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俺はニコを寮の自室のベッドに寝かせて、一旦部屋を出た。
騎士科棟に戻る途中で、レイルが俺を見つけて駆け寄ってきた。
「アルフ!リオと一緒に出て行ったまま戻らないから、心配したぞ。何かあったのか?」
「レイル、ちょうどよかった。俺も探してたんだ」
俺は今あった事を、掻い摘んでレイルに話した。
レイルには、空き教室にいる2人の確保と、ゴーン伯爵家への言伝てを頼んだ。
それから教師に事情を説明して、医務室に行ってαの抑制剤をその場で飲んで、Ωの抑制剤をもらって寮に戻った。
鍵を開けて部屋に入ると、部屋中にニコの甘い香りが満ちていた。
「くっ⋯、凄いな。抑制剤を飲んでいても、意識が持っていかれそうだ。早く薬を飲ませないと」
俺はコップに水を汲み、ベッドに横になるニコに持って行った。
「はぁはぁ、アルフレッド様ぁ、お願い、僕を抱き締めてぇ」
ニコは朦朧としながら、俺に腕を伸ばしてきた。
いいのか⋯?いや駄目だろ。
「ニコ、可愛いそうに、苦しいだろ?これ、抑制剤をもらってきた。飲めるか?」
ニコはぼんやりと薬を見て、横になったまま口を小さく開けた。
「自分で飲むのは無理か⋯」
俺は、ふるふると震えるニコの小ぶりな唇を、じっと見つめた。
ごくっ
これ以上、ニコのフェロモンを嗅いだら、俺も抑制剤を飲んだ意味がなくなる。
「これは治療だ。そうだ、決して邪な気持ちなんて⋯、ない⋯」
迷っている暇はない。俺は意を決してΩの抑制剤を口に放り投げ、コップの水を口に含んだ。
そのままの勢いでニコの両肩を掴んで、そっと唇を押し当てた。
や、柔らかい⋯。それになんて甘いんだ。ニコの唇は飴玉でできてるのか?
俺は愛しいニコとの初めての口付けに、一瞬頭が真っ白になったが、はっと我に返り、舌でニコの唇を割り開いて、薬を流し入れた。
「ニコ、しっかり飲み込むんだぞ」
ニコは目をぎゅっと閉じて、コクンと薬を飲み込んだ。
「飲めたか?ニコ、あーんしてみてくれ」
ニコは目を閉じたまま、またふるふると震えながら、口を開けた。
ニコの口を覗き込むと、ちいさな赤い舌がちろちろと揺れて、俺を誘っているようだった。
何か、いやら⋯って、違うだろ、薬の確認だ。
「よ、よし、ニコ、上手に飲めたな」
俺がニコの頭をそっと撫でると、ニコはゆっくり瞼を上げて、小さく頷いた。
「ニコ、薬が効くまでは辛いだろうが、もう少し我慢してくれ」
「いやっ、アルフレッド様ぁ、抱き締めてぇ」
「い、いやって、可愛⋯。くっ、ニコ、我慢だ。俺も我慢してるから、一緒だ、なっ」
「アルフレッド様、何で我慢するの?くすん」
ごくっ
何だこの可愛さは。
俺だからこんなに甘えてくれるのか?
運命の番の破壊力、俺の拳より強い⋯。
俺がごちゃごちゃと考えていると、ニコがまた俺を求めるように腕を伸ばしてきた。
「アルフレッド様ぁ」
「くっ⋯、可愛い」
「ぎゅってしてぇ」
「くそぉ、可愛すぎだろ」
「さっきは口付けしてくれたのにぃ、ふぇぇん」
「もう⋯、我慢できん!!」
俺は勢いよく、ニコに覆いかぶさった。
「はぁ、アルフレッド様の香りだぁ」
「はぁはぁ、ニコ、可愛い」
「アルフレッド様ぁ、嬉しいぃ」
「ニコ、いいか?」
俺が少し体を離して、ニコに許しを乞うと、ニコは薄紫色の瞳を潤ませて、小さく頷いた。
「ニコ、大切にする」
ニコの額に軽く口付けをして、唇を重ねようとした時、ニコから静かな寝息が聞こえてきた。
「⋯⋯ふぅ、危なかった」
俺はニコの上からそっと降りて、その柔らかな頬に触れた。
「ふっ、可愛い寝顔だな。結婚したら、この寝顔が毎日見れるのか?俺、どうなるんだ⋯?」
そんな先の心配より、俺は翌日からとんでもなく悩まされる事になる。
「くっ、ニコの香りがするこの部屋で、俺はどうやって暮らせばいいんだ。他の奴と変わるのは許せないし、俺、体もたないかもな⋯」
あんなに精神を鍛錬してきたのに、俺はまだまだのようだ。
ニコは事件の後、大事をとって一週間学園を休んだ。αの俺が会いに行く訳にもいかず、一週間ただただ、ニコに会えない寂しさを一人で耐えた。
事件の翌日学園に行くと、オルドーとリオの姿はなかった。
ニコが休んでいる間に、オルドーは廃嫡され、貴族籍を抜かれた後、隣国に留学という名の国外追放の処分になった。
リオは陸の孤島と言われる、Ωだけが入る修道院に入れられたと聞いた。一生番を持たず、一人で発情に耐え続ける、辛い人生になるだろう。
2人の事は到底許す事はできないが、ニコが俺にとって命よりも大切な存在だと、あの事件で教えてもらった。
その事だけは、礼を言ってやってもいいが、ニコを傷つけた2人には、もう二度と会うことはないだろう。
騎士科棟に戻る途中で、レイルが俺を見つけて駆け寄ってきた。
「アルフ!リオと一緒に出て行ったまま戻らないから、心配したぞ。何かあったのか?」
「レイル、ちょうどよかった。俺も探してたんだ」
俺は今あった事を、掻い摘んでレイルに話した。
レイルには、空き教室にいる2人の確保と、ゴーン伯爵家への言伝てを頼んだ。
それから教師に事情を説明して、医務室に行ってαの抑制剤をその場で飲んで、Ωの抑制剤をもらって寮に戻った。
鍵を開けて部屋に入ると、部屋中にニコの甘い香りが満ちていた。
「くっ⋯、凄いな。抑制剤を飲んでいても、意識が持っていかれそうだ。早く薬を飲ませないと」
俺はコップに水を汲み、ベッドに横になるニコに持って行った。
「はぁはぁ、アルフレッド様ぁ、お願い、僕を抱き締めてぇ」
ニコは朦朧としながら、俺に腕を伸ばしてきた。
いいのか⋯?いや駄目だろ。
「ニコ、可愛いそうに、苦しいだろ?これ、抑制剤をもらってきた。飲めるか?」
ニコはぼんやりと薬を見て、横になったまま口を小さく開けた。
「自分で飲むのは無理か⋯」
俺は、ふるふると震えるニコの小ぶりな唇を、じっと見つめた。
ごくっ
これ以上、ニコのフェロモンを嗅いだら、俺も抑制剤を飲んだ意味がなくなる。
「これは治療だ。そうだ、決して邪な気持ちなんて⋯、ない⋯」
迷っている暇はない。俺は意を決してΩの抑制剤を口に放り投げ、コップの水を口に含んだ。
そのままの勢いでニコの両肩を掴んで、そっと唇を押し当てた。
や、柔らかい⋯。それになんて甘いんだ。ニコの唇は飴玉でできてるのか?
俺は愛しいニコとの初めての口付けに、一瞬頭が真っ白になったが、はっと我に返り、舌でニコの唇を割り開いて、薬を流し入れた。
「ニコ、しっかり飲み込むんだぞ」
ニコは目をぎゅっと閉じて、コクンと薬を飲み込んだ。
「飲めたか?ニコ、あーんしてみてくれ」
ニコは目を閉じたまま、またふるふると震えながら、口を開けた。
ニコの口を覗き込むと、ちいさな赤い舌がちろちろと揺れて、俺を誘っているようだった。
何か、いやら⋯って、違うだろ、薬の確認だ。
「よ、よし、ニコ、上手に飲めたな」
俺がニコの頭をそっと撫でると、ニコはゆっくり瞼を上げて、小さく頷いた。
「ニコ、薬が効くまでは辛いだろうが、もう少し我慢してくれ」
「いやっ、アルフレッド様ぁ、抱き締めてぇ」
「い、いやって、可愛⋯。くっ、ニコ、我慢だ。俺も我慢してるから、一緒だ、なっ」
「アルフレッド様、何で我慢するの?くすん」
ごくっ
何だこの可愛さは。
俺だからこんなに甘えてくれるのか?
運命の番の破壊力、俺の拳より強い⋯。
俺がごちゃごちゃと考えていると、ニコがまた俺を求めるように腕を伸ばしてきた。
「アルフレッド様ぁ」
「くっ⋯、可愛い」
「ぎゅってしてぇ」
「くそぉ、可愛すぎだろ」
「さっきは口付けしてくれたのにぃ、ふぇぇん」
「もう⋯、我慢できん!!」
俺は勢いよく、ニコに覆いかぶさった。
「はぁ、アルフレッド様の香りだぁ」
「はぁはぁ、ニコ、可愛い」
「アルフレッド様ぁ、嬉しいぃ」
「ニコ、いいか?」
俺が少し体を離して、ニコに許しを乞うと、ニコは薄紫色の瞳を潤ませて、小さく頷いた。
「ニコ、大切にする」
ニコの額に軽く口付けをして、唇を重ねようとした時、ニコから静かな寝息が聞こえてきた。
「⋯⋯ふぅ、危なかった」
俺はニコの上からそっと降りて、その柔らかな頬に触れた。
「ふっ、可愛い寝顔だな。結婚したら、この寝顔が毎日見れるのか?俺、どうなるんだ⋯?」
そんな先の心配より、俺は翌日からとんでもなく悩まされる事になる。
「くっ、ニコの香りがするこの部屋で、俺はどうやって暮らせばいいんだ。他の奴と変わるのは許せないし、俺、体もたないかもな⋯」
あんなに精神を鍛錬してきたのに、俺はまだまだのようだ。
ニコは事件の後、大事をとって一週間学園を休んだ。αの俺が会いに行く訳にもいかず、一週間ただただ、ニコに会えない寂しさを一人で耐えた。
事件の翌日学園に行くと、オルドーとリオの姿はなかった。
ニコが休んでいる間に、オルドーは廃嫡され、貴族籍を抜かれた後、隣国に留学という名の国外追放の処分になった。
リオは陸の孤島と言われる、Ωだけが入る修道院に入れられたと聞いた。一生番を持たず、一人で発情に耐え続ける、辛い人生になるだろう。
2人の事は到底許す事はできないが、ニコが俺にとって命よりも大切な存在だと、あの事件で教えてもらった。
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