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この領地には、花を見に来た観光客が泊まる、なかなかいい宿がある。少し古いが内装が凝っていて、ランプが花の形だったり、色とりどりの花もふんだんに飾られていて、アンリがとても気に入っている。
「このお宿、妖精さんのお家?」
と呟いたのを、宿の主人が聞いていて、俺達が毎年泊まる一番いい部屋を《妖精のお家》と名付けたようだ。最初、宿の名前をそれに変えようとした時は流石に止めた。
「アンリ、まだ視察が残ってるから、宿の食堂で軽く昼食にしようか」
「うん、楽しみっ」
「アンリ、疲れてないか?」
「大丈夫だよ。ご飯もおいしいし。あっ、この紅茶、うちのだよ」
「ああ、いい香りだな。確か売り出してから、ずっと使ってもらってるはずだ。有難いな」
「うん、ほんとだね。この後、お花畑を見に行くんでしょ?」
「ああ、今日は天気もいいし、満開の花は美しいだろうな」
「楽しみだね。⋯はぁ、でもさっきのキリっとした領主の顔のジェイド、かっこよかったなぁ」
「なっ!アンリ、そんな事言ったら夜まで待てなくなるだろ」
「去年もそんな事言って、約束に遅れて迷惑かけたでしょ。恥ずかしかったんだから。はい、もう行こう⋯。ジェイド、僕も我慢してるんだからね」
瞳を潤ませながらアンリが呟く。
「⋯っ!アンリ、煽った責任は、夜にしっかり取ってもらうからな」
アンリは顔を真っ赤しながら、小さく頷いた。
花畑に向かう馬車の中で、俺は膝の上にアンリを乗せ、後頭を掴むと激しく唇を貪った。
「あっ、ふぁん、だめぇ、激しいのぉ」
僅かに開いた隙間から舌を滑り込ませ、口内を荒らす。それをなだめるようにアンリが舌を差し出す。馬車の中にいやらしい水音が響いて、理性が溶けて無くなりそうになる。
アンリがグッと俺の胸を押してくる。
「はぁはぁ、もう、ジェイド、ね、だめっ」
「ぐっ、止められない」
「だめっ、もうすぐ着くでしょ」
「ああくそっ、終わったらすぐ宿に戻るぞ」
俺はもう一度アンリの唇を貪ると、ふぅっと息を吐いて、腕の中にアンリの体を収めた。
現地に着いて、馬車を降りようとアンリの手を取ると、陽の光がアンリの顔を照らす。道中の激しい口付けで上気した眦と頬が、凄まじい色香を放っていた。
「アンリ、その顔は誰にも見せたくない。馬車でゆっくり休んでいてくれ」
「いやっ、せっかく来たのに。お花見たい」
「うぅん、俺のせいだしな。じゃあ抱き上げるから顔は隠しているんだぞ」
「うん」
「あらっ、アンリ様、どうかされましたか?」
「ああ、いや、少し馬車に酔ってしまってね」
「それはお辛いですね。大丈夫ですか?」
「外の空気を吸えば治るだろう。なっ、アンリ」
コクっ
「ところで、宿の昼食はいかがでしたか?」
「ああ、二人とも美味しくいただいたよ。紅茶もうちの物を変わらず使ってもらっていて、アンリも喜んでいたよ」
「それは良かったです」
「この畑の花が、今回の新商品になる花か?」
「そうです。香りを嗅いでみてください。スーっと鼻を抜ける爽やかな香りで、また人気が出ることでしょう」
「ああ、そうだな。飲んでみたが清涼感があって美味かった。アンリも、飲むとすっきりすると言って、朝からよく飲んでいるんだ」
「ああ、だからあの名前にされたんですね」
それまで大人しくしていたアンリが顔を上げる。
「え?新しい紅茶の名前決まったの?」
「ああっと、その⋯」
「領主様、もしかして内緒でしたか?」
「ああ、いやぁ⋯、ごほん」
「ジェイド、また変な名前じゃないよね」
「さ、さあてと、宿に戻るか」
「このお宿、妖精さんのお家?」
と呟いたのを、宿の主人が聞いていて、俺達が毎年泊まる一番いい部屋を《妖精のお家》と名付けたようだ。最初、宿の名前をそれに変えようとした時は流石に止めた。
「アンリ、まだ視察が残ってるから、宿の食堂で軽く昼食にしようか」
「うん、楽しみっ」
「アンリ、疲れてないか?」
「大丈夫だよ。ご飯もおいしいし。あっ、この紅茶、うちのだよ」
「ああ、いい香りだな。確か売り出してから、ずっと使ってもらってるはずだ。有難いな」
「うん、ほんとだね。この後、お花畑を見に行くんでしょ?」
「ああ、今日は天気もいいし、満開の花は美しいだろうな」
「楽しみだね。⋯はぁ、でもさっきのキリっとした領主の顔のジェイド、かっこよかったなぁ」
「なっ!アンリ、そんな事言ったら夜まで待てなくなるだろ」
「去年もそんな事言って、約束に遅れて迷惑かけたでしょ。恥ずかしかったんだから。はい、もう行こう⋯。ジェイド、僕も我慢してるんだからね」
瞳を潤ませながらアンリが呟く。
「⋯っ!アンリ、煽った責任は、夜にしっかり取ってもらうからな」
アンリは顔を真っ赤しながら、小さく頷いた。
花畑に向かう馬車の中で、俺は膝の上にアンリを乗せ、後頭を掴むと激しく唇を貪った。
「あっ、ふぁん、だめぇ、激しいのぉ」
僅かに開いた隙間から舌を滑り込ませ、口内を荒らす。それをなだめるようにアンリが舌を差し出す。馬車の中にいやらしい水音が響いて、理性が溶けて無くなりそうになる。
アンリがグッと俺の胸を押してくる。
「はぁはぁ、もう、ジェイド、ね、だめっ」
「ぐっ、止められない」
「だめっ、もうすぐ着くでしょ」
「ああくそっ、終わったらすぐ宿に戻るぞ」
俺はもう一度アンリの唇を貪ると、ふぅっと息を吐いて、腕の中にアンリの体を収めた。
現地に着いて、馬車を降りようとアンリの手を取ると、陽の光がアンリの顔を照らす。道中の激しい口付けで上気した眦と頬が、凄まじい色香を放っていた。
「アンリ、その顔は誰にも見せたくない。馬車でゆっくり休んでいてくれ」
「いやっ、せっかく来たのに。お花見たい」
「うぅん、俺のせいだしな。じゃあ抱き上げるから顔は隠しているんだぞ」
「うん」
「あらっ、アンリ様、どうかされましたか?」
「ああ、いや、少し馬車に酔ってしまってね」
「それはお辛いですね。大丈夫ですか?」
「外の空気を吸えば治るだろう。なっ、アンリ」
コクっ
「ところで、宿の昼食はいかがでしたか?」
「ああ、二人とも美味しくいただいたよ。紅茶もうちの物を変わらず使ってもらっていて、アンリも喜んでいたよ」
「それは良かったです」
「この畑の花が、今回の新商品になる花か?」
「そうです。香りを嗅いでみてください。スーっと鼻を抜ける爽やかな香りで、また人気が出ることでしょう」
「ああ、そうだな。飲んでみたが清涼感があって美味かった。アンリも、飲むとすっきりすると言って、朝からよく飲んでいるんだ」
「ああ、だからあの名前にされたんですね」
それまで大人しくしていたアンリが顔を上げる。
「え?新しい紅茶の名前決まったの?」
「ああっと、その⋯」
「領主様、もしかして内緒でしたか?」
「ああ、いやぁ⋯、ごほん」
「ジェイド、また変な名前じゃないよね」
「さ、さあてと、宿に戻るか」
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