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「私の従姉妹が後妻として嫁いだ子爵の前妻の子供なんだけど、従姉妹夫婦が馬車に乗っていた時に不慮の事故で亡くなってしまって、たった一人その子が残されてしまったの。私と亡くなった従姉妹は仲が良かったものだから、その子が不憫に思えてしまって」
「「⋯⋯」」
「義母上、話が突然すぎて、どう返事をしたらいいのか分かりませんが、その子はいずれその子爵家を継ぐことになるのでは?」
「子爵家はね、亡くなった子爵の弟が継ぐ事が決まって、子爵は兄の忘れ形見を是非引き取りたいと言っていたのだけれど⋯。子爵にも跡継ぎがいるし、お葬式の時に一人佇むあの子の寂しそうな背中が忘れられなくて、子爵の承諾を得て連れて来たの」
「そういう理由があったのですね。しかし、しばらく時間を頂けないでしょうか。アンリとも話さないといけませんし」
「⋯母様、その子はいつうちに来たの?」
「もうひと月になるわ」
「そう⋯」
「可愛い子だよ。会ってみるといい」
「義父上⋯」
「父様⋯」
アンリと目を合わせてお互いの心の中を探る。どうやらアンリも俺と同じ考えのようだ。
「分かりました。会ってみます」
「まぁ!良かった。すぐ連れて来るわね」
部屋から出て行った義母上がしばらくして戻って来た。扉が開いて義母上から肩に手を添えられ、部屋に入るように促される子供が目に入った。
「可愛いっ!」
アンリが目を輝かせて、俺の隣ではしゃいでいる。子供に嫉妬するのはどうかと思うが、俺以外の事ではしゃぐアンリを見て、物凄く嫉妬している。
「ジェイド見て!ジェイドと同じ黒い髪!ジェイドがちっちゃくなったみたい!」
「そ、そうか?」
アンリは俺が幼くなったのを想像して喜んでいたらしい。分かった途端、俺の嫉妬心は消えて無くなった。我ながら単純なものだ。
「どう?二人共、可愛い子でしょう?」
「うん!」
「そうですね」
「それじゃあ、早速、一緒に暮らしてみてはどうかしら?」
「「えっ!?」」
「一緒に暮らせばすぐに情が湧くわよ。こんなに可愛いんですもの」
このままでは義母上の強引なペースに流されてしまう。
「とりあえず、紹介したらどうだ?」
「まあ、そうだったわ」
義母上が、まだ不安そうにしているその子供に、自己紹介をするように促している。
「ぼ、ぼくのなまえはショーンです。ごさいです」
消え入るような、子供特有のまだ高い小さな声でそう言った。
大人としての庇護欲だろうか、自分でも不思議だが、この子を守ってやらねばという気持ちが芽生えた。
アンリの大きな瞳から涙が零れそうになっている。
アンリと二人、目を合わせて頷き合う。
「ショーン、今日からお前の父上になるジェイドだ」
「ぐすっ、ふふっ、僕はアンリ。今日からショーンの父様だよ」
「そうか、二人共決心したか」
「あなた達、きっと立派な親になれるわよ」
義母上は涙ぐんで喜んでいた。
「おいでショーン」
アンリが両手を広げてショーンを待つ。
躊躇いながらショーンが小さな足で少しずつ近付いて来る。
そしてアンリの前に来ると、アンリが跪いてふわりとショーンを抱き締めた。ショーンもおずおずと抱き締め返す。
微笑ましい光景を皆涙ぐみながら微笑んで見守っている。⋯んん?よく見ると、ショーンがアンリの首筋に顔を埋め、啄むように何度も口付けをしている。
「ふふっ、くすぐったいよショーン」
「ごめんなさい」
こ、こいつ⋯、俺と同じ匂いがする⋯。
パッと義母上を見ると、有無を言わせない笑顔でこちらを見ていて、扉の隙間からアンドリュー兄上とハミール兄上が、涙ぐみながら覗いていた。
「「⋯⋯」」
「義母上、話が突然すぎて、どう返事をしたらいいのか分かりませんが、その子はいずれその子爵家を継ぐことになるのでは?」
「子爵家はね、亡くなった子爵の弟が継ぐ事が決まって、子爵は兄の忘れ形見を是非引き取りたいと言っていたのだけれど⋯。子爵にも跡継ぎがいるし、お葬式の時に一人佇むあの子の寂しそうな背中が忘れられなくて、子爵の承諾を得て連れて来たの」
「そういう理由があったのですね。しかし、しばらく時間を頂けないでしょうか。アンリとも話さないといけませんし」
「⋯母様、その子はいつうちに来たの?」
「もうひと月になるわ」
「そう⋯」
「可愛い子だよ。会ってみるといい」
「義父上⋯」
「父様⋯」
アンリと目を合わせてお互いの心の中を探る。どうやらアンリも俺と同じ考えのようだ。
「分かりました。会ってみます」
「まぁ!良かった。すぐ連れて来るわね」
部屋から出て行った義母上がしばらくして戻って来た。扉が開いて義母上から肩に手を添えられ、部屋に入るように促される子供が目に入った。
「可愛いっ!」
アンリが目を輝かせて、俺の隣ではしゃいでいる。子供に嫉妬するのはどうかと思うが、俺以外の事ではしゃぐアンリを見て、物凄く嫉妬している。
「ジェイド見て!ジェイドと同じ黒い髪!ジェイドがちっちゃくなったみたい!」
「そ、そうか?」
アンリは俺が幼くなったのを想像して喜んでいたらしい。分かった途端、俺の嫉妬心は消えて無くなった。我ながら単純なものだ。
「どう?二人共、可愛い子でしょう?」
「うん!」
「そうですね」
「それじゃあ、早速、一緒に暮らしてみてはどうかしら?」
「「えっ!?」」
「一緒に暮らせばすぐに情が湧くわよ。こんなに可愛いんですもの」
このままでは義母上の強引なペースに流されてしまう。
「とりあえず、紹介したらどうだ?」
「まあ、そうだったわ」
義母上が、まだ不安そうにしているその子供に、自己紹介をするように促している。
「ぼ、ぼくのなまえはショーンです。ごさいです」
消え入るような、子供特有のまだ高い小さな声でそう言った。
大人としての庇護欲だろうか、自分でも不思議だが、この子を守ってやらねばという気持ちが芽生えた。
アンリの大きな瞳から涙が零れそうになっている。
アンリと二人、目を合わせて頷き合う。
「ショーン、今日からお前の父上になるジェイドだ」
「ぐすっ、ふふっ、僕はアンリ。今日からショーンの父様だよ」
「そうか、二人共決心したか」
「あなた達、きっと立派な親になれるわよ」
義母上は涙ぐんで喜んでいた。
「おいでショーン」
アンリが両手を広げてショーンを待つ。
躊躇いながらショーンが小さな足で少しずつ近付いて来る。
そしてアンリの前に来ると、アンリが跪いてふわりとショーンを抱き締めた。ショーンもおずおずと抱き締め返す。
微笑ましい光景を皆涙ぐみながら微笑んで見守っている。⋯んん?よく見ると、ショーンがアンリの首筋に顔を埋め、啄むように何度も口付けをしている。
「ふふっ、くすぐったいよショーン」
「ごめんなさい」
こ、こいつ⋯、俺と同じ匂いがする⋯。
パッと義母上を見ると、有無を言わせない笑顔でこちらを見ていて、扉の隙間からアンドリュー兄上とハミール兄上が、涙ぐみながら覗いていた。
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