騎士団長の初恋を実らせるつもりが、うっかり恋に落ちました~心の声が聞こえる第五王子は街で人気の占い師~

まんまる

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サミエル王子の騒動が収まり、侯爵家に日常が戻ってきた。

あの時兄様から聞いた話によると、サミエル王子は自国でもやりたい放題で周りを困らせていて、堪忍袋の緒が切れた王から謹慎を言い渡されていたらしい。
そんな状況で無理矢理僕に会うために出国したサミエル王子は、すぐさま後を追ってきた騎士団長に見つかり、自国に引きずられて帰って行ったそうだ。

兄様が何故侯爵家にいたのか尋ねたら、王城に来るはずのサミエル王子がいつまでも現れないので、僕を心配してわざわざ侯爵家まで様子を見に来てくれたそうだ。その時、たまたま騎士団長に会ったと教えてくれた。

兄様とは歳も離れているし、特に立太子してからの兄様はいつも忙しくしていて、あんなに話したのは生まれて初めてかもしれない。
兄様は言葉だけじゃなくて、心の中でも僕のことをとても心配してくれていて、嬉しくてちょっぴり泣きそうになってしまった。



「ノア、ただいま」
「おかえりなさい、アル」

最近は騎士団の仕事も落ち着いてきて、毎日アルは仕事が終わる夕方には真っ直ぐ僕の所に帰ってきてくれるようになった。
アルは着替えを済ませるとすぐに、僕を横抱きにして膝の上に乗せてからソファに座るのが決まりになった。

「ノア、今日は何してた?」
「今日はね、義母かあ様に少し侯爵家の管理の仕事を習ったよ」
「そうか。頑張ってるな。ノア、結婚式が半年後に決まったが、これからは忙しくなるから、無理はしないでくれよ」
「ありがとう、アル。ふふっ、大丈夫だよ」
「ノア⋯」
「アル⋯」

お互いの唇を食むように何度も口付けをして、徐々に深いものに変わる。
でも性急にはされず、アルは僕をじっくり味わうように舌をゆるゆると動かし、上顎を舐められて僕が苦しそうにすると、最後に啄むように口付けをして、離してくれた。

「ノア、愛してる」

サミエル王子の一件があってから、アルは僕と二人きりになると僕を確かめるように触れるようになり、触れた後は必ず愛を囁いてくれる。
アルが僕を心配してるのが痛い程分かって、僕もアルを安心させたくて、いつも同じ言葉を返す。

「アル、僕も愛してるよ。僕はどこにも行かない。ずっとアルと一緒だよ」

僕がそう言うと、アルはいつも僕の体が軋む程抱き締めて、ほぉっと長い息を吐く。


夜も毎日のように求められ、僕が何度も達するまで離してくれなくて、途中で気を失ってしまい、いつも次の日の朝、アルの腕の中で目が覚める。
僕が目を覚ますと、アルは決まってもう起きていて、僕に微笑みかけながら、僕の頭を髪を手でくように撫でてくれる。

「ノア、愛してる。無理させてすまなかった」
「アル、僕も愛してる。アルの腕の中、温かくて安心する。ずっと抱き締めていて」



穏やかな日々が過ぎていき半年が経った。
僕達の結婚式が目前に迫ったある日、僕はずっと気になっていた事をアルに言ってみた。

「アル、占い小屋なんだけど、全然行ってないから気になってるんだけど⋯」  
「ああ、あの小屋は私も気になってたんだが、どうも王家の使いの者が定期的に来て、管理しているようだ。だから今も綺麗に保たれている」
「えっ!?知らなかった⋯」
「あそこはノアが街の皆のことを思って占いをしていた場所だから、陛下も気にされているんだろう」
「そっか、父様が⋯。今度会ったらお礼を言わないと」
「そうだな」

微笑むアルに、僕は思い切って言ってみた。

「アル、結婚式の前にもう一度占いをしたいんだけど⋯一回だけでいいから。それでもう、あそこは畳もうかと思ってる⋯」
「ノア⋯、分かった。その時は私も一緒に行く」
「ありがとう、アル」

アルは僕の頬を包み込んで優しく撫でてくれた。

「ノアは占いの売り上げをいつも孤児院に寄付していたんだろう?」
「⋯どうして知ってるの?」
「騎士団の巡回で孤児院にも行くからな。院長と話すうちに何となく気付いたよ。1,000ゼニー札だけ持って来る、若くて美しい男性がいるって院長が話してたんだ」
「あっ⋯売り上げをそのまま持って行ってたから、不思議に思われてたんだ」
「ふっ、ノアらしいな。あの孤児院には、ノアが助けた少年がいるのを知ってたか?」
「えっ?」
「3年前の騒動の後母親が亡くなって、孤児院に引き取られたらしい。ノアはあの子を何度も救ってたんだよ」

アルから、あの時の子供が元気にしてると聞いて、僕の目から温かな涙が零れた。



「ああ、荷物は私が持つよ。だがこんな重い水晶をわざわざ持って行かなくても、ノアの占いはできるだろ?」
「でも、その方が雰囲気が出ると思って」
「⋯まあ、確かに私もあの何とも言えない雰囲気、嫌いじゃないな」
「ふふっ、そうでしょ?」


久し振りに黒いカツラを被って、アルと街に出た。街の皆の活気をもらいながら、心の声を聞いて回った。
今では聞き流せるようになった周りの声を、今日は聞き逃すまいと集中する姿を見て、アルが優しく微笑んでいた。


「団長!あっ、すいません、今日は非番でしたか」
「どうした?」

もうすぐ小屋に着こうとした時、団員が慌てた様子でアルに声を掛けてきた。

「酔っ払いが店で暴れてて、手が付けられないんです」
「はぁ、こんな昼間っからか」

アルが僕をチラッと見て困った顔をした。

「アル、行ってきて」
「だが」
「いいから」
「⋯分かった。すぐ戻るから」

アルは鞄から小屋の鍵だけ出して僕に渡すと、中から鍵を掛けて待つように言って、団員と一緒に走って行った。


「何だか懐かしいな」

久し振りに占い小屋に入り、懐かしんでいると、カチャッと入り口の扉を開ける音がした。
その時、いつもの癖で入り口の鍵を閉めていない事に気付いた。

「アル?早かったね。ごめんなさい、鍵閉め忘れてた」

僕はアルだと思って声を掛けたけど、返事がなかった。
お客さんかな?

「すみません、まだなんです。外で待っててもらっていいですか?」

それでも返事がなく、不思議に思って部屋の入り口に目をやると、垂らしてあるカーテンがゆっくりと開かれた。


「サ、サミエル王子⋯どうして、ここに⋯」


そこに立っていたのは、目が座り、半年前とは明らかに人相が変わったサミエル王子だった。


その手にはギラリと光るナイフが握られていた。

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