気弱なΩと不機嫌なα~次期辺境伯は運命の番を認めたくない~

まんまる

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「アルフレッド様!お待たせしました!えっ⋯?どうして⋯?」

「アルフレッドではなくて、残念だったな」


僕が急いで廊下に出ると、そこにいたのは、アルフレッド様ではなく、オルドー様だった。

「オルドー様⋯、僕に何かご用ですか?」
「ニコ、話がある。私について来い」
「すいません、オルドー様。僕、約束があるんです」
「ああ、アルフレッドと会うんだろ?」
「何で知ってるんですか⋯?」
「いいから、ついて来い。アルフレッドに会わせてやる」


オルドー様の、睨みつけるような、ニヤついたような目つきが本当は怖かった。でももしかして、アルフレッド様の身に何かあったんじゃないかと思って、僕はオルドー様について行く事にした。

オルドー様は普通科棟を出て、騎士科棟までやって来ると、ある教室の前でぴたりと足を止めた。

「ニコ、窓の隙間から中を見てみろ」

何だろう⋯?

僕は不思議に思いながらも、言われるがまま中を覗いてみた。

「えっ⋯?何⋯?」

僕が思わず呟くと、オルドー様は片方の口角を上げながら、僕にニヤリと笑いかけた。

「アルフレッドも酷いな。ニコに気のある素振りをしておいて、あのΩともできてるなんてな」
「そ、そんな⋯」

教室の中にはアルフレッド様がいて、友人の騎士科の男性Ωと抱き合っていた。

僕はふらふらと後ずさりすると、背中が壁に当り、ずるずると力無く床に座り込んでしまった。

アルフレッド様に好きな人がいたなんて、知らなかった。
だから、頑なに僕を突き放してたんだ。


痛い、心が痛い。ああ、魂が泣いてる。苦しい、息ができない。

涙が溢れて止まらなかった。
涙と一緒に、僕のアルフレッド様を想う気持ちも流してしまえたら、どんなにいいか。


「ああ、ニコ、そんなに泣いて、可哀想に。あんな男は忘れて、私の恋人になればいい」

オルドー様は笑顔を貼り付けて、僕に右手を差し出してきた。

一刻も早く、その場から立ち去りたかった。
オルドー様の手になど、絶対にすがりたくなかった。

「ニコ、私の手を取れ」

もう僕は、アルフレッド様を好きでいちゃいけないんだ。
あの温かな胸に包み込んで欲しいなんて、願ってもいけない。

オルドー様の差し出した手を、ぼんやりと涙でかすんだ目で見ていたその時、僕はこの世で一番恋しい人の言葉を思い出した。


『ニコ⋯、俺はこんなに愛しい者を、どうして今まで無視できていたんだろう』


ああそうだ、アルフレッド様は僕を愛しいって言ってくれた。
あれは決して嘘ではなかった。
友人と抱き合っていたのも、きっと何か理由があるんだ。

僕はアルフレッド様を信じる。

僕はオルドー様の手を振り払い、アルフレッド様との約束を守る為に、教室に戻ろうとした。

「待て、どこに行くつもりだ?」
「オルドー様、僕、教室でアルフレッド様を待ってます。きっとアルフレッド様は来てくれます」

僕がオルドー様に背中を向けた瞬間、後ろからオルドー様の手で口を塞がれた。

「せっかく私がアルフレッドを諦めさせてやろうとしたのに、お前が悪いんだ」

オルドー様はそう言って、手の平をぐっと僕の口に押し付けて、唇を開いてきた。
その時、何か薬の様な小さな粒が、僕の口の中に入ってきた。

何⋯?

僕は驚いて、顔を左右に振ってオルドー様の手を振りほどこうとしたけど、その拍子に小さな粒を飲み込んでしまった。

「な、何、今の⋯?」
「クッ、ククッ、これでようやくお前は私のものだ。お前が私を求めて懇願する姿が、ようやく見れる」
「えっ⋯?」

オルドー様は気持ち悪い笑顔を貼り付け、僕の腕を強引に掴んで歩き出した。
恐怖ですくむ体で懸命に抵抗するけど、Ωの力がαの力に敵うはずもなく、僕はずるずるとオルドー様に引きずられて行った。


「入れ」
「い、いやっ!離してください!」
「大人しくしろ!」

オルドー様は、騎士科棟の端まで来ると、僕を空き教室に無理矢理押し込んだ。

「安心しろ、ニコ。私は力ずくでヤルのは趣味じゃない。ククッ、じきに薬が効いてくれば、お前は自ら私に足を開く事になる。私を拒絶しても、所詮Ωのαの子種を欲しがる本能には逆らえん」

僕は恐怖で、オルドー様の言葉が全然耳に入って来なかった。
貼り付けた笑顔が気持ち悪くて、叫び声を上げたかったけど、震える体を教室の壁に押し付けて耐えるのが精一杯だった。


「もうそろそろか」

オルドー様が意味ありげにニヤリと笑った。


ドクンッ


「何⋯?」

体が急に熱くなって、お腹の奥がじんじんとうずき出した。

僕はどうしようもなく目の前のαに縋りつきたい衝動に駆られ、無意識に手を伸ばしていた。

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