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アルフレッド様、昨日はあんなに痛がってたのに、大丈夫だったかな⋯。
僕は一目アルフレッド様に会いたくて、闘技場の方へ向かう通路を走っていた。
すると前の方から、オルドー様がこっち向かって歩いて来ているのが見えて、僕は挨拶をする為に立ち止まった。
僕が頭を下げて挨拶をしようとしたら、オルドー様がぴくりと眉を上げて、僕を睨みつけてきた。
「ニコ、私を笑いに来たのか?」
「ち、違います!僕はっ、アル⋯フ⋯、何でもないです⋯」
「また、黙(だんま)りか。お前はいつもそうだ。その性格が変わらない限り、私と結婚どころか、婚約もできないぞ」
「ぼ、僕は⋯、結婚なんて⋯」
「正式な求婚はまだだが、まさか断るつもりではないだろうな?」
「僕なんかでは、オルドー様と釣り合いません」
「ニコ、侯爵家から伯爵家への求婚、この意味が分からない程愚かではないだろう?」
「で、でもっ、僕っ⋯」
「ニコ、いい加減にしろ。私は今、虫の居所が悪いんだ!」
「痛いっ!や、やめてください、オルドー様!」
オルドー様は、急に怒鳴り声を上げたかと思ったら、僕の腕を掴んできた。
痛くて怖くて、一生懸命離そうとしても、びくともしなかった。
僕はずっと、オルドー様が苦手だった。
いつも僕に、威圧的で冷たい態度をとるオルドー様が怖くて仕方なかった。
「は、離して、ください!」
「私にそんな態度をとっていいと思っているのか!」
僕が抵抗すると、オルドー様はますます力を込めてきた。
「いやっ、離して!」
「大人しくしろ!」
「いやあぁっ!」
僕の目から、こらえていた涙が溢れてきた。
助けて!
そう願った、その時だった。
僕は広くて温かくて、そしてあの爽やかな香りを放つ、逞しい胸の中に、背中から包まれていた。
「何をしている?」
低く凛々しい声が、僕の頭の上から響いた。
体中が歓喜で震えるのが分かった。
体は喜んでいるのに、心は痛いほど切ない。
触れているのに、もっと、と魂が叫んでいる。
「アルフレッド様⋯」
僕は顔も見えていなのに、僕を包んでくれている人の名前を、無意識に口にしていた。
「ニコ、大丈夫か?」
「は、はい、アルフレッド様」
アルフレッド様は僕を後ろから抱き締めたまま、オルドー様に鋭い視線を向けている。
「こんな力無い者を力ずくでどうにかするのが、侯爵家のやり方か?」
「き、貴様には関係のない事だ!」
「たとえ関係なくとも、我が辺境伯家では、泣いている者を見捨てるような教育は受けていない」
「くっ⋯、貴様、さっきの試合といい、私の事をコケにした事、絶対後悔させてやるからな」
オルドー様は、アルフレッド様と僕を交互に睨みつけながら、逃げるように走り去った。
僕は一目アルフレッド様に会いたくて、闘技場の方へ向かう通路を走っていた。
すると前の方から、オルドー様がこっち向かって歩いて来ているのが見えて、僕は挨拶をする為に立ち止まった。
僕が頭を下げて挨拶をしようとしたら、オルドー様がぴくりと眉を上げて、僕を睨みつけてきた。
「ニコ、私を笑いに来たのか?」
「ち、違います!僕はっ、アル⋯フ⋯、何でもないです⋯」
「また、黙(だんま)りか。お前はいつもそうだ。その性格が変わらない限り、私と結婚どころか、婚約もできないぞ」
「ぼ、僕は⋯、結婚なんて⋯」
「正式な求婚はまだだが、まさか断るつもりではないだろうな?」
「僕なんかでは、オルドー様と釣り合いません」
「ニコ、侯爵家から伯爵家への求婚、この意味が分からない程愚かではないだろう?」
「で、でもっ、僕っ⋯」
「ニコ、いい加減にしろ。私は今、虫の居所が悪いんだ!」
「痛いっ!や、やめてください、オルドー様!」
オルドー様は、急に怒鳴り声を上げたかと思ったら、僕の腕を掴んできた。
痛くて怖くて、一生懸命離そうとしても、びくともしなかった。
僕はずっと、オルドー様が苦手だった。
いつも僕に、威圧的で冷たい態度をとるオルドー様が怖くて仕方なかった。
「は、離して、ください!」
「私にそんな態度をとっていいと思っているのか!」
僕が抵抗すると、オルドー様はますます力を込めてきた。
「いやっ、離して!」
「大人しくしろ!」
「いやあぁっ!」
僕の目から、こらえていた涙が溢れてきた。
助けて!
そう願った、その時だった。
僕は広くて温かくて、そしてあの爽やかな香りを放つ、逞しい胸の中に、背中から包まれていた。
「何をしている?」
低く凛々しい声が、僕の頭の上から響いた。
体中が歓喜で震えるのが分かった。
体は喜んでいるのに、心は痛いほど切ない。
触れているのに、もっと、と魂が叫んでいる。
「アルフレッド様⋯」
僕は顔も見えていなのに、僕を包んでくれている人の名前を、無意識に口にしていた。
「ニコ、大丈夫か?」
「は、はい、アルフレッド様」
アルフレッド様は僕を後ろから抱き締めたまま、オルドー様に鋭い視線を向けている。
「こんな力無い者を力ずくでどうにかするのが、侯爵家のやり方か?」
「き、貴様には関係のない事だ!」
「たとえ関係なくとも、我が辺境伯家では、泣いている者を見捨てるような教育は受けていない」
「くっ⋯、貴様、さっきの試合といい、私の事をコケにした事、絶対後悔させてやるからな」
オルドー様は、アルフレッド様と僕を交互に睨みつけながら、逃げるように走り去った。
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