気弱なΩと不機嫌なα~次期辺境伯は運命の番を認めたくない~

まんまる

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13 最終話 ※

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「ニコ、綺麗だよ」 
「アルフレッド様も、かっこいいです」
「ニコ、呼び方」
「わわっ、そうでした。ア、アル」
「ふっ、可愛い、ニコ」


今日、俺とニコは結婚式を挙げ、正式に伴侶となった。


数日前、もうすぐ結婚すると言うのに、ニコがいつまでも俺を他人行儀に呼ぶので、愛称で呼んでくれと頼んだ。

「え、えっと、では、お友達みたいに、アルフって呼びます」
「⋯何か嫌だな」
「へっ?」
「何かもっと特別な呼び方がいい」
「えっ?うぅぅん⋯、じゃ、じゃあ、アル」
「アル⋯いい」
「はわっ、アル」
「うん、いい」
「アル」
「ニコ」
「アル」

「ニコおぉぉーっ!!」
「わわっ、そういう事は、結婚式の後ですっ!」


という事があって、いよいよ初夜を迎える。


「辺境領の皆さんはお酒が強いですね」
「ああ、俺は、ああはなりたくないから、酒は飲まないと決めている」
「そうなんですね。僕はちょっと飲んでみようかな。ふふっ、冗談です」
「ほんのり赤くなったニコ⋯、いいな」
「えっ?」
「あっ、いや、何でもない。ニコ⋯その⋯」
「アル?」
「ニコ、抱いていいか?」
「は、はいっ」
「辛かったら言ってくれ。俺はニコの痛みを取る事はできないからな。だから、優しくする」
「アル⋯、はい、お願いします」


「口付け、深くするよ」

ニコは頬を赤く染めて、こくんと小さく頷いた。

ニコの柔らかな唇に触れると、全身の血が激しく巡るのが分かった。
ニコの唇を舌で割り開いて、そのまま奥に差し入れると、ニコも懸命に応えてくれた。
ニコの唇があまりに甘くて、俺は夢中で貪った。

「はふっ、んん⋯、ふぁぁ」
「ニコ、苦しかったか?」
「アル、違う、きもちぃ」
「ふっ、ニコは本当に可愛いな、って、ニコのこの香り⋯、もしかして発情か⋯?」
「は、はい、何か、体が熱いです」
「もう少し先だと思ってたが、俺の願いが叶ったようだ」
「アルの願い?」
「ああ、早くニコと番になりたいって思ってた」
「アル、僕も同じ事思ってた」
「そうか、じゃあ、今日番になる事が、俺達の運命だな」
「はいっ」

涙ぐむニコのまなじりに口付けをして、首筋をそっと撫でると、ニコが仰け反って感じてくれる。

「ニコ、綺麗だよ。発情が進むと自分でも分からなくなるかもしれないから、今言っておく」
「はい、アル」
「ニコ、愛してる。生涯ニコだけだ。ニコ、俺の番になってくれ」
「アル、僕も愛してる。僕もアルだけ。アルじゃないといやだ。僕を番にして」


泣きながら微笑むニコが愛おしくて、体中に口付けをした。
徐々に香りが強くなると、ニコも意識を飛ばし始めた。
俺もニコの甘い香りに侵食されて、夢か現実かの区別もつかなくなり、ニコに酷くしていないか心配になった。

「はぁはぁ、ニコ、一つになるよ」

俺の言葉にニコはぴくりと反応して、両腕を伸ばして、俺を受け入れてくれた。

愛するニコと溶け合うように一つになり、俺は今まで生きてきた人生で、一番の幸せを感じた。

ニコが愛しくてたまらない。
優しくしたいのに、めちゃくちゃにしたい衝動に駆られる。

ニコを俺のものにしたい。そう強く願った時、俺は繋がりながら、無意識にニコをうつ伏せにしていた。

噛みたい。

俺はうなじが見えるようにニコの髪を掻き分け、白い項に顔をうずめた。
ああ、俺の血が喜んでいる。
ようやく番を迎える俺の血が、喜んで暴れ回っている。

俺はニコの両腕をシーツに縫い付けて覆いかぶさり、うなじをべろりと舐めて、犬歯を立てた。


ググッ
ガリッ


ニコのうなじに犬歯が食い込むと、俺の血が沸騰する程熱くなるのが分かった。

「あああぁぁぁっっ!!ア、ルぅ」

「ニコ、くぅっ、中に出すよ」

俺は震えるニコの中に大量の精を放ち、そのまま意識を手放した。




「はっ!ニコ!」

意識がはっきりした時は、初夜から1週間が経っていた。
目が覚めてすぐにニコを探すと、ニコは俺の胸の中で、静かな寝息を立てていた。

「ニコ、番になれたよ」

ニコの頬をそっと包むと、ニコの白金のまつ毛が揺れて、ゆっくりとまぶたが開かれた。

「ア、ル⋯」
「ニコ、どこか痛い所はないか?」
「あっ⋯、僕、初夜に発情期になって、あれ?僕、どうしたんだっけ」
「ふっ、ニコ、可愛い」
「はわっ」
「ニコ、俺達、番になったんだ」
「番⋯、番⋯、あっ、僕、アルから、うなじを噛まれたの、夢かと思ってました」
「ニコ、確かめてごらん」

ニコはそっと自分のうなじを触ると、一瞬目を見開き、それから大粒の涙を流して泣き出した。

「アルと番になれた。うわあぁん!嬉しい!」


俺は泣きじゃくるニコを、腕の中に閉じ込めて、何度も何度も、その柔らかな髪に口付けをした。




◇◇◇◇◇

半年後

「アル、いってらっしゃい!今日も巡回気をつけてね」
「ああ、ニコも絶対無理はするなよ」
「大丈夫だよ。今日はお義母かあ様と編み物をするんだ。帽子と、靴下と、あっ、おむつカバーも」
「ふっ、そうか、でも、くれぐれも⋯」
「アル、もう分かったから、またお義父様から遅いって叱られるよ」
「あ、ああ、行ってくる」

「あうっ!」
「ど、どうしたニコ!!」
「赤ちゃんが蹴った」
「ほぉぉ、びっくりした」
「ふふっ、ごめんなさい。アル⋯」
「ニコ、どうした?」
「アル、この子の運命の番は、もうどこかにいるのかな?」
「ふっ、ニコ、それは、運命のみぞ知る、だ。まあ、俺達みたいに幸せになってくれるのは、間違いないさ」
「ふふっ、そうだね。あっ、アル、急がないと」
「あっ、いかん!ニコ、行ってくる!」
「いってらっしゃーい!」



僕のお腹には、初夜で授かった赤ちゃんがいる。
赤ちゃんができたって分かった時、アルは泣きながら喜んでくれた。
初恋を実らせて、アルに愛される僕は、今とても幸せだ。
この子には、僕よりも幸せになって欲しい。


「僕の赤ちゃん、あなたの運命は、もうどこかに生まれてるかなぁ?」

僕がお腹をそっと撫でると、ぽこっと赤ちゃんが蹴ってきた。

「ふふっ、じゃあ、あなたのお相手は年上だね。優しくできる?」

ぽこっ

「あなたの父上はねぇ、はじめは僕に冷たかったんだよ」

ぽこぽこぽこ

「怒ってくれるの?」

ぽこっ

「ふふっ、ありがとう」


「ちょ、ちょっと待て、ニコ」
「アル!?どうしたの?」
「父上から、今日は寒いから、ニコの様子を見ておくようにと言われて帰って来たんだ」
「えっ⋯、じゃあ、もしかして今の聞いてた?」
「俺はそんなに冷たかったか?いや、まあ、自覚はある。自覚はあるが、ニコから言われると、なんか、落ち込む」
「わわっ、アル、ごめんなさい。ちょっと、昔話をしただけだよ。ねっ」
「ううぅ⋯」

ぽこっ

「あっ、赤ちゃんも許すって言ってるよ」
「⋯そうか?」
「うん、ほら」

ぽこぽこ

アルはそっと僕のお腹に手を当てた。

「これからは、父様に優しくすると誓うよ」

ぽこっ

「よかったね、アル」
「そうだな。とりあえず俺は、ニコが昔の俺を思い出さないくらい、甘やかさないといけないな」
「ええぇっ!アル、もう充分だよっ!」


これから僕は、優しいアルと、豊かな北の大地に包まれて、きっと幸せに暮らすだろう。



10数年後、超絶反抗期を迎える我が子を、お義父とう様と同じセリフで王都に送り出す事になるとは、この時のアルはまだ、知る由もなかった。




終わり


番外編を一話更新して完結になります。

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