら脅していた。これで外には一味と思しき男が二人。そして火付盗賊改方と名のった二人の侍がいて、舟宿には複数の一味がいると思われた。さらに舟宿の艀(はしけ)には二隻の屋根船が着けてあり逃げるための手段となる。この状況がわかると両断斎はうかつに手が出せないと思ったが、なかなか奉行所からの助けが来ない。もし舟宿から屋根船でオカヨと二人の子どもが連れていかれた場合、両断斎は追うことが出来ないのである。焦りと無事を祈る気持ちがつのっていた。

 
 すると舟宿からさらに別の男が出てきて佳乃丸とカンタに猿轡(さるぐつわ)をして後ろ手に縛りあげた。一味の男はこれで三人となる。舟宿から出てきたその男に二人の侍が金をもらうと周りを見ながら姿を消した。この時点で外にいる一味を両断斎がし止められると考えて近づこうとした。ところが二人の侍と入れ替わるように別の男が舟宿に向かって坂を下りていった。おもわず立小便の格好をしながら両断斎が坂を下りて行った男の様子をうかがった。ふたたび出方を迷う両断斎の前で佳乃丸とカンタが小突かれている。
 そのとき両断斎は何お思ったのか煙管を取りだしてタバコをふかしはじめた。
 外にいる四人のなかに首領の駒吉と弟の又三がいないことは佳乃丸の似顔絵によってわかる。この状況から舟宿に首領の駒吉と弟の又三がいると両断斎は考えた。四人であれば両断斎の腕前からしてなんとか佳乃丸とカンタを救えるが、ほかに見張りが潜んでいることもある。さらに舟宿のなかの一味に知られると舟宿に連れていかれたオカヨが人質にされ両断斎は動きが取れなくなる。などと、タバコをふかしながら考えをめぐらせている両断斎の横を五人目の男がとおって行った。

 しばらくして舟宿の前にいた五人の男は、見張り役の一人を残して佳乃丸とカンタが舟宿に連れて行こうとした。そのことをカンタが嫌がり顔を張られた。それをかばおうとして佳乃丸が体を寄せると腹を蹴られうめき声をあげた。この狼藉を見て両断斎が刀の鯉口を思わず切る。
 すると、そこに・・・
「多嘉良様とお見受けいたす」と、見知らぬ侍が近づいて来た。
「いかにも! 見てのとおり。助けねば!」
「しばらくお待ちくだされ。助けが来ます」と、その侍が止めに入いる。これに応じた両断斎に半鐘の音がきこえた。
「火事か?」と両断斎がたずねると、
「いいえ! 組の者を呼び出しております。わたくしは団子屋の主人に言われ、ここに参りました佐々木小十郎と申します」
「かたじけない。して、どうされる?」
「両岸から梯子を渡して水路をふさぎます。あのとき二番組がやったように!」
「なるほど……」と両断斎が感心すると、小十郎が橋にむかって走りだした。そして橋の上から川に飛びこみ水しぶきがあがった。落ちた音を聞きつけ駒吉一味の見張り役が川の方にむかうと、その動きにまぎれて両断斎が舟宿に近づいていった。

 一方、川に飛び込んだ小十郎は、
「助けてくれ! 人を呼んでくれー……」と叫びながら溺れたふりをしている。その声を聞きつけ周りに人が集まり、そのなかには舟宿から出て来た一味の男が混じっていた。
「おい! どうした?」
「男が溺れているぞ! こっちだ。早く! こっちだ……」
 駒吉一味の意識が川に落ちた小十郎に集まると両断斎がふたたび煙管でタバコを吸いはじめた。その前を舟宿から出てきた一味がとおっていく。両断斎は腰付けの煙管入れに煙管を仕舞い入れると、ゆっくり舟宿に入って行った。その直後、舟宿の窓越しに半鐘の音があちこちから聞こえはじめた。両断斎が川沿いの縁側をとおていると外の様子が見える。
「こっちから縄を投げるぞ!」
「まかしとけって!」
「次はこっちだ! 梯子をつないでおけ」
「あいよ! 綱を引け」と、声を掛け合い段取りが進んでいく。
 両岸に集まった火消したちが長梯子を下ろして水路をふさぎはじめると、様子を見ていた駒吉一味が小十郎を早く川から助け上げろと怒りはじめた。この火消しの作業によって舟宿に着けられた二艘の屋根船は動くことが出来ない。
 すると、
「チンタラしてんじゃねえ。さっさと動け!」と一味の一人が喧嘩の口火を切った。
「おいこら! 人助けを邪魔するやつぁタダじゃあ済まさねえ」と、火消しが一味にくってかかる。
「なにを、この町火消が!」と言って一味が匕首を抜いた。
「なんだと、ごろつき! 火事と喧嘩は江戸の花ってな!」
「ふざけるんじゃねえ。覚悟しあがれ!」
 こうして刀と匕首を抜いた一味が火消ともつれあう。数で圧倒する火消が鳶口(とびぐち)や刺股(さすまた)で一味を締め上げている隙に両断斎が奥にすすんだ。

 するとそこに外を見ながらしびれを切らす駒吉と又三がいた。
「もう! しょうがねえから早いとこやっちまいましょう」と又三の声がする。
「そうだな。外のやつら、ただじゃ済まさねえ!」と、いかり心頭の駒吉が入り口にむかって物を投げた。あわてて身を隠す両断斎。
「じゃあ、どっちからやりますか?」と言って又三が匕首あいくちを抜き、佳乃丸とカンタの顔を見比べながら刃先をむけた。両断斎には必至で泣くのを我慢する二人が見える。
「だったら、そっちの青っ白い絵描きの坊主だ! こいつのせいで動きが取れねえ」と言って駒吉が自分の似顔絵がかかれた紙をまるめて佳乃丸に投げつけた。
「そうだな。いいか坊主!」と又三が佳乃丸の顔に匕首をむけた。その瞬間に足首が飛んで駒吉の前に転がり落ちた。飛んだ足首が又三の右足であることは右に倒れる又三の体でわかる。両断斎に気づいた駒吉は、
「てめぇ! オカヨがどうなってもいいのか?」と言って刀を抜きオカヨの首に押し当てた。ところがオカヨは、ひるむことなく駒吉をにらみ、
「だんな様! こいつを早く成敗してくれ」と両断斎に求めた。これに応じた両断斎の「そうだな!」の一言に合わせて駒吉の顔から右肩にかけて光が走った。その軌跡にあった駒吉の右目が垂れ下がり鼻と頬が裂けている。悲鳴をあげた駒吉のくちびるが裏がえり歯がむき出しになった。さらに左肩の着物が切れて鎖骨がみえる。駒吉が崩れるように膝をつくと顔面から血が噴き出して床を染めた。

 その横で又三は自分の足首をつかんで早く医者を呼べとわめいている。両断斎はすぐにオカヨの猿轡さるぐつわを外した。
「すまぬ、オカヨ! また怖い思いをさせてしまった」
「いいえ! だんな様を信じていたから」
 こうして両断斎がオカヨの縄を解いている間に佳乃丸とカンタが又三の匕首あいくちを使って後ろ手の綱を切り両断斎の背中に抱き着いた。その二人を抱き寄せ、
「無事でよかった! 本当によかった……」と安堵をにじませる両断斎。そこに佐々木小十郎が全身びしょ濡れのまま入ってきた。
「多嘉良様! お怪我は?」
「大丈夫だ。そなたは?」
「このとおり、ぬれただけです!」と言って小十郎は駒吉と又三の傷の状況をみてから刀をおさめた。
「このような策を思いつかれるとはお見それした。礼を申す」と両断斎。
「いいえ! 仲間をつのりましたが薩摩の屋敷に出払っていると言われ致し方なく」
「そうか! ではあの話は本当であったのか?」
「そのようです!」
 このとき両断斎は江戸城の御金蔵に向かっていた船が襲われたことが事実であると知り驚いた。そして駒吉一味がそのことを利用してオカヨと二人の子どもを拉致したと考えたのである。すなわち一味に雇われた浪人が船の襲撃をネタに両断斎を切り離しにかかったと考えると内部の情報が一味に漏れていた可能性がある。そう考えた両断斎が小十郎に、
「せっしゃは、一味から船が襲われたと言われて薩摩の屋敷にむかうつもりでいた!」と言って経緯を話した。それに対し、
「おそらく、駒吉をうらで操っている者がいるかと!」と、小十郎が駒吉一味と船の襲撃とのかかわりを説いた。これを受け両断斎は駒吉一味の一連の犯行が組織立っていることに納得した。

 ちょうどそこに岡っ引きの松五郎が息を切らしてやって来た。
「だんな! すいません。てっきり薩摩の屋敷に行かれたと思いやした」
「すまぬ。で、ほかの者の動きは?」
「へい、とりあえずこっちに何人か来ます」と言った松五郎の話によって両断斎は駒吉一味の背後に御金蔵の船の襲撃を企てた者がいるという小十郎の話に確信をもった。
「分かった。組のみんなに礼がしたい」と言って両断斎は松五郎に財布を渡しオカヨたちと外に出る。すると一味はことごとく両腕を広げた状態で梯子に括られ干乾しの魚の様に寝かされていた。その数は、徐々に増えて十四人。両断斎は現場に駆け付けた同心たちに事情を話して駒吉と又三のために医者を呼ぶように言った。そして改めて駒吉一味との関係を小十郎にたずねると、
「おそらく我らの戦力を御金蔵にむかう船にあつめるため同時に企てたと思います」と言った。
「佐々木殿! もしや御手前は小野派一刀流ご本家の指南役では?」と両断斎。
「いかにも! 養子の身でござる」
「では、(火付盗賊)改方のご指導をされておられると?」
「そのとおりです。しかし、この一件でいっしょに汗を流した仲間が犠牲になりました」と言い残して小十郎は駒吉一味捕縛の現場をあとにした。

 しばらくして同心たちが数を増し一味の護送の準備が整ったころで両断斎もオカヨと二人の子どもの預け先となる奉行所にむかった。
 陽が傾きかけた道を歩いていると駒吉一味の恐怖から解放されたオカヨが突然泣きだした。すると佳乃丸とカンタも泣きながら歩いている。両断斎は言葉をかけることが出来ないが四人がいっしょに歩く姿によって思いは通じているとみえた。
 ひときわ背の高い両断斎を中心に右がオカヨ、左がカンタ、オカヨの横に佳乃丸が手をつないで奉行所にむかっていた。話すことがなくても互いが寄り添う姿が愛おしくみえる。両断斎が歩みの遅いカンタを肩車したが、それでも話をしないカンタを気づかい途中で道を変えるとつぶやいた。このつぶやきに佳乃丸が行き先をたずねたがカンタは黙ったままである。両断斎が「団子屋に礼を伝えにいく!」と答えたところで、ようやくカンタが「おれも行く!」と口をきいた。
そのとき夕日が四人のあとを押すように影が伸びていた。

 団子屋に着くなり主人が飛び出してきて、
「いやまぁ、だんな! ご無事でなにより。おお、みんなも良かった」と言いながら主人がゴマ団子といなり寿司を山盛りにした。
「礼を言いにまいった。すまぬが持ち合わせがない。あとでよいか?」と両断斎。一味を無事に捕縛した礼をするために財布を松五郎に渡したと言った。
「何をおっしゃいます。これはほんの気持ちです。よし坊からお父上がはじめてゴマ団子を口にされたと聞きましたよ!」と言った団子屋の話にようやく四人が笑顔となる。
「うむ! では遠慮なくいただいていく」と、両断斎が品物を受けとりオカヨに渡した。
 ちょうど江戸の町の木立が色づきはじめ寒さを感じるころのことであった。
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