悪役令息だと思っていたら健気令息だったので、好きになってしまった

まんまる

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クッキーの件でしばらく忙しかった仕事も落ち着いてきた頃、王家から手紙が届いた。

「アンリ、三ヶ月後にカイル様がこちらに里帰りされるのに合わせて、夜会が行われるみたいだ。夫夫揃って参加するようにと招待状が届いた」
「夜会⋯」
「アンリはそういう華やかな場所は苦手だろうが、俺がずっと隣にいるから大丈夫だよ」
「うん、ちゃんとジェイドの伴侶として恥ずかしくないようにしなきゃ」
「アンリ、そんなに気負わなくていいんだよ。俺の隣にいてくれるだけで大丈夫だから」
「うん、ありがとうジェイド」
「今度二人で夜会用の服を作りに街まで行こうか。こんな時でもないとアンリは新しい服を作らないだろう?」
「僕あんまり外に出ないから、服はある分で足りてるけど、夜会用は持ってないから、嬉しい。ジェイドと出掛けるの楽しみにしてるね」


今日はアンリと二人で夜会用の服を作りに馬車で街まで来た。
流行りの服飾店を若い団員から聞いてきたので、馬車を降り、まずそこに向かおうと歩いていたら、こちらに気付いた女性が数人近付いてきた。

まずい、アンリの悪い噂が市井にも広まっているはずだ。店の前まで馬車で行くべきだった。
俺はアンリを背中に隠し、女性達に向き直った。

「あ、あのっ、先日は、アンリ様は、無事に騎士団まで行けたのでしょうか?」
「汗だくで走ってらっしゃって心配していました」
「泣いておられたので、ずっと気になっていました」
「「「アンリ様はご無事ですか?」」」

なっ!?皆アンリの事を心配して、話し掛けてくれたのか?ああ、町の者はちゃんと本当のアンリを知っていてくれてたのか。
背中に隠していたアンリを前に出るように促す。

「「「アンリ様っ!」」」

「ああ、あなたは先日騎士団の場所を教えてくれた方ですか?」
「そうです!あれからアンリ様が無事に騎士団に着かれたか心配で。私がついて行って差し上げればよかっと、後で後悔しました」
「そ、そんな。あの時はジェイドが怪我をしたって聞いて、慌てていたので、ちゃんとお礼を言ってなかったですね。道を教えてくれてありがとう」

アンリが天使のような笑顔で微笑んだ。

「「「はわっ、可愛い、アンリ様!」」」

アンリの誤解が解けるのは嬉しい事だが、これでは皆アンリの虜になってしまうな。その後も町の皆からキラキラした目で話し掛けられながらやっと目当ての店に着いた。
しかし、店の男性店主もアンリが動く度に感嘆の声を漏らし、二人分の採寸が終わるのに随分と時間が掛かってしまった。

アンリは何も知らず楽しそうにしていたが、俺は複雑な気持ちで店を後にしたのだった。

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