8 / 14
8
しおりを挟む
「アルフレッド様!お待たせしました!えっ⋯?どうして⋯?」
「アルフレッドではなくて、残念だったな」
僕が急いで廊下に出ると、そこにいたのは、アルフレッド様ではなく、オルドー様だった。
「オルドー様⋯、僕に何かご用ですか?」
「ニコ、話がある。私について来い」
「すいません、オルドー様。僕、約束があるんです」
「ああ、アルフレッドと会うんだろ?」
「何で知ってるんですか⋯?」
「いいから、ついて来い。アルフレッドに会わせてやる」
オルドー様の、睨みつけるような、ニヤついたような目つきが本当は怖かった。でももしかして、アルフレッド様の身に何かあったんじゃないかと思って、僕はオルドー様について行く事にした。
オルドー様は普通科棟を出て、騎士科棟までやって来ると、ある教室の前でぴたりと足を止めた。
「ニコ、窓の隙間から中を見てみろ」
何だろう⋯?
僕は不思議に思いながらも、言われるがまま中を覗いてみた。
「えっ⋯?何⋯?」
僕が思わず呟くと、オルドー様は片方の口角を上げながら、僕にニヤリと笑いかけた。
「アルフレッドも酷いな。ニコに気のある素振りをしておいて、あのΩともできてるなんてな」
「そ、そんな⋯」
教室の中にはアルフレッド様がいて、友人の騎士科の男性Ωと抱き合っていた。
僕はふらふらと後ずさりすると、背中が壁に当り、ずるずると力無く床に座り込んでしまった。
アルフレッド様に好きな人がいたなんて、知らなかった。
だから、頑なに僕を突き放してたんだ。
痛い、心が痛い。ああ、魂が泣いてる。苦しい、息ができない。
涙が溢れて止まらなかった。
涙と一緒に、僕のアルフレッド様を想う気持ちも流してしまえたら、どんなにいいか。
「ああ、ニコ、そんなに泣いて、可哀想に。あんな男は忘れて、私の恋人になればいい」
オルドー様は笑顔を貼り付けて、僕に右手を差し出してきた。
一刻も早く、その場から立ち去りたかった。
オルドー様の手になど、絶対に縋りたくなかった。
「ニコ、私の手を取れ」
もう僕は、アルフレッド様を好きでいちゃいけないんだ。
あの温かな胸に包み込んで欲しいなんて、願ってもいけない。
オルドー様の差し出した手を、ぼんやりと涙で霞んだ目で見ていたその時、僕はこの世で一番恋しい人の言葉を思い出した。
『ニコ⋯、俺はこんなに愛しい者を、どうして今まで無視できていたんだろう』
ああそうだ、アルフレッド様は僕を愛しいって言ってくれた。
あれは決して嘘ではなかった。
友人と抱き合っていたのも、きっと何か理由があるんだ。
僕はアルフレッド様を信じる。
僕はオルドー様の手を振り払い、アルフレッド様との約束を守る為に、教室に戻ろうとした。
「待て、どこに行くつもりだ?」
「オルドー様、僕、教室でアルフレッド様を待ってます。きっとアルフレッド様は来てくれます」
僕がオルドー様に背中を向けた瞬間、後ろからオルドー様の手で口を塞がれた。
「せっかく私がアルフレッドを諦めさせてやろうとしたのに、お前が悪いんだ」
オルドー様はそう言って、手の平をぐっと僕の口に押し付けて、唇を開いてきた。
その時、何か薬の様な小さな粒が、僕の口の中に入ってきた。
何⋯?
僕は驚いて、顔を左右に振ってオルドー様の手を振りほどこうとしたけど、その拍子に小さな粒を飲み込んでしまった。
「な、何、今の⋯?」
「クッ、ククッ、これでようやくお前は私のものだ。お前が私を求めて懇願する姿が、ようやく見れる」
「えっ⋯?」
オルドー様は気持ち悪い笑顔を貼り付け、僕の腕を強引に掴んで歩き出した。
恐怖ですくむ体で懸命に抵抗するけど、Ωの力がαの力に敵うはずもなく、僕はずるずるとオルドー様に引きずられて行った。
「入れ」
「い、いやっ!離してください!」
「大人しくしろ!」
オルドー様は、騎士科棟の端まで来ると、僕を空き教室に無理矢理押し込んだ。
「安心しろ、ニコ。私は力ずくでヤルのは趣味じゃない。ククッ、じきに薬が効いてくれば、お前は自ら私に足を開く事になる。私を拒絶しても、所詮Ωのαの子種を欲しがる本能には逆らえん」
僕は恐怖で、オルドー様の言葉が全然耳に入って来なかった。
貼り付けた笑顔が気持ち悪くて、叫び声を上げたかったけど、震える体を教室の壁に押し付けて耐えるのが精一杯だった。
「もうそろそろか」
オルドー様が意味ありげにニヤリと笑った。
ドクンッ
「何⋯?」
体が急に熱くなって、お腹の奥がじんじんと疼き出した。
僕はどうしようもなく目の前のαに縋りつきたい衝動に駆られ、無意識に手を伸ばしていた。
「アルフレッドではなくて、残念だったな」
僕が急いで廊下に出ると、そこにいたのは、アルフレッド様ではなく、オルドー様だった。
「オルドー様⋯、僕に何かご用ですか?」
「ニコ、話がある。私について来い」
「すいません、オルドー様。僕、約束があるんです」
「ああ、アルフレッドと会うんだろ?」
「何で知ってるんですか⋯?」
「いいから、ついて来い。アルフレッドに会わせてやる」
オルドー様の、睨みつけるような、ニヤついたような目つきが本当は怖かった。でももしかして、アルフレッド様の身に何かあったんじゃないかと思って、僕はオルドー様について行く事にした。
オルドー様は普通科棟を出て、騎士科棟までやって来ると、ある教室の前でぴたりと足を止めた。
「ニコ、窓の隙間から中を見てみろ」
何だろう⋯?
僕は不思議に思いながらも、言われるがまま中を覗いてみた。
「えっ⋯?何⋯?」
僕が思わず呟くと、オルドー様は片方の口角を上げながら、僕にニヤリと笑いかけた。
「アルフレッドも酷いな。ニコに気のある素振りをしておいて、あのΩともできてるなんてな」
「そ、そんな⋯」
教室の中にはアルフレッド様がいて、友人の騎士科の男性Ωと抱き合っていた。
僕はふらふらと後ずさりすると、背中が壁に当り、ずるずると力無く床に座り込んでしまった。
アルフレッド様に好きな人がいたなんて、知らなかった。
だから、頑なに僕を突き放してたんだ。
痛い、心が痛い。ああ、魂が泣いてる。苦しい、息ができない。
涙が溢れて止まらなかった。
涙と一緒に、僕のアルフレッド様を想う気持ちも流してしまえたら、どんなにいいか。
「ああ、ニコ、そんなに泣いて、可哀想に。あんな男は忘れて、私の恋人になればいい」
オルドー様は笑顔を貼り付けて、僕に右手を差し出してきた。
一刻も早く、その場から立ち去りたかった。
オルドー様の手になど、絶対に縋りたくなかった。
「ニコ、私の手を取れ」
もう僕は、アルフレッド様を好きでいちゃいけないんだ。
あの温かな胸に包み込んで欲しいなんて、願ってもいけない。
オルドー様の差し出した手を、ぼんやりと涙で霞んだ目で見ていたその時、僕はこの世で一番恋しい人の言葉を思い出した。
『ニコ⋯、俺はこんなに愛しい者を、どうして今まで無視できていたんだろう』
ああそうだ、アルフレッド様は僕を愛しいって言ってくれた。
あれは決して嘘ではなかった。
友人と抱き合っていたのも、きっと何か理由があるんだ。
僕はアルフレッド様を信じる。
僕はオルドー様の手を振り払い、アルフレッド様との約束を守る為に、教室に戻ろうとした。
「待て、どこに行くつもりだ?」
「オルドー様、僕、教室でアルフレッド様を待ってます。きっとアルフレッド様は来てくれます」
僕がオルドー様に背中を向けた瞬間、後ろからオルドー様の手で口を塞がれた。
「せっかく私がアルフレッドを諦めさせてやろうとしたのに、お前が悪いんだ」
オルドー様はそう言って、手の平をぐっと僕の口に押し付けて、唇を開いてきた。
その時、何か薬の様な小さな粒が、僕の口の中に入ってきた。
何⋯?
僕は驚いて、顔を左右に振ってオルドー様の手を振りほどこうとしたけど、その拍子に小さな粒を飲み込んでしまった。
「な、何、今の⋯?」
「クッ、ククッ、これでようやくお前は私のものだ。お前が私を求めて懇願する姿が、ようやく見れる」
「えっ⋯?」
オルドー様は気持ち悪い笑顔を貼り付け、僕の腕を強引に掴んで歩き出した。
恐怖ですくむ体で懸命に抵抗するけど、Ωの力がαの力に敵うはずもなく、僕はずるずるとオルドー様に引きずられて行った。
「入れ」
「い、いやっ!離してください!」
「大人しくしろ!」
オルドー様は、騎士科棟の端まで来ると、僕を空き教室に無理矢理押し込んだ。
「安心しろ、ニコ。私は力ずくでヤルのは趣味じゃない。ククッ、じきに薬が効いてくれば、お前は自ら私に足を開く事になる。私を拒絶しても、所詮Ωのαの子種を欲しがる本能には逆らえん」
僕は恐怖で、オルドー様の言葉が全然耳に入って来なかった。
貼り付けた笑顔が気持ち悪くて、叫び声を上げたかったけど、震える体を教室の壁に押し付けて耐えるのが精一杯だった。
「もうそろそろか」
オルドー様が意味ありげにニヤリと笑った。
ドクンッ
「何⋯?」
体が急に熱くなって、お腹の奥がじんじんと疼き出した。
僕はどうしようもなく目の前のαに縋りつきたい衝動に駆られ、無意識に手を伸ばしていた。
165
あなたにおすすめの小説
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。最後におじいさまの番外編を追加しました。
追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。
行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。
異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?
祝福を授かりましたが、まるで呪いです。
めっちゃ抹茶
BL
異世界に生まれ変わって出会った、一組の運命の番であるαとΩの話。
※ご都合主義があります
※オメガバースの知識がある人向け/作中で説明は一切ありません
※主人公が可哀想、ハッピーエンドではありません
主人公目線、あまり悲壮感はありませんがタグをご確認のうえ以上の事を念頭に、大丈夫な方のみお進み下さい。
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。
めちゅう
BL
末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。
お読みくださりありがとうございます。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる